■「“記憶”のミステリー ~最新脳科学が解き明かす記憶の正体~」@サイエンスZERO
ゲスト:井ノ口 馨 (富山大学大学院医学薬学研究部教授)
竹内薫
南沢奈央
中村慶子アナ
「我思う ゆえに 我あり」ルネ・デカルト
脳の研究というと、中世から人体実験も行われていただろうと思うとゾッとする
とくに戦争で、脳にダメージを受けた患者を研究したり、捕虜を使って研究したり
アメリカって時点で、さまざまな研究が軍事目的のニオイがするし
第二次世界大戦中、頭を負傷した兵士の脳梁(のうりょう 左右の大脳半球をつなぐ)を切断し、
「将来、何になりたい?」と聞いたら、左右の脳が違う職業のカードを指したとか
昔、心理学のゼミで習ったっけ
*
ヒトはどう記憶し、思い出すのか 主役はタツノオトシゴ? 「海馬」
左右1個ずつあり対になっている ソックリ 漢字も同じ
海馬には約1億個の神経細胞があり、“いつ、どこで、何を”などの情報が記憶されている
記憶保存のメカニズム
記憶の研究で日本の最先端を走るセンター
トーマス氏は、海馬の神経細胞の動きを音に変換して、リアルタイムで観測している
ここでもネズミさんが脳に棒を刺されてイジメられているよ・・・涙
「場所細胞」空間の中の自分の位置を記憶する重要な細胞
トーマス「脳内のナビゲーションシステムのようなもの」
直線では水色、カーヴでは青色に→通り道を「場所細胞」が認識している
トーマス:
同じパターンを繰り返していることが興味深い
マウスが止まっている時も「場所細胞」の活動は止まらず
前に通った道のパターンを短時間に何度も繰り返している
「場所細胞」のリプレイは記憶の固定に重要
海馬はリプレイして記憶を固定していると考えられる
井ノ口:
マウスもヒトも分子レヴェルではほとんど差がない(同じ命だもの
ナオ:意識的に覚えようとしなくても覚えてるのはフシギ
井ノ口:
海馬の中には、時間の経過を認識する「時間細胞」もある
「場所細胞」と「時間細胞」が同時に共同して働き
記憶に大事な“いつ、どこで”という情報を海馬で処理していて、記憶として刻まれる
海馬と記憶の関係
ヘンリー・モレゾンさん(27)
1953 アメリカ コネティカット州
ヘンリーは重度のてんかんを患っていた 最後の望みとして、海馬を摘出してもらうことにした
(こんな日曜大工みたいな道具で! どの時代も「これが最新医療だ」てゆってるんだから空恐ろしい
術後、てんかんは治まったが、記憶がなくなり、何度も看護婦の名前を聞いた
家族や、子どもの頃など、手術前のことは覚えていて、日常生活も支障ないことから
海馬の役割は「新たな出来事を記憶すること」だと分かった
井ノ口:
このことから、古い記憶は「大脳皮質」(脳の表面)に蓄えられていると分かった
ラットを使って迷路を学習させた後に「大脳皮質」のいろんな部分を取ってみたら
取られた大きさに比例して迷路から出られなくなった
記憶は「大脳皮質」のいろんな領域に分散して蓄えられている
(前回の「心」の回と同じ 心も体も全部つながってる、でいいんじゃない?
記憶は移動している
この仮説は長年言われ続けていたがプロセスは最近解明されつつある
記憶の転送プロセス
「神経新生」(海馬の神経細胞が新たに生まれるはたらき
研究成果は、世界最高峰の学術雑誌の表紙を飾った
「神経新生」が「大脳皮質」への記憶の転送に深く関わっていると発見
調べるために3種類のマウスを用意(世界中で一体どれだけのネズミさんが実験され死んでいるんだろう
それぞれのマウスの足に電気ショックを与え、海馬に恐怖記憶を植えつけ
「大脳皮質」へ転送される様子を観察(ハッピーな記憶じゃダメなのか?
普通のマウスは1ヶ月で完全に移ったが、抑制されたマウスは転送が遅れた 促進したマウスは1週間で転送された
井ノ口:
「神経新生」は、海馬からの記憶の消失に関わっている
その記憶自身が消えるわけではなく、「大脳皮質」へ転送され、同じ量蓄えられる
<このシステムはパソコンに似ている>
海馬=パソコン本体 大脳皮質=バックアップ用の外付けHD
本体がいっぱいになると、HDに移す→本体のデータを消去→新たなデータを入れられるようにする
<転送が盛んに行われるタイミング>
記憶して、寝た時、海馬と神経細胞のデータを測定したら、同じパターンだった
井ノ口:
「大脳皮質」は寝ている時に、海馬で起こっていることを復習(リプレイ)して、記憶を固定化している
ナオ:睡眠重要ですね
竹内:よく寝たほうが成績が良いことも分かっている
井ノ口:
年齢とともに記憶力が落ちると言われるが、「神経新生」の能力が落ちることが原因らしい
若い時は「神経新生」は活発なので、いくらでも覚えられる
年をとると、海馬は飽和状態で、いつまでも記憶が残る なかなか新しいことが覚えられない
<改善方法>
海馬の「神経新生」を促進するとよい
運動すると「神経新生」は2倍くらいに増える 体を動かすと効果がある
記憶を人工的に操る時代?! 「オプトジェネティクス」(光+遺伝学)
異なる2つの記憶を人工的に結びつけ、新たな記憶を作る
1.場所について覚えさせる
2.足に電気ショックを与え、恐怖感情を覚えさせる
3.脳に光ファイバーをつなぎ、オンオフによって2つの記憶をよみがえらせる
4.丸い部屋にマウスを戻すと恐怖反応を示し続けた
(他人事に思えない パニ障の「予期不安」みたいじゃないか
井ノ口:
強制的に同期活動をすることで、人工的に無関係な記憶をくっつけることができた
(無関係? 2つの記憶を関連付けただけでは?
