■『ナショナルジオグラフィック世界の国 イギリス』(ほるぷ出版)
レイチェル・ビーン/著
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『ナショナルジオグラフィック世界の国 アメリカ』(ほるぷ出版)
いかにも困っている国より、その元凶を作っている「経済大国」のほうをよく知ったほうがいいんじゃないかと思い始めた。
世界を動かしている1%の富裕層がいそうな国(私のイメージ)の内情を知ろう。
こないだ読んだアメリカ人は、イギリスから来た開拓民だから、今度はイギリスを借りてみた。
すると、日本と同じく資源の少ない、小さな島国ながら、
イギリス人ですら、アングロサクソンなど、様々な民族の血が混ざっていると分かった。
港が発達して、貿易で大きく発展した国だったんだな。
【内容抜粋メモ】
はじめに:マイケル・ダンフォード(サセックス大学)
イギリスが世界で果たす3つの役割
1.1993年以来、EUのメンバー
2.そのほとんどが大英帝国の植民地だった53カ国のイギリス連邦を率いている。
3.もっとも親密な同盟国の1つ、アメリカと特別な関係にある。
1500~1600年代、大西洋の海洋貿易で主導的に地位にあった。
19C、農業が衰退、20C、工業が衰退、今は「サービス産業」が経済の中心。
「福祉国家」
全国民が無料で医療、教育、社会保障を受けているが、貧富の差は広がっている。
自然
景観は、森の開拓、沼地・湿原の干拓、都市の住宅地によりつくられた。
人種
イギリス人とは、侵略者と移民によってつくられた国民。
ケルト人、ローマ人、アングロサクソン人、バイキング、ノルマン人ら。
かれらの影響で多種多様な文化・社会を築いている。
*****************概略
[国旗]
「ユニオン・フラッグ」「ユニオン・ジャック」よ呼ばれ、
イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの国旗が組み合わせられている。
[国歌]
♪女王陛下万歳 は法律で制定されていないが国歌として広く認知されている。
国王が男性になると、曲名は♪国王陛下万歳 になる。
[日本との時差]
9時間。
サマータイムを実施していて、3月の最終日曜日の午前1時に時計を1時間進め、
10月の最終日曜日の午前1時に時計を1時間遅らせる。
[通貨]
EUに加盟しているがユーロでなく「スターリングポンド」を使う。
4種類の紙幣の裏には現在の女王エリザベス2世が描かれている。
[気候]
ロンドンの冬の寒さは東京とほぼ同じ。
7、8月の平均気温は13度台。熱帯並みの暑さはない。
[祝日]
公的な休日は、新年、クリスマス、イースター。
「バンク・ホリデー(銀行の休日)」が月曜日にある。
好きな休暇の過ごし方は、海辺に行くこと
[公用語]
英語(ウェールズ語、ゲール語使用地域あり
[人口密度]
人口6000万人のうち8割が都市部に住む。
首都ロンドンは、イギリスでもっとも人口密度が高い。
イギリス人の9/10人はイングランドに住む。
スコットランドで人口密度が高いのはグラスゴー(3人に1人
[宗教]
とくにこれと書いていなかったけど、ウィキによると、
“2011年、キリスト教徒74.7%、イスラム教徒2.3%、ヒンドゥー教徒が1.1%。
キリスト教の内訳は、英国国教会が62%、カトリックが13%、長老派が6%、メソジストが3%程度と推定されている”
ドルイド教:古代、ケルト人の宗教。
[産業]
経済水域の海底には油田、ガス田がある。
近代的都市の多くは、地下資源で発達。
20Cに工場は閉鎖され、石炭・鉄鉱石は底をついた。
1980年、国営企業が民間に売却され、数百万人が職を失った。その後、再生し、今は経済大国の1つ。
国土の7割が農地だが、農業従事者は人口の2%。
もっとも急速に成長しているのは「サービス産業」。銀行、レジャー、情報技術、通信、運輸など。
コツォルド丘陵は「羊毛生産」の中心地で、これにより豊かな国になった。
ランカシャー州の運河にある元紡績工場。
バーンリーは1800年初頭、産業革命の中心地の1つで、綿織物はリバプールから海外に輸出された。
ロンドンは、世界一通航量の多い港として発展した。
