■大島弓子短編集2『たそがれは逢魔の時間』(小学館)
大島弓子/著
【解説抜粋メモ~村上知彦(評論家)「大島弓子によれば世界は・・・」】
大島弓子の作品群は、単純な恋への憧れと成就を描いたものではない。
表面上のストーリーはそのような形をとってはいても、描かれているのはもっと本質的なもの、成長することへの希望と怖れだ。
だから、ストーリーだけを追って読むと、物語の奇妙な歪みについてゆけなくなることがある。
しかし、大島弓子の読者である女性たちは、実に易々とそれをやってのける。
思春期の少女たちばかりでなく、しっかりした大人の女性たちまでが、
大島弓子の描く成長への希望と怖れの物語に、大いなる共感を寄せることができる。
いずれにしても、それは女の子に特有の世界の感受の仕方のように、ぼくには思えた。
大島弓子のマンガは女の子にしか分からない、という俗説があった。
しかし、本書の表題作「たそがれは逢魔の時間」だけは、いささか印象が違っていた。
彼らの妄想と、現実との違和感への異議表明は、今のボクにはどれも切ないまでに残酷な、成長という現実の時間との葛藤のドラマに見える。
読者の性別や年齢、主人公への感情移入の可否が問題なのではなかった。
人が生まれ、成長し、老いてゆくことへの、胸躍る希望と、凍りつくような恐怖を自覚する時と場所には、
とても個人差があるという、それだけのことだったのかもしれない。
人生の途中で、時折り大島弓子を読み返してみれば、必ず、その時なりの違った発見があるだろう。
読者の成長に寄り添って、それをそっと見守っている、大島弓子のマンガはそんなマンガである。
【内容抜粋メモ】
●ほたるの泉
おばあちゃん子の清と、由衣子は、祖父母の叶わぬ恋愛の末の言い名付け同士。
由衣子の弟・一葉は弱虫のお姉さん子。
一葉と清が決闘することになり、由衣子は一葉に負けるよう頼む。
清のことを好きなのに、祖母のために婚約するつもりの清が気に入らないから。
そのうち、清の祖母は亡くなり、清は東京に行ってしまった。
琴の大会の日に帰ってくる清。今度は結ばれそうな予感?
●全て緑になる日まで
マリオンにプロポーズされて夢が叶ったと思われたレージデージだったが、それは父の会社を救うための政略結婚と分かり断ることに決める。
別れる理由を親友に尋ね、マリオンはゲイだってことにしよう!と言っていると、ちょうど巻き毛の美しい少年が通りかかる。
大人2人に追い詰められている少年を友だちのトリステスだと言い張り助けるレージデージ。
マリオンとトリステスは知り合いで、しかもトリステスはマリオンに恋していることを知る。
レージデージは、式の当日、マリオンから変わらぬ愛を告白され、離婚が罪とされる国で困っていると、
ジュラ王女から免罪を言い渡される。『ローマの休日』みたい。
●アポストロフィS
13歳の時、転入してきた司馬は、1つ下の浪と仲良くなる。
かすりと咲也は仲良し、かすりと浪は幼なじみ、という4人組から、結婚でいち抜けた咲也。
浪はかすりに強引に告白して嫌われる。咲也からかすりが昔書いた詩を教えてもらう。
薔薇の花は「勇気を出そう」、でも、椿の花は落ちやすいから「乱暴にしないでね」という意味。
咲也は実は司馬が好きだったが、司馬の父は演奏家で世界中を回っていて、複雑な子ども時代を過ごしてきた。
その父が航空機事故で亡くなったニュースを聞いて、最後に会いに来てくれた夜「私は腹ペコだ。パンでもないか」と言われ、
クラッカーを渡せなかったことを悔やむ司馬(号泣
司馬は、その後、咲也と同じ大学を受けると言い出す(咲也もまた椿と同じだったんだ
●七月七日に
皆がビックリするほど長身で、美しい母にベッタリなつづみ。
