■『風と木の詩』4巻(小学館叢書)
竹宮惠子/著
1巻でジルベールとセルジュが出会ったのは14歳か。
今回は、セルジュの父・アスランの青春が描かれる。
結核を患い、プロのピアニストになる才能を持ちながら、その道を諦め、
学業を1年早く終えて、束の間の自由を得て、パリでのオペラ座で1人のココット(高級娼婦)パイヴァと出会うまでのストーリー。
いろいろ過去を遡っているいるうちに、誰がどの時代に何歳だったか分からなくなってきた
【内容抜粋メモ】
[第4章 ジルベール]
ルノーから逃れるため、ジルベールは自分の腕を切る。
ルノー「7歳の時から下働きして、やっと弟子になれたのに・・・」
“だれかが、だれかの心を一瞬でも占めると、他のものはすべて忘れられる。
その法則は、どんな時にもくずれない”(ジルベール
ジルベールは、ボウを忘れるため、ボナールに自らを捧げる。
ボナールは、ジルベールがボウを愛していることを知り、アフリカかインドにでも皆で旅に出ようと誘う。
アンヌ・マリーとの間に愛息マルスが出来たことで、パリに移り住むから、
ジルベールを外国の学校にでも入れてくれと言いに来た義兄。
ボウはアンヌと再会し、マルスをコクトー家の正式な跡継ぎにさせる教育をさせるつもりだと知る。
義兄「ジルベールを私の庶子(浮気相手との子ども)として法的に片を付けたい」
ボウ「私が彼の父親だと名乗れば? 名などいつでも捨てますよ。ただし、あなたも道連れだ」
ジルベールを迎えに来たボウの手を振り払い、数日後、3階の窓から飛び降りて、ボナールは必死に受け止める
ボナールはボウに、ジルベールの父であることを知っていると告げる。
「常に生きる意欲に満ち、自分を恥じず、人を思いやることより自分を大事にするジルベール。
本来、そうでなければ、人間はいい意味で才能を発揮できない。お前のように後ろ向きで生きてはいけないんだ。
なぜ少しも愛してないようなふりをする。嫉妬だ!
あの子の才能をなんだと思う。“自由”。お前にはないものだよ。
それを嫉妬して、がんじがらめに縛り付ける。お前は自分の愛情も嫉妬に変えてしまうようなバカやろうだ!」
ボウはボナールに決闘を申し込む(手袋ってそんな意味があるんだ
決闘当日。ボウは執事レベックに命じてジルベールを馬車に乗せ、決闘場所まで連れてくる。
ジルベールがボウの名を呼んだことに動揺したところを撃ち、腹から血を流すボナールだが、敗北を認める。
その夜、ボウは狂ったようにジルベールを抱く
そして、初めてジルベールを両親に会わせる。
義兄はジルベールの魅力にハマり、アンヌは「近寄らないで!」とジルベールを叩く。
ボウは、義兄の援助をすべて辞退する代わりに条件を3つ出す。
1つ目は、ジルベールをラコンブラード学院に入学させ、ボウがすべて観察指導すること。
2つ目は、特殊な子どもの安全のため、学院に多額の寄付をして支配すること。
3つ目は、ボウが生きている間だけ、海の天使城を住居として貸し与えること。
「さようなら、ペール」
ボウは「1年の辛抱だ。1年経てば迎えに行く」とジルベールに約束。
ロスマリネには、学院の全権を持つに等しい生徒総監の座を与える代わりに、
ジルベールの行動をすべて監視して、逐一報告し、どんな騒ぎも後始末を引き受けることを約束させる。
ボウは、長年執事として勤め上げたレベックに別れを告げる。
「ジルベールはだれにも渡さない。私から奪い取る者が現れないかぎり」
[第5章 セルジュ 第1節 青春譜]
1865年。アスラン18歳。
結核で短い一生を薄々と感じ、一瞬一瞬を書き留めるため、古書店で運命的な出会いをした日記を
自分担当の小間使いになったばかりのリデルに見せる。
「一生の間に僕が持つ本の中で、これが一番大切な本になるから!」
“この時間をムダにはすまい。そしてそれをこれに書き記そう。過ぎ去りし日を、後悔することのないように!”