[経済]
最大の柱は観光。世界で観光客数ベスト10に入る。
毎年約3000万人訪れる外国人のうち、350万人はアメリカ人。
ロンドンの金融街は「シティ」と呼ばれる、世界経済の中心地。
シティの証券会社では、顧客と顔を合わせて株式売買することはもうない。
コンピュータシステムを使って取り引きしている。
[観光]
「ロンドン・アイ」は世界最大の観覧車として人気スポット。
タータンチェックのキルトを身につけたスコットランドのバグパイプの楽隊
(この格好のイメージが強いけど、スコットランドなんだ
「ブラックプール」は北部で一番人気の行楽地。パリのエッフェル塔の縮小版がある。
「ストーンヘンジ」
紀元前3000~1100年頃に少しずつ造られた。
もっとも大きな石は50tもあり、30km離れた所から運ばれた。
「ハドリアヌスの長城」
スコットランドを征服できないと分かったローマ人が壁を造った。
「タワー・ブリッジ」
「ジャイアンツ・コーズウェイ」
「ネス湖」
水深240m。ネッシーで有名だが、十分な食べ物がないので、大型動物がいる可能性はないと生物学者たちは考えている(どうかなあ?w
「アフィントンの白馬」
3000年前につくられた。イングランドの南部と東部は白亜の上にあるので、表層土を除去して絵を描いた。114mもある。
[貿易]
イギリスは500年以上、世界有数の「貿易国」として活躍した。
19C、工業力で世界一の強国となった。
現在、富の半分は、外国との貿易でもたらされている。相手の半分以上は他ヨーロッパ諸国。
主な輸出品は、石油、ハイテク機械、金融サービス。
輸出相手 1位アメリカ 14.6%、輸入相手 1位ドイツ 14%
[政治]
立憲君主制。
スコットランドは王国、ウェールズは公国(皇太子が統治)、北アイルランドは行政区。
新しい法律にはすべて女王の承認が必要だが、1707年移行、署名を拒否されたことはない。
毎年秋、女王エリザベス2世により国会の新会期が開会される。
女王のスピーチ原稿は政府が作り、女王はそれを読み上げるのみ。
君主は下院に入ることは許されない。
初期の王は、宗教的指導者、貴族(王・女王から与えられた称号をもつ人)からなる会の助言を受けて統治していた。
王室の会が強い力をもち、軍事的指導者の騎士も加わった。
1300年代から
上院:貴族院(かつては世襲制。1999年に廃止。任命制となる
下院:庶民院(もとは騎士
国王と議会の間には何度も権力争いが起きた
国政選挙はほぼ5年ごと。
2つの大会議場には、全員が座れるだけの席がなく、激しい議論をし、立ったまま、外から参加する人もいる。
(新しく建てればいいじゃんw
主な政党は
「保守党」中産階級との結びつきが強い
「労働党」労働者階級、労働組合と近い関係
「自由民主党」上の両方から支持を集めようとしている
1983年、スクリーミング・ロード・サッチという歌手が作った「モンスター・レイビング・ルーニー党」は、
ネコが党首になったことがあるが、いつも敗北している(こういうところ好きだな/爆
ほとんどの市長は実質的権限を持たず、儀式を行うだけの存在。
ウェールズ、スコットランド、北アイルランドが独自の地方議会をもつが、権限は限られる。
地方政治の制度は複雑で、組織がよく変わる。
[文化]
シェイクスピア、ディケンズなど偉大な作家を生んだ。近年ではハリポタのローリング。
画家ではジョゼフ・ターナーら。もちろんビートルズも(“ブリットポップ”て初耳
ウェールズでは、毎年、詩人、物語りの語り手、ミュージシャンらが競う吟唱詩人大会「アイステズヴォッド」が開催される。
[祭り]
8月、イギリス最大の祭り「ノッティング・ヒル・カーニバル」が開催される。
1950年代、都市部に働きに来たカリブ海の人々が、祖国を祝うものとして始めた。
1970年代、アフリカ、インド人も住みはじめ、彼らの影響もみられる。
11月5日の「ガイ・フォークス・ナイト」は国民的イベントの1つ。
[スポーツ]
サッカー、ラグビー、クリケット、ボクシング、ゴルフ、などはイギリスが発祥地。
ラグビーはウェールズの国技。
クリケットは、ルールが複雑で公式ルールブックで20ページもある。
[食べ物]
イギリス人の好物はカレー!?
