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『おもいでのクリスマスツリー』(ほるぷ出版)

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『おもいでのクリスマスツリー』(ほるぷ出版)
グロリア・マックレンドン・ヒューストン/作 バーバラ・クーニー/絵 吉田新一/訳

「作家別」カテゴリーに追加しました。


毎年恒例のxmas本シリーズ

グロリア・マックレンドン・ヒューストン:
アメリカの児童文学作家
今作は、彼女が育ち、代々、家族が住んできたアパラチア山中での暮らしをもとに書かれました
この古くからの慣わしは、世界のクリスマスツリーをめぐるお話の中でも
もっとも知られているものの1つと言われています



▼あらすじ(ネタバレ注意

北米のアパラチア山脈の奥に「松ガ森」という小さな村があった
海の向こうでは、大きな戦争がおきているというのに、この谷間は、すべてが平和でした

ルーシーには、けっして忘れられない思い出がありました。
「松ガ森」の教会が、もうすこしでクリスマスツリーをたてそこなう、という年があったのです

そのお話を、私はルーシー自身から聞きました


ある年の春のはじめ
パパはルーシーに「教会のためのクリスマスツリーを選んでおこう」と言いました

村のしきたりで、村じゅうの人たちのために、
毎年交代できまった家が教会のためのクリスマスツリーをたてる
今年はルーシーの家がその当番


(なにげに壁に可哀相な生き物の革が・・・/涙

月桂樹や、ヒマラヤ杉などをたてた年もあったが
パパは「大胆な男しか登っていかないような山の、岩の上にあるバルサムモミをたてよう」と言い、
ルーシーを愛馬“まだら毛”に乗せてとりにいく
(そんなに危険なところに娘を連れて行くの?

村のきまりでは、ツリーをたてる家の子が、クリスマス劇の天使の役をする
ルーシーらはツリーにぴったりの木を見つけ、リボンを結んだ




夏になり、パパは兵士となって、海の向こうの戦場に行ってしまう

その年は、材木の切り出しが出来ず、
コーヒーや砂糖、新しい服のための布のお金はなかったが
ハッカ茶にハチミツを入れて飲み、服のほころびには花の刺繍をして隠した


一緒のベッドで寝ているため、ルーシーが毎晩するお祈りを聞くママ

「どうか、パパをクリスマスまでにおかえしください
 そして、サンタクロースのおじいさんが、
 きれいな服のお人形をもってきてくださいますように」


秋になり、パパから小包が届く ママには絹の靴下、ルーシーには青い繻子のリボン
手紙には「クリスマスには帰れるでしょう 今日、休戦の調印が結ばれました」と書かれていた

ルーシーは毎日ママに「パパ、帰ってきた?」と聞く

「今日はまだですよ。明日かもしれないわね
 それとも、トイートシィ列車で帰るかしら?」

2人で駅まで行くと、汽車からおりるのは、村のほかの人たちばかり




ルーシーは、学校でクリスマス劇の練習をして、家に帰ると
天使役のために、あたらしい服が必要だと言うが
ママは大きな袖のある服をつくる布がないとルーシーを抱き締める


その晩、牧師さんが来て、

「トムはまだ戦争から帰らないでしょう
 チャドさんが来年のためのクリスマスツリーを切ってもいいと言ってくれています」

「いいえ、トムは約束をきちんと守る人です」とママは譲りませんでした


その夜遅く、ママはルーシーを連れて、まだら毛に大きな引き橇をつなぎ
クリスマスツリーを取りに行く



「ママ、こわい」

ママは♪大空のもと 野外をゆけば 私が胸は躍る と歌い始めました

2人はやっと木を見つけて、斧とのこぎりで切り、そりに乗せた
帰り道では♪クリスマスの夜明けに 港へ船が3艘 やってきた と歌いながら山をおりた


ルーシーを寝かせたあと、ママは結婚衣装からリボンとレースをはずして
小さいドレスを仕立てました

次に絹のストッキングに、子ヒツジの毛をつめて、
黒い巻き毛と、両頬にえくぼをつけた人形をつくりました


黒にゃんこも可愛い


イヴになり、牧師さんが驚いて入って来る

「今朝、高い岩山に生えていた素晴らしいバルサムモミが、鐘楼の入り口にあったんですよ!」
「まさか! ほんとうですか! なんてふしぎな」

「それだけじゃない 谷間の人たちが、天使の歌う声を聴いたんですって
 村じゅう評判ですよ しかも、クリスマスの歌だったというんです」


教会では、村の奥さんたちがクリスマスツリーを飾りつけ、
クリスマス劇がはじまり、美しいドレスを着たルーシーは天使のように見えました
「見よ われは大きな喜び よき訪れを あなたたちに伝える」




劇が終わると、3人の王様とサンタクロースのおじいさんが通路を入ってきました
どの袋にも、やわらかいハッカの棒あめ、チョコレートドロップ、オレンジ、ハシバミの実が入っています

悪い行いをした子には、ヤナギの小枝か石炭のかけらを与え
ルーシーは1年間ずっといい子だったので、お菓子の袋をもらいました

いよいよクリスマスツリーに吊るしたプレゼントの名前を呼び上げ
どの子どもももらったが、ルーシーにはなく、涙がひとしずくツツーっと流れました

すると、王様の1人がツリーの上の天使のお人形を渡しました
「この小さな天使のお人形は、あなたにそっくりだね」

お人形のすべすべの頬にキスをすると、パパからママに送られてきた絹の靴下に、とても肌触りが似ていました


人々が教会を立ち去り始める頃、サンタクロースのそばに軍服の人が立っていました
「さあ、あなたにもう1つプレゼントがありますよ、ルーシー」



パパは、ルーシーと、ママと、小さな天使のお人形を同時にしっかりと抱き締めました

誰かが♪きよしこの夜 と歌い始めましたが、
パパと、ルーシーと、ママと、小さな天使のお人形は、ほとんどそれを聴いていませんでした
かれらはしばらくの間、ただじっと抱き合ったままでした


それ以来、今日まで60年間以上、毎年、この村の教会では
素晴らしいバルサムモミのクリスマスツリーが飾られ、
てっぺんには、小さな天使のお人形が置かれます





【訳者あとがき内容抜粋メモ】

クリスマスツリーの起源はドイツのようですが、アメリカでも1830頃から始めたと言います

アメリカでよく使われるのは、東部ではバルサムモミ、西部ではダグラスモミ、
NYのロックフェラーセンターに飾られる有名なツリーはノルウェーエゾマツ、
ホワイトハウスで大統領がイヴに点灯するツリーは構内に生えるエゾマツ

キングズキャニオン国立公園には、樹齢3500年以上という最古のアメリカ杉があり
その樹のもとで「全国民のクリスマスツリー祭」が祝われます


ルーシーのパパが戦地に行ったくだりから、これが第一次世界大戦の終わった1918年の話と分かります
一家の大黒柱が戦争に駆り出され、経済的、精神的にも大きな犠牲を払わされている家族の姿を淡々と描いています
最後にパパが無事帰還し、これこそ天の恵みでしょう

たとえ戦場でなくても、戦争が人々の心と生活をどんなに脅かすかを雄弁に語り
戦争のどんな不幸にもめげない人間の誇りを描いた点で、優れた戦争文学にもなっています

バーバラ・クーニーは、アパラチアを訪ねて、事実を正確に考証した上で
アクリル絵の具で絵を描いています



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