■『海のオーロラ 1』(全6巻)(中公文庫―コミック版)
里中満智子/著
急にマンガブームに火がついた。
今作は、『王家の紋章』と『イアラ』が合体したようなストーリー。
里中さんの絵はクセがなくて、ストーリーも分かりやすく、歴史好きにもたまらない。
前半は、『王家の紋章』からエジプトにハマった私としては、表紙からしてもう大好きな世界。
しかも、2人の男女の出会いが「ムー大陸」となれば、「世界の7不思議」などなども大好物な私向きで、
寝食忘れて夢中で読んでて、気づいたら夜2時とか。
いつも読むスピードが遅いけれども、全6巻をあっという間に読みきってしまった。
▼あらすじ(ネタバレ注意
【第1部 エジプト編】
紀元前1466年。エジプト。第18王朝、ハトシェプスト女王の治世。
平民のルツは、早くに母を亡くし、そのショックでアル中になった父を養っている。
道に迷って、貴族や神官ら身分の高い者だけが行く学校に入ってしまい、レイという青年に出会う。
字を覚えたいというルツに教えるレイ。「ペンじく」をプレゼントする。
ルツは、なぜか以前からずっと同じ夢を見て苦しんでいた。
火山の噴火、大洪水、街も人も飲まれる中、耳の後ろにハート形のアザを持つ青年が名を呼ぶ。
2人は愛し合っていたが、波にのまれ、また再び生まれ変わって会おうと約束する。
「ラ・エデン!」という言葉だけが聞こえるが意味が分からない。
翌日、レイと約束した場所に行こうとして、平民の来る所じゃないと突き飛ばされたのを救うライラ。
その帰り道、貧しい占い師にみてもらうと、
「あんたは、この国を変える運命を持っている。あんたの恋は、命も歴史も飲み込む大きな運命のもとに燃え上がる。
あんたには、もう決まった人がいる。その人は互いに永遠の人。よく思いだしてごらん」と言われる。
家に戻ると、父は酒代が払えないために、ルツを奴隷として売ってしまう。
仲買人は市場で「若いし健康だから、子どもをたくさん産ませれば、いい財産になりますよ」と宣伝する。
子を産めば奴隷が増やせるため。
ある男がルツを買い、その男のなぐさみ者になるくらいなら死のうと決心すると、
ルツの仕事はライラの身の回りの世話係だった。
ライラは神官セムトの娘で、母を早くに亡くし、父から溺愛されている。
ルツは、奴隷として働くイスラエル人の子どもイサクが気にかかるが、ライラは
「余計な同情は人を弱くさせるわ。あの子が心配なら突き放すことね。
とことん悲しめばいいのよ。そうやって人は強くなっていくんだから」と言う。
ライラは、小さい頃、高熱を出して、足が悪いのを隠して生きていた。
イサクが足手まといだから売り渡そうといわれているのを見て、ルツは自分が預かるという。
イサクは「エデンは、楽園で、人間は罪をおかして追放されたと祖母から聞いた」と話す。
ハトシェプスト女王のお祝いにイサクは石を投げ、その罪を負って命を投げ出そうとするルツを見て、
トトメスは「お祝いの日だから許してあげてください」と頼む。
トトメスは、父の愛人の息子だが、女王の跡継ぎでもあるため、ハトシェプストは憎む心を隠している。
ハトシェプストは、セムトにトトメスに女でもあてがって堕落させるよう命じる。
セムトが妻の10回目の命日を祝う日、レイと再会する。
レイは、エルトニア国(鉄のとれるエジプトの植民地)の大臣の息子で、人質として3年前に来た。
トトメスはルツを連れて行こうとするが、レイが「その子は私にください」と言い出す。
レイを軽蔑しかけたルツだったが、助けてくれたと知って、もしやレイが運命の人か?と思うが、
確信がない上、ライラの片思いの相手と知って、身を引こうと決心する。
ルツと出会ったことで、ライラは恋に命を賭けてみようと決心し、トトメスは自分にも国を変える力があるかもしれないと思い始める。
ルツはイサクにも文字を教える。
「この世に神はひとつだよ。神とは愛の心だって」というイサクの言葉に、またなにか思い出しそうになるルツ。
