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『老親(としおいたおや)の心理 お年寄りが、いちばんしてもらいたがっていること』

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■ゴマ生活ブックス『老親(としおいたおや)の心理 お年寄りが、いちばんしてもらいたがっていること』(ごま書房)
長谷川和夫/著

図書館で目にとまって、思わず借りてみた。
なるほどなあ、と思う部分と、最近は、お年寄りより、若者のほうがより病んでて、余裕がないから、
親の世代のほうが、ずっと健康で長生き、元気だよなあって思ったり

あと、発行年が少し古いだけに、女性についての記述に時代の古さを感じたり、
今は認知症などと呼ばれるけど、「ボケる」って言葉が多いのも気になった。

本書では、お年寄りに一般的に言える特徴的な考え方、若者世代との考え方のギャップにポイントが置かれている。


【内容抜粋メモ】

●お年寄りの定義
人生の生きる目標を失い、無気力、無関心になり、孤独感、疎外感に苛まれている人たち。
身体の老いの次には、ココロの老いを連れてくる。積極的だったヒト→消極的にしてしまう、など。


●役割をもつこと

注意するコトバ:「おじいちゃんは、もうなにもしなくていいのよ」
→長年、積み重ねた経験や知恵を生かすチャンスを奪うことは、生きる意味まで取り上げ、ますます老いを深める。

阪神淡路大震災では、犠牲者の全体の半数近くがお年寄りだった。
そこで大切なのは、物資的な援助+精神的なケア。

取材に行った著者の友人は、被災者のお年寄りからカップラーメンを食べていくようにすすめられたことから、
「お年寄りは、自分からすすんで何かをしたがっている」と感じた。

ヒトは他人に頼って生きることに苦痛を覚える。
他人になにかしてあげることで、その人の喜ぶ顔が見たい、そんな「役割をもつ」ことが、いかにヒトにとって強い欲求か分かった。

ヒトが幸福に生きるためには、「何かの役割」「自分がこの世に存在している理由」が必要。
ヒトの心は、いろんな責任をもつことで生き生きする。
逆に言えば、10〜20代でも、無気力で無関心な若者がいる。彼らのほうが“お年寄り”。

例:
サラリーマンの男性なら、家族の幸せを守る。妻なら、子育てや家事。
「定年退職をすると、ヒトはボケやすい」と言われる。

「青春とは期間を指すのではなく 心の持ち方である。
 人は年齢だけで老いるものではなく、理想を失うとき老いるのだ」(詩人サムエル・ウルマン


お年寄りの心理的特徴:「保守的」「頑固」〜新しいことへのチャレンジをやめる
理由:昔の習慣を重んじる、記憶力の低下+学習能力の低下をともなう。

例:
若者のカンタンな結婚式に反対する、お葬式のやり方にこだわる。「新旧の考えの違い」
お年寄りは、義理・人情が好き。「私たちもそうしてきたから」という論理。
元気なお年寄りほど「おせっかい」「世話焼き」「でしゃばり」に見える。

お年寄りの10の意見を全否定するのではなく、ある部分は取り入れる→お年寄りの自尊心を満足させる。
保守的でも、その中にある生活の知恵に妥協することも大切。


●二度童、こども返り
注意するコトバ:まるで幼児に話すように話す。

お年寄りの言葉のもつれは、言語障害にすぎず、頭は明晰。身体の老いと心の老いを区別するべき。
名前を奪って「おじいちゃん」「おばあちゃん」でくくってしまうのは人格を奪うのと同じ。
(でも、孫に祖父母の名前で呼ばせるのは、日本の習慣にはないよね
同じ人間として対等に付き合うことは、真のいたわり。


●過ちを許す
お年寄りが若い人の失敗を許せるのは、その人が若い時に同じような失敗を繰り返してきたから。
年齢を重ねるごとに経験を積み重ね、そこから教訓を得て人格をつくりあげるのが人生。
まだ健常なお年寄りに対して、失敗を許さないのは残酷。1時間でできない事も、2時間かければできる。
お年寄りの理解は、まず失敗を許すことから始まる。


