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『名犬チロリ 日本初のセラピードッグになった捨て犬の物語』(岩崎書店)

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『名犬チロリ 日本初のセラピードッグになった捨て犬の物語』(岩崎書店)
大木トオル/著

ゆうゆう散歩でこのコの記念銅像が築地にあることを知って、もっと知りたくなって借りてみた。
日本でセラピードッグ認定1号犬のチロリの物語/涙
可愛い写真もたくさんあるし、字も大きくて、大木さんの話し方は分かり易い。
セラピードッグがどう訓練されるのか、普段の活動は何をしているのか、
また、捨て犬が保健所に行くとわずか5日間で殺処分されてしまう日本の現状も語られている。
大木さんはテレビでも見たことある。

  


【内容抜粋メモ】
1992年。シベと散歩していた著者は「オバケ小屋(かつて結核療養所があった建物の一部)」に
近所の団地の子どもたちが拾って世話をしている若い母犬と5匹の子犬と出会った。
その母犬が子どもの一人に「チロリ」と名付けられていた。
首にはボロボロの首輪が食い込み、虐待されていたと思われる足の障害を持つコだった。

しばらく秘密に世話をしていたが、団地の大人たちに気づかれて
「団地では動物を飼育できないという規則があるから、管理事務所に連絡して“処理”してもらう」と怒られる。
著者と子どもたちは団結してチロリ親子を守ろうと決意する。

「子犬の里親を探しています」という貼り紙を出すと、最初に子犬をもらってくれたのは病院の看護士さん。
2日後、隣り町に住む夫婦、次の週には誰も知らないうちに1匹連れていかれていた。
4匹目も著者の友人の紹介で里親が決まる。

残るは黒い子犬だけ。可愛い子犬のうちに里親を探さないと、野良はとくに飼い主探しは難しい。
1ヶ月経つ頃、チロリが小屋からいなくなる。
著者は野犬保護の状況を調べ、やっとこの地区で白っぽい中型犬をつかまえたと知る。

明日は係留期間の最後の5日目。
野犬でつかまった犬は、一定の期間が過ぎると「安楽死」の名のもとにガス室で殺されてしまう。
「面会時間は終わった」というスタッフに動物愛護センターの電話番号と住所を教えてもらい、
タクシーに飛び乗って行くと誰もいない。著者は貼り紙をして翌日訪ね、チロリと再会する!
チロリを施設から出す時、後ろを振り向き、5日間過ごした仲間を見て座り込んだという。

チロリから、殺されていく犬たちの持つ独特な臭いがして、シャンプーしてあげ、
古い首輪を外し、小屋に連れていくと、黒チビと再会して全身で喜びを表す親子。

知人から女の子が黒い子犬を欲しがっていると連絡が入り、車に乗せると必死に走ってくるチロリ。
著者はチロリを連れて、里親探しに協力してくれた友人宅に親子を置いていった。



人間の勝手で親子ともに捨てられ、今度は離ればなれにさせられる。
犬たちの運命は人間の都合でさまざまにかわっていきます。p.41


黒い子犬は里親にもらわれ、友人宅でリース(リード)を放されていたチロリは、
近所の野良猫とケンカをしてすっかり天敵になっていた。
(ダメだよ、リード着けなきゃ 動物好きでもいろんな価値観の人がいるね。

著者は、これ以上このままではまたトラブルになると、自分のもっているケンネル(犬舎)で飼うことを決心する。


************************ケンネルでの暮らし


著者はアメリカで犬のハンドリング(扱い方)を学び、日本で教えていて、
ケンネルには純血統の大型犬ばかり6匹いた。
そんなシベリアン・ハスキーらの中ではたしてうまくやっていけるのか?という不安の中、
真っ先に近づいてきてくれたのは「ブラニガン」だった。

使役犬(ヒトのために働く犬)であるシベと比べて、足が短く、障害もあるチロリには
毎日のトレーニングは厳しいものに違いないけれども、耐えなければまた捨てられてしまうと思ったのかとにかく一生懸命に走る!
足の爪から血が出てもスピードを落とさない。

