■ドラマ『北斗 ~ある殺人者の回心~』(2017)
原作:石田衣良(「池袋ウエストゲートパーク」と同じ原作者ってビックリ!
監督・脚本:瀧本智行
出演:
端爪北斗 - 中山優馬
端爪至高 - 村上淳
端爪美砂子 - 中村優子
高井聡一 - 松尾スズキ
近藤綾子 - 宮本信子 ほか
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ドラマ『罪と罰 A Falsified Romance』
ドラマ10「シングルマザーズ」全8回(2012)
『愛を乞うひと』(1998)
部長がイチオシしていた出演作をやっと観た
こういった社会派ドラマは好きなジャンルだけれども
途中の殺人シーンがあまりに生々しくて、途中で中断
たくさんイヌ&ネコの動画を観て、ひと休みしてから続きを観た
この物語に欠かせない残虐性かもしれないけれども
テレビ画面が大きくなり、より画質も上がり、3Dが主流になったりしたら
もうホラー、サスペンスなんて観られなくなるな/怖×∞
今も身近などこかで密かに凄惨な虐待を受けている人がいると思うとゾッとする
と、同時に、人が人を裁く難しさ、死刑制度の有り方も考えさせられた
自分がもし裁判員の一人に加わり、凄惨な殺人写真を見せられたりして
たった4日間で、人の生き死にを決めるなんて出来ないよ・・・
私も原作者と同じく、償うなら、“死には死を”ではなく
じっくりと自分のした取り返しのつかない過ちを
一生かけて考えることのほうがいいと思うけれども
たとえば、レイプなどの性犯罪が、場合によっては数年の服役で社会復帰する例などは
性癖が変わらないかぎり再犯につながる可能性を考えると
今の法廷、法律のあり方も、時代のスピードの変化の速さに合わせて
どんどん変えていかなければならないと思う
●第1話 「僕を、死刑にしてください」
独房で血尿が出てる17番の端爪北斗
3日続けて弁護士が来ていると呼び出される
国選弁護人の高井(もう部長登場!)は親切
「僕は死刑でいいんです」
「君は2人の人間を殺した
私は死刑制度に反対だ 極刑にすることに全力を注ぐつもりだ
今回の事件は哀しい出来事の連鎖で起きた 情状酌量の余地は充分にある
君の不幸な生い立ちだって・・・」
「僕を死刑にしてください」
「僕は諦めの悪い男でね 君の話をもっと聞かせてくれ!」
「僕には悪魔の血が流れている 僕は生まれてはいけなかった」
【2005年7月】
小学生の北斗は、夏でも長袖を着て、クラスでも暗い存在だが、成績はいい
服を脱ぐと酷いアザだらけの体
モデルハウスを案内する父
母は虚脱状態
父が家に帰るとものすごい気遣いで出迎える母と息子
夕食を用意して21時になっても、父がテーブルにつくまで食べてはいけないルール
北斗は、空腹から思わず唐揚げを食べてしまうと、父が見ていた
父:ルールを破るとどうなる
北斗:罰があります
母:顔はダメ 2人とも外に出られなくなります
父:
罪をおかした者には罰が与えられる
今日も無教養な人間の相手をさせられた
お前にはそんな人間になってほしくない
ねじった針金ハンガーで殴る父
母:お父さんにお礼を言いなさい
(もうすでに胃が痛い・・・どうして逃げられないんだろう
あの男は人生の敗北者だった 大学に失敗し、就職も思うようにならなかった
転職を繰り返し、そのたびに給料が安くなり、プライドを傷つけられ
その鬱屈は僕とあの女に向けられた
寒いベランダで一夜を明かす北斗
あの女は僕を守ろうともしなかった 自分に刃が向かうことをただただ恐れていた
【2006年】
クラスメートの修司が「ウチに遊びに来ない?」と誘う
修司:僕たちって似てると思わない? 他のみんなは子どもっぽくて
母に許可をもらい、夕食に誘われるままご馳走になる 北斗の成績が良いと聞いて興味をもつ
父親:きっと親御さんのしつけがしっかりしてるんだね
夜中に家に帰る北斗
父:
医者の家の飯は美味かったか? 今日、会社クビになったんだ
お前の外出はお母さんが許可したから罰を与えた
タバコを買う間、お母さんがお前にしつけをするそうだ
今度は母親から虐待を受ける
母:
あんたを妊娠したせいで、あいつと結婚しなきゃならなかった
あんたは悪魔の子だ なんで生まれてきた!
北斗の首を絞め、我に返り狂ったように笑う
(もうすでに怖くて見ていられない・・・
「生まれてきて ごめんなさい」と書き置きをして逃げ出す北斗
道路に飛び出そうとしても出来ない 橋をのぼると雪が降る
自販機が温かくて抱きしめる
僕はヒトに抱きしめられた記憶がなかった
抱きしめてくれたのはあの自動販売機だけだった
あの時、死んでさえいれば
*
高井は事務所の更新料を払えない
脅迫の手紙もよくある
事務員・吉永の給料も滞っている
【2010年】
その後もあの男に怯える毎日が続き、永遠と思えるほど長い時間だった
地獄の日々に変化が訪れたのは中学3年生の頃
新聞配達のバイトをしている北斗(え? 家に戻ったの?
母:家賃を振り込まないと・・・ 私もパートで働いたほうが
父:好きにしろ
父は、リフォーム業者を装って、シロアリ駆除したほうがいいと老人を騙す
「リフォーム詐欺だろ? さっさと出てけ!」
北斗は進路指導員に呼び出される
父が詐欺の仕事をしていることと、小さい頃から虐待されてるのか?と聞かれて
北斗:全部ウソです! 父は立派な人です! と興奮して否定する
父:金を貯めてここから逃げ出そうと思ってるんだろ?
そこに玄関のチャイムがあり、児童相談所から富岡が来る
富岡:お宅は以前から通報を受けていますね
父:息子は成績優秀でなんの問題もありません
富岡:警察も何度かかけつけているようです
父:夫婦ケンカが過ぎて、納得して帰ってもらいました
富岡:
虐待は犯罪です 私は絶対に許しません 北斗くん、奥さんも必ず110番してください!
あなたからも目を離しませんよ!
その日から怯える父
近所や電車の乗客の目が厳しく見つめる幻覚を見て電車内で暴れ出す
あの男は壊れた いや元々壊れていたのだ
僕らを奴隷のように支配することでギリギリ保っていただけだ
一歩も外に出なくなり、あの女が保険の外交員を始めた
暴力はピタリとおさまった
【2011年】
父:今日は入学式だったな おめでとう
(どのみち、子どもが大きくなって、自分が老いれば暴力も続かないってことか
突然、北斗の部屋に入り「こんなものが出てきた」と北斗の赤ちゃんの写真を見せる
父:
お前はほんとうにキレイだった 一点の穢れもなかった
オレにはもうお前しかいない お前はオレの子だ
お前の体にはオレの血が流れている
お前にも一生消えない傷をつけてやる
オレのことを忘れないでくれ!!
ドリルを額に突き刺し、病院で目覚めると、富岡がいる
富岡:
お父さんはパニックになってウチを出て警察に捕まった
本当によく耐えてきたね もう怯えることはない
電話がかかり
母:
お父さん、舌を噛み切って自殺したって
あっけないわね 15年も地獄のような日々が続いたのに
こんなに簡単に終わっちゃうなんて と爆笑する
半年過ぎた頃、今度はあの女が壊れた
20歳で事件を起こしたニュースを見る高井
●第2話 「僕を助けてください」
記者に取り囲まれる北斗はパトカーに乗せられる
高井は「駿河児童相談所」へ行き、富岡に会う
(こんないかつい建物じゃ、子どもが相談に来るなんて出来ないな 存在も知らないだろうし
富岡から北斗への虐待の話を詳細に聞いて改めてショックを受ける高井
富岡:
あの父親が行った身体的・精神的虐待は、最悪の部類に入ります
北斗くんの心の傷は想像を絶します
僕もずっと後悔しています あんな事件を起こすまで思いつめていたなんて思わなかった
高井:父が自殺した後、1年ほどで児童福祉施設に入所してますね
富岡:北斗くんが母親を虐待しはじめたんです
独房のご飯を食べずにいた北斗だが、ガマンできずに弁当を食べる
【2011年】
父が死んで数ヶ月後、母は仕事を辞め、家事を放棄し、壊れた
何も食べない北斗は授業中もお腹が鳴る
北斗:
授業料がまだ振り込まれてない
僕のお金渡したよね? 酔ってるの? いい加減ちゃんとしてよ!
僕のバイト代だけで暮らしていけると思ってるの?
父の骨壷を抱いて泣くばかりの母親
母:お父さんが可哀相 自殺するなんてきっと苦しかったよ ごめんなさい ごめんなさい!
