■『ガリバー旅行記』(福音館書店)
原題 Gulliver's Travels by Jonathan Swift
ジョナサン・スウィフト/著(英1726 日1988) 坂井晴彦/訳 チャールズ・エドマンド・ブロック/画
1990年5刷
※1996.10~のノートよりメモを抜粋しました。
※「読書感想メモリスト1」カテゴリーに追加しました。
ジョナサン・スウィフト:
アイルランドのダブリン生まれ
父は生まれる前に死に、母は彼を産んですぐイギリスに帰国
乳母と伯父に育てられる
大卒後、イギリスに渡り、政治家、歴史学者のウィリアム・テンプルの家に住み込みで勉強
聖職者、晩年は政界でも不成功 持病の頭痛に悩まされ、1745年、78歳で孤独に死ぬ
ほかには『桶物語』『僕婢訓』など
彼は今作を「読者を怒らせるために書いた」と言ったとか
でも、出版当時から今に受け継がれる人気文学のひとつ
『ロビンソン・クルーソー』と同時期に発売された今作
『ロビンソン・クルーソー』はやたら宗教心で書かれているのに対して
今作は、やたら政治批判で一貫している
スウィフトの生涯の経歴が影響しているのか?
でも、硬い話、風刺抜きにしても、SFファンタジーの面白さの魅力もあるし
J.ヴェルヌほど正確な調査に基づいた「空想科学小説」までいかずとも
飛ぶ鳥を見た時はUFOかと思ったし、馬が統治する理想郷と人間との関係も突飛ながら
現代、私たちがクジラやイルカを高い知能で温和な動物として憧れ、友達になろうとしているのにも似ている
馬が牛の乳を搾るシーンは笑える
大体、航海→難破→その国の言葉を覚え→政治・文化の情報交換→追放→家に帰る→航海の繰り返し
これら海の旅行ものを読むと、船乗りって気質は、よっぽど海の上の暮らしが好きなのが分かる
妻子にまったく人格がないように描かれているのも特徴的
でも、帰る港は欲しいわけね
散々ほったらかされて、しまいには“ヤフー”だと軽蔑される奥さんが可哀相
まだ地球上の完全な地図を作る前の時代だから、女性蔑視の表現もあちこちに見られる
1つ男女平等の教育(4編だったかな? さすがフウイヌム!)のススメはあった
期間を延長して、4週間(朝のみ)かけて読破した 大まかな内容は以下のとおり
▼あらすじ(ネタバレ注意
【第1篇 リリパット(小人国)への航海】
このブキミな魚怪獣?の絵気に入っちゃった
船医の勉強をしたガリバーは、航海に出て難破
小人の国で捕らわれの身となる
使っていない神殿に住み、自由を与えられ、言葉も学ぶ
「人間山」と呼ばれ、王族にも気に入られる
彼らの敵国ブレフスキュとは、卵をどこから食べるかで昔から争っている
(ローマカトリックとプロテスタントの宗派争いを風刺)
ガリバーは敵国艦隊を50ほど盗み、称号を与えられるが
大臣夫人とのありもしない噂をたてられたり、内部抗争に巻き込まれ
食費の膨大な出費や、火事になった宮殿に放尿したのが決定的な失敗となり
暗殺計画がもちあがり、ブレフスキュに逃亡する
流れ着いたボートでイギリスに戻り、連れ帰ったミニ牛のおかげで
夢のような話を信じてもらえる
【第2篇 ブロブディナグ(大人国)への航海】
2ヶ月もしないうちに航海に出て、また難破
着いた島で巨人に会い、仲間は逃げてしまうが
ガリバーは農民に見つかり、主人の家で飼われる?ことに
ネズミに襲われるが退治
主人の娘グラムダルクリッチ(可愛い乳母)に言葉を習って仲良くなる
主人は、彼を見世物の旅に連れ歩き、病気になるまで酷使する
そして皇族の耳にも噂が入り、買われて乳母も一緒に住む
小人にいじめられ、小屋を作ってもらい、ハエやハチに襲われる
体が小さいため、大人の体臭がキツく感じたり、肌が穴だらけ
ホクロはお盆サイズで、そこから生えている毛が
荷造りヒモくらいに見えたっていう表現は笑える
船を造ってもらい、漕いでみせると、カエルが乗ってきたり、
猿に子どもと間違われて誘拐されたり、小動物とのやりとりが面白い
王と政治談議
海を旅して、ワシに運ばれ、海に落とされ、仲間の人間に発見される
今までの習慣で大声で話したり、周りの人を踏みつけそうに思って
何度も叫んで無礼な奴だと頭を打ち割られそうになったり
妻にキスするのも、自分には届かないだろうと見上げて
かえって見えなかったりするシーンも
なるほどそうかもしれないと思わせる
【第3篇 ラピュータ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリッブ、および日本への航海】
懲りない人ってこーゆー人のことだね
また2ヶ月もしないで航海に出て、今度は海賊に遭い、
1人だけ無人島に流されて、空飛ぶ島ラピュータに引き上げられる
ラピュータ人の目は、バラバラに向いていて、いつも考えごとをしている
棒みたいなので叩いてもらわないと思い出してもらえないし、
話したり、聞いたりもできない
葉巻型円盤ソックリ! 17Cにも出現していたのかしら?