幼なじみの桃太郎は、兄・健太郎が最近、毎日物思いに耽って泣いていると話す。
母も泣いていると告げると、「2人は相思相愛だ!」と喜び、見合いとなるが、
母は後妻といっても、その昔、つづみの父・姫吉の近くに住んでいて、
実母が亡くなって、つづみを3歳まで育てた姫吉も亡くなってから引き取ったのだと明かす。
その後、健太郎がいきなりキスしようとしたため、激怒する母。
「恋のことは分かる、桃太郎がキスしたから」とウソをついたため、
母は戦時中でも医者なら助かるかもしれないから「医者になるなら婚約を許す」と竹ざおで脅す。
つづみのことが好きな桃太郎は、医者になると約束する。
母は赤紙が来た健太郎と婚約し、翌朝、健太郎は出征していった。
その夜、つづみは川に長い母の黒髪が浮かび、男の姿になっているのを見てしまう。
●草冠の姫
生来の女好きな貴船は、自分の悪い噂を弁護してくれた女子生徒・桐子をお礼がてらデートに誘う。
「桐子は理解不能だからやめておけ」と忠告する男子生徒。
両親が旅行で、初めて家を独り占めできると喜ぶ桐子だが、貴船の言う通り、深夜になると寂しくなって家に来る。
やたら振り子時計の音を気にして、その夜は飲みすぎて眠ってしまう桐子。
その寝顔が、まるで3歳児のように純粋で、本気で好きになってしまう貴船。
ところが、翌朝、「あなたの子どもを妊娠した」と言う桐子。
大雨に打たれて病院に運ばれ、「赤ん坊産みなよ!オレ父親になるよ!」と思わず言う貴船。
桐子にはカンペキな姉がいて、姉が選んだ振り子時計の音に悩んでいたのは、姉コンプレックスのせいだった。
●パスカルの群れ
一人息子・公平が恋をしていると気づいた父は、学校まで尾いて行くと、相手は男子生徒・千住だと分かって呆然とする。
親友・朝丘に相談すると、彼の娘で、公平と幼なじみの結が休暇でやって来る。
この2人がなんとか仲良くなってくれればとの願いも空しく、結は全部お見通しで、公平の応援をする。
公平に女装をさせて、千住と会うと、千住は女装した公平に恋をしてしまう。しかもゲイの兆候は一切なし。
“もう会わないこと
電気の中のツマグロヨコバイ
闇夜にでれば たすかるものを”
公平らは考えた挙句、「自分は河童で、川に戻らなきゃならない」と川に潜って逃げるw
その様子を見てしまった父は泣くが、結「私の父はずーっとプラトニックでおじさまを好きだったのよ」と明かして、また呆然。
そして、結はずーっとプラトニックで公平を好きだった気持ちも告白する。
●たそがれは逢魔の時間
中年男性・譲は、ショーウィンドウに佇むセーラー服を着た美少女・邪夢に初恋の思い出を重ねる。
翌日、少女はわざと本を落として、譲をデートに誘う。それを見た妻は、どこかで見た子だと思う。
譲が少年の頃、初恋の相手が雪の日に傘をささずに歩いているのを見て、
貸してあげたくても声が出ず、スレ違ったことをいまだ悔やんでいる。
“今なら言えるだろう
告白するのだ
告白して不幸になれ
そうだ不幸だ
不幸がこわかったのだ”
毎晩、講習会だとかで遅かった妻が急に優しくなり、邪夢を家に誘って、夫婦がむつまじいフリをする。
その後、邪夢が街で少女売春をしていたことを思い出す。
それを聞いた譲は、通帳を渡して「その職業を止めて、違う職種を探して欲しい」と頼みこむ。
家に帰ると、妻が講習会はウソで3年も浮気をしていると告白して、家を出ると言う。
譲の中に結婚前からずっと初恋の女性がいることを知っていた。
邪夢は、譲が昔、初恋相手にあげようとしてあげられなかった自分で彫ったペンダントを妻に渡して去り、
妻は「荷物がうまくまとまらない」と言って、家出を引き延ばす。
