■『エミリー』(ほるぷ出版)
マイケル・ビダード作 バーバラ・クーニー/絵 掛川恭子/訳
【ブログ内関連記事】
『クリスマス』
『ちいさなもみのき』
『とびきりすてきなクリスマス』
『ちいさな曲芸師バーナビー』
これまた素晴らしい1冊に出会ったv
ほるぷ出版の翻訳絵本は素晴らしいものばかりで全部読みたくなる
タイトルのエミリーは、表紙の少女のことだと思ったら、エミリー・ディキンソンさんか/驚
サイモン&ガーファンクルの歌で聴いて、名前は知っていたけれども、作品はほとんど読んだことがない
本書を読んで、とても謎に満ちた人生にとても興味をもった
まず、この温かみのある絵がとんでもなく複雑な工程を経て描かれているという説明をみて驚いた。
『ルリユールおじさん』を読んで、パリの風景を見てから、今度はアメリカの生活感、時代背景の違いを味わい、
エミリーと同様に繊細な文章と、それを詩的に和訳した掛川さんのチームワークも素晴らしい
この本そのものがエミリーの詩の世界
美しく、純粋で、傷つきやすく、そして子どもという希望の象徴に溶け込み、未来を託している
母の弾くピアノで知り合ったお向かいのエミリーと少女
少女からは、春を告げる花、ユリの球根をもらい、そのお礼に詩をあげるシーンもステキ
まだ道がアスファルトに覆われていなかった頃
雪が溶けると、家の前に板を敷いて、道には空を映す水たまりがあった
ヒトはいつからそんな自然とともに生きる心をおっことしてきてしまったんだろう?
【内容抜粋メモ】
作家・画家紹介
マイケル・ビダード:本書を書くために、ディキンソンの旧居を訪問
バーバラ・クーニー:現代アメリカでもっとも活躍した絵本作家の一人。『ルピナスさん』ほか
“この本の絵は、イラストボードに中国シルクをはり、下地にジェッソ(石膏)を二度塗った上に、
リキテックス社のアクリル絵の具と、ダーウェント社の色鉛筆、パステルなどを使って描いています。”
あとがき マイケル・ビダード
エミリー・ディキンソンは、アマーストで生まれ、結婚もせず、両親の家に住みつづけ、56歳で亡くなりました
年がたつにつれ、隠遁ぶりがひどくなり、晩年の25年間は、父親の屋敷の外へ出ようとはしませんでした。
エミリーは庭仕事の達人で、自然の鋭い観察者でした。
一生を通じて詩を書き続け、紙切れや手近なものになんにでも書き留めました。
エミリーの死後、使っていた桜材の机の中に、1800編近い詩が隠されているのを妹が発見しました。
エミリーは、知らない人には会おうとしませんでしたが、子どもたちとはいつも仲良しでした。
エミリーと話したことのある子どもたちは、彼女はなにかにつけてすぐニコニコし、楽しそうに目を輝かせる人だったと言っています。
外にいる子どもたちに、2階の部屋から、カゴにショウガ入りクッキーを入れておろしてくれることがよくあったそうです
私は、エミリーが住んでいた家を訪れて、部屋の窓の下に立った時、
エミリーがこのお話を私におろしてくれました。
※この絵本を出版するにあたり、お世話になった方々に感謝の気持ちを捧げます
手紙の一部の転載を許可してくださったマーシャ・ディキンソン、シャーリー・ディキンソン ほか
▼あらすじ(ネタバレ注意
少女一家が引っ越してきて、間もなく1通の手紙が来た。
「お隣りさんへ
今の私はこの花のよう
あなたの奏でる曲で、私を生き返らせてください
きっと私のところへ春がやってきてくれるでしょう」
母のピアノを聴いた向かいのエミリーから、うちでピアノを弾いてほしいという手紙だった
向かいの黄色い家には、エミリーと妹が住んでいて、町の人たちは“謎の女性”と呼んでいる
20年近くも家の外に出たことがないため、“頭がおかしい”という噂もある
少女の父は、手紙に入っていた花は「ブルーベルといって、キレイだけど、とてももろいんだ」と教えてくれる
その夜、パパはベッドの脇で歌ってくれました。
くずれた花のように、歌がシーツの上にこぼれ落ちました。
私は、こぼれ落ちる歌を聴きながら眠りました。
翌朝、少女は、父からエミリーはいつも白い服を着た小柄な人で、詩を書いているそうだ、と聞く
「詩ってなあに?」
「ママがピアノを弾いているのを聴いてごらん
同じ曲を何度も練習しているうちに、ある時、フシギなことがおこって、その曲が生き物のように呼吸しはじめる
聴いている人はゾクっとする 口ではうまく説明できない、フシギな謎だ
それと同じことを言葉がする時、それを詩というんだよ」
黄色い家のあの人は、知らない人が来ると逃げてしまう
どうしてでしょう わかりません
人間というのも、フシギな謎なのでしょう
翌日、母と少女が向かいの家を訪ねると妹さんが対応する
(にゃんこだらけ!