骨壷を壊す北斗 「こんなもん、ゴミと一緒に捨てればいいんだよ!」と母親を殴る
母は骨と写真をゴミ箱に捨てる(息子の中に夫を見たのでは?
雨の中の新聞配達でイラつく北斗
父と同じ口ぶりで母に怒る
母:ダメな母親ね 罰を与えて、私に お願い
軽く叩いても「もっと」と迫る
あの女は僕にあの男の代わりになることを求めていた
そして、僕は破壊衝動を抑えきれなくなっていた
北斗はとうとう父と同じようにハンガーを持つ
北斗:
昔、これでよく叩かれた 本当に痛かった
ミミズ腫れになって、風呂にも入れなかった
これ、あんたが考えたんだろ 殴ると自分の手が痛いからって
覚えてるか? 僕がこうされてる時、あんたはこうして口を押さえた 近所に声が聞こえないように
首を絞めた日、死のうと思って死ねなかった
何度も後悔した 何度も! 何度も!
(生まれてからずっと愛情を知らないんだもの、こうならざるを得ないかも
抵抗しない母
走って逃げて、児童相談書の富岡に会う
北斗:
助けてください 母が自分から殴られるように仕向けてきて
自分の中にもう一人の自分がいて、命令されているような気がして
僕にはあいつの血が流れている このままじゃ殺してしまう
富岡:
ありがとう よく話してくれた 勇気がいったろう
虐待を受けていた人が、虐待をする側にまわる
こういうケースは珍しくない 方法は必ず見つかる いっしょに考えよう
僕はすべてを打ち明けた
事態は一気に動き、僕は家を出ることになった
富岡も引越しを手伝う
(この場合、精神カウンセラーのほうが先に必要なのでは?
北斗:さよなら
母:さよなら
また高井が拘置所に来て、富岡に会ったことを話す
高井:
こないだまでは、新聞や雑誌の上っ面の記事にざっと目を通しただけだった
君の過去を法廷戦術に利用できるなんて言ってしまった
何があろうが私は君の味方だ どういう人間なのか理解したい
里親の近藤綾子さんの話を聞かせてくれないか
どんな人だった?
北斗:お母さんは、命をくれました 僕を別の人間に生まれ変わらせてくれたんです
「にじのいえ」で4ヶ月が過ぎた
皆なんらかの事情で親と一緒に暮らせない子どもたちだ
ここから僕は高校に通った
あの女とは完全に縁が切れた
「にじのいえ」に富岡が来て、里親の相談をされる
富岡:
相手には包み隠さず話したが、それでもいいと言っている
ここは18歳までしかいられない シスターたちもここを出た後の世話まではできない
施設には限界があるんだ
里親は、君の人生の節目節目に親身になってくれるはずだ
理屈じゃないんだな 世の中には救いの手を差し伸べる人がいる
【初対面の日】
綾子:こんなおばあちゃんでガッカリしたんじゃない?
北斗:近藤さんが見つけた夢って何ですか?
綾子:
北斗くんみたいな子をしっかりと育てることよ
私が43歳の時、夫が突然亡くなってショックでね
子どもがいなかったからいきなり一人ぼっちになっちゃって
自分は何のために生きてるんだろうなんて
もし自分が生きていた証を残せるとしたら、やっぱり人なんだなと思って
富岡:次の面会は来週2人きりになる
綾子:
北斗くん笑ってみて ニーって
人はね楽しいから笑うんじゃないの
笑っているうちに自然と楽しくなるものなの
北斗くんには笑顔のほうが似合ってる
週末ごとに交流し、2ヶ月後に正式に里子になった
(大きな畑や自然はいいね
亡夫に拝んでから食事するのが綾子の習慣
「夏休みに夏期講習に行ったら?」とすすめる
綾子:
お金は気にしなくていいの 国から月々養育費をもらっているし
1週間分のお小遣い 貯金もいいけど、遠慮なく使っていいいの
私のこと綾子さんじゃなくて、お母さんて呼んでほしい
笑っているうちに自然と楽しくなるという話はウソだった
お母さんは僕に無償の愛情を注いでくれた
でも、それは重荷だった 優しくされるほど息が詰まりそうになる
僕には優しくされる資格なんかない
夫が好きだったジャズを聴いている綾子
その荒々しい音に魅了される北斗
夏期講習に行きかけてやめ、夜の街を歩く
ゲーセンで悪い連中に声をかけられ暴力され、金をとられそうになり瓶で殴り
警察のやっかいになる
綾子:この子の母親です
北斗:違います
綾子:里親です
帰り道でも怒らない綾子
北斗は、綾子の一番大事にしている夫の写真、仏壇を壊す
北斗:なんで怒らないんですか?!
綾子:
北斗くんが苦しんでいるからよ!
母親はね、子どもが苦しんでいたらいっしょに苦しむものなの
私を試そうとするのは、私を信じたいからでしょ?
いくらでも試しなさい 私はあなたを見捨てたりなんかしない
ずっとあなたのそばにいるから あなたは私の大切な子どもだもの
号泣する北斗
北斗:あの日から僕は生まれ変わりました
高井:端爪くん、どうして話してくれる気になったのかな?
北斗:先生はどうして僕を弁護しようとするんですか 仕事だから?
高井:仕事だからだ でも話を聞いてよく分かった 君は生きて償うべき人だ その手助けをしたい
(朝ドラでも、田舎から出てきたみね子の母親代わり役をしている宮本さん ここでもいい役
それに部長のここまでシリアスに徹したドラマを観たのは初めてかも
●第3話
北斗は「神奈川拘置所」に移監され、写真を撮られ、指紋をとり
裸になり、傷などを記録され、肛門を広げて何か隠していないかまで調べられる
今度は395番
高井:
北斗は死刑になるかどうか正直分からない
少年事件でも死刑判決が下るようになりましたからね
厳罰化は止まらないし、なにより本人が極刑を強く希望しています
高井のもとに明日実(綾子のもう1人の里子)が訪ね、北斗の面会に行くと驚く
明日実:着るものの差し入れに来たの 差し入れにもややこしい規則があるのね
腕に包帯を巻いているのを見る
明日実:
高井先生はすごく頼りになりそう いい人に出会えてよかったね
裁判やる前から死刑なんて許さないからね
これだけは覚えておいて 北斗くんが死んだら、私も死ぬ
もうリスカなんて絶対しない だから命を粗末にするようなこと絶対にしないで
その命はお母さんにもらったものでしょ!
大学受験発表についてくる綾子 合格していて抱きついて喜び合う
1年半が過ぎて、北斗はかつてとは別人になり幸せの意味を噛みしめていた
北斗の姉にあたる明日実と初めて会う 綾子のもう1人の里子
東京の看護学校に行き、もうすぐ看護婦になる
北斗の誕生日を一緒に祝う
明日実:
仏壇はお母さんの一番大切なものだよ
私も散々やらかしたけど、そこまでは思いつかなかったな
私は遺伝子上の親といろいろあったからね
お母さんを試そうと思って、リスカを何度もしたけど、全然動じなかった
北斗くんがいてくれて助かってる あなたのお蔭で私は親離れができた
あなたもその時がくる
北斗:僕は離れるつもりはない
あの頃が僕の人生の最良の日々だった
なにもかも新鮮に映り、世の中には僕の知らないことがいっぱいある
豊かで可能性に満ちている お母さんがいつもそばで見守っていてくれたからだ
綾子:
北斗くん、カノジョいるの? いつか結婚して、孫の顔見せてもらわないとね
こんな変な夢見たの 北斗くんと明日実ちゃんの結婚式に出席する夢なの
夢ってほんとにいつもいいところで終わっちゃうのよね
高井が訪ねる 午前中は富岡が来た
高井:
君は今も一人ぼっちじゃない
今日は事件のきっかけについて聞きたい
綾子さんがお亡くなりになった経緯と、生田友親の“波洞水”について
【2015年の春】
綾子の体調が悪くなった
綾子:来年70歳になる 子どもはあなたで最後にすることにしたわ
北斗:一生かけて恩返しするつもりだから
綾子:北斗くんに下の世話されるなんて絶対イヤ
綾子は、肩凝りが酷くなっていたが、痛みを隠していた
半年後、綾子は入院 「肝臓がん」と診断され、治療も難しいと言われる
医師:本人への告知はどうされますか?