[教育]
子どもは5歳~16歳まで学校に通う。
ウェールズの子どもは、16歳まで学校でウェールズ語を学ぶよう定められている。
「ボーイスカウト」は1900年代にはじまり、世界中に広まった。
*****************自然
島国
イギリスは、いくつもの島からなる島国。フランスまで、一番近いところでわずか30kmしかない。
アウター・ヘブリディーズ諸島は、スコットランドの120の島々。
人口が多いため、ほんとうの意味での自然が残る場所は非常に少ない。
コーンウォール州の家畜用の牧草地を分ける石垣は、何世紀も前からある
山地は寒くて降水量が多く、土地は痩せているため、そこで飼えるのは丈夫な品種のヒツジやウシだけ。
海岸線
長い海岸線は、つねに浸水・侵食の脅威にさらされている。
東海岸のところによっては年に90cmも侵食されている。
人々は庭が海に沈むのを何年も見つめ、家が沈む前に引っ越す
高潮で洪水が起こるのを防ぐため、1984年、世界最大の可動式の防潮水門がテムズ川に設置された。
森林
約5000年前、中央部は深い森だったが、今は国土の約10%。
「オーク」はイングランドの国木
とても頑丈なので、イギリスの歴史的建造物の多くに使われている。ドルイド教の祭司にとって神聖な木だった。
「エデン・プロジェクトのドーム」@コーンウォール州(ちょっと未来的
*****************野生生物
イギリス人は動物が大好き。1400万匹のネコとイヌがいる。
19Cには、農薬、産業廃棄物による環境汚染が大問題になった。
「ライチョウ」は狩猟の対象とされる。毎年8月12日に解禁となり、ハンターは「素晴らしき12日」と呼ぶ。
伝統的な「ツイード」の服は、背景に溶け込むカムフラージュの役目を果たす(そんな悲しい歴史があるの?
「キツネ」
何世紀にもわたり、イギリスの野生生物は新しい生息環境に適応してきた。
森、湿地が減り、畑、生垣、庭に代わり、モグラ、ネズミは農地に棲み、キツネも棲みかを移した。
キツネは、ゴミを漁り、街を歩いているのも珍しくない。
「ウサギ」
ローマ人が食用として育て、逃げ出して野生化した。
「ハト」
かつて食用に飼育されていたのが野生化した。
「アカシカ」イギリス最大の野生動物。
「カラス」
ロンドン塔からカラスが消えると、王国が崩壊するという言い伝えから、羽の一部を切り、遠くへ飛ばないようにしている。
*****************人種
ローマン・ブリテン時代の地図はなかなか面白いなあ
イギリス人ですら、イギリスにいくつの国があるか混乱する。
最初のイギリス人は、約1万年前に来た「ピクト人」(ピクトさん?
その後は「ケルト人」「ローマ人」が侵略。
ローマ人は、都市、砦、道路網を築き、今も残っている。
ローマの支配下で、イギリス人は豊かになり、公衆浴場、下水設備などができた。
「ピクトランド」にはピクト人、アイルランドにはスコット人が住んでいた。
スコット人は「ピクトランド」を侵略して「スコットランド」と名づけた(頭が混乱してきた・・・
今のイギリス人の祖先の多くは「スカンジナビア」から来た。
「スカンジナビア」
ノルウェー、スウェーデン、デンマーク(アイスランド、フィンランドを含むこともある
イギリス人の大半は、もともとイギリスに住んでいた、イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランド人。
彼らは、昔やってきて定住した「バイキング」、ノルマン人、アングロサクソン人の子孫。
(なんだか本書でも混乱しているような・・・?
「バイキング」
シェトランド諸島のスカンジナビア半島から来た海賊
相次ぐ侵略者たちが初期のイギリスをつくり、強大な1つの国をつくった。
世界でもっとも広く使われている言葉が「英語」なのは、どれほど勢力が大きかったかを示す。
「アップ・ヘリー・アー」という火祭りでは、バイキングの衣装をつける。
彼らと異なるルーツの人口は約8%、うち4%は、バングラデシュ、パキスタン、インドなどの移民で、
約2%はカリブ海から、第二次世界大戦、労働力不足を補うために来たアフリカ系。
*****************歴史
紀元前約2300 北ヨーロッパからビーカー人が来て定住する(誰だろう・・・?
