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『影の縫製機』(1982) ミヒャエル・エンデ/作

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『影の縫製機』(1982) ミヒャエル・エンデ/作(長崎出版)
ビネッテ・シュレーダー/絵 酒寄進一/訳

エンデ×シュレーダーという大好きな組み合わせの本を見つけた時は嬉しくて小躍りしたけど、
真っ黒な表紙、シュレーダーらしからぬモノクロの絵で、読むのをずっと先送りしていた。



エンデはこんな詩も書くのね/驚 まるでE.ゴーリーみたい。
訳者の方もやっぱり苦労したのかな?

2人とも、これまでのスタイルを打ち破ったかのように思えるけれども、
あの不朽の名作『はてしない物語』(日記にてっきりあると思ったらなかった。残念すぎ)を書いたエンデだけに、
短い詩の中にもグッと来る深い世界観がある。
その世界観をちゃんと咀嚼して、挿絵を描いたシュレーダーも素晴らしい

文字の配列や、ものすごい小さいフォントを使っていたりするのも、原文に沿ってつくったのかな?
黒い表紙、モノクロの挿絵にも暗示されるように、詩にも「闇」がよく出てくるのは何か意図があったのかな?


「こびとづかん」の長崎出版が自己破産 売上げ急増で経営破綻
おやまあ・・・、せっかくヒット作を出したのに


【内容抜粋メモ】(どれもあくまで気に入った部分の抜粋です

「道標(みちしるべ)」


道を知っているはずの きみなのに
気づくと まいごになっていた

ゆき先しめす 道標ひとつ
かたや「まち」かたや「もりのみずうみ」

やがて時がたち その道標を
きみはきっと思いだすだろう



「例外」
ねこにもあるか はげあたま?
まさかね!
知る人ぞ知る
いわゆる はげねこには
しっかりはげがある
これがまたすごいはげでね!

 



「透明人間」
 

それじゃ どうして消えたかって?
ひとりもいなかったのさ
しんそこ愛してくれる
心ゆるせる友が

仮面ができると
昼も 夜も かぶったさ
みんな 仮面にうっとり
けれども しょせんは仮面
おとこはけっきょく 透明人間
だれひとり おとこを気にもとめなかった

ここでひとつ 大事なことを書いておこう
愛してくれる人には 感謝しよう
愛をあたえる人になろう
姿が消えないために!



「魔法使い」


つえをもち 誓いを立てん
だれも愛さぬ ひとりで生きよう
むだをはぶくことこそ ジーモンが本分



「いかれたチェス」

(退屈で白と黒を入れ替えたら大混乱になったって詩
 戦争の愚かさにも通じるのでは?



「うら寂しき微笑み」


見つかるだろうか さがし人
いずれにしても 苦労はつづく
だがよくごらん 微笑みがたずねると
ゆく先々で なんと 冬がれの枝に花がさく



「消えゆく淑女」


淑女が姿を消すときは
きまって二人 三人 つれだっていく



「影の縫製機」
 

砂丘のうえの縫製機
役目をおえて 満ち潮にのまれ
よせてはかえす
波の中



「小さな小人」


小人は小さいことが好きだけど
よろこびは とっても大きかった



「綱渡り」
 

だれもがみとめる 不世出の綱渡り
だいじなのは 金じゃない
人気を博すためでもない
フェリックスは芸ひとすじだった

 

風のふくまま 気のむくまま
どこへいったか綱渡り

 

フェリックスは芸ひとすじだった




「独楽」


“中心はぼくじゃないのか”
なげいてみたが
気づくのがおそかった

やっぱり独楽は
ひとりくるくるまわるだけ



「摩訶不思議なる生き物」(俳句 宮中女官キク子の旅日記から 江戸時代)
水蛇や うすき身はるいるい 長々と





「夢の漁師」


網にかかるは 大小さまざまの群れつどう夢

夢をならべて さあ売りだしだ
一番すてきな夢 それこそきみにふさわしい!
今晩ねるまで まっておくれ!



「閉幕」


われらが舞台はふたたび消える
もともと頭と心で創りしもの
想像と思考のたまものは
ともしび消して 詩はおしまい






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