■『天国はおおさわぎ 天使セラフィーノの冒険』(ブックローン出版)
ガブリエル・バンサン/作 今江祥智/訳
※「読書感想メモリスト1」カテゴリーに追加しました。
ガブリエル・バンサン:
『くまのアーネストおじさん』シリーズ10冊の最後は『アーネスト、セレスティーヌと・・・ぼくたち』
『コアラのピクニク』も好評
絵を日本の水墨画に学んだという彼女は、とても日本贔屓
もっとも大切な作品だという水彩画集『砂漠』を
日本から出版したいとの希望で企画中
▼あらすじ(ネタバレ注意
セラフィーノはなにもない天国で毎日飽き飽きしている
「上はからっぽだし、足の下は雲だけがフワフワ
下のほうがよかった 叱られてばっかりだし
ここじゃすることもなくて、テレビを見るだけなんだもん」
絵を描くのが大好きなセラフィーノだが、手をやいた大人天使らが
ついに天国の裁判官のところに連れていく
「どうして、みんなと同じようにできんのかね」
そんなセラフィーノを見かねて、一人の老天使が助けてくれる
彼は子ども用の小さな羽をつけている
セラフィーノはある日、部屋の窓から下界に飛び出していってしまう
老天使「生きていてくれよ・・・」
下界では、セラフィーノの羽を見て「天使だぞ!」と大騒ぎになる
羽も取れてしまい、警察に連れていかれ尋問される
「あそこって、どんな風だね? なにをしてるんかね?」
「なんにも」
下界もテレビを見ていて、似たようなものだとガッカリして
親切なおばさんから風船をたくさんもらい、天国へ戻る
老天使「わしもやってみたがね どこだって同じだった・・・」
「どうしたらいいの?」
「他のところにはあると思うものを、ここで創りだすことだよ 地上で見たものを思い出すんだ」
退屈したセラフィーノは、また下界に行こうとして大勢に連れ戻され、ヒモをつけられる
「どうしてみんな命令を聞いたりするの?」
セラフィーノは小児科に連れていかれる
医師「何がいやなんだね?」
「なんにもしないで、ただ座ってるだけが嫌なの
いつもみんなと同じことするのが嫌なの
テレビなんか見たくないの!」
「いかがでしたドクター?」
「この子はまったく正常です 紙と鉛筆をやってください ヒモはもういりませんな」
老天使「なんでもいいから、とにかくやってみることだ 簡単なことさ」
フィルムライブラリーに行っても描く道具はない
<天国での生活プログラム>
朝7時に起きて、エホバさんが作ったテレビ番組で勉強
そこで男が「立ち上がって生きることだ!」と言っているのを見て「ほら、あの人が言ったでしょ」
「おい、座るんだ」
今度は「カウンセラー室」に連れていかれるセラフィーノ
「ほら、みんな静かにしてるじゃないか」
結局、セラフィーノに紙と筆を渡すと喜んで描きはじめる
老天使も木を描いてみせる
それを見たほかの天使が集まってきて、みんな夢中で絵を描きはじめる
その様子を見た上層部は「テレビのプログラムをかえなきゃ 絵の具壷は禁止だ」
天使「私たちの後光がなくなったぞ」
「ずっとこうして生きられるんなら、後光なんていらんよ」
上層部は、強行的に「秩序」を戻そうと命令する
「明日には、壁を元通り真っ白に戻すんだ」
老天使:
天国で大事なのは秩序なんだと 組織、文化、後光、知識なんだと
お前にとって大事なものは、何かね?
セラフィーノ:生きることだよ! ものを作ったり、なにか創造したり、走ったり
老天使:お前の言ったとおりだ あそこの2人をよーくごらん
そこにいるのは、レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロ(!)
「天国の壁に絵を描いていた時の連中の熱狂ぶりを覚えておいでかな? 幸せそうだった」
上層部「みなさんは10のグループごとに1台のビデオデッキと、3本のテープが与えられる 拍手を」
またプログラムが再開する
9~10時 一般文化
10~12時 子どもの時間(テレビ
14~16時 講義(みんな寝てる
16~18時 ためになるゲーム
18~19時 アニメ
20~22時 スポーツ観戦
セラフィーノはダ・ヴィンチが持っている設計図や論文に興味をもち
絵の具が欲しいとせがむ
上層部もダ・ヴィンチとミケランジェロの言うことは断れない
セラフィーノ「怖がっているのは、ここの偉い人なんだって」
セラフィーノが絵の具を配ると、また皆夢中であちこちに絵を描きはじめる
ダ・ヴィンチ「昔のことを思い出しはせんかね」
セラフィーノ「下と同じような天国を、もう一度作るんだい!」
困り果てた上層部
「2人はあのこわっぱと意気投合しとる ところが、2人とも左利きときた」
「神の冒涜だ 共同生活で大切なのは、なんたって秩序であーる」
「そうだ エホバさまに相談すべし」
「エホバさんて誰?」
「大統領とでもいうか、えらーいお方だよ」
エホバさんまでが初めてカウンセリングを受けにくる
「もはや尊敬もされず恐れる者もなしじゃ
私のことを分かるのはモーセだけじゃ」
医師:
ですが、私の患者は、モーセ様とあなた様だけなのです
みんな何かを創っているので幸せなんです 創造こそが救いなのでございます
あなたがこの世界をお創りになった時の喜びを思い出してください!