しかし、譲はいまだ魔が刻になると、少女の面影を探しながら家路に着くのだった。
●水枕羽枕
口が達者で美人な姉・海、ボサボサ頭で無骨な妹・陸
陸は、学校で全然目立たない男子・林野に告白する(え、オレ?って感じが青春ドラマっぽいw
初デートに映画に行く約束をしたのに、前の晩、お風呂で海とケンカして、
シャンプーを流し忘れたためにフケだらけになるわ、チケットを間違えて持っていかれるわ、遅刻するわでメチャメチャに。
海は親がもってきた見合いの相手・梨屋を家に呼ぶ。海としては初めて家に呼んだ男性だったが、
陸を先に褒めたことに嫉妬して、見合い話を破棄してしまう。
そのワケを梨屋に電話しているのを聞いた海は激怒して「お母さんは、本当は陸を堕ろすはずだったんだから!」と言って号泣する。
姉としては最高級の妹への復讐だったが、林野との仲を裂かれたほうが堪えた陸は気にしていない。
“そんなことなら友だちが堕ろす時、ホイホイとカンパしたことあるわ 友情気取りで
生まれていなければ 今こうして林野さんのことなんか考えていない
生まれていなければ
あたしは今 どこで なにしてるの”
母から、陸を妊娠中、父の会社がダメになって、病院に行こうとしたら、
まだ幼い海が泣き出してタイミングを逃してしまったのだと言う。
妊娠したことは、海にも父にも話していないことだったのに。
言い寄る男の誘いを断るために妹が病気だとウソをつきまくる海。
“この先も、世の男性の誘いと、梨屋さんの情熱が消えないかぎり、私の病歴はつづくでしょう。
そしていつか海ちゃんが、私の病名をなにも考えなくなった時、
海ちゃんの妹ばなれができる日なのだと思うのであります”
大島弓子/著
【解説抜粋メモ~村上知彦(評論家)「大島弓子によれば世界は・・・」】
大島弓子の作品群は、単純な恋への憧れと成就を描いたものではない。
表面上のストーリーはそのような形をとってはいても、描かれているのはもっと本質的なもの、成長することへの希望と怖れだ。
だから、ストーリーだけを追って読むと、物語の奇妙な歪みについてゆけなくなることがある。
しかし、大島弓子の読者である女性たちは、実に易々とそれをやってのける。
思春期の少女たちばかりでなく、しっかりした大人の女性たちまでが、
大島弓子の描く成長への希望と怖れの物語に、大いなる共感を寄せることができる。
いずれにしても、それは女の子に特有の世界の感受の仕方のように、ぼくには思えた。
大島弓子のマンガは女の子にしか分からない、という俗説があった。
しかし、本書の表題作「たそがれは逢魔の時間」だけは、いささか印象が違っていた。
彼らの妄想と、現実との違和感への異議表明は、今のボクにはどれも切ないまでに残酷な、成長という現実の時間との葛藤のドラマに見える。
読者の性別や年齢、主人公への感情移入の可否が問題なのではなかった。
人が生まれ、成長し、老いてゆくことへの、胸躍る希望と、凍りつくような恐怖を自覚する時と場所には、
とても個人差があるという、それだけのことだったのかもしれない。
人生の途中で、時折り大島弓子を読み返してみれば、必ず、その時なりの違った発見があるだろう。
読者の成長に寄り添って、それをそっと見守っている、大島弓子のマンガはそんなマンガである。
【内容抜粋メモ】
●ほたるの泉
おばあちゃん子の清と、由衣子は、祖父母の叶わぬ恋愛の末の言い名付け同士。
由衣子の弟・一葉は弱虫のお姉さん子。
一葉と清が決闘することになり、由衣子は一葉に負けるよう頼む。
清のことを好きなのに、祖母のために婚約するつもりの清が気に入らないから。
そのうち、清の祖母は亡くなり、清は東京に行ってしまった。
琴の大会の日に帰ってくる清。今度は結ばれそうな予感?