「姉は、ちょっと具合がよくないものですから、残念ですが、ご一緒できませんの
でも、上でうかがわせていただいております」
母が震える手で1曲弾き終わると、階段の上から、かすかな拍手が聞こえて、小さな声が流れてきました
「ご親切なお隣りさん コマドリもあなたにはかないませんわ
もっと弾いてください
もう、春がそこまで来ているような気がしてきました」
少女はそっと階段まで行くと、白い服を着た女性が、膝の上の紙切れに、短い鉛筆でなにか書いていた
「いたずらおちびちゃん、こちらへおいでなさい」
「それ、詩なの?」
「いいえ、詩はあなた これは、詩になろうとしているだけ」
「私、春をもってきてあげたの」とユリの球根をわたすと、
「ステキだこと わたくしもなにか差し上げなくては」
女性はなにか紙に書いてくれた
「さあ、これをしまっておいて
わたくしもあなたから頂いたものを隠しておきますから
両方とも、そのうちきっと花ひらくでしょう」
演奏を終えると、妹さんがシェリーと、ショウガ入りクッキーでもてなす
グラスに少しだけ残っているシェリーは、エミリーの瞳と同じ色をしていました。
間もなく、春がやってきました。
庭にユリの球根を植え、やがてぐんぐん大きくなるでしょう
これもフシギな謎です
この世の中には、フシギな謎が、たくさん、たくさんあります
天国をみつけられなければ 地上で
天上でもみつけられないでしょう
たとえどこへうつりすんでも
天使はいつもとなりに家をかりるのですから
愛をこめて
エミリー
マイケル・ビダード作 バーバラ・クーニー/絵 掛川恭子/訳
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『クリスマス』
『ちいさなもみのき』
『とびきりすてきなクリスマス』
『ちいさな曲芸師バーナビー』
これまた素晴らしい1冊に出会ったv
ほるぷ出版の翻訳絵本は素晴らしいものばかりで全部読みたくなる
タイトルのエミリーは、表紙の少女のことだと思ったら、エミリー・ディキンソンさんか/驚
サイモン&ガーファンクルの歌で聴いて、名前は知っていたけれども、作品はほとんど読んだことがない
本書を読んで、とても謎に満ちた人生にとても興味をもった
まず、この温かみのある絵がとんでもなく複雑な工程を経て描かれているという説明をみて驚いた。
『ルリユールおじさん』を読んで、パリの風景を見てから、今度はアメリカの生活感、時代背景の違いを味わい、
エミリーと同様に繊細な文章と、それを詩的に和訳した掛川さんのチームワークも素晴らしい
この本そのものがエミリーの詩の世界
美しく、純粋で、傷つきやすく、そして子どもという希望の象徴に溶け込み、未来を託している
母の弾くピアノで知り合ったお向かいのエミリーと少女
少女からは、春を告げる花、ユリの球根をもらい、そのお礼に詩をあげるシーンもステキ
まだ道がアスファルトに覆われていなかった頃
雪が溶けると、家の前に板を敷いて、道には空を映す水たまりがあった
ヒトはいつからそんな自然とともに生きる心をおっことしてきてしまったんだろう?
