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少年探偵シリーズ34『緑衣の鬼』(ポプラ社)

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■少年探偵シリーズ34『緑衣の鬼』(ポプラ社)
江戸川乱歩/作 柳瀬茂/カバー絵 武部本一郎/挿し絵 1970年初版 1992年第27刷 618円

※notes and movies(1998.7~)からの転記。
「作家別」カテゴリーに追加しました。


この話、こんなに込み入った本格ミステリーだったとは忘れていた。
また人騒がせな怪人二十面相かと思いきや、血生臭い殺人が重なり、
シリーズ中、もっとも恐ろしくリアルな恐怖を描いている。

明智探偵も、こんな難事件を小林少年に任せておくなんて。
「少年」なのに「警察の者ですが・・・」と言ってバレないのが一番の謎。


▼あらすじ(ネタバレ注意
小林少年と、友人・大江くんは、大江くんの姉の友・絹川芳枝が巨大な影に襲われるのを目撃する。
父母を亡くし、富豪の叔父に勘当され、画家・静雄と結婚後、陰のせいで夫は病床にあった。

その後、大江くんは、静雄氏の死体を発見する。
次には、消えていた芳枝さんも誘拐される。
その頃、怪紳士がトランクに芳枝さんを隠していたのがボーイに見つかり、姿を消す。

小林少年は、叔父・菊次郎を訪ねて、緑色の好きな精神異常者の息子・太郎が犯人ではと疑う。
漁村に越した芳枝さんを訪ねて、古い水族館で緑衣の男を見た小林少年。

再び芳枝さんはさらわれ、水槽の中で発見される。
芳枝の従兄・夏目太郎から呼び出されて殺された菊次郎は、顔を潰されて海に打ち上げられた。

一方、金庫の中のトランクに変わり果てた静雄の死体も。

長男・菊太郎のもとに身を寄せた芳枝さんと菊次郎の秘書・山崎は婚約する。
が、その夜、またもや芳枝さんは誘拐される。

ここで明智探偵登場。

緑衣の鬼ソックリに変装して、秘密の抜け穴を見つけ、芳枝さんを発見。
その後も寝室でノイローゼ気味の芳枝さんに刀が襲う。
皆は何もせず、奇妙な行動を重ねる明智を疑い始める。

皆が揃った会議では、犯人呼ばわりされた明智がやっとトリックを明かす。

影は幻灯だったのは『魔人ゴング』同様。
笑い声は腹話術。そして、最も意外だったのは、トランク内の死体が太郎で、
静雄と山崎が同一人物、そして真犯人が山崎なのは分かったけど、芳枝まで共犯とは!!

最期は、2人とも毒を飲んで自殺。
だけど、ここまで込み入った残念な計画を立てずとも、
秘書と義娘として結婚して、それなりの財産だけでは足りなかったのかねえ。

この時代に明智がいるかぎり、完全犯罪は不可能に近い。
今作では彼自身が犯人だと言われて、常に犯罪者と同化して考える
プロファイリングの危険性を暗に示している点も面白い。

芳枝は、黒蜥蜴よりずっと演技力のある女悪党だな。
私もずっと犯人当てに磨きがかかってきたかも。
まずは、最も意外な被害者を疑えっていうのがミステリーの第一歩か。


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