<「連合記憶」のメカニズム>
白い丸1つが1つの神経細胞を表す
2つの記憶を結びつける新たな黄色い細胞が生まれる
この黄色い細胞を通して、赤から緑、緑から赤を思い出す
医療への応用
トラウマ体験の記憶と、無関係な記憶を引き離すことができれば、PTSDの治療につながるだろう
井ノ口:
「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」は、トラウマ体験の記憶+無関係な記憶が結びつくのが特徴
例:
地下鉄サリン事件の被害者は、地下鉄以外の乗り物一般に乗れなくなる
ラッシュアワーに起きたことで、雑踏が怖くなった人もいる
逆に応用すれば、人工的に記憶を引き離すことができるのではないか
ノーベル化学賞の利根川さんは、うつ病治療にも応用できると言っている
うつの患者は、楽しい思い出が思い出せない特徴があるため、
楽しい記憶に関連した神経細胞だけを活性化させれば、症状改善につながるのではないか
大好きな砂糖水にも反応しない
「オプトジェネティクス」を使うとうつ状態が改善(でも、ずっと光ファイバーを脳に刺しておくの?
ナオ:ヒトの脳で可能?
井ノ口:
ヒトの脳に光を当てることはできない(ダメじゃん
でも、将来、磁場を使って、脳の外から目標とする神経細胞を操作して、活動を制御する技術が開発されるのではないか
記憶、脳のはたらきは、人類に残された最後のフロンティア
今後は「ビッグデータ解析」や「スーリングモデルの研究」など?
他の分野の研究方法を組み合わせて、多方面からアプローチすれば明らかになるのではないか
ぜひ、動物を使わない方法でよろしくお願いいたします
ゲスト:井ノ口 馨 (富山大学大学院医学薬学研究部教授)
竹内薫
南沢奈央
中村慶子アナ
「我思う ゆえに 我あり」ルネ・デカルト
脳の研究というと、中世から人体実験も行われていただろうと思うとゾッとする
とくに戦争で、脳にダメージを受けた患者を研究したり、捕虜を使って研究したり
アメリカって時点で、さまざまな研究が軍事目的のニオイがするし
第二次世界大戦中、頭を負傷した兵士の脳梁(のうりょう 左右の大脳半球をつなぐ)を切断し、
「将来、何になりたい?」と聞いたら、左右の脳が違う職業のカードを指したとか
昔、心理学のゼミで習ったっけ
*
ヒトはどう記憶し、思い出すのか 主役はタツノオトシゴ? 「海馬」
左右1個ずつあり対になっている ソックリ 漢字も同じ
海馬には約1億個の神経細胞があり、“いつ、どこで、何を”などの情報が記憶されている
記憶保存のメカニズム
記憶の研究で日本の最先端を走るセンター
トーマス氏は、海馬の神経細胞の動きを音に変換して、リアルタイムで観測している
ここでもネズミさんが脳に棒を刺されてイジメられているよ・・・涙
「場所細胞」空間の中の自分の位置を記憶する重要な細胞
トーマス「脳内のナビゲーションシステムのようなもの」
直線では水色、カーヴでは青色に→通り道を「場所細胞」が認識している
トーマス:
同じパターンを繰り返していることが興味深い
マウスが止まっている時も「場所細胞」の活動は止まらず
前に通った道のパターンを短時間に何度も繰り返している
「場所細胞」のリプレイは記憶の固定に重要
海馬はリプレイして記憶を固定していると考えられる
井ノ口:
マウスもヒトも分子レヴェルではほとんど差がない(同じ命だもの
ナオ:意識的に覚えようとしなくても覚えてるのはフシギ
井ノ口:
海馬の中には、時間の経過を認識する「時間細胞」もある
「場所細胞」と「時間細胞」が同時に共同して働き
記憶に大事な“いつ、どこで”という情報を海馬で処理していて、記憶として刻まれる
海馬と記憶の関係
ヘンリー・モレゾンさん(27)
1953 アメリカ コネティカット州
ヘンリーは重度のてんかんを患っていた 最後の望みとして、海馬を摘出してもらうことにした
(こんな日曜大工みたいな道具で! どの時代も「これが最新医療だ」てゆってるんだから空恐ろしい
術後、てんかんは治まったが、記憶がなくなり、何度も看護婦の名前を聞いた
家族や、子どもの頃など、手術前のことは覚えていて、日常生活も支障ないことから
海馬の役割は「新たな出来事を記憶すること」だと分かった
井ノ口:
このことから、古い記憶は「大脳皮質」(脳の表面)に蓄えられていると分かった
ラットを使って迷路を学習させた後に「大脳皮質」のいろんな部分を取ってみたら
取られた大きさに比例して迷路から出られなくなった
記憶は「大脳皮質」のいろんな領域に分散して蓄えられている
(前回の「心」の回と同じ 心も体も全部つながってる、でいいんじゃない?
