■『風と木の詩』7巻(小学館叢書)
竹宮惠子/著
【内容抜粋メモ】
[第6章 陽炎]
庭師は、セルジュがジルベールと同室だと聞くと血相を変える。
ワッツに聞くと、2年ほど前、優秀だった庭師の甥アーネスト・ブリエがジルベールに狂い、
沼で心中事件を起こして、正気をなくして退学したという。
庭師は、ジルベールを見て、鉢植えで殴り殺そうとする
「あのじいさん、何度も僕を殺そうとした。そして毎度失敗するのさ。アーネストと同じようにね」
セルジュは、沼にアーネストの怨霊がいると信じ込んでいるジルベールを安心させるために沼で泳いでみせる。
セルジュとジルベールの元にボウから「マルセイユに来ないか」と誘いが来る。
すっかり自分を取り戻すジルベール
「君はこことはまるで正反対の人間だ。君が太陽なら、私は暗黒の星。
ジルベールは、太陽の惑星であろうとすることに思い迷う冥王星のようなものだ」(ボウ
セルジュがジルベールに勧めた本はヴェルヌの『月世界旅行』!
「ジルベールを好きかね? それは困った。私も彼を愛している。むろん単に肉親としてではない。
それゆえ少し変わった子になった。だから彼を学校にやったのだ。普通の子どもにするために。
だが、君のせいで呼び戻さねばならなくなった。君には渡さない。それを知らせるために君を呼んだ。
彼は求める。私は満たす。他の者には代わりは出来ない。私はこの世でただ一人の彼の相手だ」
「愛しているっておっしゃいました。でも信じられないんだ。あれは、人間の扱いじゃない!」
「そう、彼は私のペットだ。そう育てたよ。私の権限と責任において。こんな話を誰かにしておくのもいいかもしれない」
セルジュは、クスリ入りと知りながら、ボウから勧められたワインを飲み、レイプされる。
「そう。これが君の欲しがった答えだ。忘れなさい。学校へ戻って健康な毎日を過ごすがいい。君にはそれが似合っている」
“知っていた。知っていて、僕はあの液体を飲んだのだ”
「犠牲のことは考えるな。得たもののほうが大切だ。考えてごらん。おまえが得たものは? 得ようとしたものは?」
「君は将来何になりたい? 僕はピアニストになりたいんだけど」
「なんにもならない」
「じゃあどうするの学校を卒業したら」
「卒業なんかしないよ。学校なんかに帰らないもの。ずっとここで暮らすんだオーギュと」
「オーギュがもし結婚したら? 年とってオーギュが先に死んだら?」
「僕もいっしょに死ぬからいい」
「オーギュは卑怯だ。君を騙してる。君を愛していると言ったけどウソだ。
愛していたら、ペットだなんて言うもんか! ペットとして育てたってそう言った!」
セルジュはボウが自分をなぶりものにしたことも告げる。
翌朝の一番列車で学校に戻るセルジュを追いかけるジルベール。
学校に戻ると、ジルベールはセルジュの言う通りに服を着て、聖歌隊にまで入ろうと努力する。
ブロウは、父親の考えで「婚約者を与えられちゃ、是が非でも卒業しなきゃならない」と彼女の写真を見せる。
セルジュは、毎晩、ボウの夢にうなされる。
長い夏季休暇の後は、部屋替えで上級生も下級生もごった返す。
セルジュとジルベールを別々の部屋に分けたワッツの元へ、セルジュは抗議しに行くが、同室になった生徒が先に文句を言いに来ていた。
「僕だって妙なことで疑われたくないもの。どっかの誰かさんと違ってしっかり者でもないしね。
とにかく今までみんなが納得してたように、汚いものは隔離するのが一番いいんじゃないですか!」
(他と違うものを排斥しようとする差別から、戦争も始まるんだ
カールが監督生を辞めて、自分の監督室を空けると言う。
ジルベールは、セルジュに好意を抱きつつも、体に触れてこないことに苛立ち始める。
「そうだ。これは病気だ。オーギュの。他人の肌に触れただけで総毛立つ。そして次には体が火照る」
更衣室で思わずセルジュにキスしているところを上級生に見られ、裸にされて辱められる。
