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『森のなかの1羽と3匹』(白泉社)

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『森のなかの1羽と3匹』(白泉社)
大島弓子/著

大島さんのマンガが好きな理由のひとつは、その絵だけじゃなくて、
セリフや情景描写などのコトバが詩的だからなんだなって改めて気づいた。

こうした絵本にしても、イラストがもしなくても、コトバと想像力で充分楽しむことができる。

私の苦手な虫の世界だけど、こうして擬人化して描いて、
その一生を考えて、虫たちも考えながら、短い一生を悲観などせず、
自然のままに、自然とともに生きているんだと分かる。

1つ1つのあらゆる生きものに対する、大島さんの深~い愛情も伝わってくる

これで、大体、大島さんの作品はあらかた読んだ。
全制覇できないのは心残りだけど。また縁を待とう。


▼あらすじ(ネタバレ注意

「トンボ」


昆虫の中で羽がもっとも優れているトンボの中でも、羽化後、山にこもって瞑想したりする「アカトンボ」。
あっという間に夏が過ぎ、秋には結婚して、産卵して一生が終わる。

“あんなにいろいろ悩んだというのに この簡単な命の終わり様
 わたしは羽をたたみ目をとじて思う 良い人生だったと
 そして永い眠りにつく”


「カッコー」


食べても食べてもお腹が空くカッコーの赤ちゃんは、巣にあった他の小さな卵を
「過失」か「故意」か、巣から落として割ってしまう。

巣立って、自分が卵を産む時には、他の鳥の巣を見つけて、親鳥が留守の間に生み落とす。

“なぜわたしは 自分で巣をつくらないの やり方を知らないわ”


「カエル」
オタマジャクシが蛙になれるまでの生存率は1%。
100匹中99匹は、他の動物に食べられたりして命を落とす。

子蛙ははねながら自分を思う。今は過渡期の生物だと。
陸上の生物になろうか 水中の生物になろうか いつも答が出ない どちらも最高だから。

“蛙に成長してもゴイサギに食べられたり、小学校の解剖で大勢死んだり、クルマにつぶされたり
 わたしが今生きているのは たぶん奇蹟なのかもしれないな”

ある日、見慣れない蛙に会った。
水田の農薬で一族は皆死んで逃げてきたのだが、翌日、その蛙も死んでいた。

ある夜、盛大なパーティに行き、王子様蛙と踊った。
そして、水草に卵をからめて産んだ。





「セミ」
セミは、卵から孵ると土の中に何年も埋もれて暮らし、地上に出たら数日の命。
地中では木の根のジュースを飲む。



根が地下水を汲み上げる音を聞いたり、地上の鳥、人々の声、雨の音も聞こえる。



子どもたちがセミの抜け殻を拾って喜ぶ声を聞いて
“いつかわたしの抜け殻も子どもたちにあげるよ”

夏になり、羽化して成虫になり、交尾相手を見つけて、産卵し、数日間の命を終わる。
上から見た木は想像どおりかわいらしかった。

“飛びながら ふと考えた
 またあの地中の生活に戻りたい
 長く美しい休暇の時に”








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