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『風と木の詩』5巻(小学館叢書)

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『風と木の詩』5巻(小学館叢書)
竹宮惠子/著

4巻を読み終えてから、5巻を先に読んでいたことに気づいた!
どうりで、時間の流れがバラバラだと思った


【内容抜粋メモ】

[第5章 セルジュ]
 

アスランはジョルジュ侯爵と対面し、自己紹介する。
そのまま別れてきたことに怒るワッツ。「今ごろパイヴァは大変な目に遭っているぞ!」

「お前はまだ若い。わしの目を盗んで浮気する気になっても不思議とは思わんよ。
 だが、わしに恥をかかせるようなことだけはするな。黙って見てはいない」

“いつもと同じだ。私に恋したすべての若者は。その壁を越えても、彼は来るだろうか?
 友や親やきょうだいの長い長い情愛を裏切らねばならないとしても?”



ワッツとレネから釘を刺されるアスラン。

「まず、君の両親が許さない。親族は社交界で笑い者になるだろうし、知人は離れていく。
 しかも侯爵の愛人はパトロンなんて甘いもんじゃない。子爵家の1つくらい潰すのはわけもないんだ」

父の耳にも入り「お前にはまだ早すぎる。結婚でもするというのか、そのココットと」と言われ、
「結婚します」と答えたアスランを叩く。

必死に今後のことを考えてひきこもるアスラン。心配するリデル。
彼女のアスランに対する恋心を知りつつ、思いを寄せるワッツ(使用人との恋は許されるの???

アスランは、侯爵邸を訪れ、真向から「パイヴァを愛しています。彼女を奪い取りたいと思っています」と宣言。
「君がもし僕を愛していると言ってくれるなら、僕に誓ってくれ。決して、周りの力に負けはしないと!」

周囲に中傷されるアスランに対して、飲み屋の主人が、自分も妻と駆け落ち同様の結婚をしたと慰める。

「“お前さまは誰のものです?”そう言うと不思議に心がおさまったものでした。
 一人を選ぶことは、他をすべて捨てることだ、とはよく言ったもんです」


アスランは、父が到着する前に、家を出る。

“事を成そうと思う時に、芸術家はまず自らを天涯孤独にしなければならぬ。
 己の創り出すひたすら自由なもののために、ありとあらゆる世の情けをすべて振り捨て、
 人が自分自身で選んだ自らの道を歩くことも、また、芸術ではないのだろうか?”

アスランはパイヴァに伝える。
「夜半、部屋の外で一度だけ君を呼ぶ。その時、君が来ようと来るまいと、僕は家を捨ててパリを離れる」

侯爵はなにか起こると気づき、庭に猟犬を放つ。下男に銃で殴られながらもパイヴァの名を呼ぶアスラン。
一人だけ自分を慰めてくれた飲み屋の主人に馬車を頼んでいたが、銃声に脅えたのか、馬だけ残して消えていた。
2人は馬に乗って逃げる。

 

「どこへ?」
「スイス行きの列車に乗る。療養所に知人の医者がいるんだ。そこからチロルへ向かう」


それから2年。アスランはパイヴァと、一人息子セルジュと幸せに暮らしながら、ワッツとレネに手紙を書き続けていた。
身分を隠して、弱い体で、慣れない羊飼いや鍛冶屋をして稼ぎ、2年間かけて家も建てた。

 

セルジュは音の出ないピアノで遊び、その音階がすべて合っていることに気づいて驚く2人。
アスランは、自分の短い命を考え、息子に夢を託し、周囲には内緒にして、ムリをして働いて将来のためのお金を稼ぐ。
そんな夫を見て心配するパイヴァ。
「私の母がそうだった。血を吐いて倒れる前は働いて、働いて・・・」



アスランは、幼いセルジュに町の音楽教師からピアノを習わせる。
「セルジュ、父さんの行っていたアルルの学院にお前も行くかい?
 素晴らしい青春だったよ。いい友人と、いい先生にきっとお前も巡り合える」

