■『みんな、絵本から I love reading books with you,Mammy』(講談社)
柳田邦男/著 石井麻木/撮影
柳田邦男:ノンフィクション作家。「生涯取材者」を心がけ、いのちと心をテーマに50年、どこにでも人を訪ね、現場を歩く。
これも図書館のおすすめコーナーで目に入った1冊。
子育てに「お母さん」ばかり登場するから心配になったが、
共同育児の重要性も説かれていてひと安心。
思い返すと、私には絵本の読み聞かせの記憶がない。忘れてしまったのか?
母はもともと本が嫌いで、私が小さい頃は、「テレビを見ている間に洗濯などをしていた」と言っていた。
父は子育ては母任せだけれども、私をよく本屋に連れていってくれた。
買ってもらったのは、ほとんどマンガだったけど。
マンガもココロを育て、知識を増やす立派な文化だと思う。
私にはずうっと前から夢がある。
図書館の絵本コーナーの「あ~ん」「A~Z」までを全部読んで、感想を書くこと。
以前、誰かが書いていたけど(→これかな『絵本のある子育て』)、最近はいい絵本が少なくなくなって、
単に目を楽しませるだけになってしまっているとか。
それは本書で否定されているテレビや他のメディアにも通じる気がした。
例えば、テレビアニメでも、昔は「まんが日本昔ばなし」や「世界名作劇場」シリーズの
「アルプスの少女ハイジ」など、ココロを育てるものが多かったけど、
今はグッズを売るためのツールのような。
「子どもの1日の時間が4時間しかない」というページを読んで、
大人の自分だけの時間は1日せいぜい1~2時間ぐらいしかない、と思い続けてきた私も同感。
早朝に起床→準備→通勤→仕事→通勤→夕食→入浴→就寝
この就寝までの1~2時間。
週休2日といえども、休日出勤があったり、日曜日は、月曜日~金曜日までまた踏ん張るための日で、
“完全に自由”な、自分のための時間がない。
「それが当たり前でしょ?」て声も聞こえてきそうだけど、世界と比べたらどうなんだろう。
そうして必死に働いたお金をモノで満たし、
どんなに働いても一部の富裕層を儲けさせはしても
一般市民の生活は、金銭的にも、精神的にも“豊か”にならない仕組み。
私たちの生活を便利にしている機械が悪いのか?
スローダウン、アナログ化して、余裕を取り戻すことは可能だろうか?
シンプルな文章に添えられた、ヒトのさまざまなシーン、表情をとらえた写真も素晴らしい。
いろんなことを考えさせられた1冊。
【内容抜粋メモ】
フロリダからの手紙
小学生の娘が不登校になり、反抗的で、家ではテレビばかり見ていた。
著者は、テレビを消して、絵本の読み聞かせをしてあげたらと助言した。
仕事から帰ると母は娘を放っておいていたが、読み聞かせをするようになり、
テレビは1日2時間以内と決めたら、娘は絵本が大好きになって、こう言った。
“I love reading books with you, Mammy”(ママと本を読むのが大好きよ)
娘はとても明るくなり、そのうち学校にも戻るでしょう。
パリからの手紙
薬物、アルコール依存症専門の病院では、2001年ころからゲーム、ネット依存症の若者がケアを求めて来るようになり、年々急増している。
テレビ、ゲーム、ケータイ、ネットに毎日3時間以上費やしている子がいる。
それまでは、路地、公園でみんなと一緒に遊んでいた時間。
ハーメルンの笛吹きが子どもたちを連れていく
大人たちが、2兆円、3兆円と稼ぐうちに
街から子どもの声が消えていく
テレビ、ゲーム、ケータイ、ネットの怖さ
1.依存症に陥りやすい。
2.生身の人間とのコミュニケーションが希薄になり、他者への思いやり、いのちの大切さへの感覚が薄れる。
3.自己中心的になる。
4.匿名発信に慣れ、モラルを失い、「二重人格化」する。
5.有害なサイトにアクセスしたくなる。
失われる「いのち」の感覚
不快なものは消していく。
イヤな奴は消えていけ。
脳内で仮想現実と現実の区別がつかなくなってゆく。
お母さん、わたしを見て!
どこを見てるの?
手に持っているものなんなの?
なんでそればかり見てるの?
それってそんなに大事なの?