800 ケルト人がヨーロッパから来る
55 カエサル率いるローマ軍が侵攻し、短期間に終わる
紀元後約410 イギリスはいくつもの小さな王国に分裂
440年代 ヨーロッパから来たゲルマン民族(アングル人、ジュート人、サクソン人)が定住
アングル人は国名を「イングランド」とし、「アングロサクソン人」と呼ばれるようになる。
ヨーロッパから来た宣教師は、アングロサクソン人をキリスト教徒にした。
900年代 バイキングがイギリス海岸を襲った
1066 ノルマン人が侵略。「ヘースティングズの戦い」でウィリアムがイングランドの王となる。
ノルマン人の話すフランス語+アングロサクソン語が混ざって「英語」の元になった(だから似てるのか
1171 ノルマン人がアイルランドを征服
1289 イングランドがウェールズを征服
1348 ネズミが原因の疫病「黒死病」で人口の1/3が死ぬ
1453 「百年戦争」でフランスに敗北
1485 30年間続いた「バラ戦争」が終わり、チューダー朝がはじまる
1533 ヘンリー8世が離婚を認めないローマン・カトリック教会を離脱し、プロテスタントの英国国教会を設立
カトリック教徒のメアリ1世が初の女王となる。プロテスタントを処刑したことから「血塗られたメアリ」と呼ばれる
「ヘンリー8世」
生涯に6回結婚し、うち2人を処刑したことで有名。
世継ぎの男児が産まれなかったこともあるが、教会の資産を奪い、自身の権力・富の増大のため
最初の妻と「結婚の無効」(離婚とは違い、結婚が有効でなかったと明らかにすること→同じじゃん!
その後、アン・ブリーンと結婚し産まれたのがのちのエリザベス1世
この辺は映画で観た。
『1000日のアン』
『ブーリン家の姉妹』(2008)
『エリザベス』(1998)
『エリザベス ゴールデンエイジ』
その後、宗教問題が激化した。
プロテスタントで有力なのは「清教徒」で、信仰の自由を求めてイングランドを離れる者もいた。
(1620年、メイフラワー号に乗りアメリカに移住したのが「ピルグリム・ファーザーズ」か!
1588 女王エリザベス1世の海軍がスペインの無敵艦隊を撃破 アメリカ大陸と貿易をはじめる
エリザベス1世の死後、子どもがいなかったため、スコットランド王のジェームズ6世が王位を継ぎ、
イングランド+スコットランドが初めて統一。
1660 王制復活。チャールズ2世が王位に就く
1714 王位はドイツ貴族ジョージ1世に継がれた。彼は英語が話せなかった(あれw)が、前王に一番近いプロテスタントの血縁者だった
これ以降、イギリス君主はジョージ1世の血をひいている(じゃあ、ドイツ人じゃん
1783 「アメリカ独立戦争」で敗北。北アメリカの領土をほぼ失う
1801 「グレートブリテン」(イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランド)で連合王国となる
1815 イギリス+連合軍が「ワーテルローの戦い」でナポレオンのヨーロッパ征服の野望を止める
1854~1856 「クリミア戦争」(イギリス&同盟軍vsロシア)でフローレンス・ナイチンゲールが活躍し、
「ランプの貴婦人」と呼ばれ、その後看護学校を設立、近代看護学の創始者となる。
学習漫画 世界の伝記3『ナイチンゲール』(集英社)
1873 ヴィクトリア1世が女王に就く~1901年死まで
「大英帝国」は、カナダ全土、インド、アフリカ、カリブ海、オーストラリア、ニュージーランドを統治した。
当時の最先端の工業を可能にしたのは、技術の進歩、十分な原料、安い労働力
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『ヴィクトリア女王 世紀の愛』(2009)
『フロム・ヘル(上下巻)』 アラン・ムーア著(序)
『フロム・ヘル 上』アラン・ムーア著
『フロム・ヘル 下』アラン・ムーア著
『フロム・ヘル』 アラン・ムーア著(付録メモ)
『フロム・ヘル』 アラン・ムーア著(カモメ捕りのダンスのメモ)
1914 第一次世界大戦
1921 アイルランドが自由国として独立。北アイルランドはとどまる
1939 第二次世界大戦はじまる~1945
イギリスには「大英帝国」を支える力がなく、ほとんどの植民地が独立。
1953 女王エリザベス2世が即位
1960年代 「北アイルランド紛争」勃発~1990年代にようやく平和が戻った
プロテスタント(イギリスと統合を主張)vsカトリック教徒(アイルランドの統合を主張)
1965 「人種関係法」で公共の場での人種差別が禁止される
1972 「血の日曜日」イギリス軍が北アイルランドのデモ隊の13人を殺害
1979 マーガレット・サッチャー(保守党)が女性初の首相に就任
1982 イギリスvsアルゼンチンがフォークランド諸島をめぐって戦争
イギリス領となったことでサッチャー人気は急上昇したが、なぜこんな離れた植民地にこだわるのか疑問に思うイギリス人も多い
現在、島に住む2300人はその時のイギリスの子孫
1994 「ユーロトンネル」でフランスとつながる
1997 トニー・ブレア(労働党)が首相に就任
2001 9.11をうけ多国籍軍に加わり、アフガニスタン侵攻
2003 アメリカ軍とともにイラクに侵攻
*
さて、こうなったら、次は「フランス」でしょ、と探したら・・・ない!?
