■『地球異変』(ランダムハウス講談社)
朝日新聞社/編
*************************インドネシア
●燃える大地
人が放った火は、森だけでなく、泥炭にも延焼
農地開発等に伴い、泥炭地の乾燥化が進んだ結果だ。
パーム油をとるためのアブラヤシの植林が爆発的に広がっている。
排出されるCO2は年平均20億t。化石燃料を消費して出る8%に相当する。
インドネシアでは、毎年、四国ほどの面積の森が失われ続けている。
焼き畑に加えて、コピー用紙の原料や、ウッドデッキ材などとして、樹木が切り続けられる。
焼き畑をしても、数年たてば作物はつくれなくなり、また焼き畑を繰り返すため森は再生しない。
泥炭層から運河に染み出した水は赤褐色をしている。
●売られるギボン
政府に保護されているはずの国立公園内でも、人の手による森林火災、違法伐採が後を絶たない。
森が減って、ギボンは狭い範囲に集中して住むようになり、ペット業者に捕まりやすくなった。
道路に沿って延々と7.5kmも続く「森の墓場」
違法伐採による丸太は、皆伐するため直径がバラバラなのが特徴。
●苗木を育てる
日本や欧州のNGO支援で、火災の焼け跡に植えた苗木を育て、枯らさなければ、少額ながら定期的にお金が支払われる。
共通するキーワードは、森を守るための「動機付け(インセンティブ)」。
6度目の大絶滅
地球の歴史の中で、ここ5億年の間に5回大絶滅が起きている。
今、6回目の大絶滅が進行していると言われる。その速度は、過去の1000倍以上。
*************************オーストラリア
干上がったウィンドリー湖
半世紀前にメルボルンオリンピックでボート競技が行われた場所。
2006年、オーストラリアの「100年に一度」という大干ばつは、日本の讃岐うどんの値段を上げた。
湖岸が後退し、桟橋がとり残された
民家に納品される雨水を貯めるタンク
庭の水やりを巡って住民のトラブル、殺人事件も起きている。
洗車、芝生の水やりなどを罰則付きで制限する州もある。
が、2008年は水害が起きるほどの豪雨となった。
*************************南太平洋諸島
●温暖化で最初に沈む国 ツバル
大潮前後の満潮時、集会所前の広場は冠水する
『砂上の船 水上の家 アラル海とツバルふたつの水物語』(ポプラ社)も参照。
環礁の島々は、大海原を漂う船のように弱い存在だ。
近年は塩害による不作が目立つようになった。
テプカ島の海岸は浸食され、ヤシの木が倒れる
環礁の島は、サンゴ礁のかけらや砂が積もった、脆い地面でできている。
首都フナフティへの一極集中により、湿地や池の上まで住宅がひしめき、浸水被害につながる。
海面上昇で次に消える島 バサフア島
IPCCが予測する100年後
1980年代に温暖化を予測した当初は、「人為的な影響ではなく自然変動だ」などという意見もあった。
気温上昇は、感染症を媒介する蚊などの生息域を広げる。
このまま使い続けると、石油は41年、天然ガス63年、石炭147年分しかない。
「対策はもう待ったなしなのです」
*************************ガラパゴス諸島
世界自然遺産第1号の島は、2007年、緊急な保全策が必要な「危機遺産」となった。
リクイグアナ/グンカンドリ
天敵がいないため動物たちはあまり人を恐れず、野鳥も写真撮影に望遠レンズがいらないほど。
島に寄港した船乗りたちは、大量のゾウガメを殺して食べ続けたため、個体数が激減。
ガラパゴス諸島は、かつて大陸と地続きになったことがない「海洋島」のため、
島の生物種同士の競争が厳しくなく、外来種が入ると、固有種は一気に脅かされる。
在来植物は約500種、外来植物は約800種。
●エコツアーの先進地
1人のガイドが案内できる観光客は16人まで。
観光の中心サンタクルス島では、年間10万人以上が訪れる。
水道水から基準を大幅に超える大腸菌が検出された。
諸島を領有するエクアドル政府は、厳しい選択を迫られている。
『ガラパゴスがこわれる』(ポプラ社)も参照。
*************************アマゾン
森林に開発道路が走る/森を焼いた後は、肉牛を放つのが一般的
世界最大の熱帯雨林が広がるが、各地で違法伐採が横行している。
木材業者は、勝手に森に道路を造り、木々を根こそぎ切り倒す。
伐採跡地は焼かれ→広大な牧場に変わる
熱帯雨林を切り拓いた広大な大豆畑
日本も資金援助や専門家の派遣などで開発を後押しした。2007年の生産量は世界2位。
バイオエタノールの原料となるサトウキビの増産も進む。
野生のカワイルカとたわむれる地元の少女
開発が進み→人口が増加し→魚の消費が増えた→漁師は魚をとられまいとイルカを殺している
バイオ燃料は地球を救う?