ある都立病院の小児科医の報告で、休憩室の談笑がなくなり、
母親全員が授乳しながら携帯電話を見ていることが分かった。
大事なのは「アタッチメント」
抱っこは、ココロ育ての常備薬。他者に対する愛着のココロが育つ
絵本を読み聞かせると発達する「言語能力」~28歳の母親からの手紙
生まれて間もなく読み聞かをはじめ、2歳の娘がどんどん言葉を覚え、絵本を私が読むのとそっくりに読む。
ある時、夫と話していたら、娘が「ママ、それいい考えよ」と言ってびっくりしました。
絵本、物語をたくさん読むと、言葉、感性、感情が発達するとともに「文脈理解力」も発達する。
「悲しみ」は感性を育む~30歳の母親からの手紙
『だいじょうぶだよ、ゾウさん』を読んで、小学校1年の次男は、
昨年亡くなった伯父と、自分たち兄弟とおきかえていったようです。
担任の先生が、この本の読み聞かせ中に泣いてしまい、
死というものの悲しさを感じるいい機会になったのではないかと思いました。
読み聞かせは「現実体験」
絵本の世界を肉声、感触、絵、時間が一体となって、全身で感じ、染みわたっていく。
「絵本は人生に3度」「大人こそ、絵本を」
そんな呼びかけを10年続けてきた。
最初は幼き日に、2度目は感性が衰えがちな人生後半、3度目は年老いたり、病気になった時。
絵本は、生涯の「ココロの故郷」づくりでもある。
「ノーゲム」「ノーテレビ」デー
1.親子、夫婦の会話がもどった。
2.家族それぞれ好きな本を読む「読書の時間」がもてた。
3.家族でトランプ、花火、散歩をする時間がもてた。
4.子どもに早寝早起きの生活習慣ができ、表情がいきいきし、集中力があるのを教師が感じた。
父さんといっしょ、わたし、ずっとずっと待ってたの
父さんはこのごろ、土曜の夕方から日曜日は家にいて、母さんを助けるの。
『抱きしめてあげて 育てなおしの心育て』渡辺久子著
子育ては、汗水たらして土を耕す農家の人の営みに似ていて、
手を汚すことなく、土を耕すことができぬように、
心に汗水することなく、子どもの心を耕すことはできない。
『フィーリング・バース 心と体で感じるお産』矢島床子、三井ひろみ著
お産の感動は家族全員で
出産の大変さを見た4歳の娘から「産んでくれてありがとう」という言葉を聞いて嬉しかった。
子どもをダメにする10カ条(抜粋
子どもがやることにいちいち干渉し、「おまえはダメだ」と人格を否定する言葉を繰り返す。誉めない。
夫婦が子どもの前で年中ケンカをし、家の中を冷えきった緊張感でみなぎらせておく。
子どもに、夫婦のどちらかが相手の悪いところばかりを話す。
勉強ができる子、才能を発揮する子、重い病気の子だけに愛情を注ぎ、他の子を無視する。
絵本読み聞かせのすごい力10カ条(抜粋
子どもが自分で時間をコントロールできる唯一のメディア。
ステキな巨樹!
【あとがき 内容抜粋メモ】
10年あまり前、子どもの人格形成が歪みはじめているという時代の傾向があった。
自己中心的になり、他者の悲しみ、苦しみ、思いやる感性、いのちをいとおしむ感性が育たなくなってきた。
「心の崩壊」の救世主が絵本だと気づき、「今、大人こそ絵本を!」というキャッチフレーズを掲げて、
エッセイの執筆、講演に力をそそいだ。
「ノーゲム」「ノーテレビ」「ノーケータイ」「ノーネット」の重要性に、
とりわけ子育て中の若い親たちに知ってほしい。
これは重大な国家的課題だと私はとらえている。
夫の子育て、家事のシェアリング(分担)が絶対に必要なのだ。
それには、「育児休暇」をとれる社会の制度改革が不可欠だ。
大人が変わらなければ、子どもは変わらない。
“ケータイ、ネットより、絵本を!”
