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『大島弓子選集 10巻 ダリアの帯』(朝日ソノラマ)

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■『大島弓子選集 10巻 ダリアの帯』(朝日ソノラマ)

「大島弓子書籍リスト」さんも参照させていただきました/礼

大島弓子(作家別カテゴリー)

これまで読んだものもかぶってくるため、それらは「作家別カテゴリー」を参照のほど。

【収録作品】

以下の作品は既読。
「水枕羽枕」 1984年プチフラワー1月号掲載


●桜時間 1982年プチフラワー7月号掲載


[あらすじ(ネタバレ注意)]
16歳で3人の男と付き合い、子どもができたとり子。そこに4人目の男が現れ、結婚した。
その長男・うさ吉は近頃、反抗的。名前でイジメられているという。

 

ある日、ニュースで連続殺人事件の犯人が死んだと写真が出て、最初に付き合った水下と分かって愕然とするとり子。
水下は風が吹く日に決まって傷害事件を起こしていて、その性質は直系に受け継がれた遺伝だと知り、
とり子は、残りの2人がうさ吉と似ていないことをチェックする。
とり子には最初から、水下の子ではないかという予想があった。



うさ吉が学校でケンカして、清水くんは鼻血を出して病院に行ったと担任から電話がくる。
ケンカした理由は、うさ吉が母の昔の恋人の子だと言われたからだと言う。
父は正直に話して、殴ったことを謝りに行こうと説得する。

「でも理由がなくても殴りたい時はどうすればいいの?」と聞かれ、父は悩んだ挙句、
昔からあるマジナイだといって謎の言葉を教える。

うさ吉が風で事件を起こす遺伝子を持っていて、将来、連続殺人鬼になってしまうのではと恐れ、
とり子は授業のつきそいをしたいと担任に頼んで断られる。
うさ子は衝動的に、息子の首に手をかけそうになり、あの呪文をとなえる。

ほんとうは、水下に夢中だったのに別れようと言われて、つっぱって、遊んだのだと、
自分を心配してくれる夫に話す。夫は、自分と息子に対する態度を変えなかった。



わたしは畑野作造が好きです。
これはもう恋です。


●金髪の草原 1983年ぶーけ1月号掲載


[あらすじ(ネタバレ注意)]
朝、起きると全身が痛い日暮里歩。庭には突然巨大なビルが建ち、
学校のマドンナ・古代なりすが、なぜか自宅にお手伝いとして通ってくれることになり慌てる。



歩は、これは全部夢なんだと思い、おおいに楽しむことにする。
なりすに想いを伝えると「わたしには恋人がいます!」と言われてしまう。

実は、歩は、自分が大学生だと思い込んでいる認知症の老人で、なりすはそのヘルパー。
友人は、その老人と結婚して、広大な屋敷を受け継いで、死後、優雅に暮らせばいいなどと言うが、
なりすには絵を描くという夢がある。
その忘年会で、好きだった佐分利くんが、親友と同棲していると聞いてショックを受ける。

失恋したと聞いた歩は、仲間を集めようとするが、みんな老齢で亡くなったという。
歩は、訪ねてきたなりすの友人たちを学友だと信じ込む。



病院で医師に相談すると、本人が生き生きとしているなら、ムリヤリ現実を教えるのはどうかと言われる。
買い物の後、近所の人に、庭のバラを歩に切られたと苦情を言われる。

なりすは、全く使わなくなった2階から「記憶年表」を見つける。
記憶がなくなることを予感した歩が書いたものだった。
21歳で発病。自殺未遂もしていて、ギネス的不運人生だったため、もっとも幸せだった時代に戻ったのだと知る。

その後、歩はたくさんのバラを抱えて、なりすにプロポーズする。
「記憶年表」には、死後は屋敷は市に寄付すると書いてあったが、
一緒に住むことをOKしたら、最高の夢だと泣く歩。



これが夢じゃないことを確かめるために、ビルの階段から飛び降りてみる歩。
“とべたら、なりすと結婚する”
そして全部思い出す。

“現実のなりすに会えてよかった。現実に戻れてよかった。
 こんどこそ飛べるような気がする。
 上昇 上昇 そして気流にのる さよなら ありがとう なりす”

