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『14歳』(小学館文庫)(全13巻)

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『14歳』(小学館文庫)(全13巻)
楳図かずお著

“本作を最後として、楳図の長編漫画は発表されていない。
 楳図の代表作『漂流教室』の続編ともいえる作品で、環境破壊による人類滅亡、危機的状況を乗り切ろうとする子供たちの奮闘、
 親子の絆と別れといったテーマを圧倒的な迫力で描ききっている。また、過去の楳図作品の集大成としての意味も持っている。”(ウィキ参照

  

・小学館 ビッグコミック スピリッツ 全13巻
・小学館 ビッグコミック スピリッツ 全20巻
・小学館 ビッグコミックススペシャル 全4巻

私がamazonで買ったのは文庫の全13巻。
10,11,13巻だけはTSUTAYAレンタルで借りた(1冊1週間100円

これが楳図さんの究極か。これ以降マンガを描いていないのも分かる気がする。
これまで読んだどのマンガより強烈。人類、地球の破壊地獄絵、異星人までが同じ状況って・・・

「そりゃ、たしかに私たちは子どもには違いないけど、もう14歳なのよ!
 14歳といったら、もう子どもの限界の歳じゃない!」

というヨッコの親友・計子の言葉に、楳図さんの真意が見え隠れしている。
『わたしは真悟』にも似たようなセリフがあったのを思い出した。



西暦2121年。ヒトの文明はついに地球を狂わせた。
ずーーーーっとハイテンションのままでひと息つく間もない展開。
環境破壊で地球があと3年でヒトが住めない場所になってしまうって、
D.ボウイの♪Five Years を思わせる。

私が集めた文庫本の表紙画を手がけたのは坂内和則というイラストレーターさん。
私が大好きな眉村卓さんのSF小説の表紙画家・木村光佑さんと、どことなく通じるものがあってとても気に入った。


▼あらすじ(ネタバレ注意
10代で身ごもったヨッコは、よく当たると噂の占い師から「その子は14歳で死ぬ運命にある!」と告げられる。

 

ササミの食品工場から突然変異で生まれ、人智を超える高度な科学の知識を持って自らを「チキン・ジョージ」と名乗る謎の男。

  

彼は青年を使って人体実験を繰り返し、決定的な人類の未来を知っておののく。
拉致されていた青年は命からがら脱出してアメリカ大統領・ヤングに伝え、
チキン・ジョージ博士の実験室に連れて行くが、そこは異次元の世界だった。

 

世界中で全身緑色の子どもたちが産まれる。
ヤング米大統領の息子「アメリカ」の髪の毛も緑色で産まれる。

 

ヨッコが産んだ子どもも緑色だった。「きよら」と名付ける。
きよらも14歳までしか生きられないとチキン・ジョージから告げられるが、
ヨッコの強烈な母性愛に感動して、緑色の色素は抜いてあげる。ヨッコは彼を神と勘違いする。



チキン・ジョージは、相方の鶏ルーシーとともに、地球上のあらゆる動物を乗せて、
現代版ノアの方舟とも言える「チラノザウルス号」で宇宙に新天地を求めて旅立とうとしていた。

「逃げよ! 逃げよ! 人類から逃げよ! 人類がまき散らす災いからできる限り遠くへ!」

その資金を得るため、経済界を牛耳るローズに「不老不死の秘密」と交換条件を結ぶ。
ローズは、老いさらばえた姿を世間から誤魔化していたが、全財産を投げ打ってでも不老不死の秘密を知りたがっている。
(ローズの執着心があまりにブキミすぎて気分が悪くなった

 


ローズは自分の若さを保つために、子どものエキスを注入していた


****************

突然、地球から緑が失われ、それを大衆に知られないため、米副大統領は、地下にホテルが沈み、
政府に訓練された最強のヒロイン、SOS30号が人々を救うというシナリオを描き、
実際に事件を起こして、人々の関心を一気にメディアに釘付けにする計画が成功する。
(ゴミ処理技術は進み、地下のプレートに乗せて、マグマに流し込むシステムになっている

