■『天才はつくられる』眉村卓/著(角川文庫)
眉村卓/著 カバー/木村光佑、本文イラスト/谷俊彦 解説:矢野徹(昭和55年初版 昭和59年18版)
※「作家別」カテゴリーに追加しました。
[カバー裏のあらすじ]
恐るべき天才少年少女のグループがあらわれた! 彼らはテレパシーを修得し、念力で自由に物を動かし、テストでも抜群の成績を修めている。
が、彼らは、何か巨大な悪の企みを抱いているらしい・・・。
ある日、ひょんなことから、ちょっぴり超能力を身につけた史郎にも、グループに入るように誘いがきた。
そして、断わった史郎に、彼らは命を取ると脅しをかけてきたのだ。
史郎は、友人の敬子とともに、天才グループと断固闘う決意を固めたが・・・。
スリルあふれる、学園SFサスペンスの傑作。「ぼくは呼ばない」を併録。
ウィキを参照して、順番通りに読もうかと思っていたけれども、読みたい順に読むことにした
今作は、以前、読み直して書いた感想メモがあったけれども、また読んだ
『天才はつくられる』 眉村卓/著(角川文庫)
やっぱり“学園もの”もいいな
私が最初に買って読んだのも、たぶんこの主人公と同じ年頃ではなかったか
“大人”になった今読んでもドキドキワクワクする 『ねらわれた学園』に似た雰囲気
▼あらすじ(ネタバレ注意
『天才はつくられる』
図書委員の松山史郎、ニューフェイスでテニス部と兼ねて来ている橋本敬子らは
新刊図書の整理に追われていた 担任は坂村先生
敬子「この本、注文台帳に載ってないんだけど」
『学習教程』と書かれた本には、超能力の基本概念、テレパシーの習得、
透視力への応用、念力の初歩・・・など不思議な内容がまるで教科書のように書かれている
帰り道、敬子は「あの本にあまり深入りしないほうがいいような気がする 勘だけど・・・」と言ったが
本のことが気になって勉強に身が入らない史郎は読み始める
「超能力者には適性がある 適性のない人間はいくら努力しても身につけることはできない
適性を見分けるにはESPカードを使う・・・」
馬鹿馬鹿しいとは思いながら、つい熱中してメモをとる史郎
そして、数日間、その訓練法に従って練習もしてみた
坂村先生が慌てて来て
「本屋さんが来てるんだ ひどく慌てていて、あの本は間違って持ち込まれたものだから、すぐに返してほしいんだ」
あの本の内容は本当だったのだ
当惑している史郎の耳に、敬子の思いがまるで声のように聞こえた
(ひどく顔色が悪いわ)
読心術だけでなく、念力で本を持ち上げたのを見た敬子は驚く
(この人は、私の考えを読んでいるんだわ)
本屋に本を返していると、(まぬけな本屋だ)という思念が入ってきた
(こんな失敗をもう一度やったら、みんなで殺してしまうほかはない)
その声は史郎にも呼びかけた
(君はいずれ消されるよ)
外を見ると、1人の背の高い少年が立っていたが、突然消えた
敬子に言われ、坂村先生に相談し、実際、本を動かして見せると蒼白になる
「君がこんな能力を持ったと世間に知れるだけでも、ものすごい騒ぎになるだろう」
(読心力があると分かれば、友人もいなくなる テストの成績も信じてもらえないだろう)
史郎の両親にも相談するが信じられないようだった
道に再び、あの少年が突然現れる 彼の思念は読めない
(僕は、相手の読心力から自分を守ることができる 中途半端な超能力者ではないのだ
今度だけは仲間に加えてもよかろうという申し合わせができた 我々のグループに入るか?)
目的も分からず、断る史郎の頬にすさまじい衝撃を感じた
再び、攻撃が始まると分かり、史郎も必死に反撃する
(僕はどうやら君を見くびっていたらしいよ 君は消すには惜しい人間だ ゆっくり考え直すことだよ)
そこに心配した敬子が駆けつけ、家に送られる
史郎は体力的にも精神的にも疲れきり、眠り続けた
その後、先生と両親とともに話し合っていると、母親の思念だけ読み取れないことが分かる
坂村
「潜在意識による制限というやつだ!
君は心の底の底で、お母さんの気持ちまで読みたくはないと思っているから読めないんだ!
テストの時も自動的にブレーキがかかるだろう つまり、自動ブレーキなんだ
自身の道徳観が自身の破滅を防いでくれるんだ」とホッとする
それはテストの時に証明された
そして、先生、敬子、クラスメートに対してもブレーキがかかるのを感じた
*
敬子が校舎裏に史郎を呼び出し、新聞の切り抜きを見せた
“試験ノイローゼか? 中学生の自殺相次ぐ”
それとともに“松山くんに、早く僕たちのグループに入るようすすめてください”という封書も入っていた
なんて卑怯な! と憤りつつ、敬子の(メンバーになってほしくはないけど、今度は私が・・・)という不安の思念が読めた
先生に相談すると、同じく封書が届いていたという
“あなたが手助けしようとしていることは、非常に危険なことです”
「事情を知っている僕たちはやっかいな存在だ 結局、いずれは消されるんじゃないか?