いつも太陽が滅びたり、彗星の衝突で地球が滅びる心配をしている
(ありもしないことを計算しては心配する科学者を風刺)
幾何学模様が大好きで、周りの形はみな三角、四角
数学と音楽に秀で、ほかを軽蔑している
だから政治も建築も農業もメチャメチャ
婦人らは、下の島でほかの男と遊び放題
ラピュータは、磁気で浮かび、その下の島は、強力な磁力を発している
下の島バルニバービも荒れ放題
古い習慣を守り、キチンと畑を耕している人も一部いるが
人々には「非国民」として軽蔑されている
大学では排泄物を食べ物にかえる実験、クモの糸で衣を織る実験
(実際、当時研究されていたらしい)
言葉を言う労力を節約し、物自体を見せて会話する研究とかetc...
「魔法使いの島」では、死人を一時復活させる酋長に会い、シーザーやらのヒーロー、
アリストテレス等の学者を見たり、歴史書や説明書の誤りを知り
貴族や政治家の腐敗ぶりを見て憂鬱になる
ラグナグでは、不死人間を知る
ガリバーは、もし自分がそうなら知を究め、徳を広めて幸せだろうと想像するが
老化までは防げず、醜く、脳の退化した彼らを見て
死ぬに死ねないことが、どれほど辛いかを知る
日本に関する著述は、ほんの少し、踏み絵制度に触れているだけ
【第4篇 フウイヌム国(馬の国)への航海】
帰国して、5ヶ月で再び航海へ
途中、海賊を補給して船を乗っ取られ、島に残される
人に似た獣ヤフーを見て、馬ソックリで話すフウイヌム族に会う
それを真似ると驚き、家に連れていかれる
服が肌の一部と思われたらしく、それを脱いだ時驚かれる
言葉を覚えて、主人に英国のことをいろいろ話すが
嘘や悪、言葉自体存在しないこの国では「ありもしないこと」と思われ、
ヤフーと人が理性などない動物以下の生活をしていると認めないわけにゆかず
権力欲、金銭欲、情欲、不摂生、憎しみ、嫉妬(7つの大罪ってとこだね)
戦争のしくみ、侵略行為、弁護士についての記述は納得
とにかく金で動く世の中
ガリバーは次第にヤフーを恥じ、憎しみ、フウイヌムの習慣を尊敬してゆく
(ヤフー病に効くヤフーの糞尿で作った薬はいらないなあ)
ガリバーはヤフーのメスに誘いをかけられて笑われる
友情と慈愛心という美徳を、手足が備わっていることを自慢しないのと同じく
当然のものとしてもっているフウイヌムにも階級制度はある
召使は、ずっと召使のまま身分はかわらない
それで文句も生まれない
1家に1頭制で事故で失ったら、ほかのメスからもらう
会議では、必要なことのみ決めて、心身を鍛え、奨励するために運動競技大会がある
死を怖れず、長旅に出るかのように皆別れの挨拶をする
せっかく主人の近くに小屋を建てて、日々幸せに美徳を学んでいたのに
やはりヤフーを自由にさせておけば悪影響が出る
いっそヤフーを絶滅させて、ロバを飼ったほうがいのではと決議が下り
「勧告が出た」と言い渡されて気を失うガリバー
仕方なく船を造り、あてもなく漕ぎ出す
友人となった召使の馬が「ヌフィ・イラ・ニア・マイアー・ヤフー(ヤフー君、気をつけてね)」と見送る
船乗りに見つかったガリバーだが、すっかり人間嫌い(ヤフーソックリの人嫌い)となり
妻子まで寄せつけなくなり、馬を2頭買って仲良くなる
歩き方が馬ソックリで、話し方も人々の笑い者になるが、逆にそんな人間を哀れんだ
その後航海にも出ないという
ラストの第12章(!?)では、なぜこの本を書いたか丁寧に書かれている
あくまで風刺の態度を失わず「この物語が真実だと誓う」と一貫しているのがスゴイ
原題 Gulliver's Travels by Jonathan Swift
ジョナサン・スウィフト/著(英1726 日1988) 坂井晴彦/訳 チャールズ・エドマンド・ブロック/画
1990年5刷
※1996.10~のノートよりメモを抜粋しました。
※「読書感想メモリスト1」カテゴリーに追加しました。
ジョナサン・スウィフト:
アイルランドのダブリン生まれ
父は生まれる前に死に、母は彼を産んですぐイギリスに帰国
乳母と伯父に育てられる
大卒後、イギリスに渡り、政治家、歴史学者のウィリアム・テンプルの家に住み込みで勉強
聖職者、晩年は政界でも不成功 持病の頭痛に悩まされ、1745年、78歳で孤独に死ぬ
ほかには『桶物語』『僕婢訓』など
彼は今作を「読者を怒らせるために書いた」と言ったとか
でも、出版当時から今に受け継がれる人気文学のひとつ
『ロビンソン・クルーソー』と同時期に発売された今作
『ロビンソン・クルーソー』はやたら宗教心で書かれているのに対して
今作は、やたら政治批判で一貫している
スウィフトの生涯の経歴が影響しているのか?
