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『ヴァイオリン』(児童図書館・絵本の世界)

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『ヴァイオリン』(児童図書館・絵本の世界)
原題:THE VIOLIN by Robert Thomas Allen
ロバート・T・アレン/作 ジョージ・パスティック/写真 藤原義久・千鶴子/訳
初版 1976年 1400円

※1996.12~のノートよりメモを抜粋しました。
「読書感想メモリスト」カテゴリーに追加しました。


【内容抜粋メモ】

シンプルながら、温かみと深みをもつ文と、とくにモノクロ写真が目を魅く。

大きな画面いっぱいそのまま写真集に使えるほど1シーン1シーンに、
瞬時の情感をダイレクトに心に訴えかけるアートな写真が、読みながら、
私たちを短編映画を観ている気分にひきこむ。今までにない手法が斬新。

この3人だけの登場人物は名優ぞろい。
とくにダニーは、女の子と思ったほどの可愛さ。『小さな恋のメロディ』のヒロインのよう。
いるだけで絵になる被写体だ。

人生を知り尽くした老音楽家と、子ども2人の出会いと別れ。
ほんの短いひとときで学んだのは、楽器の弾き方だけじゃない。

弾く人次第で楽器が生きも死にもすること、
美しい音を出す楽器は脆く、壊れてもなお音楽を愛する心は失われないこと、など。
素朴だが、新鮮な感動がいつまでも余韻を残す。


▼あらすじ(ネタバレ注意
町の中の小さな島。
冬の日、ビン一杯にたまったお金で、クリスは仲良しのダニーと
町のショーウィンドーにある夢のヴァイオリンを買いに行くが、
とても高額で、代わりに買ったのはひどい音しか出ない子ども用。
落胆し、それをゴミ入れに捨てた後、変わったおじいさんが拾って、美しいメロディを奏ではじめた。

「弾ける人が弾けばよかったんだ!」

おじいさんにワケを話し、毎日楽しいレッスンの日々がつづく。


しかし、夏の終わりに突然別れがやって来た。
釣りに夢中で楽器の上に転んで弦を切ってしまい、ショックで「もう二度と弾かない」というクリス。

自分のせいだと慌てておじいさんのもとへいくダニー。
でも、おじいさんはどこかへ行ってしまうところ。
話を聞いて、自分のヴァイオリンを渡す。

「時々、人は物に愛着を持ちすぎる。
 これは古くからの馴染みだが、たとえ壊れても、音楽を愛することまで捨てはしない」

「才能はほんの始まり。専門家になるには、何年も苦しい練習を積まなきゃならない。
 それを決めるのは君だ」


小船に乗り、思いにふけるおじいさんに、クリスはヴァイオリンを弾いて見送る。

「美しい音楽の世界を残していく人は、誰もさよならなんて言わないんだよ」





この老人の抱えている喜びや悲しい思い出は一切語られない。
著者、写真家、ましてや、この3人のモデルの情報がひとつもないのがさみしい。





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