それなら分かってくれそうな人を選んで、事実を伝えよう」
史郎「仲間を増やして、対抗できるよう頑張ってみよう」
そういったものの、誰も本気にしてはくれなかった
いつしか、こんな苦労は無意味だと思い始めていた
*
敬子から「1年生のクラスで、全員の票を集めて図書委員が選ばれたんですって」
その新顔の女生徒・井戸崎玲子から(以前見た少年は地区グループのリーダー大須賀雄一さんよ)という思念が来た
そこに坂村がグラウンドで怪我をしたとしらせが入る
野球部のボールが急に曲がって、先生の頭に直撃したという
先生が持っていた雑誌には、30名ほどのグループの写真が載っていて、その中に大須賀もいた
“天才を自負する少年少女 学業は首席 スポーツは万能 抱負「僕たちは大きなことをやりますよ」”
史郎(彼らには良心による自動ブレーキなどひとかけらもないんだ!)
玲子に怒りを浴びせると動揺し(あれは指令だし、命に関わるほどの怪我じゃないわ)
この生徒は自分たちの仲間やリーダーを恐れているのだ
玲子(手始めは今度、敬子が出る区内庭球大会よ)
史郎は敬子に事情を告げず、テニス大会を見に行く
気付くと、大須賀ほかグループの真っ只中にいた
準決勝までいった敬子は、超能力により敵のボールが急に方向をかえられ劣勢となる
史郎が応戦しようとすると
(やめて! 向こうが超能力を使っているのは分かってる 松山さんまでそんなことをするのはやめて)
大須賀
(忍耐もこれまでだ あと1週間やる 来週の今日の午後5時までに仲間になる決心をしなかったら
先生、敬子、君も消すつもりだ)
*
何もなす術もなく焦っていた時、“中学2年生で高校受験の2番になった大須賀くん”という記事を見つけて
先生「これが、やつらをやっつける材料だ!」
敬子にも史郎の思念が読み取れるようになる
先生は、2人で心でやりとりするのが実地訓練になったのではと推理する
大須賀らがやって来て、史郎はテレポーテーションも出来るようになる
その様子を見て、両親も信じざるを得なくなった
まず、中学の校長のところへ行き、半信半疑ながら実際の超能力を見せると
「やるだけはやってみましょう」
父の友人の警視の所にも行くと「信じられん!」と言いつつ、あと数時間しかないことで
「新聞社へ行け!」とうながす
「君たちを午後5時ジャストに新聞社の社会部の真ん中に置いてもらうよう頼んだ
その連中も手を出すまい 騒ぎになれば、我々が一斉に動き出すさ」
新聞社に向かうタクシーの4輪が一度にパンクし、ドアも開かない
隣りのクルマにいる大須賀は(ここでハンドル操作を誤ったクルマにぶつかられるよりはマシだろう?)
そこに敬子の念力が加わり、クルマから脱出
史郎は、グループの心をかき乱すことで、集中できなくなり超能力が働かなくなることを知る
ギリギリに新聞社に滑り込むと、社会部長は
「半年ぐらい前から、いろんな奇妙な事件が起こっていることに気付いていた」と話す
5時が過ぎた時、一斉に停電した
大須賀(君を消すためにはどんなことをしてもいいという指令が出た)
室内は大混乱となる 机やイスが動き、蛍光灯が落ち、火の手が上がる
見ると、近くの屋上に大須賀らがかたまって立っていた
そして瞬間移動で社会部に来る
「我々は新しい時代の支配者だ 逆らうと酷い目に遭うぞ!」
部屋のあちこちでフラッシュがひらめいた
史郎がやられた・・・と思った時、敬子と玲子が協力して大須賀を倒す
(地区本部へ戻れ!)という命令がどこかから来て、グループは怪我人をかついで消えた
警察の機動隊がその直後に飛び込んできた
玲子は、小学生の時に友だちに誘われ、面白半分でグループに入ったが、恐怖で抜けられずにいた
しかし、史郎たちが敢然と戦うのを見て、敬意を抱き、グループを抜ける決心をした
*
警察は、ある果物屋がグループの拠点になっていると突き止めて包囲する
機動隊長がやられ、反撃しようとするのを止める記者
「君のお父さんやお母さんがどう思っているか、考えたことはないのか?」
「我々はそんなものを超越している 能無しのブタども 束になってかかってくるんだ!」
史郎は、大須賀がこんな無鉄砲なやり方をするのに違和感を感じる
機動隊との戦いに全力を使い果たし、大須賀は倒れる
史郎の勘通り、果物屋にいた仲間が全員、瞬間移動するまで大須賀が時間稼ぎをしていたのだった
玲子によると、超能力の素質は誰でも持っているが、それを使いこなすには
若いうちから訓練を受けねばならず、グループは組織的にメンバを集めて教育していた
玲子は大須賀の指令を実行するのみで、その上にどんな存在があるのか全貌は知らない