主なバイオ燃料は2種類。バイオエタノールとバイオディーゼル。
バイオエタノールの3/4はアメリカとブラジルが生産している。原料はサトウキビとトウモロコシ。
ヘンリー・フォードが開発したT型自動車は、エタノールを燃焼にする計画だった。
ルドルフ・ディーゼルが発明したディーゼルエンジンも、ピーナッツ油が燃料だった。
バイオ燃料をつくるために森林が切り開かれ、原料の価格が高騰している。
「世界で何億人も飢えに苦しむ中で、穀物で燃料をつくる必要があるのか」という批判も多い。
*************************アフリカ
旧市街の建物は砂に飲まれて扉まで埋まっている
砂漠の広がりで遊牧民の生活圏が狭まってしまった。
水や牧草地を巡る農民と遊牧民のトラブルが深まっている
砂は内陸部の町を飲み込み、じわじわと広がっている。
昔はナツメヤシの林が青々と茂っていた。
「馬上の悪魔」と呼ばれるジャンジャウイードの攻撃で焼き討ちされた村の廃墟
ミレットが育たない
●「高地マラリア」
マラリアは、エイズ、結核と並ぶアフリカの3大感染症の1つ。
免疫力の低い子どもたちの命が狙われている。
住友化学が協力した蚊帳工場の利益で小学校に新校舎が建った。
援助で配られた蚊帳は、小魚を干すために使われていた
*************************南極
アゴヒゲペンギンが乗った氷山
地球上の氷の9割を抱える南極。
最近、氷の動きが速くなり、氷が減りつつある。
スノーアルジー
気温上昇がもっとも激しい場所の1つで、雪氷藻類が大発生している。
雨でずぶ濡れになったジェンツーペンギン
撥水性のない羽毛に水が入ると凍って凍死してしまう
上陸する観光客/かつての捕鯨基地が放置されている
南極は世界で唯一、国境のない大陸。南極条約によって領有権が認められていない。
問題は変化するスピードの速さ
20世紀は「人間活動が爆発的に膨張した時代」と言われる。
穀物生産は7倍、鉄鋼生産やエネルギー消費は約15倍、アルミニウム生産は数千倍に伸びた。
「今の100年は、昔の地球の1000万年の変化を地球上に起こしている」東京大学・松井孝典教授
1億年近くかけてつくられ、3億年間地中にあったものが、200〜300年で掘り出され、燃やされようとしている。
1972年「成長の限界」という報告書では、
「今の成長率が続けば、100年以内に成長は限界に達し、制御不可能な人口・工業力の減少が起こりうる」と警告した
最大の外来種はヒトなのかもしれない。
追。
巻末に「FSC ミックス品」マークがついていた。
この本は、森林環境保全に配慮し、地域社会の利益にもかない、
経済的にも持続可能な形で生産された木材からつくられた紙を使用しております。
朝日新聞社/編
*************************インドネシア
●燃える大地
人が放った火は、森だけでなく、泥炭にも延焼
農地開発等に伴い、泥炭地の乾燥化が進んだ結果だ。
パーム油をとるためのアブラヤシの植林が爆発的に広がっている。
排出されるCO2は年平均20億t。化石燃料を消費して出る8%に相当する。
インドネシアでは、毎年、四国ほどの面積の森が失われ続けている。
焼き畑に加えて、コピー用紙の原料や、ウッドデッキ材などとして、樹木が切り続けられる。
焼き畑をしても、数年たてば作物はつくれなくなり、また焼き畑を繰り返すため森は再生しない。
泥炭層から運河に染み出した水は赤褐色をしている。
●売られるギボン
政府に保護されているはずの国立公園内でも、人の手による森林火災、違法伐採が後を絶たない。
森が減って、ギボンは狭い範囲に集中して住むようになり、ペット業者に捕まりやすくなった。
道路に沿って延々と7.5kmも続く「森の墓場」
違法伐採による丸太は、皆伐するため直径がバラバラなのが特徴。
●苗木を育てる
日本や欧州のNGO支援で、火災の焼け跡に植えた苗木を育て、枯らさなければ、少額ながら定期的にお金が支払われる。
共通するキーワードは、森を守るための「動機付け(インセンティブ)」。
6度目の大絶滅
地球の歴史の中で、ここ5億年の間に5回大絶滅が起きている。
今、6回目の大絶滅が進行していると言われる。その速度は、過去の1000倍以上。
*************************オーストラリア
干上がったウィンドリー湖
半世紀前にメルボルンオリンピックでボート競技が行われた場所。
2006年、オーストラリアの「100年に一度」という大干ばつは、日本の讃岐うどんの値段を上げた。
湖岸が後退し、桟橋がとり残された
民家に納品される雨水を貯めるタンク
庭の水やりを巡って住民のトラブル、殺人事件も起きている。
洗車、芝生の水やりなどを罰則付きで制限する州もある。
が、2008年は水害が起きるほどの豪雨となった。
*************************南太平洋諸島
●温暖化で最初に沈む国 ツバル
大潮前後の満潮時、集会所前の広場は冠水する
『砂上の船 水上の家 アラル海とツバルふたつの水物語』(ポプラ社)も参照。
環礁の島々は、大海原を漂う船のように弱い存在だ。