なぜ???
レイチェル・ビーン/著
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『ナショナルジオグラフィック世界の国 アメリカ』(ほるぷ出版)
いかにも困っている国より、その元凶を作っている「経済大国」のほうをよく知ったほうがいいんじゃないかと思い始めた。
世界を動かしている1%の富裕層がいそうな国(私のイメージ)の内情を知ろう。
こないだ読んだアメリカ人は、イギリスから来た開拓民だから、今度はイギリスを借りてみた。
すると、日本と同じく資源の少ない、小さな島国ながら、
イギリス人ですら、アングロサクソンなど、様々な民族の血が混ざっていると分かった。
港が発達して、貿易で大きく発展した国だったんだな。
【内容抜粋メモ】
はじめに:マイケル・ダンフォード(サセックス大学)
イギリスが世界で果たす3つの役割
1.1993年以来、EUのメンバー
2.そのほとんどが大英帝国の植民地だった53カ国のイギリス連邦を率いている。
3.もっとも親密な同盟国の1つ、アメリカと特別な関係にある。
1500~1600年代、大西洋の海洋貿易で主導的に地位にあった。
19C、農業が衰退、20C、工業が衰退、今は「サービス産業」が経済の中心。
「福祉国家」
全国民が無料で医療、教育、社会保障を受けているが、貧富の差は広がっている。
自然
景観は、森の開拓、沼地・湿原の干拓、都市の住宅地によりつくられた。
人種
イギリス人とは、侵略者と移民によってつくられた国民。
ケルト人、ローマ人、アングロサクソン人、バイキング、ノルマン人ら。
かれらの影響で多種多様な文化・社会を築いている。
*****************概略
[国旗]
「ユニオン・フラッグ」「ユニオン・ジャック」よ呼ばれ、
イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの国旗が組み合わせられている。
[国歌]
♪女王陛下万歳 は法律で制定されていないが国歌として広く認知されている。
国王が男性になると、曲名は♪国王陛下万歳 になる。
[日本との時差]
9時間。
サマータイムを実施していて、3月の最終日曜日の午前1時に時計を1時間進め、
10月の最終日曜日の午前1時に時計を1時間遅らせる。
[通貨]
EUに加盟しているがユーロでなく「スターリングポンド」を使う。
4種類の紙幣の裏には現在の女王エリザベス2世が描かれている。
[気候]
ロンドンの冬の寒さは東京とほぼ同じ。
7、8月の平均気温は13度台。熱帯並みの暑さはない。
[祝日]
公的な休日は、新年、クリスマス、イースター。
「バンク・ホリデー(銀行の休日)」が月曜日にある。
好きな休暇の過ごし方は、海辺に行くこと
[公用語]
英語(ウェールズ語、ゲール語使用地域あり
[人口密度]
人口6000万人のうち8割が都市部に住む。
首都ロンドンは、イギリスでもっとも人口密度が高い。
イギリス人の9/10人はイングランドに住む。
スコットランドで人口密度が高いのはグラスゴー(3人に1人
[宗教]
とくにこれと書いていなかったけど、ウィキによると、
“2011年、キリスト教徒74.7%、イスラム教徒2.3%、ヒンドゥー教徒が1.1%。
キリスト教の内訳は、英国国教会が62%、カトリックが13%、長老派が6%、メソジストが3%程度と推定されている”
ドルイド教:古代、ケルト人の宗教。
[産業]
経済水域の海底には油田、ガス田がある。
近代的都市の多くは、地下資源で発達。
20Cに工場は閉鎖され、石炭・鉄鉱石は底をついた。
1980年、国営企業が民間に売却され、数百万人が職を失った。その後、再生し、今は経済大国の1つ。
国土の7割が農地だが、農業従事者は人口の2%。
もっとも急速に成長しているのは「サービス産業」。銀行、レジャー、情報技術、通信、運輸など。
コツォルド丘陵は「羊毛生産」の中心地で、これにより豊かな国になった。
ランカシャー州の運河にある元紡績工場。
バーンリーは1800年初頭、産業革命の中心地の1つで、綿織物はリバプールから海外に輸出された。
ロンドンは、世界一通航量の多い港として発展した。
[経済]