「自分自身はすべてを愛せる心を持っているかどうか、自分の心に聞く。どこでいつ聞いたのか」
努力しはじめたトトメスをハトシェプストは気に食わない。
「男には2通りある。恋する女が現れた場合、骨ぬきになる男と、男として目覚める人間と」
トトメスは、ルツのために父と再会させ、贅沢な暮らしを与える。
収穫祭で、セムトはトトメスを殺すため、酒に毒を混ぜるが、その杯はルツの父が持っていき、ルツが飲んでしまう。
毒のせいでルツは幻影の中に、過去の記憶を取り戻す。
「自分以外の人のために生きようとする。それが神の心を知る第一歩なんだ」
【著者によるあとがき内容抜粋メモ~私のアダムとイヴ】
輪廻転生について想像しはじめたのが、いったいいつごろからだったか記憶がはっきりしない。
「良いことも悪いことも、人の行為には必ず報いが来る。
だから目先のことに囚われて心を惑わされると、たとえこの世で結果が現れなくても、来世で答えが出る」
という考え方には、人間が社会を創ってきたベースとなる考え方が含まれているような気がする。
どんな状況であれ、人は「これでいいのだ」と自分に言い聞かせようとして、なんとか理屈を探しだしてくる。
それはより良い生き方をするための知恵かもしれない。
しかし、“良い行為”とは何だろう?
自分が「良い」と思ってしたことでも、考え方の違う人にとては「悪い」ことかもしれない。
10代のはじめの頃、「少女クラブ」で手塚治虫先生の『火の鳥』がスタートした。
「生まれ変わり」はいつも「良いこと」「悪いこと」に代表される正義、努力といった
道徳めいた生き方と関わっていたのに、これが“恋”だなんて!
運命の力を感じない恋は本物ではない、と私は思いたい。だから私はあまり恋が出来ない。
仕事のしすぎで何度か体を壊し、入院もした。
その第1回目の手術後、ベッドの上で思いついたストーリーが今作だった。
まだ死にたくない、私の“運命の人”が誰なのか知りたい。
手術痕の傷口をおさえながら、私の“アダムとイヴ”のアイデアをまとめはじめた。
里中満智子/著
急にマンガブームに火がついた。
今作は、『王家の紋章』と『イアラ』が合体したようなストーリー。
里中さんの絵はクセがなくて、ストーリーも分かりやすく、歴史好きにもたまらない。
前半は、『王家の紋章』からエジプトにハマった私としては、表紙からしてもう大好きな世界。
しかも、2人の男女の出会いが「ムー大陸」となれば、「世界の7不思議」などなども大好物な私向きで、
寝食忘れて夢中で読んでて、気づいたら夜2時とか。
いつも読むスピードが遅いけれども、全6巻をあっという間に読みきってしまった。
▼あらすじ(ネタバレ注意
【第1部 エジプト編】
紀元前1466年。エジプト。第18王朝、ハトシェプスト女王の治世。
平民のルツは、早くに母を亡くし、そのショックでアル中になった父を養っている。
道に迷って、貴族や神官ら身分の高い者だけが行く学校に入ってしまい、レイという青年に出会う。
字を覚えたいというルツに教えるレイ。「ペンじく」をプレゼントする。
ルツは、なぜか以前からずっと同じ夢を見て苦しんでいた。
火山の噴火、大洪水、街も人も飲まれる中、耳の後ろにハート形のアザを持つ青年が名を呼ぶ。
2人は愛し合っていたが、波にのまれ、また再び生まれ変わって会おうと約束する。
「ラ・エデン!」という言葉だけが聞こえるが意味が分からない。
翌日、レイと約束した場所に行こうとして、平民の来る所じゃないと突き飛ばされたのを救うライラ。
その帰り道、貧しい占い師にみてもらうと、
「あんたは、この国を変える運命を持っている。あんたの恋は、命も歴史も飲み込む大きな運命のもとに燃え上がる。
あんたには、もう決まった人がいる。その人は互いに永遠の人。よく思いだしてごらん」と言われる。
家に戻ると、父は酒代が払えないために、ルツを奴隷として売ってしまう。
仲買人は市場で「若いし健康だから、子どもをたくさん産ませれば、いい財産になりますよ」と宣伝する。
