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油井宇宙飛行士の142日 ~世界に示せ!日本の実力~

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■油井宇宙飛行士の142日 ~世界に示せ!日本の実力~

地球から見える時速400kmで飛ぶISS。人類史上最大の宇宙基地。


142日間滞在した、日本人10人目の宇宙飛行士油井さん。
今回、12月11日、地球に帰還する直前に40分間にわたってインタビューした。


長年宇宙に憧れてきた糸井さん。でも、自分が宇宙に行くのは怖い。「ファンタジーでしょう、こういうのは」



インタビューしたのはJAXA内に特別に用意された通信室
 
「デカイ! 昔の人が奈良に大仏を造ったのと同じことかもね」


インタビュー方法は、NASAの協力を得て衛星でつないだ
 
帰還が予定より10日ほど早まったそう

糸井:
僕は怖いから“ヤダよ”っていう立場でここに座っているけど、
油井さんの中にはそんな気持ちはまったく無かったの?

油井:
未知のものに挑戦する時は、私も怖いです。
でも、ここでの仕事は本当にやりがいがあって、本当に楽しく仕事をしています。


宇宙での暮らしは?

油井:
無重力に慣れると便利さに気づいてきました。今は快適です。最初はモノをなくしたりもしましたけどw
三次元でどんな姿勢でも仕事ができると気づきました。


7月23日、打ち上げ

ISSに218人目にやって来た油井さん


宇宙での暮らしとは?

[食事]
 
レトルトパックのスープや、穀物の缶詰をフードウォーマーで温めるのに40分もかかる!

 
フードウォーマー/表面張力でフォークにスープがくっつく! 開けた缶詰は浮いてるしww

油井:
宇宙ではたくさん食べないとどんどん痩せていってしまう。カロリーをたくさんとらなきゃならない。
私、好き嫌いが多いんですけど(実は野菜が嫌い)、食事は美味しいですよ。


[トレーニング]
毎日のトレーニングも欠かせない。無重力状態では骨や筋肉がすぐに衰えてしまう。

 
すごいマシンだな!/体重測定は、機械に乗って、なぜか上下してた


[宇宙の特等席は]
 

糸井:
地球の写真をたくさん撮ってますが、母なる地球のイメージがちがうんですか?

油井:
最初は宇宙から地球を見て感動した。小さな地球が本当に愛おしくて。
宇宙から見ると、地球は小さく感じます。言葉ではなかなか表せない。

ISSから撮影した日本列島

(ツイッターでは毎日のように素晴らしい写真を見せてくれた


1日に自分の時間はどれくらい?

油井:
ほとんどない。仕事は月曜から金曜で、土曜は半日、寝る前に少し自分の時間があって、
ツイッターを使って、皆さんにISSでの生活や感動を伝えたいと思っている。
自分の時間がなくても十分楽しめています。
(これが本来の「仕事」の形だよな。つい寝食忘れて、感動しながらやってしまうこと、自我を忘れて他人のためにやること

油井:
地球では通勤電車とか大変だったけど、ここは職場と生活環境が一体化しているので、
地上よりもはるかに過ごしやすい(ラッシュがないって幸せそのもの!!


ISSはどんなところ?

♪NASA公式ソング こんなのあるんだw ウクレレ弾いてるし!ww

歌詞:
ISSには15カ国が参加しているよ。
みんなでロケットを何度も打ち上げて(136回)作ったんだ。
アメフトのグラウンドくらいの大きい基地になったよ。
トイレは2つあるけど、お風呂はないんだ。
90分で地球を1周するスピードで飛んでいるよ。
地上200マイルの所に、100万ポンドのISSがいるんだよ。
ISSは、人類の発見に貢献しているんだ。
最先端の科学やテクノロジーを実験しているよ。
これまでISSに滞在した宇宙飛行士は200名以上いるよ。


ISS中最大の実験施設「きぼう」

地球温暖化、宇宙の謎に迫るなど、無重力状態でしかできない実験をしている(偉い子だなあ



[たんぱく質の実験]
 