史郎は、大須賀が弱って眠っているうちに心を読んで欲しいと頼まれるが、すでに目覚めていた
「新しい世の中をつくるんです 本当の能力のある人間に治められる世の中をね」と言って消える
*
1週間後、警察が全面的に動き始めた 社会部で撮られた写真をもとに、
玲子が名前を言い、手配写真がばらまかれた
しかし、手がかりを掴んだと思うと、グループの証拠隠滅の手が入る
マスコミはこの事件をかなり派手に書きたて、史郎のもとにもテレビカーが来た
先生は、敬子と玲子もパトカーに乗るよう言う
父「警視の追及にたまりかねた組織が、とうとう暴れ出したんだよ」
百貨店などを襲い、強盗宣言のビラには先生、史郎ら4人が犯人だと顔写真が載せられていた
警視「やっとやつらの本拠が分かった」
都心のコーポラスの1つをまるごと持って、本拠にしていた
史郎は1人で、説得に行く なぜか憎しみより、哀れみに似た感情がわき上がり
警告のテレパシーは、史郎の透明な心を通り抜ける
超能力が働くためには、相手に受け止める対立する感情が必要だと分かる
(とうとう超能力の最後の秘密を知ってしまったようだな)
大須賀もまた、組織の命令に従う1人に過ぎなかったと分かり
冷静さが消え、あっという間に総攻撃を受ける
そこに敬子と玲子が加勢に来る
グループはなぜ彼女たちが来たのか理解できなかった
「そうよ! 私たちは自分の意志で来たのよ
あなたたちのように強制されているのとは違うわ それがあなたたちと私たちの違いなのよ!」
(殺せ!)
新聞社で聞いた声が聞こえ、見ると、思念の主が立っていた
痩せて小さな老人で、憎悪に歪んだ顔だった
全世界が爆発したような音と光が放たれた
床に倒れていたのは、史郎ではなく老人だった
最も忠実だった大須賀に対する冷たい仕打ちを見て、超能力者たちは団結したのだ
彼らは自発的にコーポを出て、警察にくだった
もし組織がこうして本部に集まることなく、各支部に分かれ、すぐ上のリーダーから命令を受けるだけなら
みんな恐怖のために逆らわなかっただろう
(なんだか、政治や軍隊、国家の仕組みに似てるな
大須賀は助かったが、老人は心臓麻痺で亡くなった
あの老人が超能力理論を完成したが、その時は高齢になっていたため若い仲間を集めていた
警視
「あの本部に資料があった 催眠術で暗示をかけるとブレーキがかかって、超能力は凍結できるらしい
君たちもそうしてもらったほうがいいんじゃないか?」
史郎たちはそうしようと決める
先生「今の時代では、超能力者は迫害されるだけでしょうから」
警視
「10年、いやもっと近い将来、我々は超能力を全面的に解放しなければならないだろう
しかし、その時は、超能力をコントロールできるようになっていなければならない
もっと自然なものになっていなければならないのだ
その意味で、超能力問題は、今やっと始まったと言うべきだろうね」
『ぼくは呼ばない』
高校の柔道部員・道夫は、練習中にふいに頭の中が空白状態になる
その帰り、バス停で派手な女性に声をかけられ、靴まで脱いで追いかけられる
物陰に隠れても見つかって、互いが触れ合った瞬間、またさっきの異様な感覚となる
我にかえると、もう女性はいなくなっていた
家に帰ると、中学時代から文通している大阪に住む服部康子から乱れた字で
“今度の土曜日の午後6時にひとりで東京に着く
どんなことがあっても出迎えてほしい、お願い”と書かれていた
その晩、期末試験を控えて、苦手な英語から始めると驚くほど調子が良い
他の教科も終えて、時間を見たら、わずか1時間しか経っていないことにも驚く
翌日、電車に乗ると、出勤途中のOLに囲まれる
昨日と同じ、憑かれたような目で見て追いかけてくる
学校に着くと、今度は女生徒たちがたちまち寄ってきて、周りの男子生徒はやっかみ始めた
授業では、どの教科でも冴えていた
授業後、再び女生徒に囲まれ、1人が手を握ると力が抜けたように倒れた
まるで彼女からエネルギーを吸い取ったかのように
その混乱の中、クラス担任の川上に呼ばれる
なにか話そうとしていたところに、職員室中の女教師たちが集まってきて、道夫は咄嗟に外に走り出る
逃げ出してから、カバンを落としてきたことに気付いた
遠回りして学校に行くと、川上先生が自分のカバンを持って
家に届けるのを理由になにか話がしたいのだと分かる
しかし、家に着くと、すでに玄関に20名余りの女生徒や、見知らぬ女性が集まっていた
「帰ってきたわよ!」と見つけるやいなや、猛烈に追ってくる
たまたま通りかかったタクシーに乗り、行き先を聞かれ、反射的に「東京駅」と答え
康子と会う約束をしていたことを思い出す