近年は塩害による不作が目立つようになった。
テプカ島の海岸は浸食され、ヤシの木が倒れる
環礁の島は、サンゴ礁のかけらや砂が積もった、脆い地面でできている。
首都フナフティへの一極集中により、湿地や池の上まで住宅がひしめき、浸水被害につながる。
海面上昇で次に消える島 バサフア島
IPCCが予測する100年後
1980年代に温暖化を予測した当初は、「人為的な影響ではなく自然変動だ」などという意見もあった。
気温上昇は、感染症を媒介する蚊などの生息域を広げる。
このまま使い続けると、石油は41年、天然ガス63年、石炭147年分しかない。
「対策はもう待ったなしなのです」
*************************ガラパゴス諸島
世界自然遺産第1号の島は、2007年、緊急な保全策が必要な「危機遺産」となった。
リクイグアナ/グンカンドリ
天敵がいないため動物たちはあまり人を恐れず、野鳥も写真撮影に望遠レンズがいらないほど。
島に寄港した船乗りたちは、大量のゾウガメを殺して食べ続けたため、個体数が激減。
ガラパゴス諸島は、かつて大陸と地続きになったことがない「海洋島」のため、
島の生物種同士の競争が厳しくなく、外来種が入ると、固有種は一気に脅かされる。
在来植物は約500種、外来植物は約800種。
●エコツアーの先進地
1人のガイドが案内できる観光客は16人まで。
観光の中心サンタクルス島では、年間10万人以上が訪れる。
水道水から基準を大幅に超える大腸菌が検出された。
諸島を領有するエクアドル政府は、厳しい選択を迫られている。
『ガラパゴスがこわれる』(ポプラ社)も参照。
*************************アマゾン
森林に開発道路が走る/森を焼いた後は、肉牛を放つのが一般的
世界最大の熱帯雨林が広がるが、各地で違法伐採が横行している。
木材業者は、勝手に森に道路を造り、木々を根こそぎ切り倒す。
伐採跡地は焼かれ→広大な牧場に変わる
熱帯雨林を切り拓いた広大な大豆畑
日本も資金援助や専門家の派遣などで開発を後押しした。2007年の生産量は世界2位。
バイオエタノールの原料となるサトウキビの増産も進む。
野生のカワイルカとたわむれる地元の少女
開発が進み→人口が増加し→魚の消費が増えた→漁師は魚をとられまいとイルカを殺している
バイオ燃料は地球を救う?
主なバイオ燃料は2種類。バイオエタノールとバイオディーゼル。
バイオエタノールの3/4はアメリカとブラジルが生産している。原料はサトウキビとトウモロコシ。
ヘンリー・フォードが開発したT型自動車は、エタノールを燃焼にする計画だった。
ルドルフ・ディーゼルが発明したディーゼルエンジンも、ピーナッツ油が燃料だった。
バイオ燃料をつくるために森林が切り開かれ、原料の価格が高騰している。
「世界で何億人も飢えに苦しむ中で、穀物で燃料をつくる必要があるのか」という批判も多い。
*************************アフリカ
旧市街の建物は砂に飲まれて扉まで埋まっている
砂漠の広がりで遊牧民の生活圏が狭まってしまった。
水や牧草地を巡る農民と遊牧民のトラブルが深まっている
砂は内陸部の町を飲み込み、じわじわと広がっている。
昔はナツメヤシの林が青々と茂っていた。
「馬上の悪魔」と呼ばれるジャンジャウイードの攻撃で焼き討ちされた村の廃墟
ミレットが育たない
●「高地マラリア」
マラリアは、エイズ、結核と並ぶアフリカの3大感染症の1つ。
免疫力の低い子どもたちの命が狙われている。
住友化学が協力した蚊帳工場の利益で小学校に新校舎が建った。
援助で配られた蚊帳は、小魚を干すために使われていた
*************************南極
アゴヒゲペンギンが乗った氷山
地球上の氷の9割を抱える南極。
最近、氷の動きが速くなり、氷が減りつつある。
スノーアルジー
気温上昇がもっとも激しい場所の1つで、雪氷藻類が大発生している。
雨でずぶ濡れになったジェンツーペンギン
撥水性のない羽毛に水が入ると凍って凍死してしまう
上陸する観光客/かつての捕鯨基地が放置されている
南極は世界で唯一、国境のない大陸。南極条約によって領有権が認められていない。
問題は変化するスピードの速さ
20世紀は「人間活動が爆発的に膨張した時代」と言われる。
穀物生産は7倍、鉄鋼生産やエネルギー消費は約15倍、アルミニウム生産は数千倍に伸びた。
「今の100年は、昔の地球の1000万年の変化を地球上に起こしている」東京大学・松井孝典教授
1億年近くかけてつくられ、3億年間地中にあったものが、200〜300年で掘り出され、燃やされようとしている。
1972年「成長の限界」という報告書では、
「今の成長率が続けば、100年以内に成長は限界に達し、制御不可能な人口・工業力の減少が起こりうる」と警告した
最大の外来種はヒトなのかもしれない。
追。
巻末に「FSC ミックス品」マークがついていた。
この本は、森林環境保全に配慮し、地域社会の利益にもかない、
経済的にも持続可能な形で生産された木材からつくられた紙を使用しております。