●若い頃の性癖が年齢とともに変わる3つのタイプ
円熟型:攻撃的だった人が、円熟味を増す。
拡大型:若い時の性格が年齢とともに拡大される。気の短い人がますます短気になる、など。
理由:心身の老化により、自分の行動をコントロールできなくなるため。
反動型:若い時とは正反対の性格が現れる。節約家→浪費家になる、など。好ましいほうに変わることも含む。

お年寄りは、多少にかかわらず周囲に依存しなければ生きていけない。
しかし、みんな、周囲に依存して生きるのを潔しとしない。


●死の話題を避けない「老いの受容のプロセス」
お年寄りはよく「いつあの世からお迎えがきてもいい」と言う。
でも「歳をとることは恐くない」とは言っても、そうカンタンにはいかない。

「耳が遠くなった」「物忘れが激しい」と体の老いを認めるのは早いが、心の老いを認めるのは難しい。
同じ年輩の友だちが亡くなるのを見聞きして、「次は自分か」と考える。
→過去の思い出に心向けることで、不安を取り戻そうとする心理が生まれる。

「まだやり残したことがあるのでは?」など漠然とした不安が形をなすと、物事に過敏になり、
「イライラしたり」「涙もろく」なったりする。
→自分を認めて欲しい。

例:
深沢七郎著『楢山節考』に出てくる“おりん婆さん”のように、死はけして閉ざされた扉ではないと教えられた。
逆に“源じさん”のほうは、死は未来のまったく閉ざされた世界だった。
お年寄りの死に対する態度は、死を受け入れる気持ちと、なんとか先に延ばしたい気持ちがある。
→死を受け入れる=生を受け入れることに通じる。時には「死」について家族で話し合うことも大切。


●ひそひそ話で仲間はずれにしない
お年寄りは、家族からなにも相談されなくなると、仲間はずれにされたと感じる。
お年寄りに心配をかけまいとする気持ちでも、まだまだ現役だと自負しているお年寄りには寂しいもの。

身内の死について語るのを遠慮する家族もあるが、最近は早くから遺言を残すお年寄りも多い。
死後、残した家族を心配しているのは、むしろお年寄りのほう。
遺産相続、生前贈与、相続税など面倒な問題は、お年寄りのほうが辛く感じている。

経済的な問題ほど早く話しあったほうがよい。
お年寄りが亡くなって、遺族間で起きる問題は、たいてい財産のことが多い。
兄弟親戚が争い、家族がバラバラになるケースはいくらでもある


●連れ合いは、最高の刺激
「妻に先立たれた男性ほど惨めなものはない」と言われるが、なぜか逆の場合、妻は生き生きするとさえ言われる
男性は働くばかりで家庭を顧みようとしない人が多い。
そんな男性が老年期になり、女性はどんどん自立の道を探すようになった。「熟年離婚」など。
つまり、ほとんどの男性は、結婚後、家庭のことを女性に依存して生きている。

妻を先に亡くした夫の死亡率は、夫のある女性、妻のある男性を大きく上回っている。
どんなに歳をとっても、お互いの愛情が大脳を活発化させ、情緒の安定に役立っている。


●二世帯住宅では、親しき仲にも礼儀あり
「おはよう」「ありがとう」「ごめんなさい」など、まずはキチンとした挨拶をするなど、家族の中にもルールが必要。
お年寄りに子どもの世話を頼んで遊びに出かけるのも、あまり頻繁だと迷惑。
お年寄りのほうも、息子の嫁に依存して生活すれば、嫁姑戦争になりかねない。
たとえ親子でも、家の中では「他人同士」と自覚すること。

“日本人はもたれあって生きている”と指摘されるが、それではいつか破綻してしまう。


●お嫁さんは、お年寄りのいちばんの理解者
お年寄りの心理的特徴:猜疑心が強くなり、ひがみ、嫉妬、曲げた解釈、邪推する。
理由:視力、聴力の低下により、自分の経験により「たぶん○○だろう」と想像で事実を補ってしまう。

お年寄りは、自分をかばってくれる人が1人でもいると思うと安心する


お年寄りの心理的特徴:昔の思い出に浸る。よく思い出す。
「おばあちゃんのお母さんはどんな人だったの?」など、話しやすい話題を聞いてあげるとよい。
この時、アルバムや、着物などを目の前にして話すと話題は広がる。
注意:同じ話を繰り返させないために、話の腰を折らず、辛抱強く聞く(さらにリピート度が高まるけどね