「よろしい、見に行くとしよう」(頭の後光?は取り外し可能なの?w
医師「すべて元の秩序におさまりましょう みんなストレスが消えております」
エホバさんが疲れきり絶望したため、絵の具が手に入らなくなる
セラフィーノ「僕はみんなで一緒に描きたかったんだい」
老天使「それができなくなったなら、別のことをしなくちゃならんのだよ」
セラフィーノ「なにを?」
老天使「考え出すんだ」
セラフィーノ「僕きっと見つけるもん!」
***
ここで言う天使って、『フランダースの犬』で迎えに来る子たちじゃなくて
下界で亡くなった市民なのかな?
なにもない世界で、神さまの作ったテレビ番組を見て暮らしているなんて
地上の体制、独裁政治を思わせて、ユーモアに笑うと同時に空恐ろしくもなる
セラフィーノは子どもで、大人たちは最初は相手にしないが
表現する大きな喜びを知ると、みんな夢中になる
それが地上の真似をしているって逆転発想がまた面白い
たった一人で正しいことを勇気をもって言うセラフィーノを
病院や、カウンセリングに連れていく場面も重要だ
操作されている価値観の世界では、人と違ったことを言うと異端者、狂人扱いにされてきた歴史がある
以前、天国は地上の世界と似ているということを読んだことがある
私の大好きな映画『メイド・イン・ヘブン』(1987)では
思ったことが現実になる世界で、それを地上にも持ち帰るシステムになっている
老天使は、しきりに「自分が何をしたいか 何を創り出したいか、考えるんだ」と言う
ヒトが考えることは現実化する 使いようによっては「悪魔の発明」と呼ばれるものもある
私たちは、なにか素晴らしいものを作り出す力がある
その欲求は誰にも止められないんだ
ガブリエル・バンサン/作 今江祥智/訳
※「読書感想メモリスト1」カテゴリーに追加しました。
ガブリエル・バンサン:
『くまのアーネストおじさん』シリーズ10冊の最後は『アーネスト、セレスティーヌと・・・ぼくたち』
『コアラのピクニク』も好評
絵を日本の水墨画に学んだという彼女は、とても日本贔屓
もっとも大切な作品だという水彩画集『砂漠』を
日本から出版したいとの希望で企画中
▼あらすじ(ネタバレ注意
セラフィーノはなにもない天国で毎日飽き飽きしている
「上はからっぽだし、足の下は雲だけがフワフワ
下のほうがよかった 叱られてばっかりだし
ここじゃすることもなくて、テレビを見るだけなんだもん」
絵を描くのが大好きなセラフィーノだが、手をやいた大人天使らが
ついに天国の裁判官のところに連れていく
「どうして、みんなと同じようにできんのかね」
そんなセラフィーノを見かねて、一人の老天使が助けてくれる
彼は子ども用の小さな羽をつけている
セラフィーノはある日、部屋の窓から下界に飛び出していってしまう
老天使「生きていてくれよ・・・」
下界では、セラフィーノの羽を見て「天使だぞ!」と大騒ぎになる
羽も取れてしまい、警察に連れていかれ尋問される
「あそこって、どんな風だね? なにをしてるんかね?」
「なんにも」
下界もテレビを見ていて、似たようなものだとガッカリして
親切なおばさんから風船をたくさんもらい、天国へ戻る
老天使「わしもやってみたがね どこだって同じだった・・・」
「どうしたらいいの?」
「他のところにはあると思うものを、ここで創りだすことだよ 地上で見たものを思い出すんだ」
退屈したセラフィーノは、また下界に行こうとして大勢に連れ戻され、ヒモをつけられる
「どうしてみんな命令を聞いたりするの?」
セラフィーノは小児科に連れていかれる
医師「何がいやなんだね?」
「なんにもしないで、ただ座ってるだけが嫌なの
いつもみんなと同じことするのが嫌なの
テレビなんか見たくないの!」
「いかがでしたドクター?」
「この子はまったく正常です 紙と鉛筆をやってください ヒモはもういりませんな」
老天使「なんでもいいから、とにかくやってみることだ 簡単なことさ」
フィルムライブラリーに行っても描く道具はない
<天国での生活プログラム>
朝7時に起きて、エホバさんが作ったテレビ番組で勉強
そこで男が「立ち上がって生きることだ!」と言っているのを見て「ほら、あの人が言ったでしょ」
「おい、座るんだ」
今度は「カウンセラー室」に連れていかれるセラフィーノ
「ほら、みんな静かにしてるじゃないか」
結局、セラフィーノに紙と筆を渡すと喜んで描きはじめる
老天使も木を描いてみせる
それを見たほかの天使が集まってきて、みんな夢中で絵を描きはじめる
その様子を見た上層部は「テレビのプログラムをかえなきゃ 絵の具壷は禁止だ」
天使「私たちの後光がなくなったぞ」
「ずっとこうして生きられるんなら、後光なんていらんよ」
上層部は、強行的に「秩序」を戻そうと命令する
「明日には、壁を元通り真っ白に戻すんだ」
老天使:
天国で大事なのは秩序なんだと 組織、文化、後光、知識なんだと
お前にとって大事なものは、何かね?
