■『風と木の詩』6巻(小学館叢書)
竹宮惠子/著
【内容抜粋メモ】
[第6章 陽炎]
パスカルが3ヶ月ぶりに何もなかったように学校に戻って来たが、
一番可愛がっていた弟ミシェルが亡くなり、部屋に閉じこもっていたのだとパットから手紙が来て知っているセルジュ。
(なんだかサリンジャーのグラース家みたいだ/涙
ジルベールは、相変わらずボウとロスマリネを怒らせようと、上級生を片っ端から誘惑していた。
風紀を乱しすぎるから、現場をおさえたら厳罰に処するようにと言われている生徒らもブロウには頭が上がらない。
「彼の狙いは君だロスマリネ。君のことを禁欲主義者だと言っていたよ」(ジュール
セルジュがボウと手紙のやりとりをしていることを知って青ざめるジルベールを思わず抱きしめるセルジュ。
その手紙には、ボウが従妹のアンジェリンと叔母と会ったと書いてあり、過去が蘇り動揺する。
セルジュは日に日に高まるジルベールへの感情に戸惑う。
“人よ 自己を愛せよ ことに 己の中の悪を 悪こそは正直な感情 叫ぶがいい! それが人間なのだと
日の光の中 双手をさしのべ 己の内なる罪を抱け
カインの印は罪を知る者の刻印 おそれるな 人はみなカインの末裔”
「ピアノを弾かせなかったら、あの子の精神が乱れてしまうよ。まるでピアノが思いのはけ口だ」(ルーシュ教授
セルジュはフェンシングクラブ、乗馬クラブでも一等/驚
カールとともに下級生係にもなり、室長のセバスチャンは、セルジュに甘えっぱなし。
なぜ寮に住まないのかとカールに聞くと
「僕はとても集団生活にはついていけない。君はまるで自分の家のようになじんでいるんだね」
“でも、それは僕が立派な人間だからやない。僕がどこにいても問題を起こさずにいないからだ。
せめて堂々と一人で立ち向かえる場所にいたいから”
セルジュにボウから面会の誘いが来る。
アンジェリンと叔母が来ているから会ってほしいと頼まれる。「口には出さないが、彼女は君を恋している」
開校記念日のミサで、生徒からまた肌の色でからかわれるセルジュ。
隣りの席に座ったジルベールがちょっかいを出したことで、短気な教授に廊下に立たされる仲間たち。
(青春だね
アンジェリンと再会すると、美しい顔にはひどいアザが残っていた。
療養で行ったマルセイユでボウと知り合って、励まされたのだという。
「自分のほうから不幸になったりしちゃいけないって」
叔母のリザベートは、娘の結婚相手にボウはどうかと打診する。
「セルジュくんは?」「あの子は結局、理想的な相手ではありませんもの」
ロスマリネ「そんなにあの悪魔っ子が大切ですか?」
ボウ「私はあれを・・・育てようと思った最初の目的のまま無垢にしておきたいだけだ。
なにも可笑しくなどない。だれもが無垢の意味を知らないだけだ。
そうして、彼のせいで他人が己を省みて唖然とすればそれでよい。
そのためになら私はなんだってする!」
母の夢を見て泣いて目が覚めると、パスカルがいた。
「うらやましいね。心を揺さぶる出来事には、最大限に敏感でなくちゃいかん。
人間は、どうにも理性に頼りすぎて、本来の性質を忘れつつあるようだ。
自分に誠実でなくして、他人に誠実であれるわけがない」
レオンハルトらは、毎月1日「美少年愛好クラブ」の会合を開いていた。
条件はパートナーを連れてくること。今回は、特別にブロウがジルベールを連れてきた。
そこに、何も知らないセルジュが入ってくる。
セルジュが持ってきた手紙にはB棟の生徒からクラブ宛てに
「珍しい新鮮な果実を1個ご進呈いたします。名はセルジュ・ジプシー。ご賞味ください」と書いてあった。
抵抗するセルジュを集団リンチに遭わせ、腕が肉離れしたにも関わらず、部屋の鍵を外に投げて傍観するジルベール。
“身をもって知るがいい。自尊心がズタズタにされたら、自分の中になにが残るか!”
