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『モロー博士の島』 H.G. ウェルズ(偕成社 完訳版)

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『モロー博士の島』(偕成社 完訳版)
原題 The Island of Dr. Moreau by H.G.Wells(1896 イギリス)
H.G. ウェルズ/著 雨沢泰/訳 佐竹美保/絵
1996年2刷 700円

※1997.10~のノートよりメモを抜粋しました。
「読書感想メモリスト1」カテゴリーに追加しました。

H.G. ウェルズ:
ハーバート・ジョージ・ウェルズ 1866.9.21 ロンドン生まれ
貧しく、読書好きの幼少期 科学を学び、ダーウィンの『進化論』(適者生存)に影響される

1作目『タイムマシン』(1895)が好評 次作の本書で論議を起こす
『透明人間』(1897)が真骨頂 『宇宙戦争』(1898)、『月世界旅行』(1901)

晩年は文明批評が主 『予見』(1902)、『世界史体系』(1920)
1946年に80歳で死去 作品数は150にものぼる

J.ヴェルヌと同じく科学の発展めざましい時代に活躍した空想科学小説家
'50~'60のSF映画によく彼の原作によるものをみかける SFの元祖

その巨匠の作品を半日で一気に読んで「絶海の孤島」ジャンルは、もともと好きな上
あやしい研究をするマッドドクターのおどろおどろしい物語にすっかり魅了されてしまった

“全米NO1超大作SFX映画『D.N.A』の原作版”との派手な帯

映画『D.N.A.ドクター・モローの島』(1996)(notes and movies(1997.10~ part4))参照
映画『宇宙戦争』(ネタバレ注意)


▼あらすじ(ネタバレ注意

生物学を学ぶプレンディックは、漂流し、医師モントゴメリーに救われるが
サルにソックリな男と、たくさんの動物を乗せ、名もない島に着く
飲兵衛の下卑な船長に船を降ろされ、仕方なく島に残される



島の主モロー博士は、有名な科学者だったが、無慈悲な生物解剖のせいで英国を追われて島で研究をしていた

プレンディックは、小屋をあてがわれるが、ピューマの実験中の叫びに耐えかね、島を探索中に
様々な奇怪な獣人間を見て襲われ、命からがら逃げ切る

自分が彼らのように動物に変えられると思ったプレンディックは、森に逃げ
動物人間らの住処に招かれ「四本足デ歩クナ」「主ノ家ハ苦シミノ家ダ」などの掟を唱えさせられる


海で溺れて自殺を考えるプレンディックをモローらは説得
彼らは動物を組み合わせ、外科手術を重ねて人間に似せる研究の結果だと知る


共に暮らすうちに次第に動物人間を知り始める
ある日、島に放したウサギの噛み砕かれた死骸を見つけ
ヒョウ人間が野生になりつつあると知る


集会を開き、恐怖で逃げ出した彼をプレンディックは撃ち殺す
プレンディックは彼らを忌み嫌うと同時に、哀れみ、
それは博士の非情な心への恐怖心へと変わる

「もとは皆、野生の動物だった
 本能的に自然に合わせ、幸せに生きていたに違いない

 だが今は、人間性という手かせ足かせをはめられて
 決して消えない恐怖に怯え、分かりもしない掟に不安をかきたてられている

 彼らの人真似人生は、苦痛から始まるばかりか、果てしない心の闘いと
 博士への恐怖しかない長い旅なのだ」


その1ヵ月後、ピューマは実験途中で逃げ出し、追う博士も戻らぬ人となった

主が死んで、動揺する動物人間らに

「主は空となってご覧になっている」

と恐怖心を再び植えつけようと試みる


すべてを諦めて酒びたりのモントゴメリーは、動物人間らと飲み明かし
ボートをすべて焼き、小屋にも火をつけた挙句、怪物に殺される

銃のおかげで辛うじてリーダー役となり10ヶ月も共に過ごすプレンディック
日に日に退化は進み、ひとり忠実だったイヌ人間がハイエナ、ブタ人間にヤラれた時
本気で島を脱出することを考える

いかだは失敗したが、幸運にも難破したボートを拾って脱出
3日後帆船にすくわれる


気が違ったと思われないよう、難破前の記憶はないフリをしたが
いつのまにか野生が乗り移ったのか、世の中には妙な人間と見られ
恐怖心は消えず、街をいく人々が動物人間に見えはじめ、郊外でひっそり暮らし
“健全な人間の心の輝き”を見出す


「夜空の星に平和がある
 それは、人が動物と違って、希望やなぐさめを、毎日の心配や苦労でなく
 広大で永遠の宇宙の法則に見出しているからだ

 希望なしに生きてはゆけない
 だから希望をこめて、孤独な物語を終わりにしたい」




科学、医学への過信、遺伝子組み換えの倫理観、変貌への不安
J.ヴェルヌとH.G.ウェルズの予言が次々と現実化していく中
人間性まで失われ、退化の道を歩んでいくという悲観まで当たらないように
彼らの作品は私たちに感動を与えつつも警告しつづけている




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