 
宝石みたい。難病の治療薬に期待されている

油井さん:
たんぱく質を取り出す時は、可愛がってきた子どもを取り出すような気がしました。

サンプルは、ソユーズで地球に帰還するクルーに託した。


「“きぼう”は日本全体の財産です」


糸井「私物で持っていったものは?」
油井「意外な身近なもの。家族や友だちの写真とか、選抜試験の時に折った鶴を持ってきました」


千羽鶴に込められた想い

宇宙飛行士になれなかった仲間の夢が託されている


1年かけて行われる。10年ぶりの試験に963人が応募。最終候補に残ったのは10人。


ISSと同じ閉鎖環境で1週間を過ごし、忍耐力、チームワーク、リーダーシップが見極められる。
パイロット、医師などがいる中で、油井さんは自然とまとめ役になっていた。

最終日の試験は鶴を折ること。


油井:
鶴はあまり折ったことがなくて、人生の中でも3回目くらい。
その時、仲間が「僕はあと20羽なのでお手伝い出来ますよ」と言ってくれて、
ライバルという枠を超えて、協力し合って絆が生まれた。

外に出てきた時、みんなの首から折り鶴がさげられていた。
「僕たち“FX10”ていうチーム名にしたんです。意味は“Future Explorer(未来を切り拓く探究者)”」

この中から3人が選ばれた。


油井:
志を同じくする人たちと一緒に頑張れる、それが本当にパワーになっている。
どんな人でも続ければ能力を発揮できる。同じ訓練を受けていれば、同じ成果を残せる。
皆の夢を預かってきた私の責任は重大。
油井が行って良かったという仕事をするのが責任だと思っている。

6年後、かつての仲間はISSを見に行った。


糸井「宇宙から仲間へのメッセージはありますか?」
油井「帰ったら、みんなと飲みながら話をするのを本当に楽しみにしています」

糸井「仲間とつながっているんですね」
油井「宇宙飛行士は1人じゃ何もできません。感謝の気持ちは忘れてはいけない」


●最大のミッションで、物資の補給をする「無人補給船こうのとり(HTV5)」
宇宙開発大国アメリカとロシアが次々と輸送に失敗し、数ヶ月間、物資の補給が止まった。

 




「だから地上では、その残りの量を常にチェックしています。
 次も失敗に終わったら、ISSは非常に危機的な状況になっていたでしょう」

油井さん
「水の再生装置のフィルターが足りなくなったりした。
 宇宙ステーションの存続に関わる大問題だった。非常にプレッシャーがかかりました」



世界が注目したのは、「無人補給船こうのとり(HTV5)」
 
物資が不足する中、唯一の望みを託された


日本の宇宙開発の苦い歴史
 

浜崎:
25年前、宇宙ステーションの話を知人にしたら「ふぅ~ん」と絵空事と思われていた。
NASAは日本に対し「資金だけ出せばいい」と話した(宇宙開発だけじゃないな、この態度は
日本がいいアイデアを出しても、実績がないし、本当にできるのかと無視されて、肩身の狭い状態をずっと味わってきた。


日本の底力を見せたいと開発したのが「こうのとり」だった。
数千人以上の技術者の知恵と情熱を結集した、日本初の輸送船。

 

これまではISSにドッキングする形で、衝撃を受けるのが課題だった。
今回はISSと並走する輸送船を、ロボットアームでつかむ初めての試み。これまで4回成功している。




7月29日、鹿児島の種子島にNASAの専用機がアメリカの物資を託した
 

筑波からの指示でISSに接近させ、若田さんがNASAからISSと筑波の間を交信し、油井さんがキャッチする。
音速で並行するこうのとりをcm単位でコントロールするという難しいミッションを、すべて日本人だけで行われた。

 



油井さんは「こうのとり」をロボットアームでつかむ役目を見事に果たした。

若田「亀美也、君は男の仲の男だぜ。NASAのみんなも喜んでいる。ありがとう」

油井:
こうのとりのキャッチ、無事成功しました。応援ありがとう。
まるで宝箱のような「こうのとり」をISSは受け取ることができました。
宝箱の中には、物資だけではなく、ISSを救いたいという、
地上のみんなの情熱や、こだわりが詰められていました。

浜崎「オールジャパンで実現できて涙が出ました」


ミッションを成功させた時の手応えは?