夏は船で荷運びをし、冬は薪運びをしたアスランは、再び喀血する。
馬車だけを走らせ、パイヴァに知らせ、吹雪の中、見つけた時には雪の中で倒れていた。



療養所で休むアスランを世話するパイヴァのもとに、父が訪ねてくる。
「昔、ココットだった女が、あんな清楚な看護婦になれるものか」と目を疑う父。



とうとうアスランと父は再会を果たす。

「外に出て初めて、あの貴族たちのくだらない世界が見えるようになった。
 目には見えぬ戒律に縛られて、あの中では誰もが親兄弟よりも世間体を重んじる・・・ウソの世界だ」

身寄りのない患者の男から「おめえのオヤジ死ぬんだぜ。オレが死んだらおめえに乗り移ってやる」と言われ、
その後、アスランは亡くなり、セルジュは彼が死神だったと信じてしまう。

 

パイヴァは、アスランが2年かけて少しずつ建てた家に案内する。
セルジュが狂ったようにピアノを弾く姿を見て、父は決意を話す。

「孫のセルジュに私の跡目を継がせたい。承知してはもらえまいか。
 わしも老い先短い。頼みます。我が子の息子を私に!!
 今まで築いてきたものが、ある日突然ウソのように価値をなくす。そんなことがあるとは夢にも思わなかったが・・・
 価値などと言うものは、所詮、自分といかに密着しているかで決められる」

 

アスランの主治医は、ストレスで熱を出したセルジュに言い聞かせる。

「父さんは、まだ若い頃から重い病気にかかっていた。それでも7年生き抜いたよ。
 死神を追い払って、命のすべてを君に譲った。君はまだ3つだ。若さほど死神の苦手なものはない。生きるんだ」

「セルジュは今、体中で考えている。生くべきか、死すべきか。
 人が生きてゆけるのは、幼い頃のそうした洗礼のおかげです。
 あなたも覚えてはおられますまい。幼い頃、そんな形而上学で頭を悩ましたことなどは。
 だが子どもは大人より、はるかに広い存在です。
 物事を超越し、本質の指し示す真理をつかむことのできる者」

セルジュの熱は下がり、祖父はパリに戻っていった。



冬に母が妹を身ごもって寝ていると思っているセルジュ。
だが、本当は、母もアスランと同じ結核におかされていた。
「春になったらセルジュはパリにやるんです」と主治医に明かすパイヴァ。

アスランの父は老衰で亡くなり、義母から手紙が来て、セルジュを後継者として迎えたいと書かれていた。
パイヴァもパリへと言われたが断り、幼いセルジュを見送った。

 

祖母は優しかったが、アスランの姉で外に嫁いだリザベート、マルゴットは遺産を狙って気を悪くしていた。
祖父の忠実な執事クロードは、セルジュを跡継ぎとしてお披露目する日が近いため、厳しく社交術を身に付けさせる。

 


セルジュの純粋さに、下働きの者らはすっかり好きになってしまう



そこにあら捜しをして、セルジュの権利を取り上げようと姉らがやって来る。
そうとは知らずに、母がジプシーのココットだったとか、姉たちが財産を狙っていることを知り、急に勉強に励む5歳のセルジュ。


お披露目会


リザベートは、母も老い先短いから、その後はセルジュの後見人として牛耳ろうと図る。
パルヴァが亡くなった知らせが届き、動揺しつつも、皆の前でセルジュを夫の遺言通り、地位、財産すべてを譲ると宣言する祖母。
祖母は、自分の罪を悔い、心労で倒れてしまう。



リザベートは、セルジュの従兄弟を使って、セルジュを閉じ込め、その間に祖母は何も言い残さないまま亡くなる。
ようやく見つけ出され、弱ったセルジュに、叔母は祖母の死と、母の死も伝える。
“人を信じて疑わぬ。それがどんなに危険なことか、あの子にどうして教えられる?”(クロード