北斗は笑顔をつくって、「結果はまだ出てないから」とウソをつく
明日実に電話する北斗
明日実:
告知するべきよ 末期がんの患者さんは大抵そう望むらしいの
何も知らされないまま体調が悪くなれば怖くて仕方ないし
最期の時間は、自分の人生を整理するために使いたいからって
私たちが支えればきっと大丈夫 強い人だもの
私、お母さんよりあなたのことが心配 お母さんのこと愛しすぎてるから
2人で綾子に話す
綾子:
さあこれからのんびりしようかと思う時にお迎えが来るんだから
人の一生なんてフシギね きっとウチの人が呼んでるんだわ
役目を果たしたから、そろそろオレの元へ来いって もう充分生きたわ
明日実ちゃんには患者がいっぱいいるんだから、たまに顔を見せるだけでいいの
北斗くん、お仏壇の脇に銀行の通帳と印鑑があるから
これからはお金の管理もあなたに任せるから確認して
こないだウソついたでしょ 気を遣ってくれてありがとう
でももう隠し事は、一切なしよ
通帳を確認すると、北斗の口座の通帳も見つける
【2015年12月】
綾子の学生時代の親友・大杉サトコが北海道からお見舞いに来た
サトコの知り合いでがんを治したという水をもらう「波洞水」
プラチナは1本5万4000円もするが、綾子は「ほんとに美味しい」と言う
お金のことは隠して買い続ける北斗
少しずつ体力が落ちて、食欲がなくなっても「波洞水」だけは欲しがった
明日実:
抗がん剤の副作用で水だけは飲みたがるものなの
泣いてるように見えるけど、たくさん水分を摂るから自然現象よ
そろそろ覚悟しといたほうがいいと思う
北斗(→高井):
お母さんはほんとは諦めたくなんかなかったんです
「波洞水」がたった1つの頼みの綱だったんです
通帳の残高はなくなり、授業料も払えず、綾子の貯金も減ってきた頃
家にフリージャーナリストの本橋が来る
本橋:
(「波洞水」の購入者リストを見せて
あなたは60本を購入し、250万円ほどを振り込んだ
それでよくなりましたか? お気の毒ですが、あなたは詐欺に遭っています
生田が親から継いだ病院は5年前に潰れています
その時の7億円もの負債が、「波洞水」を売り始めてたった4年で完済されてます
我々は専門機関に水を調べてもらい、効能とされているものはすべてデタラメでした
あなたのお話を記事にしたい
(あの、友だちも騙されてたってこと?
北斗は「波洞水」の生田を訪ねに行く またジャズが流れる
高級車に乗った生田が通り過ぎる
北斗が病室に行くと、友だちが謝りに来る
明日実:
週刊誌にある「母親のために500万円以上もつぎこんだ青年」て北斗くんのことなのね
どうして相談してくれなかったの?
お母さんの最期の時間はめちゃくちゃになってしまいました
でも、亡くなる前に意識を取り戻し明確に意思を示してくれた
北斗:お母さん、生田に復讐したい? 分かった 僕がやる 僕が殺す
北斗には綾子がうなづいたように見える
●第4話
警官は死刑囚を迎えに行くと「これでお前らもオレの仲間だぞ 人殺しいいい!」と叫ぶ
(こんな息を張り詰めた仕事は耐えられない・・・
他の部屋から死刑なんだという会話が聞こえる 会話できる状況なのか
高井のもとに朝日新聞の仁科から電話がある
以前、弁護した安川の死刑のしらせで、禁煙中なのにタバコを吸う
高井:
判決からまだ1年だが、本人が早期の刑の執行を訴え続けたことが影響したのでは
法務省も安川なら支障がないと判断したんでしょう
吉永:
法廷を侮辱し、暴れ、弁護士の控訴も勝手に取り下げた
改心しないまま死んだんですかねえ
たまには外に出て、太陽が見れるのか
綾子が死んでも一滴も涙が出なかった
生田を殺すこと以外何も考えられなくなっていた
【2016年】
富田:今後のことはじっくり話をしよう
明日実:お母さんがいなくなっても、私たち家族なんだからね
北斗はまた東京へ行くと、生田の家には報道陣と、抗議する人々が集まり、いつかの記者もいた
夜に改めて訪ね
北斗:波洞水を飲んでいた母がとても感謝していて、ひと言お礼をと思いまして
豪華な屋敷に案内される北斗 部屋にはボディガードがいる
北斗が高額購入者だというデータもある
北斗:波洞水のお蔭で、母は安らかな最期を迎えることができました
生田:
これにはどうしても個人差があるんです
実証されないこともあるが、求め続ける人は多くいる
なぜだと思いますか?
北斗:宗教の役割を果しているから
生田:
その通りです! 波洞水は現代医学に見放された人々に救いを与えています
あなたの言う通り宗教に近い
である以上、値段がどうのこうの言うのはナンセンスだと思いませんか?
私はお布施だと考えています
お金は私利私欲のために使うわけじゃない
ろくな医療を受けられないクスリ代になるんです
今の話をメディアにしてもらえないでしょうか
一部の顧客が騒ぎだして、警察まで逮捕しようと動いている
もちろん相応の謝礼はお支払いします
北斗(急がなければ)
北斗はナイフを買う
店員「切れ味いいよー キャンプ用?」と勘違いされる
他にもシリアの戦士用だという高額のナイフも買う また頭の中にジャズが流れる
(こんな商売もあるのね
生田と会う約束をして帰ると明日実が来ていて、20歳の誕生日のお祝いをしてくれる
明日実:
死のうと思ってるの? お母さんが死んでからまだ一度も泣いてないでしょ?
悲しい時は泣かないとダメだよ
身体はここにあるのに、心はお母さんといっしょにあっちに行っちゃったみたい
鼓動が分かるでしょ? 私たちは生きてるんだよ!
明日実を拒む北斗
まだ寝てる明日実を残して家を出て生田のところへ行く
生田は事情聴取で警察に呼び出され、そのまま逮捕されるかもしれないという女性スタッフ
16時を過ぎて、「あと30分後に帰る」と言われる
女性スタッフ:
記者会見で弁護するそうだけど、あの人はあなたの考えているような人じゃ・・・
アフリカの援助の話も真っ赤なウソでした 私たち事務員ももうついていけません
バッグの中のナイフを見られて、刺し殺してしまう
そこにまた別の女性スタッフが来て、命請いをして
「死にたくないよぅ・・・」と言う彼女に何度も刺す
(ダメだ、吐き気がする
そこにブザーが鳴る 本橋が記者会見で来る
そこに生田が戻る
(ダメだギブアップ なぜここまで殺人をリアルに描く?
子どもと一緒に観てる家族もいるかもしれないのに
殺人が悪いという教訓が、逆にトラウマになるよ
すぐに動物の動画を観続けました・・・
(1時間後くらいに再びトライ
北斗はガードマンに取り押さえられる
高井:2人の被害者に対して、今どう思っている?
北斗:本当に申し訳ないと
高井:生田に対しては?
北斗:殺してやりたい ここを出られたらいつでも
高井:
生田は詐欺罪で起訴されたよ
近藤さんがうなづいた、それが君のいうお母さんとの約束だね
最愛の息子の人生がメチャクチャになる復讐行為を母親が望むものだろうか?
こないだ主治医に会って聞いてきた
死の直前になると、息が乱れてアゴが落ち、口呼吸が始まる
その場合、苦痛から顔が上下することがよくあるらしい
近藤さんがうなづいたのは、臨終間際にある不随意の動きだったなら納得がいく
君の勘違いだ
北斗:僕は勘違いであの2人を殺したっていうんですか?
高井:不幸な偶然が重なったんだ
北斗:なんだそれ ほんとに最悪だ! やっぱり僕は生まれてこなければよかったんだ
高井:生まれてこなければいい人間なんてこの世にはいない
北斗:死刑でいいです
高井:自分で勝手に決めるな! 君は裁判というものが何も分かっていない
その夜、舌を噛み切って死のうとする北斗
警官に手を後ろで縛られ、口に何かはめられている
(無知って怖いな 大学にまで行く学力がありながら
一番大切なココロについては何も教えないんだ
塀の中の時間は厳密に管理されている
自殺も許されない
僕は僕であることを忘れようとした 395番だ
死刑執行まで生かされているただの肉の塊だ
【2017年】
明日実が新年の挨拶に来る 裁判が4月から始まる
明日実:被害者遺族に手紙を書いてくれない?
北斗:僕は減刑を望んでいない
明日実:
だったら結婚して 死刑判決が執行したら家族も会えなくなる 二度と会えなくなるんだよ!
人生を棒に振っても構わない
私も子どもの頃、地獄を味わって、お母さんのもとで新しい命を授かった
私たちは魂でつながってるの
北斗:僕はサインしない
事務所に来る明日実と富田 報酬を支払うと気遣う明日実に
吉永:国選は報酬を受け取らないんです どんな難しい裁判でも先生は全力を尽くします
高井:
極刑か無期懲役しかない
良心をもつ人間ほど頑なになる傾向が強い
でもそういう態度を裁判員たちが反省していないと判断した場合、極刑もあり得る
心の周りに張り巡らせた壁をどうにか壊さないと
富田:
あの頃といっしょだな 虐待を受けた子は心に壁を作ります
私は待ったんです 辛抱強く
高井:ある人を証人として立たせたいんです(実母か?