お年寄りがもっとも輝いていた時代を聞くとよい。
例:お漬物、おせち料理など、地方により作り方が違う“おふくろの味”を教えてもらう。

その後、かならず結果報告が大事。「おばあちゃんの言う通りに作ったら、とても上手にできましたよ


お年寄りの心理的特徴:「どうせ自分は邪魔者だ」と孤立する。
すでに過去のことを批判しても、お年寄りにやり直しはきかない。批判するのは距離がないから。
長年生きていれば辛いこともたくさんあり、それまでの生き方にプライドを持っている。
お年寄りが思い出話をするのは、話すことで、過去を再確認し、心の中を精算している。
批判は、お年寄りをうつ状態にし、自分の殻に閉じこもらせてしまうことにつながる。


●トランプをするなら、「ばばぬき」より「神経衰弱」
注意するコトバ:「おじいちゃんには難しいから“ばばぬき”にしよう」は逆効果。
ゲームは勝ち負けより楽しむことが目的。なるべく頭を働かせるようなゲームを選んだほうがいい。
直感脳である右脳を使うと、脳全体が活性化する。
スポーツも最初からムリと決め付けずいっしょに遊ぶことをすすめる。


●忙しい時、テレビにお守りをさせない
テレビは観る側に一方的に情報を送り届ける機械。
1人で観ていると情報だけがインプットされるだけ。それを整理する能力がなければ混乱するだけ。
アウトプットさせないと、大きなストレスになる。
→後でかならず、その内容、感想を聞いてあげる。
テレビに限らず、ただ一方的に与え続けることは、依存心を増長させ、孤独にさせる。


●つじつまの合わない話をした時「作話」
高齢で痴呆性のお年寄りの妄想は、財産問題、家族や近所を巻き込んだものが多い。
例:10年前に亡くした夫の食事の支度をしようとするお年寄りがいる。

「盗難妄想」
財布が盗まれた。盗んだのは家族、近所の人だと言う。

注意するコトバ
「だれも盗んでいませんよ」と否定しても、かえって興奮させ、納得されない。
「困りましたね。じゃ調べてみましょう」と言って、お年寄りの体験レベルから話を始めるしかない。
理由:老いの寂しさが原因の場合もある。周囲の注意を引きつけたくてつく嘘、など。

重症の痴呆性の嘘は、家族崩壊にまでつながる例もあり深刻だが、
まだ元気なお年寄りが言う罪のない嘘は、周囲があったかく見守ることも必要。


注意するコトバ
「ウチのおばあちゃんは、最近ボケちゃって困るんですよ〜」
病気がちのお年寄りを抱えた家族の場合、その負担は心身ともに辛いため、
こんなことをつい近所に漏らすお嫁さんの気持ちも分かるが、「人の口に戸は立てられない」。
他人の口から入る噂はこじれることもある。

お年寄りの心理的特徴:日常の動作が遅くなり、自身でイライラしているため、自己中心的になったり、一人を好む。
騒々しい音にイライラしたり、社会の変化に疑り深くなる、「どうせ年寄りだから・・・」とひがむ。
→不満はハッキリ本人に言うほうがいい。実の親子は以心伝心と思いがちだが、それが甘えになって互いの気持ちが分からないこともある。
嫁という「立場」で、実の親子の中に入って仲介役になることもできる。

そんな気持ちの交流は、日頃のコミュニケーションからしか生まれない。
肝心なのは、
お年寄りの自尊心を傷つけないこと。
相手の弱みにつけこんだことを言わないこと。
二度と立ち直れないようなことを言わない。
愚痴と失敗はお年寄りの専門、と考えて許すことが必要。


●お年寄りが安心する「接近話法」
お年寄りの心理的特徴:家族のひそひそ話が嫌い(みんなイヤだよね
→1m以内に近寄って話しかける。

お年寄りへの話しかけのポイント
内容を分けて、手短かに話す。
同じことを聞き返されても、根気強く繰り返しを諦めない。
口で話すと同時に、書いて伝える
話がまとまらなくなっていたら「そうそう、こうでしたね」とまとめる。
お年寄りの身体に触れながら話す→安心感が湧く