アスランはワッツの前でひどく喀血する。そのことで父からピアノのレッスンを止められることを一番恐れる。
ルーシュ教授は、パリ音楽院の大教授シスラーを紹介する。
「君は音楽をやりたまえ。その才能はショパンにも、メンデルスゾーンにも劣らない」
しかし、父に反対され、子爵としての多大な期待を背負わせる。
「お前は私の一人息子だ。ゆくゆくは子爵としてリアールの土地を治める者にならねばならん!
姉や年長の親族たちを相手に、支配者の地位に立つ者にだぞ。
若い者が人の上に立つには、常に能力で勝らなければ人を抑えることはできん。優秀な成績は能力の1つの証拠だ」
(なんだか、現代の子どもたちへの教育と変わらないねぇ・・・
「父さんに怒鳴られて気づいたよ。今まで何気なくやってきたことの1つ1つが自分にとってどんなに大切だったか。
みんな、どれ1つも失ってはいけないものなんだ。どれが欠けても、僕らしくなくなる」
「あいつはね、病気だということに少しのハンディも感じてないんだ。
あいつは物事すべての裏も表も見ようとする。光あればその影の濃さを、影を見れば、それを照らすものの明るさを、
悪いことが起これば、いつもその原因と意味を面白がって探るんだ。
送り出してやろうじゃないか。療養地のスイスへ」(ルイ・レネ
アスランは療養のためチロルに来て、親身な医師と出会う
「君がまだ15歳という年齢でこの病気にかかったのをよかったと思っているよ。
勉学も、将来の計画も固まってはいないだろうし、精神が若くて、しばし病気を忘れていることもできる。
特効薬のない現在では安静療法で病気の進行を抑えるしか処置はない。少なくともベッドに寝ているだけではだめだ」
農民の親切でさえ、断ろうとしている自分に気づくアスラン。
「少しずつ少しずつ、被害者意識が、僕の自尊心を食い荒らす」
アスランは、村の教会で古いオルガンを見つけて弾くと、皆が集まってくる。
そして1年後に、アスランは学院に戻る。父はムリをさせないようにとピアノ教授に釘を刺す。
成績の良いアスランに、ラテン語が覚えられず、生徒総監から体罰をされたと相談する下級生。
それが面白くないと、アスランは呼び出され、リンチを受けそうになったところを止めたのは、なんと若き日のボウ!驚
最高の成績でバカロレアに合格したことに大喜びした父は、アスランにしばしの自由を与える。
“同じ時はもう二度とない。瞬間は瞬間につながって消えていく。なんと僕たちはムダに時を過ごしている”
(この時に古書店で日記帳を見つけて買った
[第5章 セルジュ 第2節 椿姫]
父は、アスランに棒収(小作人から地主に支払われるお金)年4万ルーヴルと、パリの屋敷を明け渡す(搾取しまくりだな)
“こうして、誰からも規制されない「大人の自由」を与えられると、何をしたらいいのか分からなくて不安だ”
その思いを聞いた遊び人のワッツは、徹底的に社交術を叩き込み、歌劇、クラシックコンサートなどに連れて行く。
ワッツの目当ては社交場に来る美人。『椿姫』を観劇に来て、
「第一、胸の病で死ぬ美女が、あんな百貫デブじゃつや消しさ」
「だって、歌手は声の訓練でどうしても太るよ」(そういうことなのか
そこでアスランは、パイヴァと運命の出会いを果たし、ひと目惚れする。初めての恋であり、一生の愛。
だが、彼女と目が合っただけで、隣りの老人がパイヴァを連れて去る。アスランは保護者だと勘違いする。
ワッツはアスランを酔わせて、恋の相手を吐かせるが
「気の毒だが彼女はお前にふさわしくない。彼女はココットだ!
おまけにクルティザーヌ(高級娼婦。相手を自分で選べる立場にある)だ。
すごい有力者がパトロンになって、住むにも着るにも贅沢三昧させてるぜ」
あの時の老人が、政界にも権力を持つジョルジュ・ルイ・ガルジェレ侯爵だと知る
アスランは街中でパイヴァが他のココットたちと遊んでいるのを見かける。
「きっとあなたはココデット(上流貴婦人。貴婦人がココットの真似をしてコケットリーな装いをするニックネーム)たちが
先を争って真似るクルティザーヌになれるわ!」
アスランは正式にパイヴァに自己紹介し、「あなたを恋している」といきなり本気で告白する。
姉リザベートは、アスランを自慢し、大勢の娘たちを紹介する。
“人形のように色白な化粧をして、紳士たちに媚を売る。彼女らも、また姉と同じように怠け者で、
寝て、食べて、装って、喋ってばかりいるのだろう。どこがレディだというのやら!”