実母は再婚しているがニュースを見ていた
髪を切った北斗
北斗:この傷は死刑になる証なんです
高井:
でも、私は全力で弁護するよ 裁判を甘くみるな
事務的に処理される裁判のほうが大多数だ
でも、今回は命を賭けた真剣勝負の世界だ
君は大勢の目に晒され続ける
その先に君がほんとうの心を見せてくれることを期待している
(やっと凄惨な場面が過ぎて、私の好きな法廷劇になりそうだ
でも、こんな複雑な事件も裁判員制度を使うの?
野次馬がたくさん裁判を傍聴に来る
遺族は写真をもって来る
まるで戦闘のように高井も事務所を出る
高井は遺影をしまうよう裁判長に願い出て認められる
「母さんには裁判を見届ける権利もないんですか?!」
「被告人に重圧を与え、公正な審議に影響を及ぼす可能性があります」
被告人の後ろには警官が座るのは万一のため?
●最終話
【公判初日】
飯岡よしえ、関本みのりの殺人について質問を受ける
北斗:
申し訳ないと思っています でも、今でも生田だけは殺してやりたい
高井先生は情状酌量を求めるけれども、その必要はありません
僕は死刑になって当然の人間です 控訴するつもりもありません
高井は虐待の話をする
高井:自己を厳しく律する態度はそこからきているのです
近藤との愛のある生活を16歳でようやく手に入れたこと
波洞水に500万円をつぎこんだこと
復讐してほしいかと聞いたこと
1時間半待ったのは、生田以外殺す気がなかったこと
高井:
不幸な偶然の連鎖によってこの事件は起きた
さらに詐欺の被害者で、亡くなった被害者はそれに関与しています
【休廷】
犯罪者は1箇所に集められているのか
【再開】
やっぱり殺人現場の写真も見なきゃいけないのか・・・
「第一発見者・本橋の証言」
被害者を見た印象を聞くと、本橋:正視に堪えませんでした
高井は記事のために取材したことを聞く
本橋:末期がん患者を騙す卑劣極まりないものでした
【閉廷】
富岡は実母に証言に来るよう訴えるが「お帰りください」の一点張り
【公判2日目】
「富岡の証言」
虐待のこと、ドライバーで額をえぐられたこと
父の自殺のこと、母への暴力のこと、助けを求められたこと
富岡:
虐待を受けた人間は依存状態になることがあります
身体にも心にも一生消えない傷を負っていました
私が見た1500人の児童の中でワースト3本の指に入る
そのうちの1人は実父の手で亡くなり、もう1人は自殺しました
今も生きているのは端爪くんだけです
検察官:1500人の児童の中で人を殺した者はいますか?
富岡:いません・・・
「明日実の証言」
綾子によって生まれ変わったことを話す
明日実:
北斗が里親を愛しすぎていたことが心配でした
私たちのような境遇の人は、最初に愛情を注いでくれた人に必死にしがみつきます
亡くなった時、感情を表さなかった 生田に復讐することしか考えてなかった
自分の心を殺してしまい、今もそのままです
何年かかっても待ちます 私は婚約者として来ました
社会に戻ったら、全力で支えます
裁判長は、北斗が同意していないので婚約というのは違うと指摘
次の証人・実母が現れ、北斗は興奮し「お前の来る場所じゃない! 帰れ!」と興奮する
高井:最後まで見届けろ!
「みさこの証言」
みさこは再婚相手との子どもを妊娠している
北斗が生まれた時のことを聞かれる
みさこ:
とても小さくて、可愛くて 最初の数日は夫も可愛がったが
泣き止まないと叩いていた 私も夫と一緒に数え切れないくらい
従わなければ、自分がやられる
針金ハンガーのこと 手で直接叩くと自分の手が痛くなるから、洋服で隠れるところを叩いた
ベランダに放置したこと、その間、性行為を強制されていたこと
検察官が「本件に関係ありません」と制すると
高井:本当に関係ないと思いますか? 虐待は人格形成に大きな影響を与えています!
検察官の異議は却下
夫が亡くなった後のこと 自分を殴るよう誘ったこと
高井:
虐待を受けた子に虐待させる これほど残酷な行為はないと思いませんか?
彼の暴力の芽を植えつけたのは両親の虐待ではないですか
みさこ:
今の再婚相手は何も知らない
北斗を人殺しにしてしまったのは私の責任です
高井:
今の生活をすべて失うリスクを承知で出廷したんですね 我が子のために
あなたは息子さんを愛していましたか?
みさこ:
・・・
ひと言いいですか 一人で生きていきなさい 罪を償いながら
帰りの車中、震えが止まらない北斗
独房で幼い頃の自分を見る
「今すぐ死ねたらいいのにね でも死ねなかった
あの人はあの人なりに僕たちのこと愛していたんだね
きっとお腹の中の子には優しくできるよ
法廷で丸裸にされるのは辛いよね 僕があのウチから逃げられなかったように
あなたも法廷から逃げ出せないんだ」
(ココロが耐えられなくなると、人格乖離が始まるんだな
【公判3日目】
「よしえの夫の証言」
善良な妻で、母でした あの日以来、私も息子も抜け殻になりました
私たちの29年間と、これからの時間も殺してしまった
被告人を死刑にすることを希望します
高井:
研究所に勤めて3年 詐欺報道に戸惑っていた
仕事内容は事務 詐欺には関わっていなかったと言いましたが
事務職の平均的な給料は300万円 よしえさんの年収は700万円です
息子がキレる
「なんなんだ 規則、規則ってうんざりだ!
そいつが不幸な生い立ちでも、殺された側には何の関係もないんです!
あんた、自分で舌噛んで死んでくれよ!」
「関本みのりの妹の証言」
両親が離婚 祖母の家で母はパートをして育ててくれた
その母も突然亡くなり、姉は生計をたてるために働いてくれた
人づてに給料がいいからと研究所で働き始めた
ウチではそのお金がほんとに有り難かった
姉が悪いことをしたなんて思わない 尊敬している
被告人は憎い 死刑になってほしい
でも、昨日おばあちゃんは「もうこれ以上誰かが死ぬのはたくさんだ」と言いました
姉ならどう言うだろうかと考えました
きっと死刑を望まないと思います
ごめんなさい飯岡さん ごめんなさい
北斗は蒼白のまま驚く
【拘置所】
高井:
明日、検察から死刑を求刑されるだろう
君はようやく真正面から裁判に向き合うようになった
私も、裁判官も、遺族もみなへとへとだ
ひと一人の生き死にがかかってるからね
私がこれまで関わった裁判の中で9人の死刑囚が生まれた
そのうち2人はこの世にいない
1人は社会を呪い、なにより自分を呪い続けて死んでいった
でももう1人は違う 罪を心から悔いて本来の自分を取り戻した
見違えるように改心したのに死刑は執行された
私はヒトは変わることが出来ると信じている
今度は自分の力で必ず変わることが出来る
だから生きるんだ! 生きるんだ! 生きるんだ!
北斗:やめろ!
高井:明日の意見陳述ですべてさらけ出せ! ほんとうの心を見せてくれ
【公判4日目】
検察官:一見複雑な事件に見えますが、実際は単純で粗暴です・・・死刑を求刑します
【被告人陳述】
僕には抱きしめられた記憶がありませんでした
小さい頃から生まれてこなければよかったと思っていました
そんな僕を初めて抱きしめてくれたのがお母さんでした
お母さんは僕に生まれてきてよかったと教えてくれました
生きることの価値を教えてくれました
僕はお母さんを騙した生田が許せませんでした
飯岡よしえさんと、関本みのりさんを殺すつもりはありませんでした
本当に取り返しのつかないことをしてしまいました
飯岡さんのご遺族は僕に死んでくれと言いました そうするつもりでした
事件を起こしてから死ぬことばかり考えてきました
死ぬ以外に罪を償うことはできない
遺伝子上の父親は舌を噛んで自殺した 僕もそうしたかった
死んで僕の中に流れる悪魔の血を断ち切りたかった
でも出来なかった!
出されたものを食べて、排せつして、また食べて、
そんな自分が許せないのに、どうしてもそうしてしまうのです
身体が生きようとするんです!
僕は、死刑になって当然だと言いました 今もその気持ちに変わりありません
でも、もし、許してもらえるなら、ほんとは生きたいんです!
生きて償いたいんです!
遺族に深く一礼する
【公判最終日】
判決は、無期懲役
飯岡の息子は怒りで叫び、関本家、明日実らは泣く
裁判長:では、閉廷します
飯岡家の息子:これで終わりだと思うなよ!