 

その誰をも惹きつける美しいヒロインをチキン・ジョージに見せて誘惑し、
彼が握っている不老不死、人類の未来を聞きだそうという意図もあった。
その策略を知りながら、ヒロインを愛してしまったチキン・ジョージは、自らの知識を忘れる選択をする。

 

地球の地軸が曲がり、自転が急速回転し、大地震、大噴火、大津波、空が落ちてきて空気すらなくなる。
これまで地下に捨てていたゴミがあふれだし、埋めていた核廃棄物も噴き出してしまう。

 


****************懺悔



国際会議では、一斉に懺悔が始まった。

「振り返れば、アメリカは率先して自然破壊を続けてきた。まず、アメリカ大陸、そして先住動物を絶滅させてしまった。
 自然は無限だと信じ込んでいた。自分が正義でいるためには敵が必要だった。そのためにいろいろな国々に迷惑をおかけした!」

「いや、ヨーロッパこそ悪かった。上流階級主義は、そうでない者をアメリカへ追いやった。
 工業の発達でどこより早く地球を汚した。私たちが無料で吸っている空気は、私たちが軽蔑しているよその場所で作られたものだった」

「日本こそ謝らなくてはいけない。小国のくせに経済発展で、あらゆるものを買いあさり、あらゆるものを作り出した。
 その結果、おびただしいゴミを生み出し、陰では“ゴミ大国”と呼ばれたため、“生活大国”と呼び方をすり替えた。
 私たちは常に、法律とお金以上に、“美意識”というモノサシを持つべきだった!」

(こうまでならなきゃヒトは後悔、和解しないものなのか。ここでは政治家だけの懺悔だったけど。
 アインシュタインの最後に言い残したのが“美意識”だったっていうのはフィクション!?


****************脱出

政府は、各国から「賢く、健康で、かつ運の良い子どもたち」をデータで集め、一縷の望みを賭けて宇宙に脱出させる計画を試みる。
一方、クローン人間を大量に作り「もの」と呼んで奴隷化する。

息子アメリカは父のもとへヘリコプターで向かう途中で事故に遭い、緑色の髪の毛だけ残して死亡する。
ヤング大統領は悲しみに耐えられず、双子の兼松博士にクローンとして再生してくれと頼む。

調べた結果、遺伝子がたった1個だけしか違わない「きよら」と合成する。
それは、きよらもロケットに乗るにはヤング大統領の息子になるしかないと願ったヨッコの強い想いでもあった。
ヨッコの元には、1個だけ残った形見が送られる。ヨッコはひと目きよらに会いたいと走り出す。

 

 

人々はパニックとなり暴徒化し、ロケットが国会議事堂にあることが知れる。
ロケットには、子どもと大人も乗り込んだが、木星に衝突しそうになり、チラノザウルス号に移動する。
あらゆる遺伝子を持ち合わせ、きよらとも合体したアメリカ、副大統領の娘エリザベス、
日本代表の子どもタロウ、ヤング大統領の優秀なボディガード(もの(人工人間))5人をつける。



人類と同様、絶滅の運命を背負ったエイリアンが襲来する。
遺伝子の交配を試みるも失敗に終わり、地球の霊力を吸い取って、また宇宙へあてのない旅に出て行く。
(精力?を吸い取られる長い長いシーンは、大人でもトラウマになりそうなのに、
 子どもが見たらどうなってしまうか、心配になった

 

「もしも宇宙で怪物に遭遇したらどうするか?」
「気配を消すこと。周りと一体化すると姿が見えなくなります」
(これは『漂流教室』で私がもっとも覚えているシーンと同じ。あの時はイスか机になりきったんだった




