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『Qはせかいいち』 東逸子(偕成社)

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『Qはせかいいち』(偕成社)
舟崎克彦/文 東逸子/絵

舟崎克彦:
1945年生 『あのこがみえる』はボローニャ国際児童図書展グラフィック賞を受賞
童話執筆、挿画、翻訳、シナリオ作家


東逸子:
1953年生 東京藝術大学工芸科デザイン専攻卒
大卒後、銅版画のハプニングの面白さを駆使して、絵本製作に取り組む


「読書感想メモリスト1」カテゴリーに追加しました。

▼あらすじ(ネタバレ注意

もう随分使われていない物置小屋に住むネズミのQ
彼はマリィと名づけた人形と暮らしていた

マリィは口をきかないので、Qは退屈し、他の誰かになった遊びをする

ある時は、大火事に巻き込まれたマリィを救う消防士



ある時は、地球とマリィを襲う宇宙怪獣ガブリゴンに立ち向かう拳銃使い




でも、その後、Qはいつもしょんぼりしてしまう
いくら立派な仕事を成し遂げても、
マリィは一度も褒めてくれたことがないから




ある日、窓からネコが入ってきて、本当のピンチになる
エンピツのホースや、ちびたハブラシの銃では歯が立たない



Qは当たり構わず駆け回り、齧りまくる
ネコがQめがけてとびかかると、パニックになったQはネコの額にしがみつき
ネコは驚いて逃げてしまう

勢い余ったQはマリィの腕に落ちると、マリィは

「キュー・・・」

と初めて声を出す

マリィはなき人形だった





それからQは、世界一の消防士や、拳銃使いになるのをやめて
ただのネズミに戻り、マリィの腕にとびこむと
人形は名前を呼びかけてくれる

それは、世界一ステキなことでしたよ






***

東さんの画集ではなく絵本が読みたくて、図書館ならでは特性を利用して
初期作品と思われる本作と出会えた

普段、日本人作家はほとんど読まないが、著者はボローニャでも賞をとり
幅広い活躍をされている方なんだ

ネズミの人形への切ない片思い
どんなにスターになっても、賞賛してくれる者がいなければ意味がない

なき人形の唯一言える言葉が、ネズミの名前で
それだけで世界一幸せな“ただのネズミ”に戻れたラストに
じぃーーんとした



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