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『女ごころ』(1959)~一周忌追悼企画 伝説の女優・原節子@神保町シアター(2016.9.24)

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『女ごころ』(1959)

原作:由起しげ子「試験別居」
監督:丸山誠治
出演:原節子、森雅之、団令子、丹阿弥谷津子、南美江、佐原健二 ほか

一周忌追悼企画 伝説の女優・原節子@神保町シアター
2016年8月27日(土)~9月30日(金)

【ブログ内関連記事】
topics~原節子さん死去 ほか
『永遠のマドンナ 原節子のすべて』(出版協同社)


原節子×森雅之の共演がまた劇場で観れるってことで行ってきた。
行きは曇り、帰りは雨

神保町シアターは、とてもいい劇場で、いつも良い企画を立てている
今回の観客層は、9割方が高齢者の男女
1本観終えたら、またロビーで少し待って、次も観る、そんな贅沢な観かたをしている方もけっこういたようす

「私は地方の出だから、当時はなかなか劇場まで観に行くなんて出来なくてw」
などと、知らない人同士でも話が弾んで、観た後も
「またお会い出来たらいいですね」なんて声まで聞かれて、温かい気持ちになった

90席ほどある中で70番じゃ、好きな席は選べないな、と諦めていたけれども、
運よく、奥の後方の端っこが空いていてよかった/感謝

始まる前のアナウンスや、会場に貼ってあるチラシで、
「冒頭の10分ほど、経年による劣化のため、映像がボヤケ、音が飛んでいるのをご了承ください」
とあったとおり、出演者らの名前の後にすぐ始まる、八百屋で原が野菜を買うシーンなど
かなりピンボケしていて、せっかくの曲も歪んでいて可笑しかった

貴重なフィルムが劣化しないようデジタル化したりして保存、管理することも重要だな


▼あらすじ(ネタバレ注意



伊曽子は、女子大の家政科を出て、結婚後も栄養士として大正電気に勤めていたが、
小説家の小城朝吉と結婚して、十年になり、すっかり主婦、長男研一の母として家を守っている

ある日、隣りの奥さんが「空き巣よ!」と言ったため、家中の鍵を閉め、
普段は入らない約束の夫の書斎に入ると、見知らぬ若い女性と一緒の写真が3枚、
彼女からプレゼントされた灰皿を見つけて、青天の霹靂に呆然となる
(あんなに分かりやすいところに写真を挟むかなあ?w

ほどなく、夫の本を出している出版社に勤める三沢てるえが原稿料を持って家に訪ねてくる
手紙に書いてある名前と同じなため、彼女が浮気相手だとすぐ分かる

様子のおかしいイソコに訪ねると

「私にこの書斎に入らせなかったのは、こんな写真があるからですの?」

「自分にウソはつけない 私もこんな気持ちになるとは思ってなかった
 しかし、正直、君にはもう友情しか感じられぬのだ」

イソコはショックを受け、翌朝早く、息子を連れて家を出る
以前から誘われていた栄養士の仕事を引き受け、
大正電気の炊事婦・ふじ子に事情はふせたまま世話になる

朝吉はうろたえるが、テルエの奔放さに救われ、ついついズルズルと関係を続けてしまう
イソコが実家には来ていないことから、大正電気に電話をかける朝吉

イソコ「法事には出てください 父が心配するので」

必ず行くと約束はしたものの、気が重い朝吉は、結局行かずにブラブラとしてしまう。

イソコは、昔からの友人・月子と再会。
月子は、夫を早く亡くし、生きるために美容院を始め、繁盛しているという
夫の弟・五郎は、見合いをするんだと紹介される

月子「私たちは恋愛結婚したけど、今のコたちのほうが案外ちゃっかりしてるかもしれないわよ
   恋愛はしても、結婚となると見合いするんだからw」


月子とイソコらは海に遊びに行くと、「実は夫には多大な借金があった上に、3人も女がいたの」と告白されて驚く
「今だったらすぐにでも家を出て行っただろうけど、当時はそんなこと出来なかったから」

イソコも夫が浮気をしていることを明かすと、

月子「なんだかんだゆっても、女が一人で生きていくのは大変よ 悪いことは言わないから戻りなさい」

海風に当たりすぎて研一が高熱を出す
医者は大したことはないと言うが、月子はこれをきっかけにイソコらが上手くいくよう
「息子が肺炎で危ないから会いに来るようゆってちょうだい」とテルエにことづてする


テルエは、朝吉が大学で週に1回講師をしている若い学生らとすっかり意気投合し、
遊んでいるうちにことづてのことをすっかり忘れてしまう
(みんなでキャンプファイアを囲んで、輪になって踊る時代なのね 元気だなあ!