子を産めば奴隷が増やせるため。
ある男がルツを買い、その男のなぐさみ者になるくらいなら死のうと決心すると、
ルツの仕事はライラの身の回りの世話係だった。
ライラは神官セムトの娘で、母を早くに亡くし、父から溺愛されている。
ルツは、奴隷として働くイスラエル人の子どもイサクが気にかかるが、ライラは
「余計な同情は人を弱くさせるわ。あの子が心配なら突き放すことね。
とことん悲しめばいいのよ。そうやって人は強くなっていくんだから」と言う。
ライラは、小さい頃、高熱を出して、足が悪いのを隠して生きていた。
イサクが足手まといだから売り渡そうといわれているのを見て、ルツは自分が預かるという。
イサクは「エデンは、楽園で、人間は罪をおかして追放されたと祖母から聞いた」と話す。
ハトシェプスト女王のお祝いにイサクは石を投げ、その罪を負って命を投げ出そうとするルツを見て、
トトメスは「お祝いの日だから許してあげてください」と頼む。
トトメスは、父の愛人の息子だが、女王の跡継ぎでもあるため、ハトシェプストは憎む心を隠している。
ハトシェプストは、セムトにトトメスに女でもあてがって堕落させるよう命じる。
セムトが妻の10回目の命日を祝う日、レイと再会する。
レイは、エルトニア国(鉄のとれるエジプトの植民地)の大臣の息子で、人質として3年前に来た。
トトメスはルツを連れて行こうとするが、レイが「その子は私にください」と言い出す。
レイを軽蔑しかけたルツだったが、助けてくれたと知って、もしやレイが運命の人か?と思うが、
確信がない上、ライラの片思いの相手と知って、身を引こうと決心する。
ルツと出会ったことで、ライラは恋に命を賭けてみようと決心し、トトメスは自分にも国を変える力があるかもしれないと思い始める。
ルツはイサクにも文字を教える。
「この世に神はひとつだよ。神とは愛の心だって」というイサクの言葉に、またなにか思い出しそうになるルツ。
「自分自身はすべてを愛せる心を持っているかどうか、自分の心に聞く。どこでいつ聞いたのか」
努力しはじめたトトメスをハトシェプストは気に食わない。
「男には2通りある。恋する女が現れた場合、骨ぬきになる男と、男として目覚める人間と」
トトメスは、ルツのために父と再会させ、贅沢な暮らしを与える。
収穫祭で、セムトはトトメスを殺すため、酒に毒を混ぜるが、その杯はルツの父が持っていき、ルツが飲んでしまう。
毒のせいでルツは幻影の中に、過去の記憶を取り戻す。
「自分以外の人のために生きようとする。それが神の心を知る第一歩なんだ」
【著者によるあとがき内容抜粋メモ~私のアダムとイヴ】
輪廻転生について想像しはじめたのが、いったいいつごろからだったか記憶がはっきりしない。
「良いことも悪いことも、人の行為には必ず報いが来る。
だから目先のことに囚われて心を惑わされると、たとえこの世で結果が現れなくても、来世で答えが出る」
という考え方には、人間が社会を創ってきたベースとなる考え方が含まれているような気がする。
どんな状況であれ、人は「これでいいのだ」と自分に言い聞かせようとして、なんとか理屈を探しだしてくる。
それはより良い生き方をするための知恵かもしれない。
しかし、“良い行為”とは何だろう?
自分が「良い」と思ってしたことでも、考え方の違う人にとては「悪い」ことかもしれない。
10代のはじめの頃、「少女クラブ」で手塚治虫先生の『火の鳥』がスタートした。
「生まれ変わり」はいつも「良いこと」「悪いこと」に代表される正義、努力といった
道徳めいた生き方と関わっていたのに、これが“恋”だなんて!
運命の力を感じない恋は本物ではない、と私は思いたい。だから私はあまり恋が出来ない。
仕事のしすぎで何度か体を壊し、入院もした。
その第1回目の手術後、ベッドの上で思いついたストーリーが今作だった。
まだ死にたくない、私の“運命の人”が誰なのか知りたい。
手術痕の傷口をおさえながら、私の“アダムとイヴ”のアイデアをまとめはじめた。