検察官:ただちに控訴の準備に入らせていただきます
最後に法廷に一礼して去る高井
原作:石田衣良(「池袋ウエストゲートパーク」と同じ原作者ってビックリ!
監督・脚本:瀧本智行
出演:
端爪北斗 - 中山優馬
端爪至高 - 村上淳
端爪美砂子 - 中村優子
高井聡一 - 松尾スズキ
近藤綾子 - 宮本信子 ほか
【ブログ内関連記事】
ドラマ『罪と罰 A Falsified Romance』
ドラマ10「シングルマザーズ」全8回(2012)
『愛を乞うひと』(1998)
部長がイチオシしていた出演作をやっと観た
こういった社会派ドラマは好きなジャンルだけれども
途中の殺人シーンがあまりに生々しくて、途中で中断
たくさんイヌ&ネコの動画を観て、ひと休みしてから続きを観た
この物語に欠かせない残虐性かもしれないけれども
テレビ画面が大きくなり、より画質も上がり、3Dが主流になったりしたら
もうホラー、サスペンスなんて観られなくなるな/怖×∞
今も身近などこかで密かに凄惨な虐待を受けている人がいると思うとゾッとする
と、同時に、人が人を裁く難しさ、死刑制度の有り方も考えさせられた
自分がもし裁判員の一人に加わり、凄惨な殺人写真を見せられたりして
たった4日間で、人の生き死にを決めるなんて出来ないよ・・・
私も原作者と同じく、償うなら、“死には死を”ではなく
じっくりと自分のした取り返しのつかない過ちを
一生かけて考えることのほうがいいと思うけれども
たとえば、レイプなどの性犯罪が、場合によっては数年の服役で社会復帰する例などは
性癖が変わらないかぎり再犯につながる可能性を考えると
今の法廷、法律のあり方も、時代のスピードの変化の速さに合わせて
どんどん変えていかなければならないと思う
●第1話 「僕を、死刑にしてください」
独房で血尿が出てる17番の端爪北斗
3日続けて弁護士が来ていると呼び出される
国選弁護人の高井(もう部長登場!)は親切
「僕は死刑でいいんです」
「君は2人の人間を殺した
私は死刑制度に反対だ 極刑にすることに全力を注ぐつもりだ
今回の事件は哀しい出来事の連鎖で起きた 情状酌量の余地は充分にある
君の不幸な生い立ちだって・・・」
「僕を死刑にしてください」
「僕は諦めの悪い男でね 君の話をもっと聞かせてくれ!」
「僕には悪魔の血が流れている 僕は生まれてはいけなかった」
【2005年7月】
小学生の北斗は、夏でも長袖を着て、クラスでも暗い存在だが、成績はいい
服を脱ぐと酷いアザだらけの体
モデルハウスを案内する父
母は虚脱状態
父が家に帰るとものすごい気遣いで出迎える母と息子
夕食を用意して21時になっても、父がテーブルにつくまで食べてはいけないルール
北斗は、空腹から思わず唐揚げを食べてしまうと、父が見ていた
父:ルールを破るとどうなる
北斗:罰があります
母:顔はダメ 2人とも外に出られなくなります
父:
罪をおかした者には罰が与えられる
今日も無教養な人間の相手をさせられた
お前にはそんな人間になってほしくない
ねじった針金ハンガーで殴る父
母:お父さんにお礼を言いなさい
(もうすでに胃が痛い・・・どうして逃げられないんだろう
あの男は人生の敗北者だった 大学に失敗し、就職も思うようにならなかった
転職を繰り返し、そのたびに給料が安くなり、プライドを傷つけられ
その鬱屈は僕とあの女に向けられた
寒いベランダで一夜を明かす北斗
あの女は僕を守ろうともしなかった 自分に刃が向かうことをただただ恐れていた
【2006年】
クラスメートの修司が「ウチに遊びに来ない?」と誘う
修司:僕たちって似てると思わない? 他のみんなは子どもっぽくて
母に許可をもらい、夕食に誘われるままご馳走になる 北斗の成績が良いと聞いて興味をもつ
父親:きっと親御さんのしつけがしっかりしてるんだね
夜中に家に帰る北斗
父:
医者の家の飯は美味かったか? 今日、会社クビになったんだ
お前の外出はお母さんが許可したから罰を与えた
タバコを買う間、お母さんがお前にしつけをするそうだ
今度は母親から虐待を受ける
母:
あんたを妊娠したせいで、あいつと結婚しなきゃならなかった
あんたは悪魔の子だ なんで生まれてきた!
北斗の首を絞め、我に返り狂ったように笑う
(もうすでに怖くて見ていられない・・・
「生まれてきて ごめんなさい」と書き置きをして逃げ出す北斗
道路に飛び出そうとしても出来ない 橋をのぼると雪が降る
自販機が温かくて抱きしめる
僕はヒトに抱きしめられた記憶がなかった
抱きしめてくれたのはあの自動販売機だけだった
あの時、死んでさえいれば
*
高井は事務所の更新料を払えない
脅迫の手紙もよくある
事務員・吉永の給料も滞っている
【2010年】
その後もあの男に怯える毎日が続き、永遠と思えるほど長い時間だった
地獄の日々に変化が訪れたのは中学3年生の頃
新聞配達のバイトをしている北斗(え? 家に戻ったの?
母:家賃を振り込まないと・・・ 私もパートで働いたほうが
父:好きにしろ
父は、リフォーム業者を装って、シロアリ駆除したほうがいいと老人を騙す
「リフォーム詐欺だろ? さっさと出てけ!」
北斗は進路指導員に呼び出される
父が詐欺の仕事をしていることと、小さい頃から虐待されてるのか?と聞かれて
北斗:全部ウソです! 父は立派な人です! と興奮して否定する
父:金を貯めてここから逃げ出そうと思ってるんだろ?
そこに玄関のチャイムがあり、児童相談所から富岡が来る
富岡:お宅は以前から通報を受けていますね
父:息子は成績優秀でなんの問題もありません
富岡:警察も何度かかけつけているようです
父:夫婦ケンカが過ぎて、納得して帰ってもらいました
富岡:
虐待は犯罪です 私は絶対に許しません 北斗くん、奥さんも必ず110番してください!
あなたからも目を離しませんよ!
その日から怯える父
近所や電車の乗客の目が厳しく見つめる幻覚を見て電車内で暴れ出す
あの男は壊れた いや元々壊れていたのだ
僕らを奴隷のように支配することでギリギリ保っていただけだ
一歩も外に出なくなり、あの女が保険の外交員を始めた
暴力はピタリとおさまった
【2011年】
父:今日は入学式だったな おめでとう
(どのみち、子どもが大きくなって、自分が老いれば暴力も続かないってことか
突然、北斗の部屋に入り「こんなものが出てきた」と北斗の赤ちゃんの写真を見せる
父:
お前はほんとうにキレイだった 一点の穢れもなかった
オレにはもうお前しかいない お前はオレの子だ
お前の体にはオレの血が流れている
お前にも一生消えない傷をつけてやる
オレのことを忘れないでくれ!!
ドリルを額に突き刺し、病院で目覚めると、富岡がいる
富岡:
お父さんはパニックになってウチを出て警察に捕まった
本当によく耐えてきたね もう怯えることはない
電話がかかり
母:
お父さん、舌を噛み切って自殺したって
あっけないわね 15年も地獄のような日々が続いたのに
こんなに簡単に終わっちゃうなんて と爆笑する
半年過ぎた頃、今度はあの女が壊れた
20歳で事件を起こしたニュースを見る高井
●第2話 「僕を助けてください」
記者に取り囲まれる北斗はパトカーに乗せられる
高井は「駿河児童相談所」へ行き、富岡に会う
(こんないかつい建物じゃ、子どもが相談に来るなんて出来ないな 存在も知らないだろうし
富岡から北斗への虐待の話を詳細に聞いて改めてショックを受ける高井
富岡:
あの父親が行った身体的・精神的虐待は、最悪の部類に入ります
北斗くんの心の傷は想像を絶します
僕もずっと後悔しています あんな事件を起こすまで思いつめていたなんて思わなかった
高井:父が自殺した後、1年ほどで児童福祉施設に入所してますね
富岡:北斗くんが母親を虐待しはじめたんです
独房のご飯を食べずにいた北斗だが、ガマンできずに弁当を食べる
【2011年】
父が死んで数ヶ月後、母は仕事を辞め、家事を放棄し、壊れた
何も食べない北斗は授業中もお腹が鳴る
北斗:
授業料がまだ振り込まれてない
僕のお金渡したよね? 酔ってるの? いい加減ちゃんとしてよ!
僕のバイト代だけで暮らしていけると思ってるの?
父の骨壷を抱いて泣くばかりの母親
母:お父さんが可哀相 自殺するなんてきっと苦しかったよ ごめんなさい ごめんなさい!