油井:
まずはホッとした。失敗は許されない状況でしたから。平常心であればできるという自信はあった。
プロゴルファーでも優勝がかかったパットだと、短くても外してしまうことがあるけれども、そんなことがあっては絶対ならない。
世界が注目し、非常に莫大な予算がかかっているので、ほんとにホッとした。
寝る直前に嬉しさが沸き上がってきた。
一等星なみに輝けたのかなと、この瞬間だけは思いました。


「私もチームの歯車の1つなんです」


この日は「こうのとり」と話せる最後の日
こうのとりは地上に戻れず、切り離されると大気圏で燃え尽きる運命(そのほうが宇宙ゴミにならずに済むからイイのかな

油井:
いつも仕事が終わって、疲れてはいるけれど、こうのとり君とこの景色を一緒に見て、
バックにいい地球の風景が来ないかなと思って。



油井:
明日からこうのとり君がいないと思うと寂しい。
残り時間少ないけど、こうのとり君と話をして、最後はゆっくりと宇宙にかえしてあげたい。



切り離す時、思わぬトラブルが起きた
 

油井:
ロボットアームの不具合で止まってしまった。ISSの長い歴史の中でも初めてのこと。
90分待って無事に離すことができた。
ドキっとしたけれども、地上のチームもしっかりサポートしてくれて。
私も愛着がわいてしまって、こうのとり君も離れたくなかったのかな
(あながち冗談でもない深層心理が出たのかも。宇宙ステーションという閉鎖的空間の中での長期間滞在という状況下では

油井:
こうのとり君を離すのは寂しかった。
90分の時間を神さまがもう一度与えてくれたと思います。

私は機械に対してすごく愛着を感じるんですね。点検する時もなでなでしてしまう。
なぜなら、機械を作った人たちの情熱を感じるから。





長野・川上村 朝5時

父・輔司さんはISSに向かって「おーい」と声をかける

スタッフ「いつも“おーい”て声をかけられているんですか?」
父「そうだな、いつも。自然に言っちゃうよな」

宇宙で初めて栽培されたレタスを試食。レタス農家の跡取り息子なのに「野菜は大の苦手」な油井さんw


父「レタス食べて美味しいなんて言ったからびっくりした」w

 
手際のいい息子を見て、父は将来きっといい農家になると楽しみにしていた父

部屋には大きな望遠鏡が。「いつか宇宙に行きたい」という夢をもっていたことが伺える。


父:
(望遠鏡で)ずーっと(夜空を)見てたんだよ。
星をどうしてそんなに長く見ているんだと聞いたらさ、「新星を見つけたい」って言ってた。
自分の名前が付くそうなんですよ。誰もまだ発見していない星を見つけようと夢中になっていた。

スタッフ「宇宙飛行士って、いつから考えてたんですか、油井さんは?」
父「それは本人でなきゃ分からないけど、“望遠鏡が欲しい”って言ってた時点であったんでしょうね」


航空自衛隊のパイロットになる
 

パイロットになれば宇宙飛行士の夢に近づくのではないかと考えた。
戦闘機パイロットとして活躍する姿は父にはまぶしく映った。

10年ぶりの宇宙飛行士選抜試験に油井さんは迷わず応募した。


2009年、試験に見事合格。


息子の夢を父が知ったのは、選抜試験の時。はじめは反対した。
 

「けっこうカッコいい生活してたから、今更そんなこと考えなくてもいいんじゃないかって、
 ウチの子が宇宙飛行士になれるなんて考えられなかった。
 よくオレの子どもであんなカッコいい生活をしてるって感心しちゃうよな。
 オレなんか百姓だしなw ええ息子が生まれたもんさ」
(仕事に上下などない。農業は宇宙開発と同様、大切な仕事だよ、お父さん!

 

4年前に妻を亡くして一人暮らしの父。
今は油井さんがプレゼントしてくれた愛犬の優ちゃん(4歳)と暮らしている(やっぱ犬だよね

 

油井さんの帰還予定は12月11日。取材中に偶然、油井さんから帰還の電話が入ってビックリ!