記憶は移動している
この仮説は長年言われ続けていたがプロセスは最近解明されつつある
記憶の転送プロセス
「神経新生」(海馬の神経細胞が新たに生まれるはたらき
研究成果は、世界最高峰の学術雑誌の表紙を飾った
「神経新生」が「大脳皮質」への記憶の転送に深く関わっていると発見
調べるために3種類のマウスを用意(世界中で一体どれだけのネズミさんが実験され死んでいるんだろう
それぞれのマウスの足に電気ショックを与え、海馬に恐怖記憶を植えつけ
「大脳皮質」へ転送される様子を観察(ハッピーな記憶じゃダメなのか?
普通のマウスは1ヶ月で完全に移ったが、抑制されたマウスは転送が遅れた 促進したマウスは1週間で転送された
井ノ口:
「神経新生」は、海馬からの記憶の消失に関わっている
その記憶自身が消えるわけではなく、「大脳皮質」へ転送され、同じ量蓄えられる
<このシステムはパソコンに似ている>
海馬=パソコン本体 大脳皮質=バックアップ用の外付けHD
本体がいっぱいになると、HDに移す→本体のデータを消去→新たなデータを入れられるようにする
<転送が盛んに行われるタイミング>
記憶して、寝た時、海馬と神経細胞のデータを測定したら、同じパターンだった
井ノ口:
「大脳皮質」は寝ている時に、海馬で起こっていることを復習(リプレイ)して、記憶を固定化している
ナオ:睡眠重要ですね
竹内:よく寝たほうが成績が良いことも分かっている
井ノ口:
年齢とともに記憶力が落ちると言われるが、「神経新生」の能力が落ちることが原因らしい
若い時は「神経新生」は活発なので、いくらでも覚えられる
年をとると、海馬は飽和状態で、いつまでも記憶が残る なかなか新しいことが覚えられない
<改善方法>
海馬の「神経新生」を促進するとよい
運動すると「神経新生」は2倍くらいに増える 体を動かすと効果がある
記憶を人工的に操る時代?! 「オプトジェネティクス」(光+遺伝学)
異なる2つの記憶を人工的に結びつけ、新たな記憶を作る
1.場所について覚えさせる
2.足に電気ショックを与え、恐怖感情を覚えさせる
3.脳に光ファイバーをつなぎ、オンオフによって2つの記憶をよみがえらせる
4.丸い部屋にマウスを戻すと恐怖反応を示し続けた
(他人事に思えない パニ障の「予期不安」みたいじゃないか
井ノ口:
強制的に同期活動をすることで、人工的に無関係な記憶をくっつけることができた
(無関係? 2つの記憶を関連付けただけでは?
<「連合記憶」のメカニズム>
白い丸1つが1つの神経細胞を表す
2つの記憶を結びつける新たな黄色い細胞が生まれる
この黄色い細胞を通して、赤から緑、緑から赤を思い出す
医療への応用
トラウマ体験の記憶と、無関係な記憶を引き離すことができれば、PTSDの治療につながるだろう
井ノ口:
「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」は、トラウマ体験の記憶+無関係な記憶が結びつくのが特徴
例:
地下鉄サリン事件の被害者は、地下鉄以外の乗り物一般に乗れなくなる
ラッシュアワーに起きたことで、雑踏が怖くなった人もいる
逆に応用すれば、人工的に記憶を引き離すことができるのではないか
ノーベル化学賞の利根川さんは、うつ病治療にも応用できると言っている
うつの患者は、楽しい思い出が思い出せない特徴があるため、
楽しい記憶に関連した神経細胞だけを活性化させれば、症状改善につながるのではないか
大好きな砂糖水にも反応しない
「オプトジェネティクス」を使うとうつ状態が改善(でも、ずっと光ファイバーを脳に刺しておくの?
ナオ:ヒトの脳で可能?
井ノ口:
ヒトの脳に光を当てることはできない(ダメじゃん
でも、将来、磁場を使って、脳の外から目標とする神経細胞を操作して、活動を制御する技術が開発されるのではないか
記憶、脳のはたらきは、人類に残された最後のフロンティア
今後は「ビッグデータ解析」や「スーリングモデルの研究」など?
他の分野の研究方法を組み合わせて、多方面からアプローチすれば明らかになるのではないか
ぜひ、動物を使わない方法でよろしくお願いいたします