裸にされたセルジュの美しさに、レオは思わずキスをする。
「悪かったよ。こうでもしなきゃ優等生のおまえには手が出なかった。みんな同じにお前が好きだぜ」
ボウもセルジュの美しさを褒めたことを思い出し、ジルベールは嫉妬で鞭打とうとして、逆に打たれる。
ロスマリネとジュールは、監督室にいたが、ボロボロになったセルジュを見つけて手当てする。
「男ばかりの学校なんだ。力による支配はもっとも初歩的な触れあいだよ」(ジュール
3年前、出すぎたロスマリネは、ボウを怒らせ、レイプされ、ジュールに見られてしまってから、悪夢にうなされ続けている。
リンチをした相手の名も言わず、
「僕自身の不始末だとも言えます。すぐカッとなって、売られたケンカを買ってしまう。言わなくてもいい一言を言ってしまう。相手に悪いです」
「君に感謝する。今夜は眠れそうだ」
ジュールは昔、泣く子も黙る不良番長だった/驚
その日から、ロスマリネは、セルジュに目をかけるようになり、周囲を驚かせる。
ロスマリネ「1つだけ君に忠告しておこう。オーギュスト・ボウという男には、深入りしないことだ」
「私刑(リンチ)の特権を持っているのは総監だけだ」って、そんな権利なくてもよくない?
ボウは、パリの知り合いで、音楽院の教授を急に連れてきて、演奏会を開くことにしたから弾いて欲しいとセルジュに頼む。
アンジェリンが訪ねてきて、ボウから婚約を申し込まれるかもしれないと告げる。
「知ってるわ。あなたは、あの男の子が好きなのね」
演奏会でセルジュは、肉離れした腕の言い訳をしないまま演奏し、途中で棄権する。
次にボルゾ教授の弟子アンリが弾き、高評価を受ける。
ボウはセルジュの傷を皆に見せるが「次の機会? いやいや、もうこんな田舎は懲り懲りだ」と笑われる。
言い訳をしないセルジュにボウは感心する。
“バネのようにしなやかな精神。それこそが知らず知らずのうちに誰もが君に魅かれる理由だ。
振り返ることをしない、その少年らしさの”
ジルベールは、ブロウを挑発し、集団でレイプされ、ボロボロになって部屋に戻る。
レオはセルジュに忠告する。
「狂ってるぜあいつは。とにかくオレはおりたよ。ヤツに関わるのはもうごめんだ。吐き気がする」
ボウはまたセルジュを呼び出し、パリの音楽教師に学ばせようと提案するが、断る。
ボウを追おうとするジルベールを止め、これ以上関わらないと宣言するセルジュだったが、ムリだと知る。
“好きだ ジルベール”
パスカル「どうせこうなると思ってたよ。そうこなくちゃ、君らしくないね。セルジュのセの字はおせっかいの“せ”なのさ」
セルジュもジルベールも風邪をひき、カールも成績が落ちている今、
パスカルは猛勉強して、自分の夢に賭け、見事に首席で進級し、3年落第から卒業する。
冬の休暇はパスカルの家に泊まったため、長い夏の休暇は自分の家に泊まってくれと仲間に誘われるが、
学校に残るというセルジュ。それはジルベールのためだと勘付くパスカル。
「受かる見込みがないからって、あの院長のタヌキヤロウ、1年落第させやがった。
こんな牢獄はさっさとおさらばしたかったのに」(ジルベール
ジルベールは、セルジュが居残ると聞いて、突っぱねながらも、ちょっとでも帰りが遅くなるとガマンできない。
“沈黙の音が聞こえる。一人でいるのは耐えられない! 待つのはいやだ”
セルジュが遅くなった理由は、町でブロウとケンカしたせいだった。
セルジュはジルベールに、なんとか普通の暮らしを学ばせようとする。
互いに幼い頃の話を交わし、急接近してゆく。
その様子を見て心配するワッツ。
アスランがチロルに行った後、小間使いのリデルは郷里に帰り、今では5人の子どもがいる。
“僕は戦争に行って、左足といっしょに彼女への想いを埋めてきた・・・”
[巻頭のカラーページ・巻末イラスト集]