チラノザウルス号はアンドロメダに向かっていた。
ヤング大統領は、チキン・ジョージになり代わって彼の異空間に入り、
チラノザウルス号にいる息子と交信が可能となる。

「大切なのは“心”です。このロケットは心のパワーで飛んでいるらしいのです」

チラノザウルス号には、息絶えたローズの脳が移植された人工人間の少女「のばら」も乗っていた。
彼女は子どもらを支配し、なぜかボディガードも操られる。
ローズのクローンを造った兼松博士は、冷凍保存されていた。

地球では、「もの」がヒトを襲いはじめ、ヒトが死ぬとその本性が現れるようになってしまう。

 


チラノザウルス号には、チキン・ジョージの亡霊が出る。

「もしも宇宙で説明のつかない不可解な出来事に遭遇した時は、
 思いつく限りの意見を出し合って、潜在意識を目覚めさせること!」

アメリカの潜在意識から「きよら」が現れる。

チキン・ジョージは、チラノザウルス号の外側に付いていた。

「本当は、実際に操作してぼくを助けてくれたのは、彼だ。だからチキン・ジョージはぼくの命の親だったんだ」

宇宙も破滅しはじめているとドッペルが言う。


****************ムシ

それから10年が経ち、地球は人間の言葉を話し、知能を持ったゴキブリが蔓延している
ヤング大統領が常に持ち歩いて書いていた日記が聖書とされ、いつかヒトが戻って助けてくれると信じている。



「ぼくは信じる! 人間はやさしくて、美しく、賢い生き物だっ!
 そして、本当の神になるために宇宙へ出て行ったんだ!
 そして人間は帰ってくるんだっ! 僕たちを救うために」


ついに予言された14歳の誕生日を迎える子どもたち。

「たとえ神に見放されたとしても、僕たちは僕たち自身を信じるんだ!
 たとえどんな破滅がやって来ても、ぼくは破滅を信じない!
 なぜなら、身を滅ぼす目的で生まれて来た生物は、この世のどこにもいないからだ!
 僕たちは生きるんだ! そして進化するんだ! 僕たちは神に進化しよう! 生きて神になるんだ!
 そして、この世の不幸を一掃しよう! 地球を緑に変えよう!」



****************宇宙幻影


(世界中を旅した三蔵法師らが、実はお釈迦様の手の上から出ていなかった、みたいな結末





***********************************

たしかにゴッキみたいな虫たちなら、ヒトが誕生する前からいて、
核戦争にも数と種の多さでいくらでも乗り切れるだろうけど、
何万年経ったとしても、虫がヒトの言葉を話して、ヒトを崇拝するとは思えないなぁ。

虫は虫同士、もっと高度なコミュニケーション能力を持っていて、
ヒトになんか頼らずとも、これからも雄々しく生きてゆくだろう。

地球が星として生き残り、水さえあれば、なにかしら生まれるだろうし。
空が低くなったということは、大気層が薄くなって、水も相当失われちゃっただろうけど。

こんなに衝撃的な長編作が1990年から描かれていて、いまだ読み継がれているのに、
人々の暮らしはまったく変わらず、「まことちゃんハウスは周囲の景観を乱す」なんてゆってるんだもの。
今後も意識が急に変わるとは思えないなあ・・・
そのために宇宙ステーションを作って、ゆくゆくは地球から脱出する覚悟なのか。

そこには緑はあるのか? 山は? 河は
この深淵な自然の仕組みをそっくり真似ることなど不可能に近い。
アニメや映画で描かれる、コンクリートやガラスに囲まれている未来都市に住むくらいなら、星と一緒に滅びたい。

でも、子どもたちが生き延びることができたのは、何事にも冷静に、ポジティブに考えて、
それぞれの意見を活発に出して相談したからに他ならない。

大統領の息子アメリカらは、元の世界に戻って、きっと地球にも戻れるのではないかという希望が持てる終わり方なのが救いだ。
時空、次元を超えたり、時間軸、宇宙すらも無限に重なり合っているという理論もあることだし。

世界を支配しようとしていたのが男性で、宇宙を救ったのが女性だったというのも象徴的。


  



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