■『ハックルベリー・フィンの冒険』(偕成社)
原題 Adventures of Huckleberry Finn by Mark Twain
マーク・トウェイン/著(1884) E.W.ケンブル/絵
※1995.7~のノートよりメモを抜粋しました。
※「読書感想メモリスト1」カテゴリーに追加しました。
これを読み終わったら、誰でも「はてしない物語」のバスチアンみたいに
何週間もかけてハックとジムと一緒に
いかだの旅と冒険の数々をたっぷり楽しんだ気になることだろう
いろいろ書く前にマーク・トウェインが丁寧にも最初に警告をしているから、それをここに記そう
“告示
この物語のうちに作意を発見せんと企てる者は告発せらるべく
教訓を発見せんと企てる者は追放せらるべく
筋だてを発見せんと企てる者は射殺せらるべし”
これを踏まえてもなお、私は私のやり方で記録をとろう
▼あらすじ(ネタバレ注意
ハックは、前のトムとの冒険で得た6000ドルもの大金を嗅ぎつけてやって来た
浮浪者の酔っ払いの父に監禁され、逃れて、しかも追われない手段として
盗賊に殺されたと見せかけてジャクソン島に渡り、
そこで売り渡される噂を聞いて逃げてきた黒人奴隷ジムに会う
ヒマに飽きて、女の子に変装し、さぐりを入れに町に戻ったハックは
皆、殺人犯はジムと思い、島も危ないと知り、いかだで自由州に向けての旅が始まる
ミシシッピ川を下り、自由州だと思ってあがり、別れ別れになってしまう2人
ハックはそこで出会う家族によくしてもらう
(信じがたいほどのホスピタリティ主義にたびたび出くわして
さすがに今じゃここまでアメリカでも有り難くはないだろうに
18Cにはこんな時代もあったのだろう
宿敵との理由も分からない殺し合いの事件に巻き込まれて
2人は再びいかだで川に出る
老人と30男の2人組を乗せるが、それぞれ王さまと公爵だと告白し
ウソだと分かっていてもハックは黙っている
キリンの悲劇を演じて町民を騙し、ついには死んで遺産を残した男の兄弟を演じて
大金をネコババしようとする2人組
たまりかねて、金は棺の中に隠す
もう1組の兄弟だというイカサマ師が加わって裁判となるが
どさくさまぎれに4人は逃げ出す
一文無しのまま王さまはジムをフェルプス家に売るが
2人組は悪事がバレて町民らに捕まる
ジムを盗みにハックが行くと、なんと彼らはトムと間違えた親類だった
そしてトムとの再会
(ハックは実用主義だけど、このトムときたら、やたらと“正式なやり方”
つまり自分が読んだ冒険ものの本の通りやってみるのにこだわる
妙な策略家の冒険好きなんだな
そしてハックはそんなトムを尊敬している
ことあるごとに「これがトムなら、もっと体裁よく、面白くするんだがなあ」
そんな2人が見事に再会して、私たちもホッとする
ジムの逃亡に快く協力するトムだけど、完璧な囚人の、完璧な逃亡にするため
トムのたてた計画ときたら
デカい石に紋章や詩を書かせるし、ヘビやネズミを集めて音楽を聴かせるし・・・
しまいには刺客団の仕業に見せて逃げるつもりが
町民の銃弾に当たって喜んでるっていうんだもの!!
でも、大丈夫 ジムはとっくに自由の身で、すべてはトムの冒険熱が起こした騒動だったってワケ
なんといっても面白いのは、ジムとのなんとも間の抜けたようでいて素朴極まりない会話!
