■『さようなら女達』(白泉社文庫)
大島弓子/著
【内容抜粋メモ】(ネタバレ注意
「さようなら女達」
第1章 フン あんたは まだ めざめてないわ
心臓に持病を持つ優しい母。母の血を継いだ兄は、マラソン中に突然倒れて亡くなった。
長女の毬は、マンガ家を夢見て、コンクールに出す作品をコソコソと必死に描いていた。
町医者の父は、マリが母を心配させるたびにヒヤヒヤするため、ルールを決めようと言う。
「応募作品コンテストで第一席をとったら、マンガ家を目指すのを応援する。落ちたら金輪際、夢を諦めること」
マリはあと3枚仕上げなければ、土曜の締め切りに間に合わないが、なぜか委員長をしているため大忙し。
クラスで一番目立つ茗(メイ)は、かつて委員長だったが、なぜか一番目立たないマリを委員長に仕立て上げた。
マリの意見になにかと反対するメイ。
新任で未婚の数学教師・植草は、女子高でモテモテ。
植草がマリばかり気にするので、クラスメイトらはどうしてなのかと騒ぎ出す。
やっとの思いで原稿を書き上げて、郵便局にギリ間に合ったと思ったら、最後の1枚を落としていた。
それを読んだメイは「あんたはまだ全然めざめていないわ。人間への冒涜だわ!」と言い捨てる。
その様子を見ていた植草は、自分が電車で雑誌社に届けると助けてくれたため、天使に見えるマリ。
第2章 めざめかけても
植草への感謝の気持ちが恋心に変わるマリだが、クラスメイトはメイがマリを噂どおり好きなのか聞きたい、と言って、
「好きだけど」と認めたメイにショックを受けるマリ。「まるであたしが描いたマンガじゃないか」
“あれは彼の恋の終結だった”というラストにメイは「あんなの佳作にでも入ったら、あんたの描いてるもの軽蔑する」と言う。
メイの言う通り、マリの作品は落選。
気持ちを聞いてもらおうと植草の下宿先を訪ねると、恋人がいることが判明。
メイはほんとは兄のことを愛していた。マラソンする様子も見ていた。
「“妹は自分のように寿命の短い運命にないから、いつか目的を達成することができるだろう。
見届けることはできないけどね”といって笑ってたわ、いつも」
転校を決意したというメイ。
ペデラスト:男色家。
第3章 修羅場
文化祭の準備に精を出して気を紛らわせるマリ。
父は、友人で医者の深瀬が次男坊・潮をマリの旦那として「ほしけりゃやると」と言ったという。
深瀬医院は隣り町のため、次男坊を見に、ウロウロしていると、その彼が「堕ろすのは罪悪だなんていわないが」と止める。
深瀬医院は産婦人科で、若い女の子が悩んだ末、自死してしまうこともあるため、本気で止める潮に
「あたしちゃんと産んで、育てます!」とウソをついて逃げるマリ。
その途中で、憧れの有名なマンガ家を見て、興奮していると、「手が足りないから手伝ってほしい」と助手に頼まれる。
徹夜でギリ仕上げた後、マリは道で倒れてしまい、深瀬医院にかつぎこまれ、単なる疲労だと分かる。
“コトコトコトのこの音は 心臓の音みたい 規則正しく 力強いリズム
こんなふうなリズムで着々と生きてゆけたら あたしの心臓は ちっとも進歩的じゃない”
第4章 めざめることは
目覚めたマリは、深瀬から、母親がマリを心配するあまり倒れたと言われ、駆けつけた時はもう遅かった。
その日から父は人を遠ざけ、家事はお手伝いさんがやることに。
マリは友だちの家に泊まるとウソを言って、海に行く。
“まず海に行って大きな声で許しを請うてみるの
そうすれば、あたしがこの先どうすべきか わかりそうな気がするので
死ぬも 生きるも”
家出がバレ、父が来る。2人は海に向かって懺悔する/涙
そして、父は母が「マリと再契約を結びなさい」と言ってたという。
マリのもとに、いつかの助手を頼んだ女性から電話がくる。