ココットたちは、生活がかかっている分、自分を磨いて、話術にたけている。
社交場にパイヴァがいると教えるワッツ。
彼女を狙うOBのローダンを使って、アスランに自己紹介させる。
アスランが素直にパイヴァの肌の色を褒めたことで、ローダンは侮辱ととって怒る。
戸惑ったパイヴァは、純粋なアスランに自分の肌の秘密を打ち明ける。
「私の肌の色は、誇り高いジプシーの情熱の色。ココットたちはそれを真似て殿方の気を引くために肌を染めるの。
母は結核で死んだ。ジプシーと結婚したけど、すぐ死に別れて、私は父の顔も知らない。
母とは12歳の時死に別れた。パリに来て、年老いたココットの小間使いになったのが14歳」
“悲しいことにはもう慣れました。あんまりたくさん見てきたから。
でも、ほんの少しの優しさの、その哀しさには、慣れません・・・”
パイヴァは、日曜の朝に一見さんも歓迎のパーティを開く。
アスランは、酔ったことと緊張のあまり、パイヴァのベッドで寝てしまい、初めてミサを休んでしまう。
パイヴァは、そんな純粋なアスランを好きになる。
“ステッキ、帽子、羽根扇、派手なショール、片方だけの手袋・・・
ココットの持ち物は、どれもなんだか頼りない。日々の不安と、破れかぶれの明るさと・・・”
「みなさんに私を分けて差し上げるわ」というパイヴァに、取り巻きは「白い手」「唇」「つぶらな目!」と要求するが、
アスランの答えだけは違った。
休暇で家を開けていた侯爵が帰り、2人の様子を見かける。
[巻頭のカラーページイラスト集]
竹宮惠子/著
1巻でジルベールとセルジュが出会ったのは14歳か。
今回は、セルジュの父・アスランの青春が描かれる。
結核を患い、プロのピアニストになる才能を持ちながら、その道を諦め、
学業を1年早く終えて、束の間の自由を得て、パリでのオペラ座で1人のココット(高級娼婦)パイヴァと出会うまでのストーリー。
いろいろ過去を遡っているいるうちに、誰がどの時代に何歳だったか分からなくなってきた
【内容抜粋メモ】
[第4章 ジルベール]
ルノーから逃れるため、ジルベールは自分の腕を切る。
ルノー「7歳の時から下働きして、やっと弟子になれたのに・・・」
“だれかが、だれかの心を一瞬でも占めると、他のものはすべて忘れられる。
その法則は、どんな時にもくずれない”(ジルベール
ジルベールは、ボウを忘れるため、ボナールに自らを捧げる。
ボナールは、ジルベールがボウを愛していることを知り、アフリカかインドにでも皆で旅に出ようと誘う。
アンヌ・マリーとの間に愛息マルスが出来たことで、パリに移り住むから、
ジルベールを外国の学校にでも入れてくれと言いに来た義兄。
ボウはアンヌと再会し、マルスをコクトー家の正式な跡継ぎにさせる教育をさせるつもりだと知る。
義兄「ジルベールを私の庶子(浮気相手との子ども)として法的に片を付けたい」
ボウ「私が彼の父親だと名乗れば? 名などいつでも捨てますよ。ただし、あなたも道連れだ」
ジルベールを迎えに来たボウの手を振り払い、数日後、3階の窓から飛び降りて、ボナールは必死に受け止める
ボナールはボウに、ジルベールの父であることを知っていると告げる。
「常に生きる意欲に満ち、自分を恥じず、人を思いやることより自分を大事にするジルベール。
本来、そうでなければ、人間はいい意味で才能を発揮できない。お前のように後ろ向きで生きてはいけないんだ。
なぜ少しも愛してないようなふりをする。嫉妬だ!
