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少年探偵シリーズ33『黒い魔女』 (ポプラ社)

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■少年探偵シリーズ33『黒い魔女』 (ポプラ社)
江戸川乱歩/作 1970年初版 1992年第34刷 618円

※notes and movies(1998.4~)からの転記。
「作家別」カテゴリーに追加しました。

 
挿し絵画家さんのメモがないのが残念

今回は、シリーズ中、最初で最後と思われる女盗賊を相手に知恵比べをするという
『黒蜥蜴』をもとに、今シリーズ向けに書き直したもの。

『黒蜥蜴』@新国立劇場 中劇場(ネタバレ注意)

怪人二十面相よりもっと緻密に、大胆に、そして、なにより明智をあなどらず、好敵手として認めてもいる女盗賊。

23、4歳という設定で、それにしては素晴らしいまでのトリックで世間を翻弄する。
その上、彼女のアジトで明らかにされるコレクションの妖しいまでに恐ろしく耽美な芸術品ともいえる世界。

人間の剥製とは
溺れる人間を見て楽しむ水族館なんて

なんて突飛で、宝石なんか目じゃないアイデア。
この歳でこんな趣味を持って、荒くれ男どもを従えて、
堂々と表舞台に顔を出して、盗みを働いていたなんて、一体どんな育ち方をしたのやら。

また、彼女はシリーズ中、最初で最後、ラストで死んでしまうキャラクターでもある。
度胸もある分、誇りも人一倍高かったのか。
単なる作者の女性蔑視からか、あっけない服毒自殺。

明智の死(見せかけ)に号泣したところをみると、
ライバル以上の感情も持っていたかもしれないのに。

原作には、正義の塊の探偵と、女盗賊の許されぬ恋みたいな展開はなかったのか、気になるところ。


▼あらすじ(ネタバレ注意

「Xmas、おめでとう!」(こう言うかな?)パーティで、
最初から素顔で明智と誘拐事件の賭けをする黒衣夫人(なぜか夫人)。

「私が負けたら宝石全部をあげる、あなたが負けたら探偵をやめて」

大阪から東京のホテルに来た、富豪の父と娘。
賊の狙いは、その娘と「エジプトの星」という巨大な宝石

人形の首とすり替えて、まんまと騙される明智。
いったん娘をとり戻したが、自宅に半監禁状態のところへ、
家具を運び入れた中に手下が混ざっていて、
酔っ払いのフリをして吐いたりしたイスの中に娘を入れて運び出させる。

「人間椅子は可能だったのか!!」と一同は驚嘆する。
「宝石をくれたら娘を返す」と、塔で取引。

そこで売店のオヤジと夫婦に化けて逃げる黒蜥蜴。
顔中グルグル包帯を巻いた男なんて、これ以上怪しい格好はないと思うけどな


船でアジトへ向かう途中、人間椅子の中にいた明智を水に投げて殺し、
娘とともに号泣する黒蜥蜴。

だが、アジトに戻って安心したのも束の間、しっかり尾行し、一番の手下に化けた明智に
あっけなく鼻を明かされ、今まで引っ張りまわしていた娘が、
世界に二人といないソックリな少女(こんなすぐ見つかるか?)だったと知り、
本物がもう親元へ帰っていた新聞まで見せられ(粋だね)、
すぐに部屋に閉じこもって自殺する黒蜥蜴。


怪人二十面相なんて、子ども探偵団にバカにされ続けても、まだしつこく化かしに来るのに、
彼女も1回で諦めず、再挑戦すればいいのに。

これだけ何ラウンドもかけあいが続いて、
今回ばかりは一度、明智をギャフンと言わせることが出来て、いい線いってたのに。

・・・と、女性が主人公だと、つい同情してしまう。
大人向け小説を元にしているだけあって読みごたえのある1冊。

オリエンタル美人なカバー絵と、いまどきないザーマスメガネ+高~く盛った髪の挿絵が雰囲気出しててイイ。


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