注意するコトバ:「もう分かってるよ」「その話は聞き飽きたわ」(つい言っちゃうね


●私たちの感情の起伏は、そのままお年寄りに伝わる
厳しく注意したり叱ると、なぜ叱られたかはすぐ忘れても、叱られた屈辱感はあとあとまで残ってしまう。「被害者意識」につながる。
「スキンシップ」「いっしょに昔の歌をうたう」ことも良い。

お年寄りの心理的特徴:何事に対しても反応が遅くなる。即座に返事ができない。
→お年寄りのペースに合わせる。


●話題を選ぶのは逆効果
「おじいちゃん、この歌どう思う?」など聞くことで、新しいことに関心が湧き、知ろうとして話も拡がる。

注意するコトバ:「今言ったばかりなのに、すぐ忘れちゃうんだから
→お年寄りだって、聞きたくない話には、半分耳を閉ざしている。だから忘れてしまう。

例:「60才のおじいさん」の歌がキライ。「年寄り扱いはやめてほしい」
→お年寄りに合わせた話題ばかり提供するのも考えもの。


●人に恋する気持ちに歳は関係ない
お年寄りの心理的特徴:「白昼夢」現実で満たされない欲求を、想像の世界で達成しようとして見る夢。
年齢に関係なく、社会的、身体的に“弱い人”がよく見ると言われる。

お年寄りにも性的な興味はある。
例:ある老人ホームで、1人の男性をめぐって、女性のお年寄り2人がとっくみ合いのケンカまでした
そんな気持ちのお年寄りのほうが、はるかに元気で健康的。お化粧をして出かけるなど張り合いも出る。


●歳をとったからといって、人間が丸くなる必要はない
“人間が丸い人”という時、お年寄りを指していることが多い。
その裏には「いい歳をしてトラブルを起こさないでほしい」という願望がある。
感情が平板になり、欲望が減少した状態とは違う。若い人にとっては“扱いやすい”という気持ちを敏感に感じ取っている。
自分が厄介者になるまいとして、喜怒哀楽を表現しなくなることは、“人間が丸い人”とは違う。

年齢のわりに若く見えるお年寄りは、表情が豊か。逆に言えば、表情の乏しい人は老けて見える。
表情の豊かさとは、素直に喜んだり悲しむこと。「それは仕方ない」「当たり前だよ」という投げやりな感情ではない。
丸くなったのが、家族に心配させまいとして、感情を押し殺しているかもしれない。


●季節行事の思い出
二世帯同居をして1〜2年で元気をなくすお年寄りがいる。地方から上京したお年寄りに多い。
理由は「都会には季節がない」。息子夫婦といっしょに住める喜びの代わりに、古き良き日本の自然・文化から遠ざかってしまった。

お年寄りの心理的特徴:新しい環境になかなか適応できない。
都会の便利な暮らしも押し付けになってしまう場合がある。


●孫が遊び相手になってあげる
家族の中でお年寄りと対等に付き合ってくれるのは孫。
介護のベテランの接し方のポイントの1つに「お年寄りの知的レベルに合わせる」と言う人がいる。
難しい論理より、無垢な心のほうがお年寄りの心を和ませる

注意:夫婦は、子どもの前でお年寄りの愚痴を言わない。それを聞く子どもに、お年寄りを尊敬する気持ちは育たない


●お年寄りを散歩に誘う方法
若い頃から散歩の習慣がなければ、ただおっくうなだけ(ウチの母親だな
歳をとって埋もれてしまっている趣味を発掘してあげることもお年寄りを元気にする。

例:「手仕事をしている人はボケない」
手仕事の特徴は“没頭”すること。そして
「人間はなにか“没頭体験”と“見通し体験”をもつと心理的な健康状態を保つのに役立つ」(アメリカの心理学者カステンバーグ

「見通し体験」とは、自分のしていることがどうなるか予測したり、将来の計画を立てたり、反省したりすること。
昨今の不景気では、50〜60のほうが若者よりはるかに不安(いや、若者も不安だよ
「見通し体験」でクヨクヨするのは、とくに、仕事中心主義のライフスタイルの男性に多く見られる傾向。