このまま混雑した駅に行くのは危険だと迷っていると
小柄で、帽子を深くかぶり、オーバーを着た康子が
見知らぬ男性に追いかけられているところに出くわす
道夫は男性に体当たりをして、「あっちへ逃げるんだ!」
やっと2人きりになると、互いに顔を見ても何も反応しないことに驚く
康子もまた、急に男に追いかけられるようになり、周りに相談しても信用されず
学校へも行けず、家では妄想者扱いで閉じ込められていたため、皮膚も全部隠して家出してきたと話す
「こんなことになっているのは、私たちだけじゃないのよ」
彼女が持ってきた俗悪な週刊誌には“異性に追われる奇妙な高校生たち”と見出しがあった
読もうとした時、クルマが停まり、運転していた男が走ってきた
2人は逃げようとして、道夫が康子の手をとると、鋭い電撃が走り、吐き気がこみ上げた
なんとか公衆電話ボックスに逃げ込み、記事の続きを読むと、ふざけた調子で書かれていて
“その生徒たちはいずれも、普段は真面目すぎるほどの性格”とある
家に電話すれば、川上先生もいるかもしれない
その時、パトロールの警官に声をかけられる
康子の手に触れると、互いにうつろな目になり、警官は全身の力を抜かれて壁にもたれた
2人を追う人数は数十人にふくれあがる
「私はもう走れないわ」
公園に着くと、さらに大勢に取り囲まれる
「こわい!」 唐突に康子が道夫に抱きついた
恐ろしい電撃が走り、全身が火柱となって燃える
この群衆に押し潰されて死ぬくらいならマシだ
2人が気付くと、群衆は夢から覚めたような顔で散っていくところだった
家に着くと、やはり川上先生がいて、これまで20例以上囁かれいることを告げる
「実際はもっと多いだろうね 外聞の悪い事件は、外部に漏れないよう処理される傾向があるから
相手は脳の活動が低下して、2時間も休めば元に戻るよ
すでに研究に着手していたグループの報告によれば、両方とも被害者と考えられるんだ
吸引力は、本人が備えていたものではない いわば寄生生物だね
なぜ高校生にとりつくかは分からないが、内省的な若者が、彼らにとって住み心地がいいのかもしれない
彼らにとって、仲間の宿った人間には用はないから、互いが触れ合った時、警告の意味のショックがあったわけだ
それを無視したため、反発した寄生生物は耐えられなくなって飛び出していったという説も成り立つ」
道夫は、自分がひどく可哀相なマジメ人間のように思えて苦笑した
「明日の朝帰ります 試験が近づいていますので」
康子の頬にも苦笑に似たものが漂っていた
【矢野徹解説 内容抜粋メモ】
僕らの周りには2つのタイプがいるようだ
都会人のスマートさを売り物にするタイプと、田舎者の泥臭さを固執するタイプ
京都、大阪、神戸出身の作家でも、すぐ東京弁を喋るようになる人と、そうでない人ができたようだ
眉村さんは、どうもその後者らしい
僕は神戸出身で、50歳までは神戸訛りが抜けず、別に、東京弁を意図して喋ろうとしなかった
アメリカの国立公園に住むネクタイをした熊の漫画フィルムをもとに
眉村さんを“クマさん”と命名したのは僕だが、それが空前絶後のこととなった
いかに眉村さんが愛される人物であったか
『燃える傾斜』から泉鏡花賞を受けた大作『消滅の光輪』まで
眉村さんはロマンチックなものから永遠なるものへと、着実に進み、こつこつと書き続けておられる
第一期に属するSF作家の誰とも同じように、
眉村さんも中学・広告性向きの学習雑誌に大量のSFを書いておられる
当時はSF専門誌が1誌しかなく、大切な市場だったとともに、
将来の日本でSFが広く読まれるようになるための底辺作りに夢中だった時代だ
毎年の夏、日本のどこかでSF大会と呼ばれる、SFファンの集まりがあり
時には1000人を超えるファンが集まり、同じ宿に泊まり、SF作家、翻訳家と交歓する
30代、40代の女性が子どもを抱いて来られ「中学生の時、中学×年に載ったSFで・・・」
と懐かしそうに挨拶される 少年少女のSF読者がずっと読み続けてくださり、
それで今SFが世間一般に受け入れられている
ここにおさめられた2篇も、昭和42年に学研の「中一コース・中二コース」、「高二コース」に発表されたもの
作家はみな、空想、夢想、妄想の熟練者だ
それを首尾一貫した形にまとめて文字にするのが仕事
私は、作家が妄想した以上の妄想を楽しむのが、読書の醍醐味だと思う
僕が20年以上つきあった眉村さんは、誠実さの代名詞、
読者に大量の夢を見させてくれる人なのだ
(私は、当時流行っていた「中一コース」ではなく、「マイコース」とかいう名前じゃなかったっけ?