あの子の才能をなんだと思う。“自由”。お前にはないものだよ。
それを嫉妬して、がんじがらめに縛り付ける。お前は自分の愛情も嫉妬に変えてしまうようなバカやろうだ!」
ボウはボナールに決闘を申し込む(手袋ってそんな意味があるんだ
決闘当日。ボウは執事レベックに命じてジルベールを馬車に乗せ、決闘場所まで連れてくる。
ジルベールがボウの名を呼んだことに動揺したところを撃ち、腹から血を流すボナールだが、敗北を認める。
その夜、ボウは狂ったようにジルベールを抱く
そして、初めてジルベールを両親に会わせる。
義兄はジルベールの魅力にハマり、アンヌは「近寄らないで!」とジルベールを叩く。
ボウは、義兄の援助をすべて辞退する代わりに条件を3つ出す。
1つ目は、ジルベールをラコンブラード学院に入学させ、ボウがすべて観察指導すること。
2つ目は、特殊な子どもの安全のため、学院に多額の寄付をして支配すること。
3つ目は、ボウが生きている間だけ、海の天使城を住居として貸し与えること。
「さようなら、ペール」
ボウは「1年の辛抱だ。1年経てば迎えに行く」とジルベールに約束。
ロスマリネには、学院の全権を持つに等しい生徒総監の座を与える代わりに、
ジルベールの行動をすべて監視して、逐一報告し、どんな騒ぎも後始末を引き受けることを約束させる。
ボウは、長年執事として勤め上げたレベックに別れを告げる。
「ジルベールはだれにも渡さない。私から奪い取る者が現れないかぎり」
[第5章 セルジュ 第1節 青春譜]
1865年。アスラン18歳。
結核で短い一生を薄々と感じ、一瞬一瞬を書き留めるため、古書店で運命的な出会いをした日記を
自分担当の小間使いになったばかりのリデルに見せる。
「一生の間に僕が持つ本の中で、これが一番大切な本になるから!」
“この時間をムダにはすまい。そしてそれをこれに書き記そう。過ぎ去りし日を、後悔することのないように!”
アスランはワッツの前でひどく喀血する。そのことで父からピアノのレッスンを止められることを一番恐れる。
ルーシュ教授は、パリ音楽院の大教授シスラーを紹介する。
「君は音楽をやりたまえ。その才能はショパンにも、メンデルスゾーンにも劣らない」
しかし、父に反対され、子爵としての多大な期待を背負わせる。
「お前は私の一人息子だ。ゆくゆくは子爵としてリアールの土地を治める者にならねばならん!
姉や年長の親族たちを相手に、支配者の地位に立つ者にだぞ。
若い者が人の上に立つには、常に能力で勝らなければ人を抑えることはできん。優秀な成績は能力の1つの証拠だ」
(なんだか、現代の子どもたちへの教育と変わらないねぇ・・・
「父さんに怒鳴られて気づいたよ。今まで何気なくやってきたことの1つ1つが自分にとってどんなに大切だったか。
みんな、どれ1つも失ってはいけないものなんだ。どれが欠けても、僕らしくなくなる」
「あいつはね、病気だということに少しのハンディも感じてないんだ。
あいつは物事すべての裏も表も見ようとする。光あればその影の濃さを、影を見れば、それを照らすものの明るさを、
悪いことが起これば、いつもその原因と意味を面白がって探るんだ。
送り出してやろうじゃないか。療養地のスイスへ」(ルイ・レネ
アスランは療養のためチロルに来て、親身な医師と出会う
「君がまだ15歳という年齢でこの病気にかかったのをよかったと思っているよ。
勉学も、将来の計画も固まってはいないだろうし、精神が若くて、しばし病気を忘れていることもできる。
特効薬のない現在では安静療法で病気の進行を抑えるしか処置はない。少なくともベッドに寝ているだけではだめだ」
農民の親切でさえ、断ろうとしている自分に気づくアスラン。
「少しずつ少しずつ、被害者意識が、僕の自尊心を食い荒らす」
アスランは、村の教会で古いオルガンを見つけて弾くと、皆が集まってくる。
そして1年後に、アスランは学院に戻る。父はムリをさせないようにとピアノ教授に釘を刺す。