●全て緑になる日まで
マリオンにプロポーズされて夢が叶ったと思われたレージデージだったが、それは父の会社を救うための政略結婚と分かり断ることに決める。
別れる理由を親友に尋ね、マリオンはゲイだってことにしよう!と言っていると、ちょうど巻き毛の美しい少年が通りかかる。
大人2人に追い詰められている少年を友だちのトリステスだと言い張り助けるレージデージ。
マリオンとトリステスは知り合いで、しかもトリステスはマリオンに恋していることを知る。
レージデージは、式の当日、マリオンから変わらぬ愛を告白され、離婚が罪とされる国で困っていると、
ジュラ王女から免罪を言い渡される。『ローマの休日』みたい。
●アポストロフィS
13歳の時、転入してきた司馬は、1つ下の浪と仲良くなる。
かすりと咲也は仲良し、かすりと浪は幼なじみ、という4人組から、結婚でいち抜けた咲也。
浪はかすりに強引に告白して嫌われる。咲也からかすりが昔書いた詩を教えてもらう。
薔薇の花は「勇気を出そう」、でも、椿の花は落ちやすいから「乱暴にしないでね」という意味。
咲也は実は司馬が好きだったが、司馬の父は演奏家で世界中を回っていて、複雑な子ども時代を過ごしてきた。
その父が航空機事故で亡くなったニュースを聞いて、最後に会いに来てくれた夜「私は腹ペコだ。パンでもないか」と言われ、
クラッカーを渡せなかったことを悔やむ司馬(号泣
司馬は、その後、咲也と同じ大学を受けると言い出す(咲也もまた椿と同じだったんだ
●七月七日に
皆がビックリするほど長身で、美しい母にベッタリなつづみ。
幼なじみの桃太郎は、兄・健太郎が最近、毎日物思いに耽って泣いていると話す。
母も泣いていると告げると、「2人は相思相愛だ!」と喜び、見合いとなるが、
母は後妻といっても、その昔、つづみの父・姫吉の近くに住んでいて、
実母が亡くなって、つづみを3歳まで育てた姫吉も亡くなってから引き取ったのだと明かす。
その後、健太郎がいきなりキスしようとしたため、激怒する母。
「恋のことは分かる、桃太郎がキスしたから」とウソをついたため、
母は戦時中でも医者なら助かるかもしれないから「医者になるなら婚約を許す」と竹ざおで脅す。
つづみのことが好きな桃太郎は、医者になると約束する。
母は赤紙が来た健太郎と婚約し、翌朝、健太郎は出征していった。
その夜、つづみは川に長い母の黒髪が浮かび、男の姿になっているのを見てしまう。
●草冠の姫
生来の女好きな貴船は、自分の悪い噂を弁護してくれた女子生徒・桐子をお礼がてらデートに誘う。
「桐子は理解不能だからやめておけ」と忠告する男子生徒。
両親が旅行で、初めて家を独り占めできると喜ぶ桐子だが、貴船の言う通り、深夜になると寂しくなって家に来る。
やたら振り子時計の音を気にして、その夜は飲みすぎて眠ってしまう桐子。
その寝顔が、まるで3歳児のように純粋で、本気で好きになってしまう貴船。
ところが、翌朝、「あなたの子どもを妊娠した」と言う桐子。
大雨に打たれて病院に運ばれ、「赤ん坊産みなよ!オレ父親になるよ!」と思わず言う貴船。
桐子にはカンペキな姉がいて、姉が選んだ振り子時計の音に悩んでいたのは、姉コンプレックスのせいだった。
●パスカルの群れ
一人息子・公平が恋をしていると気づいた父は、学校まで尾いて行くと、相手は男子生徒・千住だと分かって呆然とする。
親友・朝丘に相談すると、彼の娘で、公平と幼なじみの結が休暇でやって来る。