手を動かす仕事は、手の動きが脳の神経細胞の中の広い部分に関係している。


●コミュニケーションにも頭を使う
テレビも観て、考えるなら、脳の活性化につながり、それを話すことはストレス発散となる。
それより読書はもっと良い。読むのが苦手ならマンガでもいい。お年寄りにとって、マンガは脳の活性化にかなり有効!
マンガは、現代をカンタンに理解でき、短時間で多くの情報を得ることができる。

「手紙や日記を書く」
起承転結に気を遣うから考えが整理されるので、電話でカンタンに済ませるよりずっといい。
日記は、ココロに溜まったものを吐き出す効果がある。

「俳句・短歌」
書く前に、ものを観察する行為をともなう。外出して題材を求め歩くことは健康法にもなる
なにより、自己表現は生き生きとさせる。自分の作ったもので、誰かが感動してくれることほど嬉しいことはない。


●お年寄りが喜んで食べる特別メニュー
健康なお年寄りなら、それほど神経質になる必要はない。
ただ好き嫌いがあるから、家族の嗜好を日替わりにするなど工夫する。
お年寄りだけのメニューを作るのは、女性の負担が大きすぎる+家族と違う料理を出されると疎外感を抱く。

「お年寄りは粗食だ」と言われる。低カロリーで満腹感が味わえるものとしては、繊維質を含む野菜類が最適。
とくに歳をとってからの便秘は、脳に必要最低限の栄養も届かなくなる。


●塩分を控えるには
お年寄りは昔からの習慣でしょっぱいものが大好き。
→醤油の代わりに檸檬など酸味のあるもので代用するとよい。
→ご飯が主食の場合は、1品だけしょっぱいものがあるといい。

血中コレステロールを減らすには、良質のたんぱく質+ビタミンEが最適。
例:豆腐、納豆など大豆製品、海藻、シシタケ、魚など。

ビタミンEは、動脈硬化をすすめる過酸化脂質ができるのを防ぐ。
例:ごま油、大豆、ピーナッツ、小麦など。

カルシウムをたっぷりとると、ストレスに耐える力が強くなる。
お年寄りのイライラは、カルシウム不足が原因てこともよくある。


●よく噛んで食べる
よく噛んで食べると、大脳の働きを活発にして、集中力を高め、脳の老化を防ぐ。
ヒトの「唾液腺」は、もっとも老化の早い器官の1つと言われる。
噛みやすいように、おかずを小さく切ってあげるのも必要。


●まず「水」が大切
お年寄りの食事は、若い頃と好き嫌いの傾向が変わる。
消化器系の機能も低下し、お腹にもたれやすくなる。運動量も減るから、それほど食べなくても体が保てる。
内分泌機能も低下する。

生体の防御機能と大きく関係する副腎皮質ホルモンの分泌も衰える→気温の急激な変化に弱くなる
栄養のほかに、十分な水分の補給が大事。

「夜、水分をとると、何度もオシッコに立つから飲まない」という人も多い。
→血液濃度が濃くなる。血流が悪くなり、動脈硬化、脳卒中に注意
寝室の枕元に、水か白湯をポットに入れて置く。スポーツ飲料は最適。

下痢などで水分が失われる状態が続くと「脱水状態」になる。
急にぐったりしたり、うとうと眠ってばかりいたりしたら脱水を疑うべき。


●生活リズムを整える
だいたい6〜7時間の睡眠をとらないと、心身の疲れはとれない。
会社勤めで睡眠不足の人は、10分の仮眠が良い=夜の睡眠の3時間分にあたる価値がある。

でも、お年寄りの場合は、昼間に仮眠をとると、夜に眠れなくなる
お年寄りにとっていちばんの健康法は、規則正しい生活。
みんなが早寝早起きというわけではなく、その人のリズムに合っていればいい。