<本書でとりあげられて気になった本>
『沈黙の春』レイチェル・カーソン著
『チャーリー・ブラウンなぜなんだい??―ともだちがおもい病気になったとき』チャールズ M.シュルツ著
『あめのひの おるすばん』岩崎ちひろ著
『ねぇ、わたしのことすき?』カール・ノラック/文 クロード・K. デュボワ/絵
柳田邦男/著 石井麻木/撮影
柳田邦男:ノンフィクション作家。「生涯取材者」を心がけ、いのちと心をテーマに50年、どこにでも人を訪ね、現場を歩く。
これも図書館のおすすめコーナーで目に入った1冊。
子育てに「お母さん」ばかり登場するから心配になったが、
共同育児の重要性も説かれていてひと安心。
思い返すと、私には絵本の読み聞かせの記憶がない。忘れてしまったのか?
母はもともと本が嫌いで、私が小さい頃は、「テレビを見ている間に洗濯などをしていた」と言っていた。
父は子育ては母任せだけれども、私をよく本屋に連れていってくれた。
買ってもらったのは、ほとんどマンガだったけど。
マンガもココロを育て、知識を増やす立派な文化だと思う。
私にはずうっと前から夢がある。
図書館の絵本コーナーの「あ~ん」「A~Z」までを全部読んで、感想を書くこと。
以前、誰かが書いていたけど(→これかな『絵本のある子育て』)、最近はいい絵本が少なくなくなって、
単に目を楽しませるだけになってしまっているとか。
それは本書で否定されているテレビや他のメディアにも通じる気がした。
例えば、テレビアニメでも、昔は「まんが日本昔ばなし」や「世界名作劇場」シリーズの
「アルプスの少女ハイジ」など、ココロを育てるものが多かったけど、
今はグッズを売るためのツールのような。
「子どもの1日の時間が4時間しかない」というページを読んで、
大人の自分だけの時間は1日せいぜい1~2時間ぐらいしかない、と思い続けてきた私も同感。
早朝に起床→準備→通勤→仕事→通勤→夕食→入浴→就寝
この就寝までの1~2時間。
週休2日といえども、休日出勤があったり、日曜日は、月曜日~金曜日までまた踏ん張るための日で、
“完全に自由”な、自分のための時間がない。
「それが当たり前でしょ?」て声も聞こえてきそうだけど、世界と比べたらどうなんだろう。
そうして必死に働いたお金をモノで満たし、
どんなに働いても一部の富裕層を儲けさせはしても
一般市民の生活は、金銭的にも、精神的にも“豊か”にならない仕組み。
私たちの生活を便利にしている機械が悪いのか?
スローダウン、アナログ化して、余裕を取り戻すことは可能だろうか?
シンプルな文章に添えられた、ヒトのさまざまなシーン、表情をとらえた写真も素晴らしい。
いろんなことを考えさせられた1冊。
【内容抜粋メモ】
フロリダからの手紙
小学生の娘が不登校になり、反抗的で、家ではテレビばかり見ていた。
著者は、テレビを消して、絵本の読み聞かせをしてあげたらと助言した。
仕事から帰ると母は娘を放っておいていたが、読み聞かせをするようになり、
テレビは1日2時間以内と決めたら、娘は絵本が大好きになって、こう言った。
“I love reading books with you, Mammy”(ママと本を読むのが大好きよ)
娘はとても明るくなり、そのうち学校にも戻るでしょう。
パリからの手紙
薬物、アルコール依存症専門の病院では、2001年ころからゲーム、ネット依存症の若者がケアを求めて来るようになり、年々急増している。
テレビ、ゲーム、ケータイ、ネットに毎日3時間以上費やしている子がいる。
それまでは、路地、公園でみんなと一緒に遊んでいた時間。
ハーメルンの笛吹きが子どもたちを連れていく
大人たちが、2兆円、3兆円と稼ぐうちに
街から子どもの声が消えていく
テレビ、ゲーム、ケータイ、ネットの怖さ
1.依存症に陥りやすい。
2.生身の人間とのコミュニケーションが希薄になり、他者への思いやり、いのちの大切さへの感覚が薄れる。
3.自己中心的になる。
4.匿名発信に慣れ、モラルを失い、「二重人格化」する。
5.有害なサイトにアクセスしたくなる。
失われる「いのち」の感覚
不快なものは消していく。
イヤな奴は消えていけ。
脳内で仮想現実と現実の区別がつかなくなってゆく。
お母さん、わたしを見て!
どこを見てるの?
手に持っているものなんなの?
なんでそればかり見てるの?
それってそんなに大事なの?