でも、そこにSF小説なんて載ってなかった気がするが
眉村さんは、角川映画つながりで知ったと、今でも思っているんだけど
眉村卓/著 カバー/木村光佑、本文イラスト/谷俊彦 解説:矢野徹(昭和55年初版 昭和59年18版)
※「作家別」カテゴリーに追加しました。
[カバー裏のあらすじ]
恐るべき天才少年少女のグループがあらわれた! 彼らはテレパシーを修得し、念力で自由に物を動かし、テストでも抜群の成績を修めている。
が、彼らは、何か巨大な悪の企みを抱いているらしい・・・。
ある日、ひょんなことから、ちょっぴり超能力を身につけた史郎にも、グループに入るように誘いがきた。
そして、断わった史郎に、彼らは命を取ると脅しをかけてきたのだ。
史郎は、友人の敬子とともに、天才グループと断固闘う決意を固めたが・・・。
スリルあふれる、学園SFサスペンスの傑作。「ぼくは呼ばない」を併録。
ウィキを参照して、順番通りに読もうかと思っていたけれども、読みたい順に読むことにした
今作は、以前、読み直して書いた感想メモがあったけれども、また読んだ
『天才はつくられる』 眉村卓/著(角川文庫)
やっぱり“学園もの”もいいな
私が最初に買って読んだのも、たぶんこの主人公と同じ年頃ではなかったか
“大人”になった今読んでもドキドキワクワクする 『ねらわれた学園』に似た雰囲気
▼あらすじ(ネタバレ注意
『天才はつくられる』
図書委員の松山史郎、ニューフェイスでテニス部と兼ねて来ている橋本敬子らは
新刊図書の整理に追われていた 担任は坂村先生
敬子「この本、注文台帳に載ってないんだけど」
『学習教程』と書かれた本には、超能力の基本概念、テレパシーの習得、
透視力への応用、念力の初歩・・・など不思議な内容がまるで教科書のように書かれている
帰り道、敬子は「あの本にあまり深入りしないほうがいいような気がする 勘だけど・・・」と言ったが
本のことが気になって勉強に身が入らない史郎は読み始める
「超能力者には適性がある 適性のない人間はいくら努力しても身につけることはできない
適性を見分けるにはESPカードを使う・・・」
馬鹿馬鹿しいとは思いながら、つい熱中してメモをとる史郎
そして、数日間、その訓練法に従って練習もしてみた
坂村先生が慌てて来て
「本屋さんが来てるんだ ひどく慌てていて、あの本は間違って持ち込まれたものだから、すぐに返してほしいんだ」
あの本の内容は本当だったのだ
当惑している史郎の耳に、敬子の思いがまるで声のように聞こえた
(ひどく顔色が悪いわ)
読心術だけでなく、念力で本を持ち上げたのを見た敬子は驚く
(この人は、私の考えを読んでいるんだわ)
本屋に本を返していると、(まぬけな本屋だ)という思念が入ってきた
(こんな失敗をもう一度やったら、みんなで殺してしまうほかはない)
その声は史郎にも呼びかけた
(君はいずれ消されるよ)
外を見ると、1人の背の高い少年が立っていたが、突然消えた
敬子に言われ、坂村先生に相談し、実際、本を動かして見せると蒼白になる
「君がこんな能力を持ったと世間に知れるだけでも、ものすごい騒ぎになるだろう」
(読心力があると分かれば、友人もいなくなる テストの成績も信じてもらえないだろう)
史郎の両親にも相談するが信じられないようだった
道に再び、あの少年が突然現れる 彼の思念は読めない
(僕は、相手の読心力から自分を守ることができる 中途半端な超能力者ではないのだ
今度だけは仲間に加えてもよかろうという申し合わせができた 我々のグループに入るか?)
目的も分からず、断る史郎の頬にすさまじい衝撃を感じた
再び、攻撃が始まると分かり、史郎も必死に反撃する
(僕はどうやら君を見くびっていたらしいよ 君は消すには惜しい人間だ ゆっくり考え直すことだよ)
そこに心配した敬子が駆けつけ、家に送られる
史郎は体力的にも精神的にも疲れきり、眠り続けた
その後、先生と両親とともに話し合っていると、母親の思念だけ読み取れないことが分かる
坂村
「潜在意識による制限というやつだ!
君は心の底の底で、お母さんの気持ちまで読みたくはないと思っているから読めないんだ!
テストの時も自動的にブレーキがかかるだろう つまり、自動ブレーキなんだ
自身の道徳観が自身の破滅を防いでくれるんだ」とホッとする
それはテストの時に証明された
そして、先生、敬子、クラスメートに対してもブレーキがかかるのを感じた
*
敬子が校舎裏に史郎を呼び出し、新聞の切り抜きを見せた
“試験ノイローゼか? 中学生の自殺相次ぐ”
それとともに“松山くんに、早く僕たちのグループに入るようすすめてください”という封書も入っていた
なんて卑怯な! と憤りつつ、敬子の(メンバーになってほしくはないけど、今度は私が・・・)という不安の思念が読めた
先生に相談すると、同じく封書が届いていたという
“あなたが手助けしようとしていることは、非常に危険なことです”
「事情を知っている僕たちはやっかいな存在だ 結局、いずれは消されるんじゃないか?