でも、硬い話、風刺抜きにしても、SFファンタジーの面白さの魅力もあるし
J.ヴェルヌほど正確な調査に基づいた「空想科学小説」までいかずとも
飛ぶ鳥を見た時はUFOかと思ったし、馬が統治する理想郷と人間との関係も突飛ながら
現代、私たちがクジラやイルカを高い知能で温和な動物として憧れ、友達になろうとしているのにも似ている
馬が牛の乳を搾るシーンは笑える
大体、航海→難破→その国の言葉を覚え→政治・文化の情報交換→追放→家に帰る→航海の繰り返し
これら海の旅行ものを読むと、船乗りって気質は、よっぽど海の上の暮らしが好きなのが分かる
妻子にまったく人格がないように描かれているのも特徴的
でも、帰る港は欲しいわけね
散々ほったらかされて、しまいには“ヤフー”だと軽蔑される奥さんが可哀相
まだ地球上の完全な地図を作る前の時代だから、女性蔑視の表現もあちこちに見られる
1つ男女平等の教育(4編だったかな? さすがフウイヌム!)のススメはあった
期間を延長して、4週間(朝のみ)かけて読破した 大まかな内容は以下のとおり
▼あらすじ(ネタバレ注意
【第1篇 リリパット(小人国)への航海】
このブキミな魚怪獣?の絵気に入っちゃった
船医の勉強をしたガリバーは、航海に出て難破
小人の国で捕らわれの身となる
使っていない神殿に住み、自由を与えられ、言葉も学ぶ
「人間山」と呼ばれ、王族にも気に入られる
彼らの敵国ブレフスキュとは、卵をどこから食べるかで昔から争っている
(ローマカトリックとプロテスタントの宗派争いを風刺)
ガリバーは敵国艦隊を50ほど盗み、称号を与えられるが
大臣夫人とのありもしない噂をたてられたり、内部抗争に巻き込まれ
食費の膨大な出費や、火事になった宮殿に放尿したのが決定的な失敗となり
暗殺計画がもちあがり、ブレフスキュに逃亡する
流れ着いたボートでイギリスに戻り、連れ帰ったミニ牛のおかげで
夢のような話を信じてもらえる
【第2篇 ブロブディナグ(大人国)への航海】
2ヶ月もしないうちに航海に出て、また難破
着いた島で巨人に会い、仲間は逃げてしまうが
ガリバーは農民に見つかり、主人の家で飼われる?ことに
ネズミに襲われるが退治
主人の娘グラムダルクリッチ(可愛い乳母)に言葉を習って仲良くなる
主人は、彼を見世物の旅に連れ歩き、病気になるまで酷使する
そして皇族の耳にも噂が入り、買われて乳母も一緒に住む
小人にいじめられ、小屋を作ってもらい、ハエやハチに襲われる
体が小さいため、大人の体臭がキツく感じたり、肌が穴だらけ
ホクロはお盆サイズで、そこから生えている毛が
荷造りヒモくらいに見えたっていう表現は笑える
船を造ってもらい、漕いでみせると、カエルが乗ってきたり、
猿に子どもと間違われて誘拐されたり、小動物とのやりとりが面白い
王と政治談議
海を旅して、ワシに運ばれ、海に落とされ、仲間の人間に発見される
今までの習慣で大声で話したり、周りの人を踏みつけそうに思って
何度も叫んで無礼な奴だと頭を打ち割られそうになったり
妻にキスするのも、自分には届かないだろうと見上げて
かえって見えなかったりするシーンも
なるほどそうかもしれないと思わせる
【第3篇 ラピュータ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリッブ、および日本への航海】
懲りない人ってこーゆー人のことだね
また2ヶ月もしないで航海に出て、今度は海賊に遭い、
1人だけ無人島に流されて、空飛ぶ島ラピュータに引き上げられる
ラピュータ人の目は、バラバラに向いていて、いつも考えごとをしている
棒みたいなので叩いてもらわないと思い出してもらえないし、
話したり、聞いたりもできない
葉巻型円盤ソックリ! 17Cにも出現していたのかしら?