駅で待っても夫が来ないため、子どもが病気になっても来ない薄情な男だと誤解し、離婚する決心をするイソコ
帰ると、月子と五郎が男女関係にあることを垣間見てしまいショックを受ける

出版社をあっさり辞めて、バーでバイトをしているテルエを訪ねるイソコ

「私、心をすっかり決めました 病気の子どもにも会いに来ない夫とは離婚します」
「それは私が言い忘れたからよ 私は結婚する気はありません」
「じゃあ、あの人は・・・」(この時の夫を不憫に思う表情がなんとも言えない


テルエは、田舎から男友だちを呼び、朝吉に紹介する
「私、これきりにするわ 窮屈になったの」

テレビに息子が映っているのを見て、慌ててイソコに電話をし「会ってもらえないだろうか?」
(ケンちゃんばっかりにフォーカスされてるのは不自然じゃない?

銀座のレストランで座る親子3人 クリームなんとかって美味しそうなスイーツを頼んでいたな

「お父さんのお勉強、いつ終わるの? 僕たち、いつ帰っていいの?」
「それはお母さんに聞いてみないとな・・・」
「それはお父さんに伺わないと・・・」
「いつでも帰っておいで!






この時代の映画の大きな温もりに包まれて、劇場にいた全員が余韻に浸った
出口で高齢女性がスタッフさんに「良かったわあ!」と声をかけたり、
お友だち同士で来た方々も「良かったわねえ!」と口々にゆっていたり そんな映画

森さんの枯れっぷりも、原さんに負けず劣らず艶っぽくて、一瞬も目が離せない
キスシーンが何回もアップであったし/驚

原さんの落ち着きぶりと対照的な、団令子さんの溌剌とした明るさ、小悪魔的な笑顔、
自由奔放な行動、弾む声、背中が大きく開いた黒いワンピースも挑発的で、好演だった

出版社の辻本「彼女も馬鹿な女じゃない だから小城朝吉も惚れたんだ」

「結婚はしないの」と強がってみせたのは、奥さんと子どもの幸せを壊すことが彼女の目的ではなく
純粋に、どこか寂しげな朝吉を愛してしまったからだ
そりゃ、近くにこんなステキな森さんがいたら好きになっちゃうよねえ!

「私、奥さんに殺されてもいいわ!」なんて駅で叫ぶ破天荒ぶりだけど、根が正直なんだな
本当は、奥さんに憎まれ口でも言って欲しかったのかもしれないけど、
「別れるから結婚してあげて」なんて言われたら、身を引かざるを得ないと判断したんだろう

「奥さま、ズルイわ 私のバイト先まで荒らしに来るんだもの
 私、なんだか分からないけど泣いちゃったわ
 デパートにある水色のセーターがステキで買っちゃった
 きっと涙で水色がステキに見えたのね」



イソコは大卒で、有能な栄養士で働くつてがあったから別居も叶ったけれども、
当時のシングルマザーは、今以上に厳しく、路頭に迷ってもおかしくない状況だったに違いない
周囲の風当たりも強いだろうに、今作では、隣りの奥さんも、友人も、父までがイソコの味方になってくれているのが救い

朝吉のセリフで、自分は引き揚げ者で苦労していたが、イソコと結婚することで
当時は贅沢な一軒家を郊外に建てて、好きな小説を書いて、大学講師をしている後ろめたさを語るシーンがある

世間では完璧なセレブ扱いのおしどり夫婦が、周囲にいろんなウソをついて、疲れきる様子も細かく描かれる
「私、誰かほかの女性といた夫と、これから一緒になんていられないわ」みたいなセリフもあったな

原作のタイトルは「試験別居」。こうしていったん離れて、頭を冷やすことも効果があるのかも




チケット売場の横には、原さん関連の写真集、伝記などが置いてあり、壁には一面に経歴が貼ってあった
プライベート写真には、レトリバーや小型犬との写真もある







以前、特集したらしい「芦川いづみ」映画をコンプリートした方々の名前が十数人貼ってあったり
この昭和の女優シリーズ企画はイイねv 小津さんら監督特集もイイけど

ちなみに、神保町シアターの反対側は、お笑いライヴなのかな?
若い女性客が多くて、グッズもいろいろ売っている
映画とお笑いライヴって面白い組み合わせ

久々、神保町を歩いた またゆっくり古書巡りをしたい



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