それなら分かってくれそうな人を選んで、事実を伝えよう」
史郎「仲間を増やして、対抗できるよう頑張ってみよう」
そういったものの、誰も本気にしてはくれなかった
いつしか、こんな苦労は無意味だと思い始めていた
*
敬子から「1年生のクラスで、全員の票を集めて図書委員が選ばれたんですって」
その新顔の女生徒・井戸崎玲子から(以前見た少年は地区グループのリーダー大須賀雄一さんよ)という思念が来た
そこに坂村がグラウンドで怪我をしたとしらせが入る
野球部のボールが急に曲がって、先生の頭に直撃したという
先生が持っていた雑誌には、30名ほどのグループの写真が載っていて、その中に大須賀もいた
“天才を自負する少年少女 学業は首席 スポーツは万能 抱負「僕たちは大きなことをやりますよ」”
史郎(彼らには良心による自動ブレーキなどひとかけらもないんだ!)
玲子に怒りを浴びせると動揺し(あれは指令だし、命に関わるほどの怪我じゃないわ)
この生徒は自分たちの仲間やリーダーを恐れているのだ
玲子(手始めは今度、敬子が出る区内庭球大会よ)
史郎は敬子に事情を告げず、テニス大会を見に行く
気付くと、大須賀ほかグループの真っ只中にいた
準決勝までいった敬子は、超能力により敵のボールが急に方向をかえられ劣勢となる
史郎が応戦しようとすると
(やめて! 向こうが超能力を使っているのは分かってる 松山さんまでそんなことをするのはやめて)
大須賀
(忍耐もこれまでだ あと1週間やる 来週の今日の午後5時までに仲間になる決心をしなかったら
先生、敬子、君も消すつもりだ)
*
何もなす術もなく焦っていた時、“中学2年生で高校受験の2番になった大須賀くん”という記事を見つけて
先生「これが、やつらをやっつける材料だ!」
敬子にも史郎の思念が読み取れるようになる
先生は、2人で心でやりとりするのが実地訓練になったのではと推理する
大須賀らがやって来て、史郎はテレポーテーションも出来るようになる
その様子を見て、両親も信じざるを得なくなった
まず、中学の校長のところへ行き、半信半疑ながら実際の超能力を見せると
「やるだけはやってみましょう」
父の友人の警視の所にも行くと「信じられん!」と言いつつ、あと数時間しかないことで
「新聞社へ行け!」とうながす
「君たちを午後5時ジャストに新聞社の社会部の真ん中に置いてもらうよう頼んだ
その連中も手を出すまい 騒ぎになれば、我々が一斉に動き出すさ」
新聞社に向かうタクシーの4輪が一度にパンクし、ドアも開かない
隣りのクルマにいる大須賀は(ここでハンドル操作を誤ったクルマにぶつかられるよりはマシだろう?)
そこに敬子の念力が加わり、クルマから脱出
史郎は、グループの心をかき乱すことで、集中できなくなり超能力が働かなくなることを知る
ギリギリに新聞社に滑り込むと、社会部長は
「半年ぐらい前から、いろんな奇妙な事件が起こっていることに気付いていた」と話す
5時が過ぎた時、一斉に停電した
大須賀(君を消すためにはどんなことをしてもいいという指令が出た)
室内は大混乱となる 机やイスが動き、蛍光灯が落ち、火の手が上がる
見ると、近くの屋上に大須賀らがかたまって立っていた
そして瞬間移動で社会部に来る
「我々は新しい時代の支配者だ 逆らうと酷い目に遭うぞ!」
部屋のあちこちでフラッシュがひらめいた
史郎がやられた・・・と思った時、敬子と玲子が協力して大須賀を倒す
(地区本部へ戻れ!)という命令がどこかから来て、グループは怪我人をかついで消えた
警察の機動隊がその直後に飛び込んできた
玲子は、小学生の時に友だちに誘われ、面白半分でグループに入ったが、恐怖で抜けられずにいた
しかし、史郎たちが敢然と戦うのを見て、敬意を抱き、グループを抜ける決心をした
*
警察は、ある果物屋がグループの拠点になっていると突き止めて包囲する
機動隊長がやられ、反撃しようとするのを止める記者
「君のお父さんやお母さんがどう思っているか、考えたことはないのか?」
「我々はそんなものを超越している 能無しのブタども 束になってかかってくるんだ!」
史郎は、大須賀がこんな無鉄砲なやり方をするのに違和感を感じる
機動隊との戦いに全力を使い果たし、大須賀は倒れる
史郎の勘通り、果物屋にいた仲間が全員、瞬間移動するまで大須賀が時間稼ぎをしていたのだった
玲子によると、超能力の素質は誰でも持っているが、それを使いこなすには
若いうちから訓練を受けねばならず、グループは組織的にメンバを集めて教育していた
玲子は大須賀の指令を実行するのみで、その上にどんな存在があるのか全貌は知らない