ある都立病院の小児科医の報告で、休憩室の談笑がなくなり、
母親全員が授乳しながら携帯電話を見ていることが分かった。
大事なのは「アタッチメント」
抱っこは、ココロ育ての常備薬。他者に対する愛着のココロが育つ
絵本を読み聞かせると発達する「言語能力」~28歳の母親からの手紙
生まれて間もなく読み聞かをはじめ、2歳の娘がどんどん言葉を覚え、絵本を私が読むのとそっくりに読む。
ある時、夫と話していたら、娘が「ママ、それいい考えよ」と言ってびっくりしました。
絵本、物語をたくさん読むと、言葉、感性、感情が発達するとともに「文脈理解力」も発達する。
「悲しみ」は感性を育む~30歳の母親からの手紙
『だいじょうぶだよ、ゾウさん』を読んで、小学校1年の次男は、
昨年亡くなった伯父と、自分たち兄弟とおきかえていったようです。
担任の先生が、この本の読み聞かせ中に泣いてしまい、
死というものの悲しさを感じるいい機会になったのではないかと思いました。
読み聞かせは「現実体験」
絵本の世界を肉声、感触、絵、時間が一体となって、全身で感じ、染みわたっていく。
「絵本は人生に3度」「大人こそ、絵本を」
そんな呼びかけを10年続けてきた。
最初は幼き日に、2度目は感性が衰えがちな人生後半、3度目は年老いたり、病気になった時。
絵本は、生涯の「ココロの故郷」づくりでもある。
「ノーゲム」「ノーテレビ」デー
1.親子、夫婦の会話がもどった。
2.家族それぞれ好きな本を読む「読書の時間」がもてた。
3.家族でトランプ、花火、散歩をする時間がもてた。
4.子どもに早寝早起きの生活習慣ができ、表情がいきいきし、集中力があるのを教師が感じた。
父さんといっしょ、わたし、ずっとずっと待ってたの
父さんはこのごろ、土曜の夕方から日曜日は家にいて、母さんを助けるの。
『抱きしめてあげて 育てなおしの心育て』渡辺久子著
子育ては、汗水たらして土を耕す農家の人の営みに似ていて、
手を汚すことなく、土を耕すことができぬように、
心に汗水することなく、子どもの心を耕すことはできない。
『フィーリング・バース 心と体で感じるお産』矢島床子、三井ひろみ著
お産の感動は家族全員で
出産の大変さを見た4歳の娘から「産んでくれてありがとう」という言葉を聞いて嬉しかった。
子どもをダメにする10カ条(抜粋
子どもがやることにいちいち干渉し、「おまえはダメだ」と人格を否定する言葉を繰り返す。誉めない。
夫婦が子どもの前で年中ケンカをし、家の中を冷えきった緊張感でみなぎらせておく。
子どもに、夫婦のどちらかが相手の悪いところばかりを話す。
勉強ができる子、才能を発揮する子、重い病気の子だけに愛情を注ぎ、他の子を無視する。
絵本読み聞かせのすごい力10カ条(抜粋
子どもが自分で時間をコントロールできる唯一のメディア。
ステキな巨樹!
【あとがき 内容抜粋メモ】
10年あまり前、子どもの人格形成が歪みはじめているという時代の傾向があった。
自己中心的になり、他者の悲しみ、苦しみ、思いやる感性、いのちをいとおしむ感性が育たなくなってきた。
「心の崩壊」の救世主が絵本だと気づき、「今、大人こそ絵本を!」というキャッチフレーズを掲げて、
エッセイの執筆、講演に力をそそいだ。
「ノーゲム」「ノーテレビ」「ノーケータイ」「ノーネット」の重要性に、
とりわけ子育て中の若い親たちに知ってほしい。
これは重大な国家的課題だと私はとらえている。
夫の子育て、家事のシェアリング(分担)が絶対に必要なのだ。
それには、「育児休暇」をとれる社会の制度改革が不可欠だ。
大人が変わらなければ、子どもは変わらない。
“ケータイ、ネットより、絵本を!”
<本書でとりあげられて気になった本>
『沈黙の春』レイチェル・カーソン著
『チャーリー・ブラウンなぜなんだい??―ともだちがおもい病気になったとき』チャールズ M.シュルツ著
『あめのひの おるすばん』岩崎ちひろ著
『ねぇ、わたしのことすき?』カール・ノラック/文 クロード・K. デュボワ/絵