ハスキーは顔の怖さとは逆に闘争心に乏しく、素直なため、チロリはなんと彼らのリーダー格にまでなってしまう/驚
犬は強い相手に従うという習性がある。チロリは野良だった勝気さの一方で、弱い者への深い愛情を持っていた。

 

ケンネルにきて3年目。ブラニガンががんで倒れる。
チロリはまるで恩返しするように付き添い、まさに病人や老人の速度に合わせて進むセラピードッグの歩行をしていた。
手術の4ヶ月後、ブラニガンは天国に旅立ち、骨肉種にかかったクリスタルにも最期まで寄り添うチロリ。
その様子を見た著者は、チロリに社会福祉への道を思いつく。


************************セラピードッグへの道


セラピーとは「治療」の意味。老人ホーム、障害者施設、学校などで老人や病人と接して弱った心身を元気にする役目がある。
アメリカでは60年以上の歴史があり、きちんと医療プログラムに組み込まれて、安全に行われているが、
日本ではまだまだ「なにそれ?」という認識しかなかった。

セラピードッグの重要な条件は、弱い者に対する思いやり。あとはトレーニングで技術を身につけること。
ただチロリには、ケンカをおそれない勇敢さがあることが不安の種だった。

セラピードッグになるための教育課程は45もある。
基本は、「ウェイト(待て)」「シット(座れ)」「カム(来い)」「レイダウン(伏せ)」から。
トレーニングはだれが指示しても確実に犬に伝わるよう英語で行われる。
また、エサを与えて技術を覚えさせたり、失敗した時に体罰を与える方法は絶対しない。
ハンドラー(リーシを持ち、犬をコントロールする人)と犬との信頼関係。「できたら、褒める」が基本。

そして、犬ぞれぞれがもつキャラクター、個性をつぶさないことも重要。
セラピーを受ける人たちは、ロボットのようにただニンンゲンの命令に服従するだけの犬を喜ばない。

ウォーキングの訓練では、その速度に合わせて歩けること、
寝たきりの老人にはベッドで添い寝したまま1時間近く静かに過ごす訓練もする。
チロリの訓練は、1日4回、ほかの犬と分けて行った。
とくに「アイコンタクト」の目力はこれまでないほど心を揺さぶるものがあった。

「ケインウォーク」という杖をついた人に寄り添って歩く訓練で、虐待のことを思い出したのか体の震えが止まらなくなったため、
著者はベッドの横に杖を置いて寝ることで慣らさせた。
チロリは“勘の良さ”で、普通は2年かかる訓練をわずか半年でクリア!
もっとも難しい重度の障害者との訓練も落ち着いてこなした。


************************セラピードッグデビュー

 

「犬は裏口から入ってください」とか「おい、ワン公! お手! ワン!」などと言われて戸惑うスタッフと犬たち。
赤十字の入ったグリーンのベストを着せられたチロリは、時折、乱暴なことをされても優しい目で見つめ、
動かない老人の手を一心不乱に舐め、献身的に愛をそそいだ。

不登校になった勇一くんは、新聞でセラピードッグを知ったお父さんに連れられてきた。
犬のトレーニングを通じて心を開き、すっかり明るさをとり戻し、「捨て犬を飼って、セラピードッグにしたい」と話すまでになった。
捨て犬里親ネットワーク『マザールーフ』からジョンがやってきて、その一歩を踏み出した。


チロリは、特別養護老人ホーム『シルヴァーウィング』を定期的に訪れ、
3階のデイサービスルームで10〜30人ほどの老人を対象にセラピーが行われる。
1日のフィナーレには、老人と犬、ハンドラーがテーマ曲に合わせて歩く。

 

脳に軽い障害があった中里さんは、最初無表情だったが、チロリの名前が出るまでに長くはかからなかった。
日本橋人形町の老舗洋食屋『キラク』の看板主人・長谷川さんは、昔飼っていた犬と同じ名前の黒柴ナナと会い、
その後、チロリと出会ったことで、大好きな犬と触れ合いながら、失った記憶、言葉、感情を取り戻し、立って歩くまでになった。