史郎は、大須賀が弱って眠っているうちに心を読んで欲しいと頼まれるが、すでに目覚めていた
「新しい世の中をつくるんです 本当の能力のある人間に治められる世の中をね」と言って消える
*
1週間後、警察が全面的に動き始めた 社会部で撮られた写真をもとに、
玲子が名前を言い、手配写真がばらまかれた
しかし、手がかりを掴んだと思うと、グループの証拠隠滅の手が入る
マスコミはこの事件をかなり派手に書きたて、史郎のもとにもテレビカーが来た
先生は、敬子と玲子もパトカーに乗るよう言う
父「警視の追及にたまりかねた組織が、とうとう暴れ出したんだよ」
百貨店などを襲い、強盗宣言のビラには先生、史郎ら4人が犯人だと顔写真が載せられていた
警視「やっとやつらの本拠が分かった」
都心のコーポラスの1つをまるごと持って、本拠にしていた
史郎は1人で、説得に行く なぜか憎しみより、哀れみに似た感情がわき上がり
警告のテレパシーは、史郎の透明な心を通り抜ける
超能力が働くためには、相手に受け止める対立する感情が必要だと分かる
(とうとう超能力の最後の秘密を知ってしまったようだな)
大須賀もまた、組織の命令に従う1人に過ぎなかったと分かり
冷静さが消え、あっという間に総攻撃を受ける
そこに敬子と玲子が加勢に来る
グループはなぜ彼女たちが来たのか理解できなかった
「そうよ! 私たちは自分の意志で来たのよ
あなたたちのように強制されているのとは違うわ それがあなたたちと私たちの違いなのよ!」
(殺せ!)
新聞社で聞いた声が聞こえ、見ると、思念の主が立っていた
痩せて小さな老人で、憎悪に歪んだ顔だった
全世界が爆発したような音と光が放たれた
床に倒れていたのは、史郎ではなく老人だった
最も忠実だった大須賀に対する冷たい仕打ちを見て、超能力者たちは団結したのだ
彼らは自発的にコーポを出て、警察にくだった
もし組織がこうして本部に集まることなく、各支部に分かれ、すぐ上のリーダーから命令を受けるだけなら
みんな恐怖のために逆らわなかっただろう
(なんだか、政治や軍隊、国家の仕組みに似てるな
大須賀は助かったが、老人は心臓麻痺で亡くなった
あの老人が超能力理論を完成したが、その時は高齢になっていたため若い仲間を集めていた
警視
「あの本部に資料があった 催眠術で暗示をかけるとブレーキがかかって、超能力は凍結できるらしい
君たちもそうしてもらったほうがいいんじゃないか?」
史郎たちはそうしようと決める
先生「今の時代では、超能力者は迫害されるだけでしょうから」
警視
「10年、いやもっと近い将来、我々は超能力を全面的に解放しなければならないだろう
しかし、その時は、超能力をコントロールできるようになっていなければならない
もっと自然なものになっていなければならないのだ
その意味で、超能力問題は、今やっと始まったと言うべきだろうね」
『ぼくは呼ばない』
高校の柔道部員・道夫は、練習中にふいに頭の中が空白状態になる
その帰り、バス停で派手な女性に声をかけられ、靴まで脱いで追いかけられる
物陰に隠れても見つかって、互いが触れ合った瞬間、またさっきの異様な感覚となる
我にかえると、もう女性はいなくなっていた
家に帰ると、中学時代から文通している大阪に住む服部康子から乱れた字で
“今度の土曜日の午後6時にひとりで東京に着く
どんなことがあっても出迎えてほしい、お願い”と書かれていた
その晩、期末試験を控えて、苦手な英語から始めると驚くほど調子が良い
他の教科も終えて、時間を見たら、わずか1時間しか経っていないことにも驚く
翌日、電車に乗ると、出勤途中のOLに囲まれる
昨日と同じ、憑かれたような目で見て追いかけてくる
学校に着くと、今度は女生徒たちがたちまち寄ってきて、周りの男子生徒はやっかみ始めた
授業では、どの教科でも冴えていた
授業後、再び女生徒に囲まれ、1人が手を握ると力が抜けたように倒れた
まるで彼女からエネルギーを吸い取ったかのように
その混乱の中、クラス担任の川上に呼ばれる
なにか話そうとしていたところに、職員室中の女教師たちが集まってきて、道夫は咄嗟に外に走り出る
逃げ出してから、カバンを落としてきたことに気付いた
遠回りして学校に行くと、川上先生が自分のカバンを持って
家に届けるのを理由になにか話がしたいのだと分かる
しかし、家に着くと、すでに玄関に20名余りの女生徒や、見知らぬ女性が集まっていた
「帰ってきたわよ!」と見つけるやいなや、猛烈に追ってくる
たまたま通りかかったタクシーに乗り、行き先を聞かれ、反射的に「東京駅」と答え
康子と会う約束をしていたことを思い出す
このまま混雑した駅に行くのは危険だと迷っていると