【内容抜粋メモ】
作家・画家紹介
マイケル・ビダード:本書を書くために、ディキンソンの旧居を訪問
バーバラ・クーニー:現代アメリカでもっとも活躍した絵本作家の一人。『ルピナスさん』ほか
“この本の絵は、イラストボードに中国シルクをはり、下地にジェッソ(石膏)を二度塗った上に、
リキテックス社のアクリル絵の具と、ダーウェント社の色鉛筆、パステルなどを使って描いています。”
あとがき マイケル・ビダード
エミリー・ディキンソンは、アマーストで生まれ、結婚もせず、両親の家に住みつづけ、56歳で亡くなりました
年がたつにつれ、隠遁ぶりがひどくなり、晩年の25年間は、父親の屋敷の外へ出ようとはしませんでした。
エミリーは庭仕事の達人で、自然の鋭い観察者でした。
一生を通じて詩を書き続け、紙切れや手近なものになんにでも書き留めました。
エミリーの死後、使っていた桜材の机の中に、1800編近い詩が隠されているのを妹が発見しました。
エミリーは、知らない人には会おうとしませんでしたが、子どもたちとはいつも仲良しでした。
エミリーと話したことのある子どもたちは、彼女はなにかにつけてすぐニコニコし、楽しそうに目を輝かせる人だったと言っています。
外にいる子どもたちに、2階の部屋から、カゴにショウガ入りクッキーを入れておろしてくれることがよくあったそうです
私は、エミリーが住んでいた家を訪れて、部屋の窓の下に立った時、
エミリーがこのお話を私におろしてくれました。
※この絵本を出版するにあたり、お世話になった方々に感謝の気持ちを捧げます
手紙の一部の転載を許可してくださったマーシャ・ディキンソン、シャーリー・ディキンソン ほか
▼あらすじ(ネタバレ注意
少女一家が引っ越してきて、間もなく1通の手紙が来た。
「お隣りさんへ
今の私はこの花のよう
あなたの奏でる曲で、私を生き返らせてください
きっと私のところへ春がやってきてくれるでしょう」
母のピアノを聴いた向かいのエミリーから、うちでピアノを弾いてほしいという手紙だった
向かいの黄色い家には、エミリーと妹が住んでいて、町の人たちは“謎の女性”と呼んでいる
20年近くも家の外に出たことがないため、“頭がおかしい”という噂もある
少女の父は、手紙に入っていた花は「ブルーベルといって、キレイだけど、とてももろいんだ」と教えてくれる
その夜、パパはベッドの脇で歌ってくれました。
くずれた花のように、歌がシーツの上にこぼれ落ちました。
私は、こぼれ落ちる歌を聴きながら眠りました。
翌朝、少女は、父からエミリーはいつも白い服を着た小柄な人で、詩を書いているそうだ、と聞く
「詩ってなあに?」
「ママがピアノを弾いているのを聴いてごらん
同じ曲を何度も練習しているうちに、ある時、フシギなことがおこって、その曲が生き物のように呼吸しはじめる
聴いている人はゾクっとする 口ではうまく説明できない、フシギな謎だ
それと同じことを言葉がする時、それを詩というんだよ」
黄色い家のあの人は、知らない人が来ると逃げてしまう
どうしてでしょう わかりません
人間というのも、フシギな謎なのでしょう
翌日、母と少女が向かいの家を訪ねると妹さんが対応する
(にゃんこだらけ!
「姉は、ちょっと具合がよくないものですから、残念ですが、ご一緒できませんの
でも、上でうかがわせていただいております」
母が震える手で1曲弾き終わると、階段の上から、かすかな拍手が聞こえて、小さな声が流れてきました
「ご親切なお隣りさん コマドリもあなたにはかないませんわ
もっと弾いてください
もう、春がそこまで来ているような気がしてきました」
少女はそっと階段まで行くと、白い服を着た女性が、膝の上の紙切れに、短い鉛筆でなにか書いていた
「いたずらおちびちゃん、こちらへおいでなさい」
「それ、詩なの?」
「いいえ、詩はあなた これは、詩になろうとしているだけ」
「私、春をもってきてあげたの」とユリの球根をわたすと、
「ステキだこと わたくしもなにか差し上げなくては」
女性はなにか紙に書いてくれた
「さあ、これをしまっておいて
わたくしもあなたから頂いたものを隠しておきますから
両方とも、そのうちきっと花ひらくでしょう」
演奏を終えると、妹さんがシェリーと、ショウガ入りクッキーでもてなす
グラスに少しだけ残っているシェリーは、エミリーの瞳と同じ色をしていました。
間もなく、春がやってきました。
庭にユリの球根を植え、やがてぐんぐん大きくなるでしょう
これもフシギな謎です
この世の中には、フシギな謎が、たくさん、たくさんあります
天国をみつけられなければ 地上で
天上でもみつけられないでしょう
たとえどこへうつりすんでも
天使はいつもとなりに家をかりるのですから
愛をこめて
エミリー