セラピーの現場では、痴呆症の老人から乱暴な扱いを受けてもチロリは辛抱強く接する。
「犬なんて嫌いだ」と言ってた人も30分後にはそぅっと頭をなでるようになる。

チロリはリラックスする時間が少ない犬だったが、捨て犬だった記憶からか、食べ物への執着が強く
夜中にゴミ箱の残飯をあさるクセがあった
骨の形の犬用ガム「ローハイド」をほかのシベから奪って3本も持っていたことがあったってw


************************病との闘い

2003年まで8年間セラピードッグの活動をしたチロリ。
13歳のおばあちゃんになり、1999年には目を手術し、避妊手術をした。
左足にはしばらく前から小さな腫瘍ができていて、2004年に摘出手術。悪性だった。
チロリはいつも病院に入ると異常に体を震わせ、恐怖心をおさえられなかった。

 

右腹部には6cmほどの脂肪の塊があり、喉の中心部にもしこりが発見された。
そろそろ引退を考えていた頃、乳首の横にしこりが見つかり、大学病院の検査結果では良性だったが、
念のため細胞を採取してもらうと悪性と分かった(1回の検査だけじゃ信用できないね/汗×5000
「乳がんで、余命3ヶ月です」と告げられる。

その後、階段ものぼれなくなったチロリは前足をかいて抱いてくれとサインを送るようになる。
痛みをやわらげるモルヒネのパッチも準備。通院にはかならず友だちのピースが付き添った。

 

ある日、突然ガクッとなり、崩れるように倒れこんだチロリ。
著者に最期のアイコンタクトをとり、「いままでありがとう・・・」と言っているようだった。
余命を宣告されてちょうど3ヶ月後にチロリは息をひきとる。
そして、これまでチロリの後についていたピースは、日本のセラピードッグ第2号になった。


************************被災地でのセラピードッグの活躍

 

東日本大震災のあと、著者らはセラピードッグを乗せたバスで石巻と、宮城県・女川町の病院を訪れた。
愛犬が津波に流されたという人は、愛犬の写真を抱いて、セラピードッグを強く抱きしめた。
「犬も大好きだけど、今度は猫もお願いします。わたしの猫は亡くなってしまいました」という声もあった。
その後も仮設住宅などを訪れる訪問セラピー活動を行っている。


************************著者あとがき


大木さんは子どもの頃うまく言葉が話せなかった。話し相手は愛犬のメリーだけ。
その後、英語の歌に触れ、英語ならスラスラ出てくることに気づき、歌手となり、渡米。
アメリカで歌手活動をしている時に「セラピードッグ」の活動を知り、犬が人を元気にする様子に驚き、
セラピードッグがライフワークとなった。

2005年「動物愛護管理法」が25年ぶりに改正され、
「動物は命あるものだから、殺したり、傷つけたりしてはいけない。」
動物は管理するものではなく、人と動物が共生するものという法律になった。
(こんな当然のことも法律にしなきゃならないほどヒトはバカだねぇ・・・

1980年には100万以上だった犬猫の殺処分は、今は5/1になった。
避妊・去勢手術の普及、「里親制度」の取り組みが理由。
著者が設立した「国立セラピードッグ協会」を訪れる人も増えた。


セラピードッグが受けるトレーニング
1.アイコンタクトマナー
目を見て確認する

2.ハウスマナー
の中でヒトとともに生活する時の基本

3.ウォーキングマナー
さまざまなヒトの歩行の速さに合わせる6段階

4.クロスウォーキングマナー
障害物をよけて歩行者を誘導歩行する。

5.スローウォーキングマナー
ゆっくり歩く。

6.ケインウォーキングマナー
杖をついて歩行する者との同速歩行。6段階。

7.ホイールチェアマナー
介護士がつく、つかないに応じて車椅子の左側を同速歩行する。

8.ハプニングマナー
突然の出来事に冷静に対処する。

9.ベッドマナー
寝たきりの老人などの部屋での行動マナー、ベッドの上での基本マナー。

10.ハンディキャップマナー
主に脳障害や障害者に接するマナー。

なかなかヒトだってできないマナーだよね。
それを、そもそも犬の義務でもないのにボランティアでやってくれるんだから、優しいなあ!


国立セラピードッグ協会

国立セラピードッグ協会facebook




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