竹宮惠子/著
【内容抜粋メモ】
[第6章 陽炎]
パスカルが3ヶ月ぶりに何もなかったように学校に戻って来たが、
一番可愛がっていた弟ミシェルが亡くなり、部屋に閉じこもっていたのだとパットから手紙が来て知っているセルジュ。
(なんだかサリンジャーのグラース家みたいだ/涙
ジルベールは、相変わらずボウとロスマリネを怒らせようと、上級生を片っ端から誘惑していた。
風紀を乱しすぎるから、現場をおさえたら厳罰に処するようにと言われている生徒らもブロウには頭が上がらない。
「彼の狙いは君だロスマリネ。君のことを禁欲主義者だと言っていたよ」(ジュール
セルジュがボウと手紙のやりとりをしていることを知って青ざめるジルベールを思わず抱きしめるセルジュ。
その手紙には、ボウが従妹のアンジェリンと叔母と会ったと書いてあり、過去が蘇り動揺する。
セルジュは日に日に高まるジルベールへの感情に戸惑う。
“人よ 自己を愛せよ ことに 己の中の悪を 悪こそは正直な感情 叫ぶがいい! それが人間なのだと
日の光の中 双手をさしのべ 己の内なる罪を抱け
カインの印は罪を知る者の刻印 おそれるな 人はみなカインの末裔”
「ピアノを弾かせなかったら、あの子の精神が乱れてしまうよ。まるでピアノが思いのはけ口だ」(ルーシュ教授
セルジュはフェンシングクラブ、乗馬クラブでも一等/驚
カールとともに下級生係にもなり、室長のセバスチャンは、セルジュに甘えっぱなし。
なぜ寮に住まないのかとカールに聞くと
「僕はとても集団生活にはついていけない。君はまるで自分の家のようになじんでいるんだね」
“でも、それは僕が立派な人間だからやない。僕がどこにいても問題を起こさずにいないからだ。
せめて堂々と一人で立ち向かえる場所にいたいから”
セルジュにボウから面会の誘いが来る。
アンジェリンと叔母が来ているから会ってほしいと頼まれる。「口には出さないが、彼女は君を恋している」
開校記念日のミサで、生徒からまた肌の色でからかわれるセルジュ。
隣りの席に座ったジルベールがちょっかいを出したことで、短気な教授に廊下に立たされる仲間たち。
(青春だね
アンジェリンと再会すると、美しい顔にはひどいアザが残っていた。
療養で行ったマルセイユでボウと知り合って、励まされたのだという。
「自分のほうから不幸になったりしちゃいけないって」
叔母のリザベートは、娘の結婚相手にボウはどうかと打診する。
「セルジュくんは?」「あの子は結局、理想的な相手ではありませんもの」
ロスマリネ「そんなにあの悪魔っ子が大切ですか?」
ボウ「私はあれを・・・育てようと思った最初の目的のまま無垢にしておきたいだけだ。
なにも可笑しくなどない。だれもが無垢の意味を知らないだけだ。
そうして、彼のせいで他人が己を省みて唖然とすればそれでよい。
そのためになら私はなんだってする!」
母の夢を見て泣いて目が覚めると、パスカルがいた。
「うらやましいね。心を揺さぶる出来事には、最大限に敏感でなくちゃいかん。
人間は、どうにも理性に頼りすぎて、本来の性質を忘れつつあるようだ。
自分に誠実でなくして、他人に誠実であれるわけがない」
レオンハルトらは、毎月1日「美少年愛好クラブ」の会合を開いていた。
条件はパートナーを連れてくること。今回は、特別にブロウがジルベールを連れてきた。
そこに、何も知らないセルジュが入ってくる。
セルジュが持ってきた手紙にはB棟の生徒からクラブ宛てに
「珍しい新鮮な果実を1個ご進呈いたします。名はセルジュ・ジプシー。ご賞味ください」と書いてあった。
抵抗するセルジュを集団リンチに遭わせ、腕が肉離れしたにも関わらず、部屋の鍵を外に投げて傍観するジルベール。
“身をもって知るがいい。自尊心がズタズタにされたら、自分の中になにが残るか!”