3日間の仕事を終えて、なりすは佐分利に片思いを告白する。
“それでわたしは記念碑の年表の最後に すばらしいね をつけ加えるんだ”


●夢虫・未草 1983年デュオ7月号掲載


[あらすじ(ネタバレ注意)]

林子の母の口癖は「はやくしなさい」。
ある日、突然、父が「実は、半年前から好きな人がいるから離婚したい」と告げる。
相手は、「フランス」という飲み屋のママ。その息子・晴夫は、林子のクラスメイト。



母は少しの間、別居することになったと言う。
林子は晴夫とケンカをするが、晴夫とは同じ立場で、父がいない分、自分より辛いんだと反省する。

家に帰ると母がいないため、自分でスープを作ろうとして、塩がないことに気づき、
スーパーに行くと財布に金がないことに気づき、家に戻ると火事騒ぎ、プラス、万引き騒ぎ。
PTAでの題材にされるところが、晴夫が学校の屋上から飛び降りようとしたため、
題材が変わり、かばってくれたと分かる。

母は、正装して、晴夫に謝りがてら、五目寿司を届ける。
母は、昨晩、一人で星空を見て、若い頃を思い出していたと話す。

 

日曜の朝、晴夫のママがお礼にやって来て、夫を愛していること、
よければメイドとしてでもいいから一緒に住むことを提案するが、母は断る。

父の気持ちは真剣で、父と一緒に暮らしてもいい、林子の自由意志だと言われる。
晴夫は協同生活は歓迎だと言う。

晴夫「おれはフランスママの考え方は数千年古いと思うな」
林子「あたしは数千年未来のアイデアだと思ったわ」
晴夫「そのほうがいい。お前の考え方のほうがずっといいよ」

翌朝、母が睡眠薬を飲みすぎて、昏睡状態になっているのを見つける林子。
「林子ちゃん、離婚したら、わたしからはなれないで!」

数日後、両親は離婚し、母は林子とともに実家にしばらく身を寄せることになった。
晴夫は、林子がもう読んだ『2001年宇宙の旅』の本をくれ、
林子は、電車の中で全員がそろって楽しくお茶を飲んでいる夢をみる。



●あまのかぐやま 1984年LaLa7月号掲載


[あらすじ(ネタバレ注意)]
女子高で、担任が事故って入院し、大学出たての新任が副担任になったと大騒ぎになる。
名前は根木永遠夫。みんなは女子特有のいじわる作戦に出る。



ブラジャーを教員机の下に置くと、根木は「このブラジャーだれのだ!?
ここに置くから自主的に取りに来なさい」と黒板にはりつける。

風紀に厳しい教頭ら、他の教師からも無視される根木だが、一向に気にしていない。
根木に好意を抱いて、あたふたとフォローする夏野。親友の吹子はなぜか素っ気ない。

試験でヤマを教えてくれと言われて断る根木。
答案用紙は白紙が多く、平均点は19点。
だが、それは根木の古文だけで、他は高い。
どの教師もヤマを教えていたと分かり、再試を止め、高一の基礎からやり直すと言い出す。



校庭での懇親会に女装して紛れ込む根木の作戦は失敗。
夏野は、大学で古文を専攻したいと言って好意を示す。
吹子は、奥手の夏野に根木をあてがうつもりだったが、根木はゲイだと自白し思惑は失敗する。

吹子が時々見る、草原の幻覚は、アルコールのせいではなく、根木のせいだと分かる。
“夏来るらし 白妙の 衣ほしたり 天の香具山”



●快速帆船 1984年デュオ7月号掲載


[あらすじ(ネタバレ注意)]


女子学生が突然、なにもかも思い出せなくなり、焦る。
不良に絡まれ、男性に助けられ、ポケットに入っていた430円区間の切符を見つけて、とりあえず電車に飛び乗る。



さっきの男性も同じ電車に乗り、医師で、家出してきたのだという。
「あなたは若い。夢がたくさんあるんでしょうね」
「帆船に乗りたいです!」
女子は、間をもたせるためにあらぬことを口走る。

