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『無限抱擁 チェルノブイリ・いのちの大地』(リトル・モア)

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『無限抱擁 チェルノブイリ・いのちの大地』(リトル・モア)
本橋成一/写真

【ブログ内関連記事】
『アラヤシキの住人たち』(農山漁村文化協会)

ついに、ポレポレ坐でやっていた写真展の写真集の1994年初版を借りられたv

写真集「無限抱擁」新版が刊行!

本橋さんが本書を出すきっかけ話も載っている。
いったん避難したものの、放射能汚染度の高い地に帰ってきた人々の普通の生活が、限りなく豊かに見えるとともに、
病院で笑顔を見せていた子どもたちが、次々と白血病で亡くなっていく様子には、胸が詰まった。

このチェルノブイリと同じ石棺が、今、日本にもあるという現実。
被災地で必死に生きようとする人々と、原発に頼る人々もいるという矛盾。

日本は、唯一の原子爆弾の被爆国であるとともに、原子力発電事故の被害者でもある。
そんな国が世界中にあるだろうか。

地震国でもありながら、大きな揺れがある度に「近くの原発は無事と確認されました」というニュースが流れる国。

ヒトは大きな頭脳を持ちながら、同じ間違いを幾度も繰り返す。
そして生物の頂点、自然を支配できると信じているんだ。



【内容抜粋メモ】

“天は、地に生きるものの喜びも、悲しみも、人類の愚さえも、未だ抱擁し続ける。”




1986年4月26日未明、爆発事故は起こった。
高濃度の放射能汚染と、消化剤、中和剤により、草木は枯れ果てた。


「石棺」
コンクリートで周囲を固められ、石棺と呼ばれるようになった4号炉。


[チェチェルスク保健局長]
「ガンマ線を測るように」と命令された。事故のことを知ったのは、事故処理に行って戻ってきた人の服を調べた時。
驚いたことに、住民に測定器をあてたら、同じ数値が出た。


「ジャガイモ」
ジャガイモはロシア人の主食だが、地中で育つジャガイモは、とくに汚染度が高い。




「わがままな人たち」
いったん強制移住させられても、新しい生活に馴染めず、
故郷に帰る老人たちは「サマショール」(わがままな人たち)と呼ばれている。


[チェルノブイリ30km圏内から移住したアスモロフスキー(38歳)]
原発があるのは知っていた。「爆発したらしい」と噂を聞いた。
だけど、ロシアじゃ毎日何かが爆発してるからなぁ。


「馬」
仔馬が乳を飲む間、待つ農夫と娘。人々は決して急がない。馬車の速さで1日が過ぎる。




「サウナ」
サウナ風呂に人を呼ぶのは最大のもてなし。


「食事は自給自足」
なんと豊かなことか。


「皮ジャン」
久しぶりに晴れた朝、中庭いっぱいに衣類を干した。
保健局が皮のジャンパーに測定器をあてると針がピーンとはね上がった。雨に濡れた服だった。


「ミルクに凝縮」
汚染された牧草を食べた牛のミルクには、凝縮された放射能が含まれている。




「核マーク」
村の入り口には立ち入り禁止の標識がある。




「子ども」
冬が近づく頃、母親はアル中で病院に収容され、末の子ども2人は亡くなり、残りの姉弟はバラバラになった。




「樹」
ニコライさんは、自分が50年前に植えたプラタナスの並木を見にときどき帰る。




「遺影」
ターシャさんは、10歳の一人息子を亡くした。病名は「貧血症」と言われた。
彼女は事故による「白血病」だと信じている。



[ターニャ(30歳)]
スラーバは7日前に10歳で死んだ。
事故以後、食べ物には気をつけていたつもりよ。
だけど、スラーバが川で泳いだり、森で遊ぶのをやめさせることはできなかった。


4歳のコンスタンチンは白血病で入院中。



「母は自分を責める」
「あの時、なぜ外で遊ばせたのだろう」「なぜ汚染された食べ物を食べさせたのだろう」と。




「川は20倍」
測定器で測ったら、通常の20倍もの放射能値が出て、僕は慌てて水辺から離れた。
(でも、自然は、なぜこんなにも美しくヒトを惹きつけるものか!