ショックで正気を失ったセルジュを見かけて、馬車を止めたのは、パリ一の名医、アントワヌ・ランジール。
クロードは、彼をセルジュの主治医にすることで、権力に弱いリザベートをいったん黙らせることに成功する。
ランジールもまた、幼い息子を死なせた過去があった。



ランジールの助言により、最も静かな部屋がセルジュにあてがわれ、雑音を一切排除して養生に専念させた。
一方、リザベートは再び社交界で力を持とうと毎日のようにサロンでパーティを開いていたが、
社交界から追放同然だったパトゥール家に皆飽き飽きしていた。

しかし、セルジュがピアノを弾きはじめると、皆感動に包まれ、リザベートはそれを利用しようと決める。
叔母の社交界への野心と、不幸にも結びついたセルジュの才能は、絶賛と同時に、
母と同じ肌の色によって侮蔑の声を浴びなければならなかった。

 

「彼のピアノは、けっして精神的逃避の場所ではない。彼のピアノは表現なのだ。
 そう・・・まっすぐに表現することを許されない彼の愛情を託すものだ。
 誰にともなく、何にともない。まだ漠然とした大きな愛なのだろう。行き着く先を求めて歌っている」(ランジール


 

リザベートは、有名なピアニストのアンドール・マレエを招待し、セルジュのピアノを聴かせて、弟子にしてもらいたいと頼む。
「才能は素晴らしいが、この社交界で花を咲かす者にとって、あの子はあまりに危険です」と断られてしまう。
そこに、レネも同席していて、「今日は、アスランが君に手渡した音楽を聴くためにきた。君の最初の崇拝者だ」と告げる。

リザベートは城で権力を握り、クロード含め、祖母の使用人が叔母の使用人にとってかわった。
セルジュは燃やされそうになっていた母の荷を見つける。中には父の日記も入っていた。



「もしも世の親たちが子らにもっとも価値のあるものを残すとしたら、
 親たちの試行錯誤の記録こそ、なにものにも勝る宝になるだろう。
 それを信じて、わが息子セルジュに短い私の青春を贈る。可能な限りの愛を込めて」

(このセリフ、とっても共感する



セルジュは、リザベートの娘アンジェリンに出会う

アンジェリンが5歳で、父の誕生日と同じ日に生まれたと知るセルジュ。
“世のしくみの複雑さ、巧妙さ、皮肉さ。そして優しさ”

セルジュは、社交界でも人気を得るようになるが、叔母はアンジェリンがセルジュに想いを寄せていることに反対はせず、
むしろ好都合と放っておく。セルジュ13歳。
周囲は「成人する前に、娘の許婚にでもなれば首に縄をつけたも同然てわけ」と噂する。



アンジェリンがセルジュに友情ではなく恋人としてのキスを求めて、「ダメなら生きていたくない!」とボートから飛び降り、
助けたセルジュを折檻するリザベート。
それを止めに入ったアンジェリンの髪に暖炉の火が燃え移る事故となる。



「ぼくは君の許婚になる」
「母さまに責められて私を愛すると言うの? 恥しらず! 誇りを捨てた人間は嫌い!
 そして、憐れまれるのは死んでもイヤよ! 私の前に姿を見せないで!」

セルジュは自分から寮に入るから紹介状を書いてくれと叔母に頼む。

“私の肉親への愛。そして、アンジェリンという少女への愛。
 その思いは誰にでも経験ある自然な感情だったと言えるだろう。

 だが、ジルベール・コクトーへの思いは、どこまでも不自然で不安定な
 それでいて、確かなものでありつづけた。
 それは陽炎のようにゆらめきたつ恋の炎だったかもしれない”


[第6章 陽炎]
ジルベールは相変わらず荒れていて、A棟監督生ジュール・ド・フェリィにもからむ。



「君はこのところ、目立つことばかりして、ロスマリネを怒らせようと躍起になっているね。
 なるほど彼は短気だからカッとさせるのは簡単だろう。で、今度は彼の参謀である僕を狙ったわけ?」


[巻頭のカラーページ・巻末イラスト集]
 



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