医師をまいて、430円区間で降りるが、見知らぬ場所。
区間は隣り駅までだと気づいて、夜道を歩くことに。
そこにさっきの医師が現れ、もしや変態では?と疑う。

おばあさんが来たので「我々と一緒に歩きませんか?」と誘う。
おばあさんと医師は楽しく会話し、おばあさんは宿に帰る。
医師は突然♪箱根八里 を歌いだしたので、女子もついでに歌う。

翌朝、昨日、話したおばあさんが亡くなった記事を読んで驚く。
亡くなったのは、自分たちと会う前の時間だった。



女子は交番で記憶喪失なんだと説明し、家出捜索願を調べてもらうがなく、おかしな服装から不良学生と思われる。
翌日も聞いてみるが、やっぱりなく、業務執行妨害だと追われているところを医師に助けられる。

川のむこう岸に見覚えがある!と思って、突如川を泳ぎだす女子。医師は準備体操が足らずに沈む。

女子は目覚めると、病院で、名前は類子で、頭の腫瘍で入院していて、一時の記憶喪失だと分かる。
医師は、夢の中の医師で、おばあさんは実際亡くなられていて、危篤の時、医師は♪箱根八里 を歌ったという。

退院後も、類子は、あたりの家々の灯りを見ると、自分がどこにでも帰れる子どものような気がして、
どこかにあるむこう岸には懐かしい家が待っていそうな気がしてしまう。



●わたしの〆切りあとさきLIFE 1983年デュオ別冊大島弓子の世界掲載


[あらすじ(ネタバレ注意)]
(大島さんの作品制作の裏事情話や、マンガ制作過程が垣間見れて面白い

2つのぼんやりがあって、普段のぼんやりと、何か描かねばならないがスタートできないきついぼんやり。

1.ネームを描く。
2.ワクどり線引きは好き。

3.アシスタントがわいわい来る。
4.仕事モードに入り、大島さんは集中するため、寝室で描く。
5.普通の修羅場の睡眠時間は5~6時間(これはサラリーマンと同じだね
レム期に眼球運動を自覚できるって、一体どうゆうことだろう・・・???

6.編集さんがネームの写植を貼りに来る。
7.動かないから、妊娠5ヶ月くらいに太る。
8.最後のページを描き、10時間くらい意識不明で眠る。
9.怪奇もののビデオなど見たり、翌日もズルズルと食事したりして、名残り惜しんでアシスタントと別れる。
10.猫がお腹に乗った状態で眠っていたため悪夢で起きるw という繰り返し。


●ノン・レガート 1985年デュオ3月号掲載


[あらすじ(ネタバレ注意)]
毎年同じく、天神さまに“宝くじが当たりますように”とお願いしたら、3000万円が当たった小松菜晴子19歳。
(現代の3000万円って、考え方によっちゃビミョーだね
友人に電話すると、知人が6000万で買った高級マンションを現金一括払いなら売るという。



晴子もそこに住むが、すぐに気づいたのは、築30年のせいか、老人ばかりが住んでいて、
みんな相互に支え合いながらも、結構なおせっかい焼き&噂話好きだということ。

神社で、“今年もなにかに当たりますように。マンガ描きになれるように”などとお願いする。
弁財天には、彼女が体中に厄をびっしりつけてるのが見えるw



その後、晴子は意味不明の高熱を出し、管理費が6万円もすることが分かり、
医者に健保もなしにかかった5万円をマンション住民が立て替えてくれていて、
1500円のバイト求人を見つけたものの、商品を破損し、9万の弁償。バイトは不採用。



そこに、505号室の徳多というおじさんが来て、自分の遺影のために肖像画を描いてくれたら10万払うと言い、即受ける。
が、マンガ家志望の晴子の絵は気に入らず「もっとまともな絵を描きなさい」と言われ、何度も描き直しを要求される。



夜中の3時におばあさんが遊びに来て、お茶話をしていくが、晴子は本当はそういうのがキライではない。
そのおばあさんは、翌朝、玄関の階段で転んで亡くなったという。
早速、会議となり、住民は、階段をバリアフリーにすることを提案し、100万円かかると聞いて、
反対した晴子は、無視されるようになる。