父:
優と二人でなんとか生活してますよ。
こないだツイッター見てたら、えらい長い間着替えしなくても大丈夫のようなことゆってたけど、ほんとの話?
洗濯しないで、パンツも履いたまんま? それって使い捨て? 使い捨てか、ああ、そうなんだあ。
まあ、よかった、よかった、元気でやってて。元気に帰ってきてください。
取材してる時に電話がかかってくるなんてびっくりぽんだ(朝ドラ見てるんだ


日本人宇宙飛行士の歴史
最初は数日から、今は5ヶ月の滞在可能。きぼうが完成してから、長期滞在が可能になった。

 

 

 



存続会議
 
無駄がないかを検証する会合には、若田さんもいた

河野「予算をつけて、それに十分なリターンがあるか、厳密な検証をする時期にきているのではないか」

日本がISSに使った予算は約9000億円。今も年間約400億円が必要といわれる。
日本がいつまでISSに参加しつづけるのか、2020年以降どうするかは検討中。


糸井「会合についてどう思いますか?」

油井さん:
私自身、その議論には驚いたけれども、日本は難しいミッションを果たしていることに関して国際的な評価が高い。
私の夢は、日本には高い科学技術があり、仕事への責任感を平和的なところでいかして、
日本が世界から尊敬され、慕われ、頼りにされる国になって欲しい。
ISSで培われている文化、相互理解、尊重、尊敬は、切磋琢磨して難しいことをしているから生まれている。
それは地球のいろんな問題を解決する糸口になると思うので広めていきたい。

 

グレゴリー:
人類の未来のための安全保障であり、世界平和につながるものなのです。
(日本のトップはそれを阻害しようとしてないか? 今、戦争、軍事に使ってるお金を全部回せばいい


「国際協調」の中での日本の位置
欧米とロシアの亀裂が深まり、世界は新たな冷戦の時代が始まったという声もある。
その中でISSの新たな価値が見出されている。

JAXA宇宙飛行士グループ長の野口聡一さんは、2度の宇宙飛行、160日以上の長期滞在を経験している。
 

野口:
日本は、第3極として、アメリカ、ロシア、中国とも話ができる立場に立つことができる。
超大国ではない日本だからこそ、果たせる役割がある。



「国際協調」の役割を体現したのは若田さん

2014年、ISSの船長となった。ウクライナ危機の頃だった



若田:
我々は政府機関として仕事をしていますので、当然、各国で報道のされ方は違う。
じゃあ、今日は一緒にご飯食べようといって私が声をかけた。
それぞれ立場の違いはあるが、私たちは「地球上にいない人間は我々6人だけだ」と話していた。



パイロット時代、ロシアの飛行士とどう接していたか?


糸井:今、ISSには3人のロシア人がいるが、自衛隊にいた頃と今と考え方の変化はありますか?

油井:
180度変わった。自衛隊にいた時はあまりいいイメージがなかった。
悪い情報しか入ってこなかったので、そもそも行った時、私はロシアに入れてもらえるのかなと思ったぐらい。

でも、とても優しくしていただいて、とても日本に好意的と知った。親日的。
自分の考え方が非常に恥ずかしいと思い、ロシアのことをもっと知りたいと思った。
今は本当に心から信頼できる仲間としていっしょに仕事をしています(メディアのあり方も問題ありだな


ISSの素晴らしい文化を地球上に広げていける

油井:
ISSは平和の象徴で、ここに留まらずいろんな所に実は広がっていくものだと思う。
地球上でも広がると思っている。そういう信念をもってこれからの人生も生きていきたいと思っている。


ワッペンには火星が入っている


油井:
自分の名前には亀がついています。亀のように1歩1歩着実に進んできた人生。
人類が火星に向かう時に重要な役を果たせればいいなと思う。


人類が目指す新たなフロンティア「火星」

太陽の光が届き、わずかに大気があることから、地球にもっとも似ている惑星といわれる

 
9月、火星には水があり、地表を流れていると発表された

ジム「火星は、我々が考えていたような乾燥した惑星ではなかった」

 