成績の良いアスランに、ラテン語が覚えられず、生徒総監から体罰をされたと相談する下級生。
それが面白くないと、アスランは呼び出され、リンチを受けそうになったところを止めたのは、なんと若き日のボウ!驚
最高の成績でバカロレアに合格したことに大喜びした父は、アスランにしばしの自由を与える。
“同じ時はもう二度とない。瞬間は瞬間につながって消えていく。なんと僕たちはムダに時を過ごしている”
(この時に古書店で日記帳を見つけて買った
[第5章 セルジュ 第2節 椿姫]
父は、アスランに棒収(小作人から地主に支払われるお金)年4万ルーヴルと、パリの屋敷を明け渡す(搾取しまくりだな)
“こうして、誰からも規制されない「大人の自由」を与えられると、何をしたらいいのか分からなくて不安だ”
その思いを聞いた遊び人のワッツは、徹底的に社交術を叩き込み、歌劇、クラシックコンサートなどに連れて行く。
ワッツの目当ては社交場に来る美人。『椿姫』を観劇に来て、
「第一、胸の病で死ぬ美女が、あんな百貫デブじゃつや消しさ」
「だって、歌手は声の訓練でどうしても太るよ」(そういうことなのか
そこでアスランは、パイヴァと運命の出会いを果たし、ひと目惚れする。初めての恋であり、一生の愛。
だが、彼女と目が合っただけで、隣りの老人がパイヴァを連れて去る。アスランは保護者だと勘違いする。
ワッツはアスランを酔わせて、恋の相手を吐かせるが
「気の毒だが彼女はお前にふさわしくない。彼女はココットだ!
おまけにクルティザーヌ(高級娼婦。相手を自分で選べる立場にある)だ。
すごい有力者がパトロンになって、住むにも着るにも贅沢三昧させてるぜ」
あの時の老人が、政界にも権力を持つジョルジュ・ルイ・ガルジェレ侯爵だと知る
アスランは街中でパイヴァが他のココットたちと遊んでいるのを見かける。
「きっとあなたはココデット(上流貴婦人。貴婦人がココットの真似をしてコケットリーな装いをするニックネーム)たちが
先を争って真似るクルティザーヌになれるわ!」
アスランは正式にパイヴァに自己紹介し、「あなたを恋している」といきなり本気で告白する。
姉リザベートは、アスランを自慢し、大勢の娘たちを紹介する。
“人形のように色白な化粧をして、紳士たちに媚を売る。彼女らも、また姉と同じように怠け者で、
寝て、食べて、装って、喋ってばかりいるのだろう。どこがレディだというのやら!”
ココットたちは、生活がかかっている分、自分を磨いて、話術にたけている。
社交場にパイヴァがいると教えるワッツ。
彼女を狙うOBのローダンを使って、アスランに自己紹介させる。
アスランが素直にパイヴァの肌の色を褒めたことで、ローダンは侮辱ととって怒る。
戸惑ったパイヴァは、純粋なアスランに自分の肌の秘密を打ち明ける。
「私の肌の色は、誇り高いジプシーの情熱の色。ココットたちはそれを真似て殿方の気を引くために肌を染めるの。
母は結核で死んだ。ジプシーと結婚したけど、すぐ死に別れて、私は父の顔も知らない。
母とは12歳の時死に別れた。パリに来て、年老いたココットの小間使いになったのが14歳」
“悲しいことにはもう慣れました。あんまりたくさん見てきたから。
でも、ほんの少しの優しさの、その哀しさには、慣れません・・・”
パイヴァは、日曜の朝に一見さんも歓迎のパーティを開く。
アスランは、酔ったことと緊張のあまり、パイヴァのベッドで寝てしまい、初めてミサを休んでしまう。
パイヴァは、そんな純粋なアスランを好きになる。
“ステッキ、帽子、羽根扇、派手なショール、片方だけの手袋・・・
ココットの持ち物は、どれもなんだか頼りない。日々の不安と、破れかぶれの明るさと・・・”
「みなさんに私を分けて差し上げるわ」というパイヴァに、取り巻きは「白い手」「唇」「つぶらな目!」と要求するが、
アスランの答えだけは違った。
休暇で家を開けていた侯爵が帰り、2人の様子を見かける。
[巻頭のカラーページイラスト集]