マリがあの時のアシスタントと知らずに「前半はイイのに、ラストがあれでなかったら第1席に選んだわ」
「おりしもそのときチャイコフスキーが」
1兆円近い額の遺産を受け継いだ笛子。
演劇部に所属する仲間に恋人を紹介するたびに、「金目当てだ」と追い出す幼なじみの才蔵。
ひと目惚れ同士のフエコとジローマルも疑われる。ジローマルの両親は雪崩で亡くなり、身寄りは祖父のみ。
いつも、なんで勝手に死んでしまったとなじる夢を見て、責めたことを謝りたいと思う繰り返しだったが、
フエコに出会ってから、やっと謝る夢が見れた。
フエコの理想の男性は、世界中の物語や音楽の話を聞かせてくれる人。
日文(フエコの縁戚)はジローマルが祖父宛に書いた手紙を読んでしまう。「成功すれば金が入る。大敵なのは私情だ」
日文は手紙のことを才蔵に話す。
ジローマルは、フエコが実は才蔵を好きだったことが分かる。
才蔵が2人を認めて婚約パーティをしようというので、ジローマルは自分は日文に雇われたんだと打ち明ける。
才蔵は日文が好きだった。
弥縫策:一時のがれにとりつくろって間に合わせるための方策。
「七月七日に」
既出:大島弓子短編集2『たそがれは逢魔の時間』(小学館)
「いたい棘いたくない棘」
“ぼくは、こんど15歳だけど、心はもはや老人のよう。
でも君たち 恋と噂話で明け暮れるのが青春だとしたら、
僕は老人であることに誇りをもってしまうんだよ”
そんなマモルの前に現れたのは、もっとも楽しかった子ども時代を一緒に過ごしたかほる大将。
当時の遊び友達の海里が好きだったモエ(マモルの姉)は、失恋してから笑顔を見せなくなり、海里は遠くに転校したことを告げる。
カホルはモエに惹かれていることをマモルに打ち明けると、妙な気持ちになる。
「その恋って・・・どこから判断するの?」
「肝心なのは一緒にいたいと思うことさ」
マモルはカホルが好きな気持ちを抑えて、姉との仲をとりもつ策として、
突然別れを告げて、雪の中で何時間も待たせたため、カホルは肺炎寸前になってしまう。
モエは海里から「きみの全部がきらい」と言われて別れてから「わたしは、わたしがキライなの!」
クラスでモテるうき子から、海里くんは死んだと聞かされる。
父が大きな借金を負って転校し、死ぬ間際にモエコの名を何度も呼び「ほんとはね」「ごめんね」と言っていたという。
「シンジラレネーション」
高い所から飛び降りようとした同級生の女子を咄嗟に止めた河原昼間。
“悲しいね 僕はウソに向かってウソ! ちがうことに向かってちがうといえない 手も足もでない“みの人間”なんだ”
翌日、その女子生徒が来て「あなたは一度死への道を断ち切ったのだから、
この世で生きたいと思えるような面白いことを私に教えるのは当然でしょ」と言われ、付き合わされることに。
昼間は他人事などどうでもいいため、三流映画を観に行ったり、夜中の長電話に付き合わされたりして振り回される。
ある時、向かいの新婚の家を覗きに行き、夫を待ついかにも貞淑な若妻の姿を見て、表情が変わる女子。
心配して後を尾けると、どんどん山に入って行く。
“ふと僕の人生もこんなもんじゃないかなんて思ってきて、このままの性格でいくと
官僚にでもなって、ワイロも嫌とは言えずもらっちまって、出世して、
感動もなく結婚して、朝昼晩めし食って働いて、寝て
子どもは自分の人生を歩きだし、親をバカにし、あっと気づいたときはヨイヨイで
気づかいながら、だれかに看病してもらって、いつのまにか冷たくなってるという人生”
昼間は気づかぬうちに倒れ、小さい頃に妹を叱って、逃げた時、クルマに轢かれそうになって、母親から怒られたことを思い出す。
自分が“みの人間”になったのは、あれからなのか?