骨壷を壊す北斗 「こんなもん、ゴミと一緒に捨てればいいんだよ!」と母親を殴る
母は骨と写真をゴミ箱に捨てる(息子の中に夫を見たのでは?
雨の中の新聞配達でイラつく北斗
父と同じ口ぶりで母に怒る
母:ダメな母親ね 罰を与えて、私に お願い
軽く叩いても「もっと」と迫る
あの女は僕にあの男の代わりになることを求めていた
そして、僕は破壊衝動を抑えきれなくなっていた
北斗はとうとう父と同じようにハンガーを持つ
北斗:
昔、これでよく叩かれた 本当に痛かった
ミミズ腫れになって、風呂にも入れなかった
これ、あんたが考えたんだろ 殴ると自分の手が痛いからって
覚えてるか? 僕がこうされてる時、あんたはこうして口を押さえた 近所に声が聞こえないように
首を絞めた日、死のうと思って死ねなかった
何度も後悔した 何度も! 何度も!
(生まれてからずっと愛情を知らないんだもの、こうならざるを得ないかも
抵抗しない母
走って逃げて、児童相談書の富岡に会う
北斗:
助けてください 母が自分から殴られるように仕向けてきて
自分の中にもう一人の自分がいて、命令されているような気がして
僕にはあいつの血が流れている このままじゃ殺してしまう
富岡:
ありがとう よく話してくれた 勇気がいったろう
虐待を受けていた人が、虐待をする側にまわる
こういうケースは珍しくない 方法は必ず見つかる いっしょに考えよう
僕はすべてを打ち明けた
事態は一気に動き、僕は家を出ることになった
富岡も引越しを手伝う
(この場合、精神カウンセラーのほうが先に必要なのでは?
北斗:さよなら
母:さよなら
また高井が拘置所に来て、富岡に会ったことを話す
高井:
こないだまでは、新聞や雑誌の上っ面の記事にざっと目を通しただけだった
君の過去を法廷戦術に利用できるなんて言ってしまった
何があろうが私は君の味方だ どういう人間なのか理解したい
里親の近藤綾子さんの話を聞かせてくれないか
どんな人だった?
北斗:お母さんは、命をくれました 僕を別の人間に生まれ変わらせてくれたんです
「にじのいえ」で4ヶ月が過ぎた
皆なんらかの事情で親と一緒に暮らせない子どもたちだ
ここから僕は高校に通った
あの女とは完全に縁が切れた
「にじのいえ」に富岡が来て、里親の相談をされる
富岡:
相手には包み隠さず話したが、それでもいいと言っている
ここは18歳までしかいられない シスターたちもここを出た後の世話まではできない
施設には限界があるんだ
里親は、君の人生の節目節目に親身になってくれるはずだ
理屈じゃないんだな 世の中には救いの手を差し伸べる人がいる
【初対面の日】
綾子:こんなおばあちゃんでガッカリしたんじゃない?
北斗:近藤さんが見つけた夢って何ですか?
綾子:
北斗くんみたいな子をしっかりと育てることよ
私が43歳の時、夫が突然亡くなってショックでね
子どもがいなかったからいきなり一人ぼっちになっちゃって
自分は何のために生きてるんだろうなんて
もし自分が生きていた証を残せるとしたら、やっぱり人なんだなと思って
富岡:次の面会は来週2人きりになる
綾子:
北斗くん笑ってみて ニーって
人はね楽しいから笑うんじゃないの
笑っているうちに自然と楽しくなるものなの
北斗くんには笑顔のほうが似合ってる
週末ごとに交流し、2ヶ月後に正式に里子になった
(大きな畑や自然はいいね
亡夫に拝んでから食事するのが綾子の習慣
「夏休みに夏期講習に行ったら?」とすすめる
綾子:
お金は気にしなくていいの 国から月々養育費をもらっているし
1週間分のお小遣い 貯金もいいけど、遠慮なく使っていいいの
私のこと綾子さんじゃなくて、お母さんて呼んでほしい
笑っているうちに自然と楽しくなるという話はウソだった
お母さんは僕に無償の愛情を注いでくれた
でも、それは重荷だった 優しくされるほど息が詰まりそうになる
僕には優しくされる資格なんかない
夫が好きだったジャズを聴いている綾子
その荒々しい音に魅了される北斗
夏期講習に行きかけてやめ、夜の街を歩く
ゲーセンで悪い連中に声をかけられ暴力され、金をとられそうになり瓶で殴り
警察のやっかいになる
綾子:この子の母親です
北斗:違います
綾子:里親です
帰り道でも怒らない綾子
北斗は、綾子の一番大事にしている夫の写真、仏壇を壊す
北斗:なんで怒らないんですか?!
綾子:
北斗くんが苦しんでいるからよ!
母親はね、子どもが苦しんでいたらいっしょに苦しむものなの
私を試そうとするのは、私を信じたいからでしょ?
いくらでも試しなさい 私はあなたを見捨てたりなんかしない
ずっとあなたのそばにいるから あなたは私の大切な子どもだもの
号泣する北斗
北斗:あの日から僕は生まれ変わりました
高井:端爪くん、どうして話してくれる気になったのかな?
北斗:先生はどうして僕を弁護しようとするんですか 仕事だから?
高井:仕事だからだ でも話を聞いてよく分かった 君は生きて償うべき人だ その手助けをしたい
(朝ドラでも、田舎から出てきたみね子の母親代わり役をしている宮本さん ここでもいい役
それに部長のここまでシリアスに徹したドラマを観たのは初めてかも
●第3話
北斗は「神奈川拘置所」に移監され、写真を撮られ、指紋をとり
裸になり、傷などを記録され、肛門を広げて何か隠していないかまで調べられる
今度は395番
高井:
北斗は死刑になるかどうか正直分からない
少年事件でも死刑判決が下るようになりましたからね
厳罰化は止まらないし、なにより本人が極刑を強く希望しています
高井のもとに明日実(綾子のもう1人の里子)が訪ね、北斗の面会に行くと驚く
明日実:着るものの差し入れに来たの 差し入れにもややこしい規則があるのね
腕に包帯を巻いているのを見る
明日実:
高井先生はすごく頼りになりそう いい人に出会えてよかったね
裁判やる前から死刑なんて許さないからね
これだけは覚えておいて 北斗くんが死んだら、私も死ぬ
もうリスカなんて絶対しない だから命を粗末にするようなこと絶対にしないで
その命はお母さんにもらったものでしょ!
大学受験発表についてくる綾子 合格していて抱きついて喜び合う
1年半が過ぎて、北斗はかつてとは別人になり幸せの意味を噛みしめていた
北斗の姉にあたる明日実と初めて会う 綾子のもう1人の里子
東京の看護学校に行き、もうすぐ看護婦になる
北斗の誕生日を一緒に祝う
明日実:
仏壇はお母さんの一番大切なものだよ
私も散々やらかしたけど、そこまでは思いつかなかったな
私は遺伝子上の親といろいろあったからね
お母さんを試そうと思って、リスカを何度もしたけど、全然動じなかった
北斗くんがいてくれて助かってる あなたのお蔭で私は親離れができた
あなたもその時がくる
北斗:僕は離れるつもりはない
あの頃が僕の人生の最良の日々だった
なにもかも新鮮に映り、世の中には僕の知らないことがいっぱいある
豊かで可能性に満ちている お母さんがいつもそばで見守っていてくれたからだ
綾子:
北斗くん、カノジョいるの? いつか結婚して、孫の顔見せてもらわないとね
こんな変な夢見たの 北斗くんと明日実ちゃんの結婚式に出席する夢なの
夢ってほんとにいつもいいところで終わっちゃうのよね
高井が訪ねる 午前中は富岡が来た
高井:
君は今も一人ぼっちじゃない
今日は事件のきっかけについて聞きたい
綾子さんがお亡くなりになった経緯と、生田友親の“波洞水”について
【2015年の春】
綾子の体調が悪くなった
綾子:来年70歳になる 子どもはあなたで最後にすることにしたわ
北斗:一生かけて恩返しするつもりだから
綾子:北斗くんに下の世話されるなんて絶対イヤ
綾子は、肩凝りが酷くなっていたが、痛みを隠していた
半年後、綾子は入院 「肝臓がん」と診断され、治療も難しいと言われる
医師:本人への告知はどうされますか?