注意:昼に居眠りしているお年寄りは、家族がその役割を奪ってしまっていることが多い。


●生活にメリハリをつける
二世帯住宅の場合、お年寄りの部屋は1階に造るのが基本。
階段の昇り降りの負担をかけない、火事などの災害の時にすぐ避難できるため。

「畳より椅子に座る生活」
足にかかる負担が減る。畳だと、つい横になるクセがついてしまう。

「安楽椅子」は逆効果
立ち上がる時に足への負担が大きい。ゆったりしているとすぐに眠くなる→背もたれのある硬い木のイスがいい。


●二世帯住宅での注意点
お年寄りの心理的特徴:新しい環境になかなか適応できない。
→増改築の際は、できるだけこれまでの環境を変えない。廊下の右にあったトイレが左になっただけで分からなくなる
風呂場の改修も、急に変えて転倒して入院したケースがある。
理由:「現実認識」がなかなかできない。

自分の記憶・体力の衰えを自覚しだすと、お年寄りは急に老け込む。
→新しくなった場所に「トイレ」「お風呂」などと大きく書いた紙を貼るのもいい。


●一番風呂はよくない
半身浴は、体を芯から温めて、疲労をとる。上手な入浴は、ストレス解消となり、新陳代謝の機能を高める

注意すること:
脱衣場も含め浴室を温めておく。とくに寒い時期。血圧が上がるのは温度差のある脱衣場→立ちくらみ
熱いお湯に飛び込むのも脳には大敵。
“交代浴”(熱いお湯と冷たい水を交互にかける)も、高血圧の人は脳出血を起こしやすい。

熱いお風呂:温度は約42〜43度。全身の緊張を高め、目覚まし効果がある
ぬるめのお風呂:温度は約38〜39度。神経を休ませ、疲労をとる


●清潔好きだった親が風呂嫌いになるワケ
お年寄りの心理的特徴:なかなかお風呂に入りたがらない→それぞれの原因を探ってみる。

理由:
家族に着替えのために入るようきつく言われたから。
娘さんが“潔癖症”で「お風呂に入らないと臭い」と言われたから(母は父にしょっちゅう言ってるな
 お年寄りにとって「汚い」「臭い」は禁句。老いに恐れを抱いているお年寄りならなおさら。
“老醜をさらす”と思っているお年寄りは、そんな言葉ひとつで深く傷つく。
高血圧で心筋梗塞を起こしたことのあるお年寄りが、顔を洗おうとして目まいが激しくなる。
跨ぐ時に一度転んでからイヤになった→お風呂場を改造するだけで解消することもある。


●大切なのは“インプット”と“アウトプット”
“インプット”(外部からの刺激)だけでは、脳は活性化しない。
それを自分の頭の中で整理し、対応する“アウトプット”が必要。

例:
好きな相撲番組を見ていても、どっちが勝ったのか覚えていない。
→今日の取り組みについて聞く。頭の中で整理することが必要になる。

「話す」ことも“アウトプット”だが、「書く」作業とは本質的に違う
電話と違って、まず時候の挨拶から始まり、起承転結を考えなければならない。
俳句・短歌は、文字数の制約があるため、さらに脳を活性化させる。


●オーケストラの指揮者は長寿が多い
カラヤンは81歳まで生きた。長生きだけでなく、亡くなる直前まで現役として活躍した。

理由:
運動量の多さ。
つねに観客に見られているという緊張感。
全部の楽器のパートを含む膨大な数の音符の暗記
どうやって自分なりの解釈で演奏させるかを考える作業。
リーダーとしての役目。

カラオケで歌うのもよい


●生涯現役でいるための10の条件
不老長寿にマニュアルはないが、長寿のお年寄りを調べたら、共通点が見つかった。

1.両親が長生き:伸び伸び育った。
2.血圧が高くない:バランスのいい食生活
3.大病をしたことがない。
4.深酒をしない
5.タバコを吸わない
6.太っていない。
7.運動が好き:ムリしてやってるのではなく、好きなのがポイント
8.気が若い:常に新しい情報を“インプット”と“アウトプット”している。
9.筆マメ
10.無頓着:細かいことにクヨクヨしない。


●いつまでも美しく
ある飲み屋の女将さんが、高齢にも関わらず美しいのは、毎日お客さまの刺激を受けているから。
お客さまの立場にたったサービスを提供するため、常に気を配っている。
お客さまの職業、趣味嗜好、生活は百人百様。それに合わせるためには、普段からいろんなことに興味・関心を持ち、知識を仕入れている。
女優などもつねに他人の目にさらされる職業。
若々しいお年寄りとは、他人に気を配って生きることが楽しいと感じられる人かもしれない。


