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『エーミールと探偵たち』 エーリッヒ・ケストナー著

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『エーミールと探偵たち』(1929年)(岩波少年文庫)
エーリッヒ・ケストナー/著 ワルター・トリヤー/イラスト 小松太郎/翻訳
1953年初版 1997年55刷

以下は当時読んだ時に書いた感想メモです。

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知らずに最初『エーミールとふたご』を借りて、途中まで読んだことあるんだけど、こちらが最初。
今作はケストナーが作家となって3作目(はじめの2冊は詩集)とのこと。

冒頭で彼らしい長い長い前置き「お話は、まだぜんぜん始まらない」があって、
本当は南洋のおかしな話を書くつもりが「それはガチョウの焼いたのを見たこともない人が焼いてみることだ」と料理屋に言われて、
代わりに、昔本当にあったことをモチーフに書いたという説明も楽しい。
その後たびたび現れる、ベルリン他ドイツの街並み、子思いの母と、母思いの子を主人公としているのは、こんなわけだ。

ケストナーの子ども時代のような、利発で、母思いのエーミール、彼と新聞記者時代の彼自身「ケストナー氏」が
対面するなんて、すごくステキなシチュエーション

全編通してケストナーの「子ども=小さな大人」に対する敬意ともいえる心配りが行間にあふれている。


▼あらすじ(ネタバレ注意
登場人物や設定の紹介から、
「エーミール」「彼の母」「車室」「山高帽の紳士」「ルンドルフ広場のホテル」
「警笛をもっているグスタフ少年」「銀行の支店」「エーミールのおばあさん」「大新聞の植字室」。

貧しくも働き者、美容師の母は、妹の家にいる母(エーミールの祖母)に仕送り(140マルク)をするために、
息子エーミールに使いを頼む。
窮屈な晴れ着の内ポケットにお金をしっかりピンで留めておくエーミール。

鉄道馬車の説明は面白い。
「会社も、馬も、ノイシュタットの人々もヒマだった。本当に急用の人は歩いてしまうのだ」

列車に乗ると「鼻息がひどいので、うなづくこともできない」おじさん(笑)らと相席になる。
妖しげな山高帽の男を除いて彼らは下車してしまう。


エーミールはうっかり居眠りをしている間にお金を盗まれ、妖しい男グルントアイス氏を追跡。
物陰で潜んでいたら、グスタフ少年と知り合い、すっかりこの探偵ごっこを気に入って、
町中の子どもを集めて、小銭をすべて出し合い、火曜日くんは電話番

「暗号はエーミール!」

追跡隊、予備隊、食糧班等に分かれて行動開始。
心配していた祖母にも伝令を飛ばし、いとこのポニーが自慢の自転車で応援に駆けつける。

犯人はタクシーでホテルへ。
グスタフはエレベータボーイに化けて、部屋のナンバーと翌日の出発時間をチェックする。
翌朝、男を取り囲むように数十人の子どもらが尾行する。


銀行で両替する瞬間、教授くんは「それは盗んだお金だ」と証言。
ピンの穴で証明され、案外危険もなく一挙解決。多勢に無勢ってやつ。

警視庁で呼ばれた記者らが小さな探偵らをインタビューする
祖母の家に迎えられ、喜びの上に、なんと犯人は銀行強盗でもあり、4マルクの賞金をもらうエーミール。
日本円だといくらなのかな?

知らせを聞いて、母は動転し「汽車の後押しをして走りたい」ほど急いで祖母の家に向かう。
息子が大活躍を鼻にかけることなく、デパートの広告も断ったと聞いて「ブラボー

まず電気ドライヤーとコートを買うってきかないエーミールの思いは時に痛々しいほど。


何か教訓は?

エーミール「人を信用するな」
母「子どもを決して1人で旅をさせるな」
祖母「金は郵便為替で送るべし」

でも教訓じみた童話がたぶんキライだったろうケストナーはこう締めくくりながらも、
本当は、母、子、孫を愛する心、約束はキチンと最後まで守る責任感、
子どもだって知恵と勇気があれば、大人みたく、時にそれ以上に純粋な心で正義を成し遂げることを
物語りの面白さの中ににじませたかったようだ。

さて、この探偵たちがちょっと成長して、また新たな事件に出くわす次回作を読むのが楽しみ。



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