女子は失恋から自死を思いついたと話す。
「でも、もう死ぬのやめる。別の目で彼を見れるわ」
昼間は両親に女子を紹介して、名前を聞くと「夕(ゆうべ)」だと言う。
[あとがきマンガ]
ほんとうは、「こんにちは女達」ってタイトルがよかったそうな。
大島弓子/著
【内容抜粋メモ】(ネタバレ注意
「さようなら女達」
第1章 フン あんたは まだ めざめてないわ
心臓に持病を持つ優しい母。母の血を継いだ兄は、マラソン中に突然倒れて亡くなった。
長女の毬は、マンガ家を夢見て、コンクールに出す作品をコソコソと必死に描いていた。
町医者の父は、マリが母を心配させるたびにヒヤヒヤするため、ルールを決めようと言う。
「応募作品コンテストで第一席をとったら、マンガ家を目指すのを応援する。落ちたら金輪際、夢を諦めること」
マリはあと3枚仕上げなければ、土曜の締め切りに間に合わないが、なぜか委員長をしているため大忙し。
クラスで一番目立つ茗(メイ)は、かつて委員長だったが、なぜか一番目立たないマリを委員長に仕立て上げた。
マリの意見になにかと反対するメイ。
新任で未婚の数学教師・植草は、女子高でモテモテ。
植草がマリばかり気にするので、クラスメイトらはどうしてなのかと騒ぎ出す。
やっとの思いで原稿を書き上げて、郵便局にギリ間に合ったと思ったら、最後の1枚を落としていた。
それを読んだメイは「あんたはまだ全然めざめていないわ。人間への冒涜だわ!」と言い捨てる。
その様子を見ていた植草は、自分が電車で雑誌社に届けると助けてくれたため、天使に見えるマリ。
第2章 めざめかけても
植草への感謝の気持ちが恋心に変わるマリだが、クラスメイトはメイがマリを噂どおり好きなのか聞きたい、と言って、
「好きだけど」と認めたメイにショックを受けるマリ。「まるであたしが描いたマンガじゃないか」
“あれは彼の恋の終結だった”というラストにメイは「あんなの佳作にでも入ったら、あんたの描いてるもの軽蔑する」と言う。
メイの言う通り、マリの作品は落選。
気持ちを聞いてもらおうと植草の下宿先を訪ねると、恋人がいることが判明。
メイはほんとは兄のことを愛していた。マラソンする様子も見ていた。
「“妹は自分のように寿命の短い運命にないから、いつか目的を達成することができるだろう。
見届けることはできないけどね”といって笑ってたわ、いつも」
転校を決意したというメイ。
ペデラスト:男色家。
第3章 修羅場
文化祭の準備に精を出して気を紛らわせるマリ。
父は、友人で医者の深瀬が次男坊・潮をマリの旦那として「ほしけりゃやると」と言ったという。
深瀬医院は隣り町のため、次男坊を見に、ウロウロしていると、その彼が「堕ろすのは罪悪だなんていわないが」と止める。
深瀬医院は産婦人科で、若い女の子が悩んだ末、自死してしまうこともあるため、本気で止める潮に
「あたしちゃんと産んで、育てます!」とウソをついて逃げるマリ。
その途中で、憧れの有名なマンガ家を見て、興奮していると、「手が足りないから手伝ってほしい」と助手に頼まれる。
徹夜でギリ仕上げた後、マリは道で倒れてしまい、深瀬医院にかつぎこまれ、単なる疲労だと分かる。
“コトコトコトのこの音は 心臓の音みたい 規則正しく 力強いリズム
こんなふうなリズムで着々と生きてゆけたら あたしの心臓は ちっとも進歩的じゃない”
第4章 めざめることは
目覚めたマリは、深瀬から、母親がマリを心配するあまり倒れたと言われ、駆けつけた時はもう遅かった。
その日から父は人を遠ざけ、家事はお手伝いさんがやることに。
マリは友だちの家に泊まるとウソを言って、海に行く。
“まず海に行って大きな声で許しを請うてみるの
そうすれば、あたしがこの先どうすべきか わかりそうな気がするので
死ぬも 生きるも”
家出がバレ、父が来る。2人は海に向かって懺悔する/涙
そして、父は母が「マリと再契約を結びなさい」と言ってたという。
マリのもとに、いつかの助手を頼んだ女性から電話がくる。
