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『日本傑作絵本シリーズ サシバ舞う空』(福音館書店)

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『日本傑作絵本シリーズ サシバ舞う空』(福音館書店)
石垣幸代・秋野和子/文、秋野亥左牟/絵

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今作も沖縄・宮古島の話と、秋野亥左牟の絵が素晴らしいコラボ。


▼あらすじ(ネタバレ注意


サシバは渡りのタカ。
暑い夏が終わり、ミーニス(沖縄で秋に吹く初めての北風)が吹き始める寒露(太陽暦の10月9日頃)になると、
島にはたくさんのサシバがやってくる。

「あの小さなタカがねー、海のまんなかでは、羽を組み合わせて、一羽の大きな鳥になって、海を渡ってくるってよー」


少年タルタが待ち焦がれていると、その風が吹いた。

「タカどーい てぃんぐ てぃんぐ
 タカどーい てぃんぐ てぃんぐ」

人々はみな仕事を放り出して、声を掛け合い、踊るように海岸に走り出す。
芋蔓を頭からかぶり、アダン木にのぼって、群れが近づくのを待ち、捕まえたら、アダンひもでくくりつける。



(タカー。ぼくに、おりてこい)とタルタが心で叫ぶと、一羽が腕に飛び込んできた。
ムサじいは、サシバが自分から人の腕に飛び込むなんて信じられなかった。



「おじい、このタカ、青目(オーミー)だよー」
「おとなになる前の若いタカだ」

タルタが魚を差し出してもタカは食べない。
ムサじい「タカは誇り高い生きものだから、そう簡単に人の手から餌は食わんさ」



ムサじいは、サシバをつぶしてタカジューシー(タカの雑炊)をつくった。

「ミーニスが吹き始めると、風邪をひきやすくなるからね。くりゃ、一番の栄養。
 天の神さんはよう知っておられて、わしらにご馳走をくださる。ありがたいことよね」



タカをピルバと名付けて、毎日世話をし、どこにでも連れていくタルタ。
3日も食べなかったピルバは、自分でトカゲを捕まえて食べていた。

「ピックィー!」サシバはひと声鳴いた。

子どもたちは、自慢のサシバを連れて、浜で飛ばし勝負をしている。

成長し、金色の目のピルバと飛ぶ夢を見るタルタ。
「南へ、南へ、もっと南へ!」と言うピルバの声が聞こえる。
ピルバは、タルタのそばにいたが、サシバの群れに飛んでいく。

ムサじい「タルタの魂は、ここにはもうないさー。サシバのところに飛んでいったかもしれん」


タルタは翌朝、浜でサシバの羽を集めて、大きな鳥をつくった。

かんかんろろー。
風が吹きぬけていき、渡りの季節ももう終わる。

ピルバも群れに加わり、サシバの群れは大きな一羽の鳥になり、タルタを持ち上げ、南の空に消えていった。


【あとがき抜粋メモ~久貝勝盛】


サシバは、島に秋を運び、人々の心にある種の興奮と喜びを与える。
秋田県以南に夏鳥として渡来し、低山や丘陵地帯の森林で繁殖、若鳥になるのに約2ヶ月かかる。

餌のとり方などひと通り学ぶと、約3000kmも離れた最終越冬地の東南アジアに向けて旅に出る。

島の人たちは、世界のどこにもない独特の方法で捕る。
おとりを使った「ツギャ」と呼ばれる捕獲小屋の止まり木にとまったサシバを縄の輪で捕獲する。
戦前は宮古群島全体で「ツギャ」が約1000~2000個も仕掛けられた。

サシバ捕獲は、労働の疲れを癒やす唯一のレクリエーションであり、貴重なタンパク源。
鋭い爪は、つなぎ合わせて指輪にし、羽は箒にしたという。

時代が変わり、サシバ保護啓蒙運動がおこり、現在は、鳥獣法により、非狩猟鳥獣として国際的にも保護されている。


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