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少年探偵シリーズ37『暗黒星』(ポプラ社)

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■少年探偵シリーズ37『暗黒星』(ポプラ社)
江戸川乱歩/作 武部本一郎/カバー絵 木村正志/挿し絵 1971年初版 1995年第29刷 700円

※notes and movies(1998.7~)からの転記。
「作家別」カテゴリーに追加しました。

2009-08-04にすでに再読時のメモがリンクされてたけど、改めて。


もうカンペキ、乱歩シリーズは犯人=被害者ていう図式で成り立っている。
何回も襲われながらも命が無事な一郎が怪しいが、最後まで家族全員を疑わせてひきつける手段は見事。

犠牲者が2人、しかもやり方が残酷で、今回は無情さが特徴の割に動機はありがちな恨み。
謎が解け、捕らえられるのも早い。

1つ驚いた発見は、明智が「変装は本当は好きじゃない」とのこと。
そうかなあ? ここまで楽しそうにやってる人が!?


▼あらすじ(ネタバレ注意
富豪・伊志田氏の家族団らんの場で、8ミリフィルムの顔が燃える出来事があり、
長男・一郎は、家族が皆、無残な死に方をする夢を見て、家の中でも変事が起こるという。

明智に相談し、ある夜、電話の最中に襲われる。
犯人は黒づくめの男で部屋からふっつりと消えた。

姉・あや子が塔から電灯で合図を送り、シラをきったせいで怪しまれる。
明智は、再び現れた黒い男に撃たれて重傷を負い入院する。

末娘・まり子も部屋で撃たれて死亡。隣りは姉の部屋。
合図の相手を調べる小林少年。が、相手の男も撃たれて死亡。
近所の工員・荒川と判明。

一郎は睡眠薬を盛られて屋根裏でみつかる。姉は行方不明。
品川の宿まで追跡したが、裏をかかれた。

また一郎が井戸から発見され、伊志田は不明。
そこに黒い男の出現からくりになっていた地下道に入り、面をとると明智!(分かっていたけど)

そこには、あや子と伊志田が縛り付けられ、溺死させる仕掛けがあった。
愛娘の死を見ながら、父が死ぬという残忍な方法。

皆を集めて、、ついに明智の謎解きが始まり、犯人はやはり一郎。

あや子と荒川の付き合いを逆手にとって利用し、被害者のフリをして探偵に勝負をかけていたが、
実子ではなく、伊志田に丸裸にされた男の息子で、恨みを晴らすのが動機と分かり、
あっさり犯行を認め、明智を讃えて捕われる一郎。

すぐ近くにいるのに分からないという恐怖を、明智が地球に接近する暗黒星に例えるところからタイトルとなっている。

「長い探偵生活の中でも珍しい、恐ろしい事件だった」

とラストに言っている。

それにしても、この挿絵の明智は崩れてないか?
いきなり“50歳過ぎ”の設定にも驚いたけど、絵の眼から血が流れたりする
恐ろしく、美しいイメージの強い前半は、魅力的なミステリー。



■『二銭銅貨』

『暗黒星』の後に入っているのは、乱歩が初めて発表した小説で、少年少女向けにリライトしたもの。

▼あらすじ(ネタバレ注意

明智が大学生時代、同じくらい頭がきれ、探偵好きな同居人・松村と知恵比べをする話。
工場で月給5万円(もちろん昔の貨幣価値だけどビックリ)が盗まれ、
犯人は外国タバコ、フィガロのため、捕らえられたが、肝心の金は隠されたままで懸賞がかけられた。

机の上の二銭銅貨が出てきた南無阿弥陀仏という暗号文が点字をもとに解け、
おもちゃ紙幣屋からまんまと金を見つけて、自慢げに話す友人。
だが、それは明智のイタズラで、札はやっぱりオモチャだったって話。

昔の悪党は、銅貨の中に牢破りの道具を隠したとか、時代を感じさせる1作。


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