最大の柱は観光。世界で観光客数ベスト10に入る。
毎年約3000万人訪れる外国人のうち、350万人はアメリカ人。
ロンドンの金融街は「シティ」と呼ばれる、世界経済の中心地。
シティの証券会社では、顧客と顔を合わせて株式売買することはもうない。
コンピュータシステムを使って取り引きしている。
[観光]
「ロンドン・アイ」は世界最大の観覧車として人気スポット。
タータンチェックのキルトを身につけたスコットランドのバグパイプの楽隊
(この格好のイメージが強いけど、スコットランドなんだ
「ブラックプール」は北部で一番人気の行楽地。パリのエッフェル塔の縮小版がある。
「ストーンヘンジ」
紀元前3000~1100年頃に少しずつ造られた。
もっとも大きな石は50tもあり、30km離れた所から運ばれた。
「ハドリアヌスの長城」
スコットランドを征服できないと分かったローマ人が壁を造った。
「タワー・ブリッジ」
「ジャイアンツ・コーズウェイ」
「ネス湖」
水深240m。ネッシーで有名だが、十分な食べ物がないので、大型動物がいる可能性はないと生物学者たちは考えている(どうかなあ?w
「アフィントンの白馬」
3000年前につくられた。イングランドの南部と東部は白亜の上にあるので、表層土を除去して絵を描いた。114mもある。
[貿易]
イギリスは500年以上、世界有数の「貿易国」として活躍した。
19C、工業力で世界一の強国となった。
現在、富の半分は、外国との貿易でもたらされている。相手の半分以上は他ヨーロッパ諸国。
主な輸出品は、石油、ハイテク機械、金融サービス。
輸出相手 1位アメリカ 14.6%、輸入相手 1位ドイツ 14%
[政治]
立憲君主制。
スコットランドは王国、ウェールズは公国(皇太子が統治)、北アイルランドは行政区。
新しい法律にはすべて女王の承認が必要だが、1707年移行、署名を拒否されたことはない。
毎年秋、女王エリザベス2世により国会の新会期が開会される。
女王のスピーチ原稿は政府が作り、女王はそれを読み上げるのみ。
君主は下院に入ることは許されない。
初期の王は、宗教的指導者、貴族(王・女王から与えられた称号をもつ人)からなる会の助言を受けて統治していた。
王室の会が強い力をもち、軍事的指導者の騎士も加わった。
1300年代から
上院:貴族院(かつては世襲制。1999年に廃止。任命制となる
下院:庶民院(もとは騎士
国王と議会の間には何度も権力争いが起きた
国政選挙はほぼ5年ごと。
2つの大会議場には、全員が座れるだけの席がなく、激しい議論をし、立ったまま、外から参加する人もいる。
(新しく建てればいいじゃんw
主な政党は
「保守党」中産階級との結びつきが強い
「労働党」労働者階級、労働組合と近い関係
「自由民主党」上の両方から支持を集めようとしている
1983年、スクリーミング・ロード・サッチという歌手が作った「モンスター・レイビング・ルーニー党」は、
ネコが党首になったことがあるが、いつも敗北している(こういうところ好きだな/爆
ほとんどの市長は実質的権限を持たず、儀式を行うだけの存在。
ウェールズ、スコットランド、北アイルランドが独自の地方議会をもつが、権限は限られる。
地方政治の制度は複雑で、組織がよく変わる。
[文化]
シェイクスピア、ディケンズなど偉大な作家を生んだ。近年ではハリポタのローリング。
画家ではジョゼフ・ターナーら。もちろんビートルズも(“ブリットポップ”て初耳
ウェールズでは、毎年、詩人、物語りの語り手、ミュージシャンらが競う吟唱詩人大会「アイステズヴォッド」が開催される。
[祭り]
8月、イギリス最大の祭り「ノッティング・ヒル・カーニバル」が開催される。
1950年代、都市部に働きに来たカリブ海の人々が、祖国を祝うものとして始めた。
1970年代、アフリカ、インド人も住みはじめ、彼らの影響もみられる。
11月5日の「ガイ・フォークス・ナイト」は国民的イベントの1つ。
[スポーツ]
サッカー、ラグビー、クリケット、ボクシング、ゴルフ、などはイギリスが発祥地。
ラグビーはウェールズの国技。
クリケットは、ルールが複雑で公式ルールブックで20ページもある。
[食べ物]
イギリス人の好物はカレー!?
