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少年探偵シリーズ43『幽鬼の塔』(ポプラ社)

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■少年探偵シリーズ43『幽鬼の塔』(ポプラ社)
江戸川乱歩/作 岩井泰三、山内秀一/画 1973年初版 1995年第27刷 700円

※notes and movies(1998.4~)からの転記。
「作家別」カテゴリーに追加しました。

今作は、少々趣を変えて、明智が大学卒業したての頃を描いている。
金持ちの坊ちゃんらしく、大学で犯罪心理学を学んだ彼は、
優秀な成績で卒業後、すぐ就職せず、探偵になるべく修行をはじめる。
というより、いたずらに好奇心を満たしているかのよう。

すでに小林少年は「先生」と呼んでそばにいる。2人の出会いはいかに!?
天才にも第一歩目があって、行動派だけど、考えや推理はまだまだ。
よって命懸けの体当たりで捜査しているのが面白い1冊。


▼あらすじ(ネタバレ注意
隅田川で「なんのことはない忍術使いのような井出達」(笑)の明智青年が待っていた事件到来。
不審な男がカバンを大事そうに抱えて、安旅館に偽名で泊まり、
イタズラに似たカバンとすり替えたら、ショックの末、紙幣を焼き捨て、五重塔で首吊り自殺してしまう。

カバンの中身は、麻縄と、木の万力(?)、血のついた仕事着、人差し指、
それらを金庫に預けて、男の身元を調べるため名古屋へ。

男・鶴田の妻は、子どもができてから家出した夫を待っていた。
尾行していた進藤に、明智は川に突き落とされて一命をとりとめる。

幽霊探偵となって、彼の前にたびたび顔を出して、動揺の末、自宅の梁で首吊り自殺を図る進藤。

彼の友人の画家・三田村にも「事件から身をひけ」と脅される明智。
縛られていた、押し入れの中から抜け出し、三田村のクルマに隠れて、
他の友人、政治家・大田黒、小説家・青木のつながりが、故郷の静岡の同級生だったと知り、すぐ調査する。

秘密クラブを結成し、メンバーの杉村は、五重塔で自殺していたこと、
彼は同じ塔で発見された刺殺死体の罪をかぶっていたことを聞き、
クラブの行われていた「あかずの蔵」に侵入した明智は、美しい少女像を見つけた後、
三田村、大田黒、青木に見つかり、真実を明かされる。

クラブの神童で、像のモデル、志津絵が、村の不良に殺され、
失望の復讐で我を忘れたメンバーは犯人を人数分刺して、
生前、少女が降霊時に見た「五重塔に風鈴のようにぶら下がった死体」と同じように見世物にした。

だが、罪の意識にさいなまれ、人一倍、世のため人のために努力したメンバーの中で失敗した鶴田は、
証拠品でほかのメンバーを恐喝していたところ、明智のせいで自殺した。

自らも責任を認めて、明智はあっさり「好奇心は満たされた。証拠品は焼き捨てます」とその場を去る。



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