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『ルピナスさん 小さなおばあさんのお話』(ほるぷ出版)

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『ルピナスさん 小さなおばあさんのお話』(ほるぷ出版)
バーバラ・クーニー/作 掛川恭子/訳

「作家別」カテゴリーに追加しました。

私の好きな挿し絵画家ビネッテ・シュレーダーさんも『お友だちのほしかったルピナスさん』
ていうタイトルの本があるけど、感想メモを読むと、なんだか違うみたい

クーニーさんの絵は、クラシカルだけど、やっぱり彼女にしか描けない豊かな才能があふれている

こうして、おじいさんとおばあさんは、小さな子どもに夢を与えないといけないね


▼あらすじ(ネタバレ注意

<まえがき>

クーニーは、板に水彩絵の具で描き、色えんぴつでアクセントをつけるという独特な画法で
詩情あふれる物語世界を作りあげています。


“こども、船乗り、乙女の守護聖人 聖ニコラスに捧げる”


ルピナスさんは、海をみおろす丘の上にある小さな家に住んでいます
子どもの頃はアリスという名前で、おじいさんはずっと前に大きな船でアメリカに渡ってきたのです
(そうだ、アメリカ人もかつては移民だったんだ


おじいさんは、船首像を彫ったり、タバコ屋の看板のインディアンを作ったりしていました

(なぜタバコ屋の前にインディアン?


おじいさんは、夜、アリスに遠い国々のお話をしてくれました。アリスは

「大きくなったら、私も遠い国に行く
 そして、おばあさんになったら、海のそばの町に住むことにする」

「それはけっこうだがね、アリス、もう1つ、しなくてはならないことがあるぞ
 世の中を、もっと美しくするために、なにかしてもらいたいのだよ」

「いいわ」

なにをすればいのかは分かりませんが、アリスはおじいさんに約束しました





アリスはまず、海から遠く離れた町に住み、図書館で働きはじめました


(図書館にわんこがいてもいいなんてステキ!


ミス・アリス・ランフィアスは、公園の温室に行くのが好きで、南の島に行きました
1年中雪のとけない高い山にも登りました
ジャングルに分け入ったり、砂漠を横切ったりしました
ところが、ラクダからおりる拍子に背中を痛めてしまいました

「遠くの国々は、もう充分見たから、
 そろそろ、海のそばに暮らす場所を見つけましょう」



ミス・ランフィアスは、新しい家のポーチでおひさまを眺めて暮らしました



「しなくてはならないことが、もう1つある
 世の中をもっと美しくしなくてはならないわね
 今でもそれほど悪くはないけれど」


背中がまた悪くなり、ほとんど寝て過ごしていたアリス
寝ている部屋の窓からルピナスが見えて

「私のいちばん好きな花」


具合もよくなって、ある日、丘の向こう側までアリスの蒔いたルピナスの花が咲き乱れているのを見て
アリスはルピナスの種を買い、村のあちことに蒔いて歩きました
そんなアリスを見て、頭のおかしいおばあさん、という人もいました




翌年の春、村中がルピナスの花であふれました
アリスは、3つの約束のうち、一番難しい約束を果たしたのです!


大おばさんは、ルピナスさんと呼ばれるようになり、
ときどき、私の友だちが見にやって来ます

大おばさんは、遠い国々の話を聞かせてくれます




「大きくなったら、遠い国に行って、帰ってきたら、海のそばに住むわ」

「それはけっこうだね、アリス でも、もう1つ、しなくてはならないことがあるよ
 世の中を、もっと美しくするために、なにかしなくては」

「いいわ」

私は約束しました






<あとがき>

アリスの子ども時代は、心の奥まで温まりそうなピンクが主調
独立し、旅をしている時代は少しずつ青がまざり、
人生の後半は青の世界に変わり
子どもたちが遊びに来た時は、ピンク色になる

クーニーは、ルピナスと重ね合わせて、独立心にあふれたいち女性の人生を物語にしました
特別な人間の、特別な人生ではなく、生きることの意味を私たちに語りかけているのだと思います



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