セラフィーノ:生きることだよ! ものを作ったり、なにか創造したり、走ったり
老天使:お前の言ったとおりだ あそこの2人をよーくごらん
そこにいるのは、レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロ(!)
「天国の壁に絵を描いていた時の連中の熱狂ぶりを覚えておいでかな? 幸せそうだった」
上層部「みなさんは10のグループごとに1台のビデオデッキと、3本のテープが与えられる 拍手を」
またプログラムが再開する
9~10時 一般文化
10~12時 子どもの時間(テレビ
14~16時 講義(みんな寝てる
16~18時 ためになるゲーム
18~19時 アニメ
20~22時 スポーツ観戦
セラフィーノはダ・ヴィンチが持っている設計図や論文に興味をもち
絵の具が欲しいとせがむ
上層部もダ・ヴィンチとミケランジェロの言うことは断れない
セラフィーノ「怖がっているのは、ここの偉い人なんだって」
セラフィーノが絵の具を配ると、また皆夢中であちこちに絵を描きはじめる
ダ・ヴィンチ「昔のことを思い出しはせんかね」
セラフィーノ「下と同じような天国を、もう一度作るんだい!」
困り果てた上層部
「2人はあのこわっぱと意気投合しとる ところが、2人とも左利きときた」
「神の冒涜だ 共同生活で大切なのは、なんたって秩序であーる」
「そうだ エホバさまに相談すべし」
「エホバさんて誰?」
「大統領とでもいうか、えらーいお方だよ」
エホバさんまでが初めてカウンセリングを受けにくる
「もはや尊敬もされず恐れる者もなしじゃ
私のことを分かるのはモーセだけじゃ」
医師:
ですが、私の患者は、モーセ様とあなた様だけなのです
みんな何かを創っているので幸せなんです 創造こそが救いなのでございます
あなたがこの世界をお創りになった時の喜びを思い出してください!
「よろしい、見に行くとしよう」(頭の後光?は取り外し可能なの?w
医師「すべて元の秩序におさまりましょう みんなストレスが消えております」
エホバさんが疲れきり絶望したため、絵の具が手に入らなくなる
セラフィーノ「僕はみんなで一緒に描きたかったんだい」
老天使「それができなくなったなら、別のことをしなくちゃならんのだよ」
セラフィーノ「なにを?」
老天使「考え出すんだ」
セラフィーノ「僕きっと見つけるもん!」
***
ここで言う天使って、『フランダースの犬』で迎えに来る子たちじゃなくて
下界で亡くなった市民なのかな?
なにもない世界で、神さまの作ったテレビ番組を見て暮らしているなんて
地上の体制、独裁政治を思わせて、ユーモアに笑うと同時に空恐ろしくもなる
セラフィーノは子どもで、大人たちは最初は相手にしないが
表現する大きな喜びを知ると、みんな夢中になる
それが地上の真似をしているって逆転発想がまた面白い
たった一人で正しいことを勇気をもって言うセラフィーノを
病院や、カウンセリングに連れていく場面も重要だ
操作されている価値観の世界では、人と違ったことを言うと異端者、狂人扱いにされてきた歴史がある
以前、天国は地上の世界と似ているということを読んだことがある
私の大好きな映画『メイド・イン・ヘブン』(1987)では
思ったことが現実になる世界で、それを地上にも持ち帰るシステムになっている
老天使は、しきりに「自分が何をしたいか 何を創り出したいか、考えるんだ」と言う
ヒトが考えることは現実化する 使いようによっては「悪魔の発明」と呼ばれるものもある
私たちは、なにか素晴らしいものを作り出す力がある
その欲求は誰にも止められないんだ