可笑しいやら、その透き通った心に泣けてくるやら
ジムが気をつけているジンクスの多さは、きっと普通の生活もしていられなくなるほどだ
例えば、ヘビの抜け殻に触ると災いが起きるとか、胸に毛が生えると金持ちになれるとか
そのほとんどが全部当たっていくから不思議
ハックは、いつも自分の教養のなさを蔑んでいるけど
ここまで自然を知り尽くして、すぐその場で最高に都合のいいでっち上げが言えて
加えて、誰より冷静に判断できる少年はなかなかいない
これも信心からきてるのだけど、確かに教養があれば、
自分が正しいことをしているかそうでないかの区別がつくし、
2つあるうち正しい道がどちらか分かるだろうけど
学があるのと良心は別物だ
マーク・トウェインは、必要ないというかもしれないが、やはり本書は黒人問題に深く根ざしていると言える
最後にトムがいきなり真面目になって
「彼らは地上を歩く生き物と同じくらいに自由なんだ」
と叫ぶシーンがある
ジムが自分を蔑んで「白人になら何が一番いい方法か分かってる」と言うシーンもある
大体は使用人として家族同様に大切にされていたようだが
売り買いされる奴隷には違いない
そして「解説」にもあるとおり、19C末の今でさえ、
基本的にはほとんど変わっちゃいないのはやりきれないことだ
さて、静かな夏休みの代わりに楽しめたハック・フィンの冒険を読み終えてしまって
また数日もしないうちに、この本がどれほど面白かったかは全部忘れてしまうだろうと思う
実際、トムの冒険もどんなだったかすっかり思い出せないのだから
もう一度読みたい気もするけど、次から次に読みたい本がまだまだたくさんあるんだよね
この上下巻は自分で買ったんだし、またこんな冒険がしたくなった時に読み返そう
ほぼ自伝的作品らしいけど、マーク・トウェインの少年時代もわんぱくで
冒険と人情にあふれた、きっと素晴らしいものだったんだろうね
下巻に載っている晩年の白髪のおじいさんから想像するのは少し難しいけど
また、躍動感あふれる線画の挿絵を描いたE.W.ケンブルも素晴らしい
それぞれのシーンを思い描くのに助けになるし、
同じ1884年のサインがしてあるってことは、同時代をそのまま現代版でも使ってるってことかしら?
偕成社さんも偉い
世界中の子どもたちが何度も同じ冒険に胸躍らせることだろう
この続編をもっともっと続けて書いてくれたらよかったのに
とても名残惜しいことだけど、読後の記録はこのへんにしておこう
原題 Adventures of Huckleberry Finn by Mark Twain
マーク・トウェイン/著(1884) E.W.ケンブル/絵
※1995.7~のノートよりメモを抜粋しました。
※「読書感想メモリスト1」カテゴリーに追加しました。
これを読み終わったら、誰でも「はてしない物語」のバスチアンみたいに
何週間もかけてハックとジムと一緒に
いかだの旅と冒険の数々をたっぷり楽しんだ気になることだろう
いろいろ書く前にマーク・トウェインが丁寧にも最初に警告をしているから、それをここに記そう
“告示
この物語のうちに作意を発見せんと企てる者は告発せらるべく
教訓を発見せんと企てる者は追放せらるべく
筋だてを発見せんと企てる者は射殺せらるべし”
これを踏まえてもなお、私は私のやり方で記録をとろう
▼あらすじ(ネタバレ注意
ハックは、前のトムとの冒険で得た6000ドルもの大金を嗅ぎつけてやって来た
浮浪者の酔っ払いの父に監禁され、逃れて、しかも追われない手段として
盗賊に殺されたと見せかけてジャクソン島に渡り、
そこで売り渡される噂を聞いて逃げてきた黒人奴隷ジムに会う
ヒマに飽きて、女の子に変装し、さぐりを入れに町に戻ったハックは
皆、殺人犯はジムと思い、島も危ないと知り、いかだで自由州に向けての旅が始まる
ミシシッピ川を下り、自由州だと思ってあがり、別れ別れになってしまう2人
ハックはそこで出会う家族によくしてもらう
(信じがたいほどのホスピタリティ主義にたびたび出くわして
さすがに今じゃここまでアメリカでも有り難くはないだろうに