小柄で、帽子を深くかぶり、オーバーを着た康子が
見知らぬ男性に追いかけられているところに出くわす
道夫は男性に体当たりをして、「あっちへ逃げるんだ!」
やっと2人きりになると、互いに顔を見ても何も反応しないことに驚く
康子もまた、急に男に追いかけられるようになり、周りに相談しても信用されず
学校へも行けず、家では妄想者扱いで閉じ込められていたため、皮膚も全部隠して家出してきたと話す
「こんなことになっているのは、私たちだけじゃないのよ」
彼女が持ってきた俗悪な週刊誌には“異性に追われる奇妙な高校生たち”と見出しがあった
読もうとした時、クルマが停まり、運転していた男が走ってきた
2人は逃げようとして、道夫が康子の手をとると、鋭い電撃が走り、吐き気がこみ上げた
なんとか公衆電話ボックスに逃げ込み、記事の続きを読むと、ふざけた調子で書かれていて
“その生徒たちはいずれも、普段は真面目すぎるほどの性格”とある
家に電話すれば、川上先生もいるかもしれない
その時、パトロールの警官に声をかけられる
康子の手に触れると、互いにうつろな目になり、警官は全身の力を抜かれて壁にもたれた
2人を追う人数は数十人にふくれあがる
「私はもう走れないわ」
公園に着くと、さらに大勢に取り囲まれる
「こわい!」 唐突に康子が道夫に抱きついた
恐ろしい電撃が走り、全身が火柱となって燃える
この群衆に押し潰されて死ぬくらいならマシだ
2人が気付くと、群衆は夢から覚めたような顔で散っていくところだった
家に着くと、やはり川上先生がいて、これまで20例以上囁かれいることを告げる
「実際はもっと多いだろうね 外聞の悪い事件は、外部に漏れないよう処理される傾向があるから
相手は脳の活動が低下して、2時間も休めば元に戻るよ
すでに研究に着手していたグループの報告によれば、両方とも被害者と考えられるんだ
吸引力は、本人が備えていたものではない いわば寄生生物だね
なぜ高校生にとりつくかは分からないが、内省的な若者が、彼らにとって住み心地がいいのかもしれない
彼らにとって、仲間の宿った人間には用はないから、互いが触れ合った時、警告の意味のショックがあったわけだ
それを無視したため、反発した寄生生物は耐えられなくなって飛び出していったという説も成り立つ」
道夫は、自分がひどく可哀相なマジメ人間のように思えて苦笑した
「明日の朝帰ります 試験が近づいていますので」
康子の頬にも苦笑に似たものが漂っていた
【矢野徹解説 内容抜粋メモ】
僕らの周りには2つのタイプがいるようだ
都会人のスマートさを売り物にするタイプと、田舎者の泥臭さを固執するタイプ
京都、大阪、神戸出身の作家でも、すぐ東京弁を喋るようになる人と、そうでない人ができたようだ
眉村さんは、どうもその後者らしい
僕は神戸出身で、50歳までは神戸訛りが抜けず、別に、東京弁を意図して喋ろうとしなかった
アメリカの国立公園に住むネクタイをした熊の漫画フィルムをもとに
眉村さんを“クマさん”と命名したのは僕だが、それが空前絶後のこととなった
いかに眉村さんが愛される人物であったか
『燃える傾斜』から泉鏡花賞を受けた大作『消滅の光輪』まで
眉村さんはロマンチックなものから永遠なるものへと、着実に進み、こつこつと書き続けておられる
第一期に属するSF作家の誰とも同じように、
眉村さんも中学・広告性向きの学習雑誌に大量のSFを書いておられる
当時はSF専門誌が1誌しかなく、大切な市場だったとともに、
将来の日本でSFが広く読まれるようになるための底辺作りに夢中だった時代だ
毎年の夏、日本のどこかでSF大会と呼ばれる、SFファンの集まりがあり
時には1000人を超えるファンが集まり、同じ宿に泊まり、SF作家、翻訳家と交歓する
30代、40代の女性が子どもを抱いて来られ「中学生の時、中学×年に載ったSFで・・・」
と懐かしそうに挨拶される 少年少女のSF読者がずっと読み続けてくださり、
それで今SFが世間一般に受け入れられている
ここにおさめられた2篇も、昭和42年に学研の「中一コース・中二コース」、「高二コース」に発表されたもの
作家はみな、空想、夢想、妄想の熟練者だ
それを首尾一貫した形にまとめて文字にするのが仕事
私は、作家が妄想した以上の妄想を楽しむのが、読書の醍醐味だと思う
僕が20年以上つきあった眉村さんは、誠実さの代名詞、
読者に大量の夢を見させてくれる人なのだ
(私は、当時流行っていた「中一コース」ではなく、「マイコース」とかいう名前じゃなかったっけ?
でも、そこにSF小説なんて載ってなかった気がするが
眉村さんは、角川映画つながりで知ったと、今でも思っているんだけど