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Channel: メランコリア
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心の中のベストフィルム〜『白痴』(1951)

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『白痴』(1951)
原作:ドストエフスキー 監督:黒澤明
出演:三船敏郎、森雅之、原節子、久我美子、志村喬、東山千栄子、村瀬幸子、千石規子、柳永二郎 ほか

感想メモは「notes and movies」カテゴリーからの抜粋

<第1部 愛と苦悩>

「皮肉だが、この世で真に善良であることは白痴に等しい」

なんだか最初から狐につままれたようなフシギな感じ。原作の長い前章でもカットしたのか、
それぞれ主要人物の重要なはずのそれまでのいきさつが描かれないままドラマはどんどん深刻なことになってゆく。
それでまた引きこまれているのかもしれない。

現代劇になるとちょっと様子が違う。でも、この頃の俳優って今よりずっと雲の上の存在でオーラが上品で全然違う。
噂に聞いていた原節子もE.バーグマンやG.ガルボに負けない艶っぽい美しさ。
皆、表情1つの動きで全てを語れる役者ばかり。これが欧米映画ならどうなるだろうと想像してみる。
原作本も気になる。まずは後半観てから。


<第2部 恋と憎悪>

「私たちのほうが白痴なのかもしれない」

ワンクッション置かないと、かなり重いテーマで受け留められるようになるまで容易じゃない。
亀田がまるで占い師か超能力者のように人の心を読み、未来を読むのがフシギ。
一切の我欲を捨て、第三の眼でも開いたのか? 結局彼は男の友情を選んだ。死刑を迎えた時、
「なぜ皆にもっと優しくしてやれなかったのか、もし助かったらそうしてあげたい」と言っていた。
彼にとっては最高の幸福だったのかもしれない。

白痴=知能がひどく劣っていること。今でいう精神薄弱者のことか?
人の脳はあまり強烈なストレス(恐怖、ショック)に耐えられなくなるとフリーズしてしまうらしい。
それでこれほどピュアで正直になれるなら、知能はあまり身に着けないほうがいいいのかも。


「ドフトエフスキーは真に純粋な男を描きたかった」

と冒頭のテロップに流れた。私は男が正直なゆえに悲劇に見舞われた話というより、
悲劇によって正直になった男が幸福になった話ととらえたい。

今や黒澤ファミリーとでも言えるおなじみのメンバーによって、これほど違った様々なドラマを観れるのは実に有意義。
男女の愛憎、哲学。世界の名作をシンプルながら芝居的な脚本と映像によって再現し、思わず乗り出して観た。
抑えた演技の三船、森も、久我も昨今の俳優にないゴージャスな存在感と演技。


『白痴』(1951)
『白痴』@シネマシャンテ2回目


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