18Cにはこんな時代もあったのだろう
宿敵との理由も分からない殺し合いの事件に巻き込まれて
2人は再びいかだで川に出る
老人と30男の2人組を乗せるが、それぞれ王さまと公爵だと告白し
ウソだと分かっていてもハックは黙っている
キリンの悲劇を演じて町民を騙し、ついには死んで遺産を残した男の兄弟を演じて
大金をネコババしようとする2人組
たまりかねて、金は棺の中に隠す
もう1組の兄弟だというイカサマ師が加わって裁判となるが
どさくさまぎれに4人は逃げ出す
一文無しのまま王さまはジムをフェルプス家に売るが
2人組は悪事がバレて町民らに捕まる
ジムを盗みにハックが行くと、なんと彼らはトムと間違えた親類だった
そしてトムとの再会
(ハックは実用主義だけど、このトムときたら、やたらと“正式なやり方”
つまり自分が読んだ冒険ものの本の通りやってみるのにこだわる
妙な策略家の冒険好きなんだな
そしてハックはそんなトムを尊敬している
ことあるごとに「これがトムなら、もっと体裁よく、面白くするんだがなあ」
そんな2人が見事に再会して、私たちもホッとする
ジムの逃亡に快く協力するトムだけど、完璧な囚人の、完璧な逃亡にするため
トムのたてた計画ときたら
デカい石に紋章や詩を書かせるし、ヘビやネズミを集めて音楽を聴かせるし・・・
しまいには刺客団の仕業に見せて逃げるつもりが
町民の銃弾に当たって喜んでるっていうんだもの!!
でも、大丈夫 ジムはとっくに自由の身で、すべてはトムの冒険熱が起こした騒動だったってワケ
なんといっても面白いのは、ジムとのなんとも間の抜けたようでいて素朴極まりない会話!
可笑しいやら、その透き通った心に泣けてくるやら
ジムが気をつけているジンクスの多さは、きっと普通の生活もしていられなくなるほどだ
例えば、ヘビの抜け殻に触ると災いが起きるとか、胸に毛が生えると金持ちになれるとか
そのほとんどが全部当たっていくから不思議
ハックは、いつも自分の教養のなさを蔑んでいるけど
ここまで自然を知り尽くして、すぐその場で最高に都合のいいでっち上げが言えて
加えて、誰より冷静に判断できる少年はなかなかいない
これも信心からきてるのだけど、確かに教養があれば、
自分が正しいことをしているかそうでないかの区別がつくし、
2つあるうち正しい道がどちらか分かるだろうけど
学があるのと良心は別物だ
マーク・トウェインは、必要ないというかもしれないが、やはり本書は黒人問題に深く根ざしていると言える
最後にトムがいきなり真面目になって
「彼らは地上を歩く生き物と同じくらいに自由なんだ」
と叫ぶシーンがある
ジムが自分を蔑んで「白人になら何が一番いい方法か分かってる」と言うシーンもある
大体は使用人として家族同様に大切にされていたようだが
売り買いされる奴隷には違いない
そして「解説」にもあるとおり、19C末の今でさえ、
基本的にはほとんど変わっちゃいないのはやりきれないことだ
さて、静かな夏休みの代わりに楽しめたハック・フィンの冒険を読み終えてしまって
また数日もしないうちに、この本がどれほど面白かったかは全部忘れてしまうだろうと思う
実際、トムの冒険もどんなだったかすっかり思い出せないのだから
もう一度読みたい気もするけど、次から次に読みたい本がまだまだたくさんあるんだよね
この上下巻は自分で買ったんだし、またこんな冒険がしたくなった時に読み返そう
ほぼ自伝的作品らしいけど、マーク・トウェインの少年時代もわんぱくで
冒険と人情にあふれた、きっと素晴らしいものだったんだろうね
下巻に載っている晩年の白髪のおじいさんから想像するのは少し難しいけど
また、躍動感あふれる線画の挿絵を描いたE.W.ケンブルも素晴らしい
それぞれのシーンを思い描くのに助けになるし、
同じ1884年のサインがしてあるってことは、同時代をそのまま現代版でも使ってるってことかしら?
偕成社さんも偉い
世界中の子どもたちが何度も同じ冒険に胸躍らせることだろう
この続編をもっともっと続けて書いてくれたらよかったのに
とても名残惜しいことだけど、読後の記録はこのへんにしておこう