裸にされたセルジュの美しさに、レオは思わずキスをする。
「悪かったよ。こうでもしなきゃ優等生のおまえには手が出なかった。みんな同じにお前が好きだぜ」
ボウもセルジュの美しさを褒めたことを思い出し、ジルベールは嫉妬で鞭打とうとして、逆に打たれる。
ロスマリネとジュールは、監督室にいたが、ボロボロになったセルジュを見つけて手当てする。
「男ばかりの学校なんだ。力による支配はもっとも初歩的な触れあいだよ」(ジュール
3年前、出すぎたロスマリネは、ボウを怒らせ、レイプされ、ジュールに見られてしまってから、悪夢にうなされ続けている。
リンチをした相手の名も言わず、
「僕自身の不始末だとも言えます。すぐカッとなって、売られたケンカを買ってしまう。言わなくてもいい一言を言ってしまう。相手に悪いです」
「君に感謝する。今夜は眠れそうだ」
ジュールは昔、泣く子も黙る不良番長だった/驚
その日から、ロスマリネは、セルジュに目をかけるようになり、周囲を驚かせる。
ロスマリネ「1つだけ君に忠告しておこう。オーギュスト・ボウという男には、深入りしないことだ」
「私刑(リンチ)の特権を持っているのは総監だけだ」って、そんな権利なくてもよくない?
ボウは、パリの知り合いで、音楽院の教授を急に連れてきて、演奏会を開くことにしたから弾いて欲しいとセルジュに頼む。
アンジェリンが訪ねてきて、ボウから婚約を申し込まれるかもしれないと告げる。
「知ってるわ。あなたは、あの男の子が好きなのね」
演奏会でセルジュは、肉離れした腕の言い訳をしないまま演奏し、途中で棄権する。
次にボルゾ教授の弟子アンリが弾き、高評価を受ける。
ボウはセルジュの傷を皆に見せるが「次の機会? いやいや、もうこんな田舎は懲り懲りだ」と笑われる。
言い訳をしないセルジュにボウは感心する。
“バネのようにしなやかな精神。それこそが知らず知らずのうちに誰もが君に魅かれる理由だ。
振り返ることをしない、その少年らしさの”
ジルベールは、ブロウを挑発し、集団でレイプされ、ボロボロになって部屋に戻る。
レオはセルジュに忠告する。
「狂ってるぜあいつは。とにかくオレはおりたよ。ヤツに関わるのはもうごめんだ。吐き気がする」
ボウはまたセルジュを呼び出し、パリの音楽教師に学ばせようと提案するが、断る。
ボウを追おうとするジルベールを止め、これ以上関わらないと宣言するセルジュだったが、ムリだと知る。
“好きだ ジルベール”
パスカル「どうせこうなると思ってたよ。そうこなくちゃ、君らしくないね。セルジュのセの字はおせっかいの“せ”なのさ」
セルジュもジルベールも風邪をひき、カールも成績が落ちている今、
パスカルは猛勉強して、自分の夢に賭け、見事に首席で進級し、3年落第から卒業する。
冬の休暇はパスカルの家に泊まったため、長い夏の休暇は自分の家に泊まってくれと仲間に誘われるが、
学校に残るというセルジュ。それはジルベールのためだと勘付くパスカル。
「受かる見込みがないからって、あの院長のタヌキヤロウ、1年落第させやがった。
こんな牢獄はさっさとおさらばしたかったのに」(ジルベール
ジルベールは、セルジュが居残ると聞いて、突っぱねながらも、ちょっとでも帰りが遅くなるとガマンできない。
“沈黙の音が聞こえる。一人でいるのは耐えられない! 待つのはいやだ”
セルジュが遅くなった理由は、町でブロウとケンカしたせいだった。
セルジュはジルベールに、なんとか普通の暮らしを学ばせようとする。
互いに幼い頃の話を交わし、急接近してゆく。
その様子を見て心配するワッツ。
アスランがチロルに行った後、小間使いのリデルは郷里に帰り、今では5人の子どもがいる。
“僕は戦争に行って、左足といっしょに彼女への想いを埋めてきた・・・”
[巻頭のカラーページ・巻末イラスト集]