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『きよしこ』(新潮文庫)

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『きよしこ』(新潮文庫)
重松清/著 初版2005年 438円

※2005.12~のノートよりメモを抜粋しました。
「読書感想メモリスト」カテゴリーに追加しました。

Mちゃんが好きな作家で、ミクシにも“泣き通した”と書いてあったから
読みたいと思っていたら、ライヴ『TABOO』前にゴハンした時にF氏から借りた/礼

今朝起きて、とりたててやることがないと思い、ふと見つけて
ここのところ本を読むのは久々すぎて、集中できずに焦った

本大好きなのに・・・と恐怖すら感じたが、読み始めたら9時~昼1時までに一気に読んでしまった
著者がいうように「難しいことは書いていない」という通り、読みやすかった

吃音の著者がテレビインタビューに出たのを見たある母親から
「息子も同じで悩んでいます 励ましの手紙をください」と便りをもらい
返事の代わりに「個人的な話を書いた」本を贈った、とある

著者は、今も発音の難しさ、人に口頭で意見を伝える難しさを抱えている
だからこそ安易な励ましはしなかった
それはとても個人的なこと

「本は心のそばに置いてくれれば嬉しい」

私は吃音の気持ちは分からないが、心の奥底の気持ちをうまく伝えられないという点で共感する
言葉を流暢に話せても、相手に伝わるか、伝わっても、それが真実かは分かりえない

たくさん喋ったからといって伝わるとは言えないだろうし、喋らずに伝わることもある
だからといって「言わなくても分かってくれているだろう」ともいい難い


▼あらすじ(ネタバレ注意

妹の出産で体を壊した母が、義理の祖父母にきよしを預けたことから吃音が始まった?
「きよしこの夜」を「きよしこ」という少年がいつかやってきて、
話したいだけ話せると思っていた少年きよし

クリスマス会で自己紹介ができずに凹んだ夜
きよしこが現れて「抱きしめて話してごらん」

矯正プログラムに3年も通う加藤くんとは、結局またすぐ転校になって会えなくなった

きよしは、初めて「お話」を書いた

自己紹介でつまづいたきよしは、神社で酔っ払いのおっちゃんとドングリ拾いなどして遊ぶ
野球で活躍してチームに入ってからは会わなくなった

次の学校では『お別れ会』の劇を書くよう任される
担任が面白くて、魅力的
娘さんの手術で休む

「通行人じゃない、皆それぞれの人生の主人公 たまたまこの話で脇役だっただけ 名前をつけろ」

思い出をつないでマッチを灯す話

中学時代のクラスメイト、ゲルユは憎めないヤツ
親友のギンショウは、盗みで少年院へ
出てきたらゲルユの兄貴の子分になって、きよしに「友だちになってくれ」と頼むが
結局うまくいかず、後日、ゲルユも気の弱いチンピラになっていた悲しい話

野球チームで初めて3年間頑張ったきよしだが、
転校生の大野が次々メインポジションを奪ったことでチーム内の空気が乱れ
ついにきよしのポジションも外されたが、遠回りした帰り道「がんばるから」と言いたくても誤解される

図書館で出会ったコと付き合うきよしは、地元の大学でなく、東京に行って教師を目指したいと願書を出す
通訳をしてくれていたワッチにそれを告げると、ショックながらもお守りを渡して消える少女の件が甘酸っぱい
ここでも「ごめん」でなく「がんばる」と言いたかったのだが





教師ではなく、物書きになった著者 他の作品も気になる
少年時代をここまでリアルに描けるのは、やはり才能
うまく話せなかったことも、こうした才能につながっている

岡山出身らしいが、~じゃけん、ほいじゃ、とかの方言がとても心地いい

子どもの物語ではあるけれども、経験が足りずに、分からないことがあっても
父母の事情や心情、クラスメイトたちの嘲笑や、同情、気遣い、本音と建前が
きよしにはちゃんと分かっている

この著者のように、小さい頃の思い出は、思い出せないけれども、
本当はもっといろんなことを考えて過ごしていたのかもしれないな

本当に悲しかったことは忘れて、その傷跡だけが残って、
今の生活の根底を揺るがしているとしても、それは自分では分からない

でも、心底イジワルな人、不幸せだけの人、また幸せだけの人もいない気がする
みんな、それぞれ乗り越えなければならないことをして
一生懸命生きているってことだと思う



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