いつも太陽が滅びたり、彗星の衝突で地球が滅びる心配をしている
(ありもしないことを計算しては心配する科学者を風刺)
幾何学模様が大好きで、周りの形はみな三角、四角
数学と音楽に秀で、ほかを軽蔑している
だから政治も建築も農業もメチャメチャ
婦人らは、下の島でほかの男と遊び放題
ラピュータは、磁気で浮かび、その下の島は、強力な磁力を発している
下の島バルニバービも荒れ放題
古い習慣を守り、キチンと畑を耕している人も一部いるが
人々には「非国民」として軽蔑されている
大学では排泄物を食べ物にかえる実験、クモの糸で衣を織る実験
(実際、当時研究されていたらしい)
言葉を言う労力を節約し、物自体を見せて会話する研究とかetc...
「魔法使いの島」では、死人を一時復活させる酋長に会い、シーザーやらのヒーロー、
アリストテレス等の学者を見たり、歴史書や説明書の誤りを知り
貴族や政治家の腐敗ぶりを見て憂鬱になる
ラグナグでは、不死人間を知る
ガリバーは、もし自分がそうなら知を究め、徳を広めて幸せだろうと想像するが
老化までは防げず、醜く、脳の退化した彼らを見て
死ぬに死ねないことが、どれほど辛いかを知る
日本に関する著述は、ほんの少し、踏み絵制度に触れているだけ
【第4篇 フウイヌム国(馬の国)への航海】
帰国して、5ヶ月で再び航海へ
途中、海賊を補給して船を乗っ取られ、島に残される
人に似た獣ヤフーを見て、馬ソックリで話すフウイヌム族に会う
それを真似ると驚き、家に連れていかれる
服が肌の一部と思われたらしく、それを脱いだ時驚かれる
言葉を覚えて、主人に英国のことをいろいろ話すが
嘘や悪、言葉自体存在しないこの国では「ありもしないこと」と思われ、
ヤフーと人が理性などない動物以下の生活をしていると認めないわけにゆかず
権力欲、金銭欲、情欲、不摂生、憎しみ、嫉妬(7つの大罪ってとこだね)
戦争のしくみ、侵略行為、弁護士についての記述は納得
とにかく金で動く世の中
ガリバーは次第にヤフーを恥じ、憎しみ、フウイヌムの習慣を尊敬してゆく
(ヤフー病に効くヤフーの糞尿で作った薬はいらないなあ)
ガリバーはヤフーのメスに誘いをかけられて笑われる
友情と慈愛心という美徳を、手足が備わっていることを自慢しないのと同じく
当然のものとしてもっているフウイヌムにも階級制度はある
召使は、ずっと召使のまま身分はかわらない
それで文句も生まれない
1家に1頭制で事故で失ったら、ほかのメスからもらう
会議では、必要なことのみ決めて、心身を鍛え、奨励するために運動競技大会がある
死を怖れず、長旅に出るかのように皆別れの挨拶をする
せっかく主人の近くに小屋を建てて、日々幸せに美徳を学んでいたのに
やはりヤフーを自由にさせておけば悪影響が出る
いっそヤフーを絶滅させて、ロバを飼ったほうがいのではと決議が下り
「勧告が出た」と言い渡されて気を失うガリバー
仕方なく船を造り、あてもなく漕ぎ出す
友人となった召使の馬が「ヌフィ・イラ・ニア・マイアー・ヤフー(ヤフー君、気をつけてね)」と見送る
船乗りに見つかったガリバーだが、すっかり人間嫌い(ヤフーソックリの人嫌い)となり
妻子まで寄せつけなくなり、馬を2頭買って仲良くなる
歩き方が馬ソックリで、話し方も人々の笑い者になるが、逆にそんな人間を哀れんだ
その後航海にも出ないという
ラストの第12章(!?)では、なぜこの本を書いたか丁寧に書かれている
あくまで風刺の態度を失わず「この物語が真実だと誓う」と一貫しているのがスゴイ