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『オフェリアと影の一座』 ミヒャエル・エンデ(岩波書店)

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『オフェリアと影の一座』(岩波書店)
ミヒャエル・エンデ/文 フリードリヒ・ヘッヘルマン/絵 矢川澄子/訳


▼あらすじ(ネタバレ注意

小さな古い町にオフェリアという小さなおばあさんが住んでいた
芝居好きな親が立派な大女優になってもらわなければと名づけたが
声が小さすぎて、それは叶わなかった

けれども、オフェリアはその小さな声を生かして、
舞台の役者がつかえないよう、観客には見えないボックスから
セリフを囁く仕事を続けて、あらゆる悲喜劇を覚えこみ、とても幸せだった




時代は変わり、映画、テレビを観る人が増え、
芝居を観るのも、大都市の劇場に行ってしまうため
小さな町の劇場は閉鎖され、オフェリアもお払い箱となる


最後の公演後、1人思い出にふけっていると、影が出てくる

「驚かせるつもりはなかったんだけど、どこにいればいいか分からなくて
 世間には、誰のものでもない影や、誰のものにもなりたくない影がごまんといるんです
 ぼくはカゲスキイです」

「じゃあ、あたしんとこはどう? あたしも旦那さまなしなのよ
 影さん同士、仲良くしてくれればいいわ」


オフェリアは、昼間は片方の影を小さく折りたたみ、ハンドバッグに入れて持ち歩いた

ある日、教会に行くと、また影法師がすがりついてせがんだ

「僕も連れてってください 誰のものでもないなんて、寂しくてやりきれません クライノイヤーです」

「ま、おいでなさい」



ほとんど毎日、オフェリアのもとに影が来るようになる
ヒトリウス、ヤムヨール、マタトーナイ、ムナシーゼ(笑

狭い部屋では、ずいぶん暗くて窮屈になり、影同士ケンカになり
時にはまるでシャドウ・ボクシングになってしまう(笑

オフェリアは、影たちに自分がそらんじている名作劇を口うつしに教えた
こうして影たちは、世界の名作悲喜劇を学んだ

影は自在に何でもなれるので、小人、大男、鳥、机もお望み次第
オフェリアは、みんながつかえないようセリフを囁いてあげた




しかし、世間の人はオフェリアをなんだか怪しいと思い
「あのおばあさん変わってますよ どこか老人ホームにでも入って世話してもらえばいいのに」
と噂し、のけ者扱いする

家主は、とうとう家賃を2倍にして、払えないなら出ていってもらうしかないと言った
オフェリアは持ち物いっさいをトランク1つに詰め込んで家を出て、列車に乗り、
あてのない旅に出た


遠くの海辺で疲れて眠り込むオフェリア 影たちは

「こんなことになったのも僕たちのせいだ
 今までお世話になったから、今度はご恩返ししなくちゃ」





影たちは、小さな村で、白いシーツで垂れ幕をつくり、オフェリアに教わった芝居を観せた
オフェリアは後ろでセリフを囁いた

最初は子どもが2、3人だったのが、大人も観に来て、
お客は喝采し、懐具合に応じて見物代を払っていった



オフェリアはクルマを1台買って、横に「オフェリアと影の一座」と飾り文字を描いてもらい
世界中を駆け巡った


ある日、吹雪でクルマが立ち往生し、そこへ大きな影が現れた

「あなたもいっしょに来ませんか?」

「オレなんぞまで引き受けて構わないのかな? まず名乗ってもいいかい?
 死って呼ばれてるよ」

しばらく沈黙し

「それでも引き受けるかい?」

「どうぞ、いらっしゃい」


あたり一面闇に閉ざされ、次の瞬間、オフェリアはもう眼鏡もなしにあたりがハッキリ見えるようになった
天国の門の前に立ち、周りに大勢の華やかな衣装をまとった、
輝くばかりに美しい人々がいて、にっこりしている

「分からないですか? 我々は、あなたに拾ってもらった影たちです
 とうとう解き放たれて、そこらをウロウロしなくても済むんです」




門が開き、オフェリアは立派な宮殿に案内された 堂々たる劇場で
入り口には金文字で「オフェリアと光の一座」と書かれていた


それから、オフェリア一座は、天使たちのために
人間の偉大な作家が書いた芝居を上演している

そうして、人間として地上にあることがどんなに惨めで
どんなに素晴らしく、どんなに切なくて、どんなに滑稽か
天使たちに分かりやすく教えてやってもいる

オフェリアは、役者がつかえないよう、セリフを囁き続けている





ただただ感動で鼻をすすった
エンデの想像力、文章の才の素晴らしさを堪能
最後は皆豊かで、穏やかな気持ちになる1冊

世の中にはまだまだ素晴らしい絵本が無数にあるんだなあ!
1冊1冊の出会いに感謝

毎日、大好きな芝居を観て、人々を喜ばせ、
家がなくなっても、トランク1つで旅に出て(これは私の夢
死さえも丁寧に迎え入れるオフェリア

こんなにステキな人を悪く噂する人間の心の狭さは切ないことだが
天上の世界では、光だけの世界

ヒトの悲喜こもごもの物語は、天使たちの心をも動かすことだろう




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