なんとか100万を工面して、徳多の肖像画を描きながら、昔、ここが刑場地だったと聞く。
それから毎晩、首なし幽霊の悪夢にうなされ、眠れないからとガス栓を開け、住民に助けられる。
毎晩うなされた物音は、サラ金の取立屋だと知り、住民のもちよりで返してくれる。



その代わり高齢者のなんでも屋をして返済することになる。
徳多の肖像画は、若い頃をデフォルメしてなんとか納得してもらい、代金を受け取らず、プレゼントする。

そこにマンションが7000万円で売れるという話が舞い込む。
しかし、年末年始は、お年寄りが餅を喉につまらせるから、ちょっと待って欲しいと頼んで断られたため、諦める。

翌年、神社に“みんな無事年越しができますように”と、初めて自分以外のお願いをしたことに気づく晴子。
徳多は、大寒の日になくなり、肖像画が飾られた。
彼はこのマンションの地権者で、弁護士から、徳多の住んでいた5階全体を肖像画の代金代わりにくれる遺言と、
自分の部屋を売って、贈与税か相続税にあてればいいと言われる。

定収入には困らなくなったが、マンガを描く時間がない毎日となる晴子。


●ダリアの帯 1985年月刊ブーケ8月号掲載


[あらすじ(ネタバレ注意)]
25歳サラリーマンの一郎と、主婦の黄菜21歳は、3年前に衝動的に結婚し、今では倦怠期。
一郎は、会社のOL雪子に好意を抱き、雪子も「一郎さんみたいな人と結婚したい」と言う。



ある日、黄菜は階段から落ちて、妊娠2ヶ月と知らず、流産してしまう。

「赤ん坊がいるなんて知らなかったの」と繰り返す黄菜に、
「事故だったから仕方ない。また産めばいいよ」と言って怒らせる。
(こういうのが深刻な溝とトラウマになるって、分からないんだよね男子は

 

その日から、黄菜は、冷蔵庫ばかり見て1日が過ぎてしまう。
一郎のワイシャツに「一郎君をとらないで」と落書きをして困らせたり、
いっしょに会社に行くといって、入口で待っていたり。
雪子への恋心がバレたのかと疑う一郎。

黄菜の母を呼んで面倒を見てもらおうと呼んだら、完全に逆効果だった。
黄菜は、母が自分にイジワルをした日にちを全部記憶していて、
今回の流産も母親の血を続けたくないからだと言われたと泣く。
再婚話があり「あの子をよろしくお願いします」と頼まれる一郎。



黄菜は、生まれなかった子にニイナと名付け、喪服に一番似合うダリアの帯を探して
見つからなかったから、自分で刺繍して作ると言い出す。

病院に行くと、黄菜の健忘症は進行性だと言われる。
一郎は、ストレス続きで胃に穴があき入院する。
母親に自分の看病より、黄菜の世話を頼むが、幻覚・幻聴・独話と進行していく。

母「家に土を盛ってもう手が付けられないわ」

精神病院に強制的に入院させ、離婚届も渡された一郎は、病院を抜け出し家に戻る。
黄菜がダリアの球根を植えようとしていたのだと分かったから。

それから一郎は会社を辞めて、山村で黄菜を世話しながら自給自足の生活を始める。
“山にしばかりに”っていうのは、芝じゃなくて、そだ木刈りだとも知る。

一郎は、そんな生活をしながら、60歳でバッタリ倒れ、自由になって初めて気づく。
黄菜の独話の相手は、生まれなかった子ども、風、霧、有形無形森羅万象だったと。




【書き下ろしマンガエッセイ】
「おとしまえをつける」という業界用語は、言い訳とお詫び。
この選集に載せない作品の中には、長すぎる、原稿がない、テーマが重複している、
そしてなにより大島さんが「失敗作」だと思って、いつか描き直そうとお蔵入りさせたものがある。



この頃、サバ(最初の猫)がやって来て、修羅場に慣れずに神経性の下痢をおこし、仕事場を別にした。

 


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