この2人がなんとか仲良くなってくれればとの願いも空しく、結は全部お見通しで、公平の応援をする。
公平に女装をさせて、千住と会うと、千住は女装した公平に恋をしてしまう。しかもゲイの兆候は一切なし。
“もう会わないこと
電気の中のツマグロヨコバイ
闇夜にでれば たすかるものを”
公平らは考えた挙句、「自分は河童で、川に戻らなきゃならない」と川に潜って逃げるw
その様子を見てしまった父は泣くが、結「私の父はずーっとプラトニックでおじさまを好きだったのよ」と明かして、また呆然。
そして、結はずーっとプラトニックで公平を好きだった気持ちも告白する。
●たそがれは逢魔の時間
中年男性・譲は、ショーウィンドウに佇むセーラー服を着た美少女・邪夢に初恋の思い出を重ねる。
翌日、少女はわざと本を落として、譲をデートに誘う。それを見た妻は、どこかで見た子だと思う。
譲が少年の頃、初恋の相手が雪の日に傘をささずに歩いているのを見て、
貸してあげたくても声が出ず、スレ違ったことをいまだ悔やんでいる。
“今なら言えるだろう
告白するのだ
告白して不幸になれ
そうだ不幸だ
不幸がこわかったのだ”
毎晩、講習会だとかで遅かった妻が急に優しくなり、邪夢を家に誘って、夫婦がむつまじいフリをする。
その後、邪夢が街で少女売春をしていたことを思い出す。
それを聞いた譲は、通帳を渡して「その職業を止めて、違う職種を探して欲しい」と頼みこむ。
家に帰ると、妻が講習会はウソで3年も浮気をしていると告白して、家を出ると言う。
譲の中に結婚前からずっと初恋の女性がいることを知っていた。
邪夢は、譲が昔、初恋相手にあげようとしてあげられなかった自分で彫ったペンダントを妻に渡して去り、
妻は「荷物がうまくまとまらない」と言って、家出を引き延ばす。
しかし、譲はいまだ魔が刻になると、少女の面影を探しながら家路に着くのだった。
●水枕羽枕
口が達者で美人な姉・海、ボサボサ頭で無骨な妹・陸
陸は、学校で全然目立たない男子・林野に告白する(え、オレ?って感じが青春ドラマっぽいw
初デートに映画に行く約束をしたのに、前の晩、お風呂で海とケンカして、
シャンプーを流し忘れたためにフケだらけになるわ、チケットを間違えて持っていかれるわ、遅刻するわでメチャメチャに。
海は親がもってきた見合いの相手・梨屋を家に呼ぶ。海としては初めて家に呼んだ男性だったが、
陸を先に褒めたことに嫉妬して、見合い話を破棄してしまう。
そのワケを梨屋に電話しているのを聞いた海は激怒して「お母さんは、本当は陸を堕ろすはずだったんだから!」と言って号泣する。
姉としては最高級の妹への復讐だったが、林野との仲を裂かれたほうが堪えた陸は気にしていない。
“そんなことなら友だちが堕ろす時、ホイホイとカンパしたことあるわ 友情気取りで
生まれていなければ 今こうして林野さんのことなんか考えていない
生まれていなければ
あたしは今 どこで なにしてるの”
母から、陸を妊娠中、父の会社がダメになって、病院に行こうとしたら、
まだ幼い海が泣き出してタイミングを逃してしまったのだと言う。
妊娠したことは、海にも父にも話していないことだったのに。
言い寄る男の誘いを断るために妹が病気だとウソをつきまくる海。
“この先も、世の男性の誘いと、梨屋さんの情熱が消えないかぎり、私の病歴はつづくでしょう。
そしていつか海ちゃんが、私の病名をなにも考えなくなった時、
海ちゃんの妹ばなれができる日なのだと思うのであります”