※1993.11~のノートよりメモを抜粋しました。
私はベンチに座っている
満たされた気持ち
土のかおりがする
陽の光にあたって温まった土から湯気がのぼる
木のベンチに寝転んで、空を見上げると
静かに晴れわたって
どこまでも どこまでも深い青
ここには 私ひとり
ほかには誰も見あたらない
病も疲れも癒され
私はとても体の芯まですがすがしく
清く健やか
目の前にはやわらかな草原
淡色の花々が咲き
涼しい風がやわらかく頬をなでてゆく
風は草花を揺らし
どこまでも続く草原を
どこへともなくゆきすぎてゆく
どこまでいっても私ひとりで
地上は信じられないほど平和だ
ベンチをはなれて 私は草原を歩く
ゆっくりと
時間は限りない
望めば、このうららかな陽は 照りつづけてくれるし
ここには時間の観念がまるでない
やわらかい若芽が 裸足をくすぐる
草花はじゅうたんのようで
私はときどきその上に寝転んでみる
陽に温められ 光と風をうけ
吸い込むと 生き生きとしている
私は好きなだけ草原を歩く
走りまわり 息を切らし
ぐるぐる回り ごろごろと転がる
この解放感
ここは完全に自由の世界
この草原に舞う 無数の蝶のように
吹きさる春風のように
初夏の日差しのように
私は水色のシャツで
髪を乱して走る
私を縛るものなどなにもない
そんなものは とうに存在しないんだ
だいぶ歩いたそこには
大きな湖 オアシスがある
水は深い蒼色
空と同じく澄んで
空の色を反射している
雲はさまざまに形を変えながら
どこか遠くの空へと
ゆっくり流れてゆく
水はひいやりとして
さんざん走った私のほてった体を
しずかに冷やしてくれる
まわりに立つのは立派な木々
見知らぬちいさな鳥が
透き通ったやさしいメロディを唄っている
木にはまだ若い葉が黄緑色をして
風に身をまかせている
さわさわ さわさわ さわさわ
私はしばらく真剣に目をこらして
木の間の鳥を見ていた
膝のあたりまで ばしゃばしゃ水を蹴って
服がびっしょりになるまで遊ぶ
砂漠の動物たちのように
そのままもっと深いところまで泳ぎだす
水底はサラサラとした砂地で
裸足に溶けこもうとしている
プカプカ浮かんで
頭の中もからっぽにしてしまおう
私はいま この自然に溶けようとしている
オアシスにはほかの動物も
たくさん水を飲みにくる
とても穏やかなシカの群れもいる
鼻を水におしつけて
上手に飲んでいる
この地下水は枯れることなく
とても澄んでいる
岸にあがって
砂地に横たわると
温められた砂で
体もとてもあたたかい
陽の光で 砂がキラキラ反射している
湖では ときどき魚が
勢いよく空に向かって跳ねあがり
飛まつがとぶ
私は岸辺に立つ
1本の大きな木に寄りかかる
どこかで聞き覚えのあるメロディを
ちいさく口ずさみながら
空高く 2羽のとんびが
声高く鳴きながら
輪を描いて飛んでいる
木からは生命のメッセージが聞こえる
力強い幹
かたい樹皮の奥には
根から吸い込んだ
澄んだ水分と養分が
とくとく流れる
それは大木の どんなに細い末端にも届き
私の体内にまで 力と喜びがみなぎる
気の遠くなるような昔から
ずうっとその場所にいて
葉を揺らしていた大木は
今も頑丈な幹で
しっかり根づいて生きている
思いきって3度深呼吸してから
私は細い川のゆくえを追って
歩きはじめる
はじまりは とてもシンプル
草木の間に見え隠れしながら
確実に1本の川は流れる
川の両端には
なにかの卵が無数に
産みつけられている
今この瞬間も
孵化した新しい命が
はじめから なにもかも分かっているかのように
全身全霊で生の喜びをあらわす
あるものは 川の流れのままに
あるものは 源の湖に戻ろうとして
果敢に流れに逆らって泳いでいく
川はしだいに 立派な河になる
私もずんずん歩いてゆく
たわわに実るオレンジ色の果実を
ひとつとり
甘酸っぱさが 口いっぱいにひろがる
その重みで枝から落ちた 無数の果実
甘い香りに誘われて
集まった動物たちも
実をほおばっている
とっても静か
花から花へとわたる 蜜蜂の羽音
花から花へとわたり
忙しそうに花粉を集める
蝶の羽音も耳に届くほど
もう自分を責めるのはやめよう
せめてこの紙の上では 私が城の主
なにが正しくて 何が誤りかではなく
この城内を守るために
そう それがこのノートの目的であり