●老いては子に従わぬ?!
例:
都会の団地にいる息子夫婦に「いっしょに住もう」と言われたが、気が進まない。
理由は、何十年も暮らした土地を離れたくないから。これまでの近所づきあいも断ち切られ、新たに人間関係を作るのもおっくう。

例2:
老人ホームで、ほとんどの家族は、お年寄りに「看護婦さんの言うことをよく聞かないと嫌われるわよ」と言う。
→言いたいことも言えず、大人しくしていようと萎縮してしまう。

自分の決断に従うお年寄りは健康。若い人たちは、その決断の足を引っ張ってはならず、むしろ積極的にサポートすることが必要。


●お年寄りにもプライバシーがある
お年寄りの部屋に鍵をつけることには反対だが、お年寄りにも秘密があり、一人になりたい時がある。
どうしても掃除をする時などは、かならず許可を得てから部屋に入ること。机や棚のものには触らないこと。

お年寄りの心理的特徴:身の回りのモノを溜め込む。→もったいないという他に、宝物なのかもしれない。
部屋に入る時はノックする、声をかけることも大切なルールの1つ。


注意するコトバ
「おじいちゃんは危ないから、もうやらなくていいですよ」
体の元気なお年寄りなら、料理など家事の手伝いでも良い。できるなら一緒にやることが大切。
よく、隣り近所の家の前まで掃除をしているお年寄りがいるが、人に喜んでもらえることが支えになっている。

ボランティア活動への参加など、地域とのつながりも大切。
日本人にはなかなかボランティアは馴染みがないが、神社の掃き掃除も立派なボランティア。
「おばあちゃん、ありがとうございます」という何気ないひと言で、お年寄りは救われる。
役割とは、仕事だけじゃなく、日常生活そのものがヒトの役割と考える。


●お年寄りが計画する家族旅行もいい
家族旅行というと、子どもを中心にすると大人は退屈なことが多い。その逆もある。
そのため、どうしてもお年寄りは遠慮して留守番を引き受けたり、行くとしてもお年寄り同士になりがち。
→参加することに意義がある。お年寄りが計画をたてるのも役割になる。

誕生日、結婚記念日などにもお年寄りに参加してもらう。
お年寄りの誕生日、敬老の日は、家族で祝うことも大切。


●お年寄りができることは、どんどんやらせる
注意するコトバ
「そんなことは私がやりますから」「ムリをしないでください」などの禁止用語は、
お年寄りの自尊心を傷つけ、新しいことにチャレンジする自信も奪う。

「昔なら、こんな簡単なことはすぐに出来たのに」
お年寄りの悔しさは、健康な人には想像もつかないほど、大きな屈辱感を与えている。
→できることはやらせて、結果については問わない。チャレンジ意欲を褒める。


●身の回りのオシャレ
外国では、お年寄りも明るく派手な服を着ているのを見かける。
家に閉じこもりがちなお年寄りは、お化粧もしなくなり、1日中寝巻きの人もいる。
→化粧、ヘアスタイルを変えるだけでも、人はシャンとする。
 洋服も昼と夜に着るものを分けることも肝心。

お年寄りに大切なのは、1日の中でどんな変化があるか。


●異性への関心は“新しい自分”の発見
例:
ある女性だけの老人ホームでは、どの部屋も散らかし放題で、みんな老け込んでしまったが、
ある日、男性のお年寄りが来た途端、掃除がいき届き、女性の顔が生き生きした

どんなに高齢になっても、異性の存在を意識して生きている。
鏡を見れば、自分の姿を客観的に見れる→自意識に目覚める。
若々しい格好は、大脳を刺激し、脳を若くすることにもなる。


●メモ魔
例:
93歳になる男性が、67歳のヘルパーさんに用事を頼む際、いつも1枚に1つの用事を書いてくれて、助かるのだという。
その男性は、自分のメモ魔の習慣を上手に役立てている。