[教育]
子どもは5歳~16歳まで学校に通う。
ウェールズの子どもは、16歳まで学校でウェールズ語を学ぶよう定められている。
「ボーイスカウト」は1900年代にはじまり、世界中に広まった。
*****************自然
島国
イギリスは、いくつもの島からなる島国。フランスまで、一番近いところでわずか30kmしかない。
アウター・ヘブリディーズ諸島は、スコットランドの120の島々。
人口が多いため、ほんとうの意味での自然が残る場所は非常に少ない。
コーンウォール州の家畜用の牧草地を分ける石垣は、何世紀も前からある
山地は寒くて降水量が多く、土地は痩せているため、そこで飼えるのは丈夫な品種のヒツジやウシだけ。
海岸線
長い海岸線は、つねに浸水・侵食の脅威にさらされている。
東海岸のところによっては年に90cmも侵食されている。
人々は庭が海に沈むのを何年も見つめ、家が沈む前に引っ越す
高潮で洪水が起こるのを防ぐため、1984年、世界最大の可動式の防潮水門がテムズ川に設置された。
森林
約5000年前、中央部は深い森だったが、今は国土の約10%。
「オーク」はイングランドの国木
とても頑丈なので、イギリスの歴史的建造物の多くに使われている。ドルイド教の祭司にとって神聖な木だった。
「エデン・プロジェクトのドーム」@コーンウォール州(ちょっと未来的
*****************野生生物
イギリス人は動物が大好き。1400万匹のネコとイヌがいる。
19Cには、農薬、産業廃棄物による環境汚染が大問題になった。
「ライチョウ」は狩猟の対象とされる。毎年8月12日に解禁となり、ハンターは「素晴らしき12日」と呼ぶ。
伝統的な「ツイード」の服は、背景に溶け込むカムフラージュの役目を果たす(そんな悲しい歴史があるの?
「キツネ」
何世紀にもわたり、イギリスの野生生物は新しい生息環境に適応してきた。
森、湿地が減り、畑、生垣、庭に代わり、モグラ、ネズミは農地に棲み、キツネも棲みかを移した。
キツネは、ゴミを漁り、街を歩いているのも珍しくない。
「ウサギ」
ローマ人が食用として育て、逃げ出して野生化した。
「ハト」
かつて食用に飼育されていたのが野生化した。
「アカシカ」イギリス最大の野生動物。
「カラス」
ロンドン塔からカラスが消えると、王国が崩壊するという言い伝えから、羽の一部を切り、遠くへ飛ばないようにしている。
*****************人種
ローマン・ブリテン時代の地図はなかなか面白いなあ
イギリス人ですら、イギリスにいくつの国があるか混乱する。
最初のイギリス人は、約1万年前に来た「ピクト人」(ピクトさん?
その後は「ケルト人」「ローマ人」が侵略。
ローマ人は、都市、砦、道路網を築き、今も残っている。
ローマの支配下で、イギリス人は豊かになり、公衆浴場、下水設備などができた。
「ピクトランド」にはピクト人、アイルランドにはスコット人が住んでいた。
スコット人は「ピクトランド」を侵略して「スコットランド」と名づけた(頭が混乱してきた・・・
今のイギリス人の祖先の多くは「スカンジナビア」から来た。
「スカンジナビア」
ノルウェー、スウェーデン、デンマーク(アイスランド、フィンランドを含むこともある
イギリス人の大半は、もともとイギリスに住んでいた、イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランド人。
彼らは、昔やってきて定住した「バイキング」、ノルマン人、アングロサクソン人の子孫。
(なんだか本書でも混乱しているような・・・?
「バイキング」
シェトランド諸島のスカンジナビア半島から来た海賊
相次ぐ侵略者たちが初期のイギリスをつくり、強大な1つの国をつくった。
世界でもっとも広く使われている言葉が「英語」なのは、どれほど勢力が大きかったかを示す。
「アップ・ヘリー・アー」という火祭りでは、バイキングの衣装をつける。
彼らと異なるルーツの人口は約8%、うち4%は、バングラデシュ、パキスタン、インドなどの移民で、
約2%はカリブ海から、第二次世界大戦、労働力不足を補うために来たアフリカ系。
*****************歴史
紀元前約2300 北ヨーロッパからビーカー人が来て定住する(誰だろう・・・?
800 ケルト人がヨーロッパから来る
55 カエサル率いるローマ軍が侵攻し、短期間に終わる
紀元後約410 イギリスはいくつもの小さな王国に分裂
440年代 ヨーロッパから来たゲルマン民族(アングル人、ジュート人、サクソン人)が定住
アングル人は国名を「イングランド」とし、「アングロサクソン人」と呼ばれるようになる。
ヨーロッパから来た宣教師は、アングロサクソン人をキリスト教徒にした。
900年代 バイキングがイギリス海岸を襲った
1066 ノルマン人が侵略。「ヘースティングズの戦い」でウィリアムがイングランドの王となる。
ノルマン人の話すフランス語+アングロサクソン語が混ざって「英語」の元になった(だから似てるのか
1171 ノルマン人がアイルランドを征服
1289 イングランドがウェールズを征服
1348 ネズミが原因の疫病「黒死病」で人口の1/3が死ぬ
1453 「百年戦争」でフランスに敗北
1485 30年間続いた「バラ戦争」が終わり、チューダー朝がはじまる
1533 ヘンリー8世が離婚を認めないローマン・カトリック教会を離脱し、プロテスタントの英国国教会を設立
カトリック教徒のメアリ1世が初の女王となる。プロテスタントを処刑したことから「血塗られたメアリ」と呼ばれる
「ヘンリー8世」
生涯に6回結婚し、うち2人を処刑したことで有名。
世継ぎの男児が産まれなかったこともあるが、教会の資産を奪い、自身の権力・富の増大のため
最初の妻と「結婚の無効」(離婚とは違い、結婚が有効でなかったと明らかにすること→同じじゃん!