一貫したコンセプトなのだから
私はベンチに座っている
満たされた気持ち
土のかおりがする
陽の光にあたって温まった土から湯気がのぼる
木のベンチに寝転んで、空を見上げると
静かに晴れわたって
どこまでも どこまでも深い青
ここには 私ひとり
ほかには誰も見あたらない
病も疲れも癒され
私はとても体の芯まですがすがしく
清く健やか
目の前にはやわらかな草原
淡色の花々が咲き
涼しい風がやわらかく頬をなでてゆく
風は草花を揺らし
どこまでも続く草原を
どこへともなくゆきすぎてゆく
どこまでいっても私ひとりで
地上は信じられないほど平和だ
ベンチをはなれて 私は草原を歩く
ゆっくりと
時間は限りない
望めば、このうららかな陽は 照りつづけてくれるし
ここには時間の観念がまるでない
やわらかい若芽が 裸足をくすぐる
草花はじゅうたんのようで
私はときどきその上に寝転んでみる
陽に温められ 光と風をうけ
吸い込むと 生き生きとしている
私は好きなだけ草原を歩く
走りまわり 息を切らし
ぐるぐる回り ごろごろと転がる
この解放感
ここは完全に自由の世界
この草原に舞う 無数の蝶のように
吹きさる春風のように
初夏の日差しのように
私は水色のシャツで
髪を乱して走る
私を縛るものなどなにもない
そんなものは とうに存在しないんだ
だいぶ歩いたそこには
大きな湖 オアシスがある
水は深い蒼色
空と同じく澄んで
空の色を反射している
雲はさまざまに形を変えながら
どこか遠くの空へと
ゆっくり流れてゆく
水はひいやりとして
さんざん走った私のほてった体を
しずかに冷やしてくれる
まわりに立つのは立派な木々
見知らぬちいさな鳥が
透き通ったやさしいメロディを唄っている
木にはまだ若い葉が黄緑色をして
風に身をまかせている
さわさわ さわさわ さわさわ
私はしばらく真剣に目をこらして
木の間の鳥を見ていた
膝のあたりまで ばしゃばしゃ水を蹴って
服がびっしょりになるまで遊ぶ
砂漠の動物たちのように
そのままもっと深いところまで泳ぎだす
水底はサラサラとした砂地で
裸足に溶けこもうとしている
プカプカ浮かんで
頭の中もからっぽにしてしまおう
私はいま この自然に溶けようとしている
オアシスにはほかの動物も
たくさん水を飲みにくる
とても穏やかなシカの群れもいる
鼻を水におしつけて
上手に飲んでいる
この地下水は枯れることなく
とても澄んでいる
岸にあがって
砂地に横たわると
温められた砂で
体もとてもあたたかい
陽の光で 砂がキラキラ反射している
湖では ときどき魚が
勢いよく空に向かって跳ねあがり
飛まつがとぶ
私は岸辺に立つ
1本の大きな木に寄りかかる
どこかで聞き覚えのあるメロディを
ちいさく口ずさみながら
空高く 2羽のとんびが
声高く鳴きながら
輪を描いて飛んでいる
木からは生命のメッセージが聞こえる
力強い幹
かたい樹皮の奥には
根から吸い込んだ
澄んだ水分と養分が
とくとく流れる
それは大木の どんなに細い末端にも届き
私の体内にまで 力と喜びがみなぎる
気の遠くなるような昔から
ずうっとその場所にいて
葉を揺らしていた大木は
今も頑丈な幹で
しっかり根づいて生きている
思いきって3度深呼吸してから
私は細い川のゆくえを追って
歩きはじめる
はじまりは とてもシンプル
草木の間に見え隠れしながら
確実に1本の川は流れる
川の両端には
なにかの卵が無数に
産みつけられている
今この瞬間も
孵化した新しい命が
はじめから なにもかも分かっているかのように
全身全霊で生の喜びをあらわす
あるものは 川の流れのままに
あるものは 源の湖に戻ろうとして
果敢に流れに逆らって泳いでいく
川はしだいに 立派な河になる
私もずんずん歩いてゆく
たわわに実るオレンジ色の果実を
ひとつとり
甘酸っぱさが 口いっぱいにひろがる
その重みで枝から落ちた 無数の果実
甘い香りに誘われて
集まった動物たちも
実をほおばっている
とっても静か
花から花へとわたる 蜜蜂の羽音
花から花へとわたり
忙しそうに花粉を集める
蝶の羽音も耳に届くほど
もう自分を責めるのはやめよう
せめてこの紙の上では 私が城の主
なにが正しくて 何が誤りかではなく
この城内を守るために
そう それがこのノートの目的であり
一貫したコンセプトなのだから