お年寄りに頼みごとをする時、口で言うだけでなく、メモに書いて渡すとよい。
冷蔵庫のものを食べて欲しい時は、冷蔵庫の扉にメモを貼る、など。


●尿失禁について
最初は、本人も家族も深刻な問題として捉えがちだが、あまり深刻になると、家族以上にお年寄りが辛くなる。
簡単な解決策は「おむつをつけること」。でも、元気なお年寄りには自尊心が許さない。
「そんなことまでして生きていたくない」と悲観して自殺まで考える人もいる。

奥さんが夫のおもらしを何気なく「ボケ」に結びつけたために、ひどく傷ついたというケースもある。
→医師から「奥さんの意識を変える必要がある」と言われた。
いずれはおむつをするにしても、それまでどうしないでいけるか、その工夫が夫婦の生き甲斐や信頼を生み出した。

おもらしは、女性に多く見られる。尿道が短い上、出産後に変形することに原因があると言われる。
おもらしは、異常でもなんでもない。

お年寄りはおもらしを恥じている→隠そうとする→自分で洗濯するようになる、など。
そんな時、つい手伝うのは「余計なお世話」、知らんぷりをすることが親切になる。

今では、便利グッズがいろいろ売っている。
座布団の上に敷く「おもらしパット」を敷いて、カバーでくるむ。
おもらし用のパンツも、テレビCMでやっているから比較的すすめやすい。


●お年寄りとの付き合いは、白黒ハッキリさせない
社会にはさまざまな世代、価値観があり、ぶつからないよう上手に共存している。
白黒のケンカでは、どちらかの色に完全に染めるまでケンカは終わらないが、
「おたがいに、まあまあ・・・」と、中間のグレーあたりで仲直りさせる提案もある。

注意するコトバ:「おばあちゃんに頼んでもできないから、もういいや」
お年寄りは、それなりに一生懸命やっているのに、たった1つのミスですべてを判断するのは“白か黒か”問うているのと同じ。


●孤独ほど寂しい病気はない
精神科医の神谷美恵子さん著『生きがいについて』の中で、「生きがいには二通りある」と指摘されている。
「この子は、私の生きがいです」というように、対象となるものを指す。例:仕事、お金、家を建てること、など。
この場合、別の人にとっては「仕事は時間を奪われ、拘束されること」と考える人もいる(私ね
また、これらは歳をとると変化したり、失われたりする。

生きがいを感じている精神状態。生きがいを感じる心、生きがい感のこと。
世の中には、立派な社会的地位、裕福な暮らしをしていても、索漠とした生活をしている人もいる。
つまり、生きがいの対象そのものが生きがい感をつくるというより、
私たちの心がその対象と関わった時に、生きがいになるのではないか(難しい・・・

お年寄りと暮らす場合、生きがい感を持ってほしいと願うと同時に、
そのお年寄りと暮らす家族が、まずお年寄りと暮らすこと自体に生きがい感を感じてほしい。

老年期痴呆になるお年寄りには、病気だけでなく、孤独から痴呆に移行する例もある。
それを食い止める妙薬は、家族の愛情に勝るものはない


●老いがあるから人間らしい
NHKの『老友へ』というドキュメンタリー番組で、彫刻家の佐藤忠良氏と、舟越保武氏の友情を描いていた。両氏はともに83歳。
この番組後、著者と恩師の新福尚武氏と対談した時の言葉。

「生きがい論というのはいろいろあるけれど、私(新福氏)は創造的で自由であるということを感じる時がもっとも生きがいがあると思う。
 自由で想像的ということは、ものに囚われずに悠々とした心境になることだと思う。
 他人の真似ではなく、その人らしくて、しかも心底から納得できて、根本的には自由な境地にあるという、
 こういう境地は若い時には至りにくい。
 だから、もしも人間に老年期がなかったら人生はまことに空しく、一生はつまらないものだ。
 老年期があることで人間らしい生き方ができるのだと思う」


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なるほど・・・素晴らしいな。
なにかのレールに乗って、毎日やらされてる気持ちから、生き甲斐など生まれようがない。
ヒトは本来、すべてから自由である権利があるけど、それぞれの価値観の中で、自分に枷をつけてるんだ。

自由で、創造(想像)的、こんなステキな生き方がほかにあるだろうか。
それに、これらには年齢はまったく関係がない。


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