北斗は笑顔をつくって、「結果はまだ出てないから」とウソをつく
明日実に電話する北斗
明日実:
告知するべきよ 末期がんの患者さんは大抵そう望むらしいの
何も知らされないまま体調が悪くなれば怖くて仕方ないし
最期の時間は、自分の人生を整理するために使いたいからって
私たちが支えればきっと大丈夫 強い人だもの
私、お母さんよりあなたのことが心配 お母さんのこと愛しすぎてるから
2人で綾子に話す
綾子:
さあこれからのんびりしようかと思う時にお迎えが来るんだから
人の一生なんてフシギね きっとウチの人が呼んでるんだわ
役目を果たしたから、そろそろオレの元へ来いって もう充分生きたわ
明日実ちゃんには患者がいっぱいいるんだから、たまに顔を見せるだけでいいの
北斗くん、お仏壇の脇に銀行の通帳と印鑑があるから
これからはお金の管理もあなたに任せるから確認して
こないだウソついたでしょ 気を遣ってくれてありがとう
でももう隠し事は、一切なしよ
通帳を確認すると、北斗の口座の通帳も見つける
【2015年12月】
綾子の学生時代の親友・大杉サトコが北海道からお見舞いに来た
サトコの知り合いでがんを治したという水をもらう「波洞水」
プラチナは1本5万4000円もするが、綾子は「ほんとに美味しい」と言う
お金のことは隠して買い続ける北斗
少しずつ体力が落ちて、食欲がなくなっても「波洞水」だけは欲しがった
明日実:
抗がん剤の副作用で水だけは飲みたがるものなの
泣いてるように見えるけど、たくさん水分を摂るから自然現象よ
そろそろ覚悟しといたほうがいいと思う
北斗(→高井):
お母さんはほんとは諦めたくなんかなかったんです
「波洞水」がたった1つの頼みの綱だったんです
通帳の残高はなくなり、授業料も払えず、綾子の貯金も減ってきた頃
家にフリージャーナリストの本橋が来る
本橋:
(「波洞水」の購入者リストを見せて
あなたは60本を購入し、250万円ほどを振り込んだ
それでよくなりましたか? お気の毒ですが、あなたは詐欺に遭っています
生田が親から継いだ病院は5年前に潰れています
その時の7億円もの負債が、「波洞水」を売り始めてたった4年で完済されてます
我々は専門機関に水を調べてもらい、効能とされているものはすべてデタラメでした
あなたのお話を記事にしたい
(あの、友だちも騙されてたってこと?
北斗は「波洞水」の生田を訪ねに行く またジャズが流れる
高級車に乗った生田が通り過ぎる
北斗が病室に行くと、友だちが謝りに来る
明日実:
週刊誌にある「母親のために500万円以上もつぎこんだ青年」て北斗くんのことなのね
どうして相談してくれなかったの?
お母さんの最期の時間はめちゃくちゃになってしまいました
でも、亡くなる前に意識を取り戻し明確に意思を示してくれた
北斗:お母さん、生田に復讐したい? 分かった 僕がやる 僕が殺す
北斗には綾子がうなづいたように見える
●第4話
警官は死刑囚を迎えに行くと「これでお前らもオレの仲間だぞ 人殺しいいい!」と叫ぶ
(こんな息を張り詰めた仕事は耐えられない・・・
他の部屋から死刑なんだという会話が聞こえる 会話できる状況なのか
高井のもとに朝日新聞の仁科から電話がある
以前、弁護した安川の死刑のしらせで、禁煙中なのにタバコを吸う
高井:
判決からまだ1年だが、本人が早期の刑の執行を訴え続けたことが影響したのでは
法務省も安川なら支障がないと判断したんでしょう
吉永:
法廷を侮辱し、暴れ、弁護士の控訴も勝手に取り下げた
改心しないまま死んだんですかねえ
たまには外に出て、太陽が見れるのか
綾子が死んでも一滴も涙が出なかった
生田を殺すこと以外何も考えられなくなっていた
【2016年】
富田:今後のことはじっくり話をしよう
明日実:お母さんがいなくなっても、私たち家族なんだからね
北斗はまた東京へ行くと、生田の家には報道陣と、抗議する人々が集まり、いつかの記者もいた
夜に改めて訪ね
北斗:波洞水を飲んでいた母がとても感謝していて、ひと言お礼をと思いまして
豪華な屋敷に案内される北斗 部屋にはボディガードがいる
北斗が高額購入者だというデータもある
北斗:波洞水のお蔭で、母は安らかな最期を迎えることができました
生田:
これにはどうしても個人差があるんです
実証されないこともあるが、求め続ける人は多くいる
なぜだと思いますか?
北斗:宗教の役割を果しているから
生田:
その通りです! 波洞水は現代医学に見放された人々に救いを与えています
あなたの言う通り宗教に近い
である以上、値段がどうのこうの言うのはナンセンスだと思いませんか?
私はお布施だと考えています
お金は私利私欲のために使うわけじゃない
ろくな医療を受けられないクスリ代になるんです
今の話をメディアにしてもらえないでしょうか
一部の顧客が騒ぎだして、警察まで逮捕しようと動いている
もちろん相応の謝礼はお支払いします
北斗(急がなければ)
北斗はナイフを買う
店員「切れ味いいよー キャンプ用?」と勘違いされる
他にもシリアの戦士用だという高額のナイフも買う また頭の中にジャズが流れる
(こんな商売もあるのね
生田と会う約束をして帰ると明日実が来ていて、20歳の誕生日のお祝いをしてくれる
明日実:
死のうと思ってるの? お母さんが死んでからまだ一度も泣いてないでしょ?
悲しい時は泣かないとダメだよ
身体はここにあるのに、心はお母さんといっしょにあっちに行っちゃったみたい
鼓動が分かるでしょ? 私たちは生きてるんだよ!
明日実を拒む北斗
まだ寝てる明日実を残して家を出て生田のところへ行く
生田は事情聴取で警察に呼び出され、そのまま逮捕されるかもしれないという女性スタッフ
16時を過ぎて、「あと30分後に帰る」と言われる
女性スタッフ:
記者会見で弁護するそうだけど、あの人はあなたの考えているような人じゃ・・・
アフリカの援助の話も真っ赤なウソでした 私たち事務員ももうついていけません
バッグの中のナイフを見られて、刺し殺してしまう
そこにまた別の女性スタッフが来て、命請いをして
「死にたくないよぅ・・・」と言う彼女に何度も刺す
(ダメだ、吐き気がする
そこにブザーが鳴る 本橋が記者会見で来る
そこに生田が戻る
(ダメだギブアップ なぜここまで殺人をリアルに描く?
子どもと一緒に観てる家族もいるかもしれないのに
殺人が悪いという教訓が、逆にトラウマになるよ
すぐに動物の動画を観続けました・・・
(1時間後くらいに再びトライ
北斗はガードマンに取り押さえられる
高井:2人の被害者に対して、今どう思っている?
北斗:本当に申し訳ないと
高井:生田に対しては?
北斗:殺してやりたい ここを出られたらいつでも
高井:
生田は詐欺罪で起訴されたよ
近藤さんがうなづいた、それが君のいうお母さんとの約束だね
最愛の息子の人生がメチャクチャになる復讐行為を母親が望むものだろうか?
こないだ主治医に会って聞いてきた
死の直前になると、息が乱れてアゴが落ち、口呼吸が始まる
その場合、苦痛から顔が上下することがよくあるらしい
近藤さんがうなづいたのは、臨終間際にある不随意の動きだったなら納得がいく
君の勘違いだ
北斗:僕は勘違いであの2人を殺したっていうんですか?
高井:不幸な偶然が重なったんだ
北斗:なんだそれ ほんとに最悪だ! やっぱり僕は生まれてこなければよかったんだ
高井:生まれてこなければいい人間なんてこの世にはいない
北斗:死刑でいいです
高井:自分で勝手に決めるな! 君は裁判というものが何も分かっていない
その夜、舌を噛み切って死のうとする北斗
警官に手を後ろで縛られ、口に何かはめられている
(無知って怖いな 大学にまで行く学力がありながら
一番大切なココロについては何も教えないんだ
塀の中の時間は厳密に管理されている
自殺も許されない
僕は僕であることを忘れようとした 395番だ
死刑執行まで生かされているただの肉の塊だ
【2017年】
明日実が新年の挨拶に来る 裁判が4月から始まる
明日実:被害者遺族に手紙を書いてくれない?
北斗:僕は減刑を望んでいない
明日実:
だったら結婚して 死刑判決が執行したら家族も会えなくなる 二度と会えなくなるんだよ!
人生を棒に振っても構わない
私も子どもの頃、地獄を味わって、お母さんのもとで新しい命を授かった
私たちは魂でつながってるの
北斗:僕はサインしない
事務所に来る明日実と富田 報酬を支払うと気遣う明日実に
吉永:国選は報酬を受け取らないんです どんな難しい裁判でも先生は全力を尽くします
高井:
極刑か無期懲役しかない
良心をもつ人間ほど頑なになる傾向が強い
でもそういう態度を裁判員たちが反省していないと判断した場合、極刑もあり得る
心の周りに張り巡らせた壁をどうにか壊さないと
富田:
あの頃といっしょだな 虐待を受けた子は心に壁を作ります
私は待ったんです 辛抱強く
高井:ある人を証人として立たせたいんです(実母か?