マリがあの時のアシスタントと知らずに「前半はイイのに、ラストがあれでなかったら第1席に選んだわ」
「おりしもそのときチャイコフスキーが」
1兆円近い額の遺産を受け継いだ笛子。
演劇部に所属する仲間に恋人を紹介するたびに、「金目当てだ」と追い出す幼なじみの才蔵。
ひと目惚れ同士のフエコとジローマルも疑われる。ジローマルの両親は雪崩で亡くなり、身寄りは祖父のみ。
いつも、なんで勝手に死んでしまったとなじる夢を見て、責めたことを謝りたいと思う繰り返しだったが、
フエコに出会ってから、やっと謝る夢が見れた。
フエコの理想の男性は、世界中の物語や音楽の話を聞かせてくれる人。
日文(フエコの縁戚)はジローマルが祖父宛に書いた手紙を読んでしまう。「成功すれば金が入る。大敵なのは私情だ」
日文は手紙のことを才蔵に話す。
ジローマルは、フエコが実は才蔵を好きだったことが分かる。
才蔵が2人を認めて婚約パーティをしようというので、ジローマルは自分は日文に雇われたんだと打ち明ける。
才蔵は日文が好きだった。
弥縫策:一時のがれにとりつくろって間に合わせるための方策。
「七月七日に」
既出:大島弓子短編集2『たそがれは逢魔の時間』(小学館)
「いたい棘いたくない棘」
“ぼくは、こんど15歳だけど、心はもはや老人のよう。
でも君たち 恋と噂話で明け暮れるのが青春だとしたら、
僕は老人であることに誇りをもってしまうんだよ”
そんなマモルの前に現れたのは、もっとも楽しかった子ども時代を一緒に過ごしたかほる大将。
当時の遊び友達の海里が好きだったモエ(マモルの姉)は、失恋してから笑顔を見せなくなり、海里は遠くに転校したことを告げる。
カホルはモエに惹かれていることをマモルに打ち明けると、妙な気持ちになる。
「その恋って・・・どこから判断するの?」
「肝心なのは一緒にいたいと思うことさ」
マモルはカホルが好きな気持ちを抑えて、姉との仲をとりもつ策として、
突然別れを告げて、雪の中で何時間も待たせたため、カホルは肺炎寸前になってしまう。
モエは海里から「きみの全部がきらい」と言われて別れてから「わたしは、わたしがキライなの!」
クラスでモテるうき子から、海里くんは死んだと聞かされる。
父が大きな借金を負って転校し、死ぬ間際にモエコの名を何度も呼び「ほんとはね」「ごめんね」と言っていたという。
「シンジラレネーション」
高い所から飛び降りようとした同級生の女子を咄嗟に止めた河原昼間。
“悲しいね 僕はウソに向かってウソ! ちがうことに向かってちがうといえない 手も足もでない“みの人間”なんだ”
翌日、その女子生徒が来て「あなたは一度死への道を断ち切ったのだから、
この世で生きたいと思えるような面白いことを私に教えるのは当然でしょ」と言われ、付き合わされることに。
昼間は他人事などどうでもいいため、三流映画を観に行ったり、夜中の長電話に付き合わされたりして振り回される。
ある時、向かいの新婚の家を覗きに行き、夫を待ついかにも貞淑な若妻の姿を見て、表情が変わる女子。
心配して後を尾けると、どんどん山に入って行く。
“ふと僕の人生もこんなもんじゃないかなんて思ってきて、このままの性格でいくと
官僚にでもなって、ワイロも嫌とは言えずもらっちまって、出世して、
感動もなく結婚して、朝昼晩めし食って働いて、寝て
子どもは自分の人生を歩きだし、親をバカにし、あっと気づいたときはヨイヨイで
気づかいながら、だれかに看病してもらって、いつのまにか冷たくなってるという人生”
昼間は気づかぬうちに倒れ、小さい頃に妹を叱って、逃げた時、クルマに轢かれそうになって、母親から怒られたことを思い出す。
自分が“みの人間”になったのは、あれからなのか?
女子は失恋から自死を思いついたと話す。
「でも、もう死ぬのやめる。別の目で彼を見れるわ」
昼間は両親に女子を紹介して、名前を聞くと「夕(ゆうべ)」だと言う。
[あとがきマンガ]
ほんとうは、「こんにちは女達」ってタイトルがよかったそうな。