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『子どもたちの遺言』(佼成出版社)

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『子どもたちの遺言』(佼成出版社)
谷川俊太郎/詩

谷川俊太郎さんがゲスト@あさイチ

「あさイチ」で紹介された本書を図書館で見つけて、早速借りてみた。



生まれたての赤ちゃんから、成人式までの子どもの成長過程に合わせて
写真と詩の時間が絶妙に進んでいく。

年齢ごとに、そのコに同化して書いてるってスゴイ!!
実際、取材をして書いたのか、想像力、記憶から書いたのか?

読んでいると、男女の違いすらあれ、一度は自分も通り過ぎたはずの時間でもあり、
私の両親が見て、育ててくれた時間でもある。

子どもの過ごす一瞬は、大人よりはるかに濃密で、速くて、儚くて、大切なものだと改めて実感。
同様に、大人になった今の時間も、濃密で、速くて、儚くて、大切なものなんだってことを、
私たちはつい忘れてしまっている。

仕事に追われ、天気やら、あらゆる小さな心配事に気をとられているうちに。



写真の力も強いなあ!

少年の背中に光る水の粒。日に焼けたなんとも言えないセクシーな1枚。


少女のスベッスベの肌にも見とれる。
なにもメイク、ヘアスタイリング、ファッションコーデなんかで悩まなくてもよかった時代。
その季節に合った格好で、気にせず、校庭でサッカーしたり、鉄棒の練習をしたり、
なんにもない広場で、ただただ走っているだけで幸せだった頃がよみがえる。

10代半ばのココロは、いちばん複雑だ。
奥底の、自分でも掴めない気持ちを、平易なコトバで書き表した時、
これを読んだ、同じ年齢の子のココロにストレートに響くことだろう。


何の意図があるのか、後半には詩だけが載せられている。
谷川さんの詩あってこその本だけれども、
やっぱり目からの情報のインパクトもあっての感動だと分かる。

それはカメラマンが命懸けで、無になって、被写体のありのままの「今」を切り取っているから。
それは谷川さんの詩とぶつかり合って、完璧に1つになっている。

いま、本書が私の手許にある、フシギな偶然と必然に感謝/礼



【内容抜粋メモ】

「もう まだ?」

わたしは三歳です

お母さんがいますけど
お化けがこわいです

お父さんもいますけど
地震がこわいです

でもお金がないのはこわくない



「幸せ」


わたしは幸せです
でもわたしが幸せなだけでは
世界は良くならないと思うのです
違いますか?



「もどかしい自分」

生きているってこういうことなんだ
さびしい自分 不安な自分
でも何かを待ってる自分
もどかしい自分
そいういう自分をみつめる自分



「いや」


いやだ と言っていいですか
本当にからだの底からいやなことを
我慢しなくていいですか
我がままだと思わなくていいですか

大人って分からない
世間っていったい何なんですか
何をこわがってるんですか



「ゆれる」



「きみと」


いくら働いても手に入らないものがある
お金じゃ買えないもの
どんな力も奪えないもの

疲れてくると問いかけるのも忘れてしまう
新聞を読むと テレビを見ると
この世界がとんでもなく醜く思えてしまう



「ありがとう」


誰だろう 何だろう
私に私をくれたのは?
限りない世界に向かって私は呟く
私 ありがとう





【谷川さんあとがき内容抜粋メモ~子どもの身になって】
私は七十七歳の老人の目で客観的に見ているのだが、
見ているうちに、主観的に同化してゆくことがある。

これは感情移入ではなく、意識の下のほうの、言葉になっていないあたりにひそんでいる
子ども、若者の波動が言葉になってもたらされるというのが近いかもしれない。

年を取るにつれて、子ども、若者の身になって詩を書くほうが書きやすいと思うことが多くなった。

大人の言葉がだんだんデジタル化してゆくのに反して、
子どもの言語はアナログにとどまっている。

からだ全体から、表面じゃなく底のほうから発せられる言語のほうが詩に近いからではないかと思う。

この連載詩は、はじめ私が子どもたちに向かって遺言を書くという発想だったが、
むしろ死からはるかに遠い子どもが大人に向かって遺言するするほうが、
この時代ではずっと切実ではないかと思って逆転させた。

生まれたばかりの赤ん坊に遺言されるような危うい時代に私たちは生きている。



【田淵さんあとがき内容抜粋メモ~僕のスタイル】
カメラマンは体力がなければやっていけない。
子どもたちを撮るときは特に痛感する。

0歳~20歳までの子どもたちを、約1年にわたって撮りおろしていくというのだから(驚

子どもたちを撮るとき、僕は心がけていることが2つある。

1つは、子どもたちと正面から本気で向きあうということ。
もう1つは、逆に、傍観者に徹するということ。



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