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『 絵本御伽草子 うらしま』 ヒグチユウコ/絵(講談社)

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『<現代版> 絵本御伽草子 うらしま』(講談社)
日和聡子/文 ヒグチユウコ/絵

「読書感想メモリスト1」カテゴリーに追加しました。

「御伽草子」
室町時代から江戸時代初期に成立した短篇物語の総称
神仏の化身や擬人化された動物が登場するなど
多種多様な物語が絵とともに描かれている



『浦島太郎』と言えば、亀を助けて、竜宮城へ行き
戻った時には随分時間が経っていて、玉手箱を開けるとおじいさんになる
そんなストーリーをずっと絵本でしか読んでこなかったが、

本編のストーリーも、巻末にある原典『浦島太郎』も随分違った雰囲気で驚いた
ほかの「日本昔話」的な話も、ほんとうは違うのだろうか?

子どもに親しんでもらおう、または倫理観を養おうとする余り
原典の妖しさ、魅力を相当そぎ落として広まってしまったなら
これほど惜しいものはない

ヒグチさんの緻密に描きこまれた絵は、まさに原典の妖しさを表現するのにピッタリ


▼あらすじ(ネタバレ注意

貧しい一家の長男、タロウは沖で亀を釣り上げ、浜へ還す
亀だけ還すわけにもいかないと、漁でとったものもすべて海に還したという

その兄がある日、夜が更けても帰らないため、家族も村人もみんなで探すが見つからなかった
家はますます陰鬱になり、その日暮らしを続けた


妹は、浜に行くなと言われていたが、
その朝見た夢が気になり行ってみると大きな甕を見つける

中を覗くと、豪華な屋敷、姫、女房らしき姿とともに
昏々と眠り続ける兄の姿が見える

妹は、そのワケを知りたくて、甕の中の世界に落ちていく
闇から光り輝く場所にきて、浜には甕とひそひそと話す女がいる

女に聞くと、兄は竜宮城にいるという
「どうやら、跡取りを作らせようとしているみたいね」


女には引き留められるが、妹は鬱蒼とした森の奥へ入り、兄を探す

竜宮城と思われる屋敷に着くが、誰もいない 庭園の立派な松も書割と分かる

急に後ろから「だあれだ」と小さな手で目隠しをされて驚く
少女は一人でここに暮らしているという
その面影に、父母や兄が重なる

しばらくおはじきで遊ぶと「早く帰らなきゃね」と言われる
1個のおはじきを拾うと「それ、あなたのよ」

その後、強い風に押されるように磯辺まで戻っている妹

懐におはじきの重みを感じながら、父母が心配しているであろう家に戻る


***

【原典 内容抜粋メモ】

丹後国に浦島太郎という24、5の若者がいた
磯で亀を釣り上げるが

「鶴は千年、亀は万年とて、命久しきものなり
 ここにて命をたたん事、いたはしければ、助くるなり
 常にはこの恩を思い出すべし」と海へ還す

翌日、船に美しい女房が一人で波に揺られて来る
そのさめざめと泣く姿に同情したタロウは、一緒に船に乗ると

「一樹の蔭に宿り、一河の流れを汲むことも、皆これ他生の縁ぞかし
 ましてや遥かの波路を、はるばると送らせ給ふ事、ひとへに他生の縁なれば
 わらはと夫婦の契をもなし給ひて、同じ所に明し暮し候はんや」と言われる


竜宮城に着き、四方の戸を開けると四季の美しい景観があらわれて魅いるタロウ
東の戸は春の景色、南の戸は夏の景色、西は秋、北は冬

3年ほど楽しく暮らすが、ある日タロウは頼む

「われに三十日の暇をたび候へかし
 故郷の父母を見すて、三年を送り候へば、あひ奉りて、心やすく参り候はん」

「二世の縁と申せば、たとひ此世にてこそ夢幻の契にてさぶらふとも
 必ず来世にては、一つ蓮の縁と生れさせおはしませ」

とまた泣いて別れを惜しむ女房
自分はいつか海に還してもらった亀だと明かす


タロウが故郷に帰ると、人は絶え、荒地と化している
老人に「浦島の行方は候はぬか」と問うと

「不思議にこそ候へ 浦島とやらんは、はや七百年以前の事と申し伝え候」と石塔を見せる

タロウは、泣く泣く、松の木陰に来て、亀にもらって「開けるな」と言われていた箱を開けてしまうと
若者だったのがすっかり変わり果ててしまう

タロウは鶴になって虚空に飛び上り、丹後国の浦島の明神となり
亀も同じ所に神となり、夫婦とも明神になった


『御伽草子(下)』岩波書店



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