その後、アン・ブリーンと結婚し産まれたのがのちのエリザベス1世
この辺は映画で観た。
『1000日のアン』
『ブーリン家の姉妹』(2008)
『エリザベス』(1998)
『エリザベス ゴールデンエイジ』
その後、宗教問題が激化した。
プロテスタントで有力なのは「清教徒」で、信仰の自由を求めてイングランドを離れる者もいた。
(1620年、メイフラワー号に乗りアメリカに移住したのが「ピルグリム・ファーザーズ」か!
1588 女王エリザベス1世の海軍がスペインの無敵艦隊を撃破 アメリカ大陸と貿易をはじめる
エリザベス1世の死後、子どもがいなかったため、スコットランド王のジェームズ6世が王位を継ぎ、
イングランド+スコットランドが初めて統一。
1660 王制復活。チャールズ2世が王位に就く
1714 王位はドイツ貴族ジョージ1世に継がれた。彼は英語が話せなかった(あれw)が、前王に一番近いプロテスタントの血縁者だった
これ以降、イギリス君主はジョージ1世の血をひいている(じゃあ、ドイツ人じゃん
1783 「アメリカ独立戦争」で敗北。北アメリカの領土をほぼ失う
1801 「グレートブリテン」(イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランド)で連合王国となる
1815 イギリス+連合軍が「ワーテルローの戦い」でナポレオンのヨーロッパ征服の野望を止める
1854~1856 「クリミア戦争」(イギリス&同盟軍vsロシア)でフローレンス・ナイチンゲールが活躍し、
「ランプの貴婦人」と呼ばれ、その後看護学校を設立、近代看護学の創始者となる。
学習漫画 世界の伝記3『ナイチンゲール』(集英社)
1873 ヴィクトリア1世が女王に就く~1901年死まで
「大英帝国」は、カナダ全土、インド、アフリカ、カリブ海、オーストラリア、ニュージーランドを統治した。
当時の最先端の工業を可能にしたのは、技術の進歩、十分な原料、安い労働力
【ブログ内関連記事】
『ヴィクトリア女王 世紀の愛』(2009)
『フロム・ヘル(上下巻)』 アラン・ムーア著(序)
『フロム・ヘル 上』アラン・ムーア著
『フロム・ヘル 下』アラン・ムーア著
『フロム・ヘル』 アラン・ムーア著(付録メモ)
『フロム・ヘル』 アラン・ムーア著(カモメ捕りのダンスのメモ)
1914 第一次世界大戦
1921 アイルランドが自由国として独立。北アイルランドはとどまる
1939 第二次世界大戦はじまる~1945
イギリスには「大英帝国」を支える力がなく、ほとんどの植民地が独立。
1953 女王エリザベス2世が即位
1960年代 「北アイルランド紛争」勃発~1990年代にようやく平和が戻った
プロテスタント(イギリスと統合を主張)vsカトリック教徒(アイルランドの統合を主張)
1965 「人種関係法」で公共の場での人種差別が禁止される
1972 「血の日曜日」イギリス軍が北アイルランドのデモ隊の13人を殺害
1979 マーガレット・サッチャー(保守党)が女性初の首相に就任
1982 イギリスvsアルゼンチンがフォークランド諸島をめぐって戦争
イギリス領となったことでサッチャー人気は急上昇したが、なぜこんな離れた植民地にこだわるのか疑問に思うイギリス人も多い
現在、島に住む2300人はその時のイギリスの子孫
1994 「ユーロトンネル」でフランスとつながる
1997 トニー・ブレア(労働党)が首相に就任
2001 9.11をうけ多国籍軍に加わり、アフガニスタン侵攻
2003 アメリカ軍とともにイラクに侵攻
*
さて、こうなったら、次は「フランス」でしょ、と探したら・・・ない!?
なぜ???