実母は再婚しているがニュースを見ていた
髪を切った北斗
北斗:この傷は死刑になる証なんです
高井:
でも、私は全力で弁護するよ 裁判を甘くみるな
事務的に処理される裁判のほうが大多数だ
でも、今回は命を賭けた真剣勝負の世界だ
君は大勢の目に晒され続ける
その先に君がほんとうの心を見せてくれることを期待している
(やっと凄惨な場面が過ぎて、私の好きな法廷劇になりそうだ
でも、こんな複雑な事件も裁判員制度を使うの?
野次馬がたくさん裁判を傍聴に来る
遺族は写真をもって来る
まるで戦闘のように高井も事務所を出る
高井は遺影をしまうよう裁判長に願い出て認められる
「母さんには裁判を見届ける権利もないんですか?!」
「被告人に重圧を与え、公正な審議に影響を及ぼす可能性があります」
被告人の後ろには警官が座るのは万一のため?
●最終話
【公判初日】
飯岡よしえ、関本みのりの殺人について質問を受ける
北斗:
申し訳ないと思っています でも、今でも生田だけは殺してやりたい
高井先生は情状酌量を求めるけれども、その必要はありません
僕は死刑になって当然の人間です 控訴するつもりもありません
高井は虐待の話をする
高井:自己を厳しく律する態度はそこからきているのです
近藤との愛のある生活を16歳でようやく手に入れたこと
波洞水に500万円をつぎこんだこと
復讐してほしいかと聞いたこと
1時間半待ったのは、生田以外殺す気がなかったこと
高井:
不幸な偶然の連鎖によってこの事件は起きた
さらに詐欺の被害者で、亡くなった被害者はそれに関与しています
【休廷】
犯罪者は1箇所に集められているのか
【再開】
やっぱり殺人現場の写真も見なきゃいけないのか・・・
「第一発見者・本橋の証言」
被害者を見た印象を聞くと、本橋:正視に堪えませんでした
高井は記事のために取材したことを聞く
本橋:末期がん患者を騙す卑劣極まりないものでした
【閉廷】
富岡は実母に証言に来るよう訴えるが「お帰りください」の一点張り
【公判2日目】
「富岡の証言」
虐待のこと、ドライバーで額をえぐられたこと
父の自殺のこと、母への暴力のこと、助けを求められたこと
富岡:
虐待を受けた人間は依存状態になることがあります
身体にも心にも一生消えない傷を負っていました
私が見た1500人の児童の中でワースト3本の指に入る
そのうちの1人は実父の手で亡くなり、もう1人は自殺しました
今も生きているのは端爪くんだけです
検察官:1500人の児童の中で人を殺した者はいますか?
富岡:いません・・・
「明日実の証言」
綾子によって生まれ変わったことを話す
明日実:
北斗が里親を愛しすぎていたことが心配でした
私たちのような境遇の人は、最初に愛情を注いでくれた人に必死にしがみつきます
亡くなった時、感情を表さなかった 生田に復讐することしか考えてなかった
自分の心を殺してしまい、今もそのままです
何年かかっても待ちます 私は婚約者として来ました
社会に戻ったら、全力で支えます
裁判長は、北斗が同意していないので婚約というのは違うと指摘
次の証人・実母が現れ、北斗は興奮し「お前の来る場所じゃない! 帰れ!」と興奮する
高井:最後まで見届けろ!
「みさこの証言」
みさこは再婚相手との子どもを妊娠している
北斗が生まれた時のことを聞かれる
みさこ:
とても小さくて、可愛くて 最初の数日は夫も可愛がったが
泣き止まないと叩いていた 私も夫と一緒に数え切れないくらい
従わなければ、自分がやられる
針金ハンガーのこと 手で直接叩くと自分の手が痛くなるから、洋服で隠れるところを叩いた
ベランダに放置したこと、その間、性行為を強制されていたこと
検察官が「本件に関係ありません」と制すると
高井:本当に関係ないと思いますか? 虐待は人格形成に大きな影響を与えています!
検察官の異議は却下
夫が亡くなった後のこと 自分を殴るよう誘ったこと
高井:
虐待を受けた子に虐待させる これほど残酷な行為はないと思いませんか?
彼の暴力の芽を植えつけたのは両親の虐待ではないですか
みさこ:
今の再婚相手は何も知らない
北斗を人殺しにしてしまったのは私の責任です
高井:
今の生活をすべて失うリスクを承知で出廷したんですね 我が子のために
あなたは息子さんを愛していましたか?
みさこ:
・・・
ひと言いいですか 一人で生きていきなさい 罪を償いながら
帰りの車中、震えが止まらない北斗
独房で幼い頃の自分を見る
「今すぐ死ねたらいいのにね でも死ねなかった
あの人はあの人なりに僕たちのこと愛していたんだね
きっとお腹の中の子には優しくできるよ
法廷で丸裸にされるのは辛いよね 僕があのウチから逃げられなかったように
あなたも法廷から逃げ出せないんだ」
(ココロが耐えられなくなると、人格乖離が始まるんだな
【公判3日目】
「よしえの夫の証言」
善良な妻で、母でした あの日以来、私も息子も抜け殻になりました
私たちの29年間と、これからの時間も殺してしまった
被告人を死刑にすることを希望します
高井:
研究所に勤めて3年 詐欺報道に戸惑っていた
仕事内容は事務 詐欺には関わっていなかったと言いましたが
事務職の平均的な給料は300万円 よしえさんの年収は700万円です
息子がキレる
「なんなんだ 規則、規則ってうんざりだ!
そいつが不幸な生い立ちでも、殺された側には何の関係もないんです!
あんた、自分で舌噛んで死んでくれよ!」
「関本みのりの妹の証言」
両親が離婚 祖母の家で母はパートをして育ててくれた
その母も突然亡くなり、姉は生計をたてるために働いてくれた
人づてに給料がいいからと研究所で働き始めた
ウチではそのお金がほんとに有り難かった
姉が悪いことをしたなんて思わない 尊敬している
被告人は憎い 死刑になってほしい
でも、昨日おばあちゃんは「もうこれ以上誰かが死ぬのはたくさんだ」と言いました
姉ならどう言うだろうかと考えました
きっと死刑を望まないと思います
ごめんなさい飯岡さん ごめんなさい
北斗は蒼白のまま驚く
【拘置所】
高井:
明日、検察から死刑を求刑されるだろう
君はようやく真正面から裁判に向き合うようになった
私も、裁判官も、遺族もみなへとへとだ
ひと一人の生き死にがかかってるからね
私がこれまで関わった裁判の中で9人の死刑囚が生まれた
そのうち2人はこの世にいない
1人は社会を呪い、なにより自分を呪い続けて死んでいった
でももう1人は違う 罪を心から悔いて本来の自分を取り戻した
見違えるように改心したのに死刑は執行された
私はヒトは変わることが出来ると信じている
今度は自分の力で必ず変わることが出来る
だから生きるんだ! 生きるんだ! 生きるんだ!
北斗:やめろ!
高井:明日の意見陳述ですべてさらけ出せ! ほんとうの心を見せてくれ
【公判4日目】
検察官:一見複雑な事件に見えますが、実際は単純で粗暴です・・・死刑を求刑します
【被告人陳述】
僕には抱きしめられた記憶がありませんでした
小さい頃から生まれてこなければよかったと思っていました
そんな僕を初めて抱きしめてくれたのがお母さんでした
お母さんは僕に生まれてきてよかったと教えてくれました
生きることの価値を教えてくれました
僕はお母さんを騙した生田が許せませんでした
飯岡よしえさんと、関本みのりさんを殺すつもりはありませんでした
本当に取り返しのつかないことをしてしまいました
飯岡さんのご遺族は僕に死んでくれと言いました そうするつもりでした
事件を起こしてから死ぬことばかり考えてきました
死ぬ以外に罪を償うことはできない
遺伝子上の父親は舌を噛んで自殺した 僕もそうしたかった
死んで僕の中に流れる悪魔の血を断ち切りたかった
でも出来なかった!
出されたものを食べて、排せつして、また食べて、
そんな自分が許せないのに、どうしてもそうしてしまうのです
身体が生きようとするんです!
僕は、死刑になって当然だと言いました 今もその気持ちに変わりありません
でも、もし、許してもらえるなら、ほんとは生きたいんです!
生きて償いたいんです!
遺族に深く一礼する
【公判最終日】
判決は、無期懲役
飯岡の息子は怒りで叫び、関本家、明日実らは泣く
裁判長:では、閉廷します
飯岡家の息子:これで終わりだと思うなよ!
検察官:ただちに控訴の準備に入らせていただきます
最後に法廷に一礼して去る高井