[クリスチナ(66歳)@強制移住区域]
そりゃ、不安さ。
いつでも、喉や胸のあたりのことが気になってしょうがないよ。
でも、悲しんでばかりいられないじゃないか。
どうせここで生きるなら、楽しく生きなきゃソンだと思わないかい?


「バヤーン(アコーディオン)」
「歌を聞かせて」と言ったら、たちまちのど自慢が集まってきて、バヤーンに合わせてダンスまではじまった。


「地図から消えた町」
この冬、セブローヴィッチ村は、地図上からも永遠に消えた。




「ペチカ」
薪の灰から出る放射能はペチカの中に蓄積される。




「朽ちる」
人の住まない家は、たちまち朽ちていく。




「釣ったら食べるのがルール」
放射能汚染のために釣りは禁じられているが、彼らは釣ったものはすべて食べる。
それが自然のルールだと思っている。


「白衣」
原発に入る時に着替えさせられる白衣と作業靴。
汚れた白衣と、ダブダブの靴では、何の効果もなさそうなのに。




[ミハイロブナ(43歳)@強制移住区域]
この村に残されたのは、みんな自分の農園で働く年金生活者。
子どもたちと一緒に住みたいとは思わないけど、
生活の補償もないし、なにより冬は寂しくてね。



[マリア(65歳)@強制移住区域]
この辺りの禁止区域は、大麦を作ったら3000ルーブル、魚を釣ったら9000ルーブルの罰金なのさ。
時々警官がパトロールに来て、早く出てけってことなんだろうけど、いやになっちまうよ。
最近、水道も止められた。
今度は、放射能処理場の建設計画が持ち上がって、道路はもうできてる。




【大地に生きる「智慧」~高橋卓志(JCF/日本チェルノブイリ連帯基金事務局長)内容抜粋メモ】

「JCF」

ヒトは、大いなるものとの協調をはかるため「智慧」をもった。
しかし同時に、やっかいな「知識」も持ち合わせてしまった。

知識は失敗を繰り返す。「人間の豊かさを実現するため」という名目のもとに。

1990年秋、ロシアの友人から、「原発事故の後遺症で苦しむチェルノブイリの子どもたちを救ってほしい」と緊急の要請が入った。
僕は早速、JCFを設立し、救援活動を開始した。

汚染されたロシアの大地を歩き、強制移住させられた「埋葬の村」を知った。
しかし、「汚染大地」と言われるには、あまりにも美しく雄大だった。

本橋成一は、その現実を見つめながらも、人々と和していきながら、写真を撮り続けてきた。
そこに、いのちの破滅へのカウントダウンを阻止することができるかもしれない。
「智慧」の存在を黙示する力をも感じるのだ。



【あとがき 本橋成一~内容抜粋メモ】
事故以来、悲惨なニュースを嫌というほど見せられ、聞かされた。
今さら僕に何ができるかと思っていた。

JCFの高橋さんらに「写真なんか撮らなくていいから、とにかく見てきてよ」と言われ、
重い腰を上げて行ったのは、5年経った1991年。

案の定、白血病、甲状腺機能障害で病む子たちに出会い、写真など撮れるものではないと思った。

石棺から170km、事故で放射性物質を含んだ灰が舞い上がり、
風雨に運ばれて降りそそいだ汚染地域。

しかし、僕の目に映ったのは、広い大地の上に、自然とともに生きている人々、暮らしの素晴らしさだった

僕はこの3年半に7回、チェルノブイリに通った。
成田発モスクワ行きの飛行機は、5時間ほどでシベリアの大地を見ることができる。

ここには、数えきれないほどの「いのち」がへばりついている。

そう思うと、進歩や自分たちの豊かさだけを求め続けている人間たちは、
やはりとても傲慢なのだ。



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