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『小さな男の子の旅(短編集)』エーリッヒ・ケストナー著

『小さな男の子の旅(短編集)』エーリッヒ・ケストナー著(小峰書店)
榊直子/訳 堀川理万子/絵 1996年1版

以下は当時読んだ時に書いた感想メモです。

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ケストナーが書き始めた初期の作品。ナチス下で彼の詩、小説が禁書となったため、
「甘いケーキみたいな子どもの本は書きたくない」「子どもの頃を忘れるな」と主張していた。
日本では昨年1月に発行された真新しい本。コンパクトで、イラストも温かみがあって親しみやすい。
短い中にもケストナーの世界、2つの子どもの世界が浮かび上がる。


▼あらすじ(ネタバレ注意

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小さな男の子の旅
病気の母を見舞いに、1人で市電Image may be NSFW.
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に乗って出かける男の子の話。
子どもらしいあけすけな会話が楽しい。
「看護婦」と「妹」の発音を取り違え、母の妹と叔母を間違えるシーンなど。

でも、母に会い、弱って、変わり果てて眠る姿を見て「泣かない」と気丈に言いつつ、
1人で涙を流すところを見守る医師と看護婦。「もしや助からないかも」
期待と喜び、そして悲しみの対比が上手い。


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おかあさんがふたり
幼い子ども4人を残して母が亡くなり、父の再婚で新しい母が来る日。
母にベッタリだった少女は、まだ納得がいかず、人形を散歩に連れて、墓参りに行く。

「SさんがN夫人になって、ママになるなんて、私がMさんちへ行って、今日からMになりますって思いつきと同じ。
 ママがいなくなったから新しくいるんだって。ママがいないってことは、いないってことにしかならないのに」

子どもにも持論と主張がある。


人形に話す、1人ぼっちの子どもが天国の母に会いに行く話は、そのまま少女の願い。
人形とのやりとりは、精神形成に重要だね。

S夫人は少女に
「自分も母を早く亡くして、父は再婚しなかったから、ずっと淋しかった。ずっと1人ぼっちなの」
っていうのも上手い話し方。

少女の頑なな心は溶けはじめ、2人で歩いて帰る。人形の名前を話しながら。



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