パットは、セルジュに会いたいと兄パスカルに手紙を出す。
「パットと付き合ってみないか?」と言い出すパスカル。
パットに惹かれつつ、ジルベールを気にしているセルジュを見て、一緒に探そうと言うパット。
「人は誰でも気になることを一番に取り除かなきゃいけないの。そうしないと、そのうち息が詰まってきてよ」
ジルベールはずっとそんな2人を尾けていた。それを知っていたパット。
「あいつは八方美人で、嘘つきで、鈍感で、トンマなまぬけヤローさ」
「まあ、珍しい見解だわ。だって私はセルジュが大好き。誰もがそう思うと信じていたもの!」
「そんなこと、人前で言うなんてどうかしてるよ。女のくせに・・・」
「どうして? 女だから告白してはいけないの? そんな道理はどこにもないわ。
私たち・・・とてもいい友だち同士になれると思うの」
「セルジュだ・・・セルジュがおまえに悟らせたのだ」
ジルベールは、ボウとアンジェリンの婚約記事を読んで、後先考えず学校を飛び出してマルセイユに向かう。
「脱走は体罰なんだぞ!」と止める仲間だったが、セルジュが聞かないのを知り、協力する。
カールは冷静に馬車に倍額を払ってセルジュを送り出す。
「オーギュは結婚なんかしない」「そうとも」
その後、セルジュはジルベールに学校での集団生活を学ばせようとするが、ことごとく失敗し仲間に相談する。
カール「親のない子ザルは、親のある子ザルより集団生活がヘタだって」
パスカル「つまり、育てられたない子なんだよ。教えることをわざと放棄したのか、それとも知らないのか。
ジルベールに今なにが不足してるかっていやあオーギュストなわけだ・・・えらいこったぜ。お前が代わりをやれるのか?」
ジュール「君は本気でボウとセルジュを取り替えるつもり? やめたほうがいい。セルジュには君を受け止める力はない。
僕はああいう種類の人間は嫌いだ。知らない間に心の奥まで踏み込んでくるよ」
「君は知らないだろうが、僕の叔母は社交界の誰より派手好きな人だ。
それが娘の婚約にお披露目もやらないなんておかしいんだ。
きっとオーギュがそうさせたんだ。いざという時、いつでも婚約解消できるように。
だからあの2人は絶対結婚しない。落ち着いて考えてごらんよ。みんなオーギュの策略じゃないか。
君をいじめて、マルセイユへ帰る気にさせようっていう魂胆なんんだよ」
「触るな! お前なんか何も分かってやしない。何もできないくせにそばにいるな」
また満たされない思いを上級生相手に発散させはじめるジルベール。
[第7章 アニュス・ディ(神の子羊)]
「キレイだ。君はきれいなんだ。だからたまらない。君が自分をかえりみず、あんな男たちに身を任せているのは。
どうしたら止められる。誰にも君を触らせたくない! きみが好きだ」
「知らなかった。人の体がこんなにもピッタリと合わさるものだったなんて。
それに、抱き合っていることが、こんなに安心するものだってことも」
[巻頭のカラーページ・巻末イラスト集]
竹宮惠子/著
【内容抜粋メモ】
[第6章 陽炎]
庭師は、セルジュがジルベールと同室だと聞くと血相を変える。
ワッツに聞くと、2年ほど前、優秀だった庭師の甥アーネスト・ブリエがジルベールに狂い、
沼で心中事件を起こして、正気をなくして退学したという。
庭師は、ジルベールを見て、鉢植えで殴り殺そうとする
「あのじいさん、何度も僕を殺そうとした。そして毎度失敗するのさ。アーネストと同じようにね」
セルジュは、沼にアーネストの怨霊がいると信じ込んでいるジルベールを安心させるために沼で泳いでみせる。
セルジュとジルベールの元にボウから「マルセイユに来ないか」と誘いが来る。
すっかり自分を取り戻すジルベール
「君はこことはまるで正反対の人間だ。君が太陽なら、私は暗黒の星。
ジルベールは、太陽の惑星であろうとすることに思い迷う冥王星のようなものだ」(ボウ
セルジュがジルベールに勧めた本はヴェルヌの『月世界旅行』!