 

地球から往復3年かかる。そこに将来、人類を送り込もうというプロジェクトがアメリカを中心に進んでいる。
達成には国際協力が欠かせない。次の計画を検討している日本。
ISSで培った技術とノウハウで今後の宇宙開発でも活躍できる。

グレゴリー:
火星にいつ行けるかは、各国がどれだけ協力できるかにかかっている。
日本の実力は、ISSでの実績を見れば明らか。その潜在能力は無限大です。

浜崎「日本は中核的な役割を担える」


糸井:ISSまでいってしまったら、あとは火星は近いですか?

油井:
地球全体チームの歯車として役割を果たしたい。
まだまだいろんな課題はあると分かっているだけでも凄くて、その課題を1つ1つ克服していけばできる。
やらなければいけないと思っている。


小学校の時に書いた作文


油井:
お月さまにはウサギがいる。
うさぎとかめの競争に例えると、私はウサギより遠くに行かないと負けたことになるので、ぜひ、月より遠くに行きたいと思っています。


油井さんとともに選ばれた新世代の宇宙飛行士に期待がかかる


宇宙飛行士・大西卓哉さん。航空会社のパイロット出身。来年6月頃からISSで長期滞在する予定
「自分も貢献できるように頑張りたい」


宇宙飛行士・金井宣茂さん。再来年、ISSに長期滞在する予定
「俺たちが世界の有人宇宙活動を引っ張っていく」


Q:次に大西さん、金井さんと、油井さんの同期が続きます。彼らへのエールは?

油井:
私たち3人は新しい宇宙飛行士。
民間のパイロットや、医者というバックグラウンドはとても役に立つ。ぜひ、自分なりの色を出して欲しい。


Q:あとわずかの宇宙生活、これまでを振り返ってひと言お願いします。

油井:
挑み続けて一生懸命やりました。“油井さんやってくれたな”と思っていただけたら有り難い。
“油井さん、ずっとこのまま宇宙にいてくれないかな、帰ってきてほしくない”と言われるのが、実は私自身の目標、最高の誉め言葉なので。


インタビューを終えて
アナ「宇宙行きたくなりました?」
糸井「行きたくない。任せる」w



糸井:
どういう人間が理想かっていうことについて、みんなそれぞれに考えていると思う。
みんなで作った1冊の書物みたいな役割を“宇宙飛行士”は果たしている。
現代の人たちが作った1つの理想の人間像。

(私も同感。科学の知識があり、かつ人間的で、人類みなきょうだいっていう均衡のある考え方をもって、
 そのもっと先へ先への未来を築いていこうとするモチベーションも高い

糸井:
聖書や、お経は、ヒトが生きること、考えることの1つの集合的な意識の塊を作った。
でも、宇宙飛行士っていうのは、書物ではなくて、
理想の人間像っていうものをみんなでつくってみようじゃないかと思った、その答えのような気がする。

人間を使ってこういうモデルを作り上げている、人類の欲望なのか、止むに止まれぬ心なのか、
そういうのが油井さんのところに“結晶化”していると思う。まさしく1人じゃない。

しなくていいことって、森羅万象しなくていいんですよ。
宇宙や人間のすべてがしなくていいことだらけなんだけど、すでにこんなデッカイことをしちゃってるってことは、
ある人が“しなくていいこと”と思っていることが、他の人たちにとっては素晴らしく魅力的だったんですよ。

で、その魅力的なことがここまできちゃったってところに、また別の魅力を感じてしまって、
それは“やめろ”という人がいても続きますよ、絶対に。だって魅力があるんだもの。
しばらく、それは止められないんじゃないかなあ。


12月11日帰還へ
 
「地球へ羽ばたけ、亀美也!」/地球の周りを2256周回った旅が終わった

午後10時12分カザフスタンに着陸。

「油井さん、久しぶりの地球はどうですか?」

「いや~本当に素晴らしいですね。宇宙もいいですけど、地球もいいですね。
 この冷たい風もとても心地いい感じがします。皆さん寒いかもしれないですけど、大丈夫ですかね」

 


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