「ジルベールを好きかね? それは困った。私も彼を愛している。むろん単に肉親としてではない。
それゆえ少し変わった子になった。だから彼を学校にやったのだ。普通の子どもにするために。
だが、君のせいで呼び戻さねばならなくなった。君には渡さない。それを知らせるために君を呼んだ。
彼は求める。私は満たす。他の者には代わりは出来ない。私はこの世でただ一人の彼の相手だ」
「愛しているっておっしゃいました。でも信じられないんだ。あれは、人間の扱いじゃない!」
「そう、彼は私のペットだ。そう育てたよ。私の権限と責任において。こんな話を誰かにしておくのもいいかもしれない」
セルジュは、クスリ入りと知りながら、ボウから勧められたワインを飲み、レイプされる。
「そう。これが君の欲しがった答えだ。忘れなさい。学校へ戻って健康な毎日を過ごすがいい。君にはそれが似合っている」
“知っていた。知っていて、僕はあの液体を飲んだのだ”
「犠牲のことは考えるな。得たもののほうが大切だ。考えてごらん。おまえが得たものは? 得ようとしたものは?」
「君は将来何になりたい? 僕はピアニストになりたいんだけど」
「なんにもならない」
「じゃあどうするの学校を卒業したら」
「卒業なんかしないよ。学校なんかに帰らないもの。ずっとここで暮らすんだオーギュと」
「オーギュがもし結婚したら? 年とってオーギュが先に死んだら?」
「僕もいっしょに死ぬからいい」
「オーギュは卑怯だ。君を騙してる。君を愛していると言ったけどウソだ。
愛していたら、ペットだなんて言うもんか! ペットとして育てたってそう言った!」
セルジュはボウが自分をなぶりものにしたことも告げる。
翌朝の一番列車で学校に戻るセルジュを追いかけるジルベール。
学校に戻ると、ジルベールはセルジュの言う通りに服を着て、聖歌隊にまで入ろうと努力する。
ブロウは、父親の考えで「婚約者を与えられちゃ、是が非でも卒業しなきゃならない」と彼女の写真を見せる。
セルジュは、毎晩、ボウの夢にうなされる。
長い夏季休暇の後は、部屋替えで上級生も下級生もごった返す。
セルジュとジルベールを別々の部屋に分けたワッツの元へ、セルジュは抗議しに行くが、同室になった生徒が先に文句を言いに来ていた。
「僕だって妙なことで疑われたくないもの。どっかの誰かさんと違ってしっかり者でもないしね。
とにかく今までみんなが納得してたように、汚いものは隔離するのが一番いいんじゃないですか!」
(他と違うものを排斥しようとする差別から、戦争も始まるんだ
カールが監督生を辞めて、自分の監督室を空けると言う。
ジルベールは、セルジュに好意を抱きつつも、体に触れてこないことに苛立ち始める。
「そうだ。これは病気だ。オーギュの。他人の肌に触れただけで総毛立つ。そして次には体が火照る」
更衣室で思わずセルジュにキスしているところを上級生に見られ、裸にされて辱められる。
パットは、セルジュに会いたいと兄パスカルに手紙を出す。
「パットと付き合ってみないか?」と言い出すパスカル。
パットに惹かれつつ、ジルベールを気にしているセルジュを見て、一緒に探そうと言うパット。
「人は誰でも気になることを一番に取り除かなきゃいけないの。そうしないと、そのうち息が詰まってきてよ」
ジルベールはずっとそんな2人を尾けていた。それを知っていたパット。
「あいつは八方美人で、嘘つきで、鈍感で、トンマなまぬけヤローさ」
「まあ、珍しい見解だわ。だって私はセルジュが大好き。誰もがそう思うと信じていたもの!」
「そんなこと、人前で言うなんてどうかしてるよ。女のくせに・・・」
「どうして? 女だから告白してはいけないの? そんな道理はどこにもないわ。
私たち・・・とてもいい友だち同士になれると思うの」
「セルジュだ・・・セルジュがおまえに悟らせたのだ」
ジルベールは、ボウとアンジェリンの婚約記事を読んで、後先考えず学校を飛び出してマルセイユに向かう。
「脱走は体罰なんだぞ!」と止める仲間だったが、セルジュが聞かないのを知り、協力する。
カールは冷静に馬車に倍額を払ってセルジュを送り出す。
「オーギュは結婚なんかしない」「そうとも」
その後、セルジュはジルベールに学校での集団生活を学ばせようとするが、ことごとく失敗し仲間に相談する。
カール「親のない子ザルは、親のある子ザルより集団生活がヘタだって」
パスカル「つまり、育てられたない子なんだよ。教えることをわざと放棄したのか、それとも知らないのか。
ジルベールに今なにが不足してるかっていやあオーギュストなわけだ・・・えらいこったぜ。お前が代わりをやれるのか?」
ジュール「君は本気でボウとセルジュを取り替えるつもり? やめたほうがいい。セルジュには君を受け止める力はない。
僕はああいう種類の人間は嫌いだ。知らない間に心の奥まで踏み込んでくるよ」
「君は知らないだろうが、僕の叔母は社交界の誰より派手好きな人だ。
それが娘の婚約にお披露目もやらないなんておかしいんだ。
きっとオーギュがそうさせたんだ。いざという時、いつでも婚約解消できるように。
だからあの2人は絶対結婚しない。落ち着いて考えてごらんよ。みんなオーギュの策略じゃないか。
君をいじめて、マルセイユへ帰る気にさせようっていう魂胆なんんだよ」
「触るな! お前なんか何も分かってやしない。何もできないくせにそばにいるな」
また満たされない思いを上級生相手に発散させはじめるジルベール。
[第7章 アニュス・ディ(神の子羊)]
「キレイだ。君はきれいなんだ。だからたまらない。君が自分をかえりみず、あんな男たちに身を任せているのは。
どうしたら止められる。誰にも君を触らせたくない! きみが好きだ」
「知らなかった。人の体がこんなにもピッタリと合わさるものだったなんて。
それに、抱き合っていることが、こんなに安心するものだってことも」
[巻頭のカラーページ・巻末イラスト集]