■『アラスカの詩 極北に生きる人びと』(新日本出版社)
星野道夫/著
【内容抜粋メモ】
「生まれもった川」
人間の風景の面白さとは、私たちの人生がある共通する一点で同じ土俵に立っているからだろう。
一点とは、たった一度の一生をより良く生きたいという願いであり、
面白さとは、そこから分かれてゆく人間の生き方の無限の多様性である。
わずか十五畳ほどの家の中を見渡しても、人間はこれだけ何も持たなくてもよいのだ、とビルの暮らしは語りかけてくる。
言いかえれば、人生を生きてゆく身の軽さである。
そう、誰かがパーソナル・ディフィニッション・オブ・サクセスという言葉を使っていた。
きわめて個人的な、社会の尺度からは最も離れたところにある人生の成否、
その存在をビルはぼくたちにそっと教えてくれているのかもしれない。
「誰だってはじめはそうやって生きてゆくんだと思う。
ただみんな、驚くほど早い年齢でその流れを捨て、岸にたどり着こうとしてしまう」
世界が終わりになろうとも、私は今日リンゴの木を植える・・・
ビルの存在は、人生を肯定してゆこうという意味をいつもぼくに問いかけてくる。
「白夜」
本当の意味での野生、原始自然というものをぼくは見たかった。
「ある家族の旅」
人間の一生がいかに短いものなのか、そしてある日突然断ち切られるものなのかをぼくは感じとった。
私たちは、カレンダーや時計の針で刻まれた時間に生きているのではなく、もっと漠然として、脆い、
それぞれの生命の時間を生きていることを教えてくれた。
自分の持ち時間が限られていることを本当に理解した時、
それは生きる大きなパワーに転化する可能性を秘めていた。
「ジムと息子たち」
ひとつの生命を終わらせ、自分の手で触れ、子どもながらに何か知っただろうか。
我々を含めたすべての生命が、他の生命に依存しているということを。
その肉を口に含んだ時、そのカリブーの生命を自分自身が生きてゆくのだということを。
「思い出の結婚式」
「アラスカはいつも、発見され、そして忘れられる」
そんな諺がアラスカにある。
1890年代のゴールドラッシュから久しく忘れられていたこの土地は、
油田開発の中で、再び発見される時代に入っていた。
アルカトラズ
サンフランシスコ湾に浮かぶ小さな無人島。
1969年、アパッチ、ナバホ、ブラックフート・・・14人のインディアンの若者が集結し、19ヶ月にわたってこの島を占拠した。
彼らはこの島が先祖から受け継がれてきた神聖な大地の一部であるとし、
歴史の中に埋もれていきそうなアメリカ合衆国とインディアンの関わりに、
小さな戦いを始めたのだった。
「約束の川」
キャンプ・デナリ:約20年間、マッキンリー山の麓で運営された小さな山小屋。
ミューリー兄弟:アラスカのナチュラルヒストリーにおける伝説的な動物学者。
ブラッドフォード・ウォッシュバーン:マッキンレー山全域の地図を作成した探検家。
ビル(ウィリアム)・ベリイ:極北の自然を描き続けた画家。
ミューリー:
伝説的な生物学者。後にアメリカ自然保護運動のパイオニアとなった。夭逝。
未亡人のマーガレットは『Two in the Far North(二人の極北)』を書き、
この土地の自然に憧れる誰もが読むアラスカの古典となった。
シリア&ジニー:1976年、シリアはウィルダネス・ソサエティの会長に初の女性として就任。
Life is what happens to you while you are making other plans.
人生とは、何かを計画している時に起きてしまう別の出来事のこと。
誰もが、それぞれの老いに、いつか出会ってゆく。
それは、しんとした冬の夜、誰かがドアをたたくように訪れるものなのだろうか。
星野道夫/著
【内容抜粋メモ】
「生まれもった川」
人間の風景の面白さとは、私たちの人生がある共通する一点で同じ土俵に立っているからだろう。
一点とは、たった一度の一生をより良く生きたいという願いであり、
面白さとは、そこから分かれてゆく人間の生き方の無限の多様性である。
わずか十五畳ほどの家の中を見渡しても、人間はこれだけ何も持たなくてもよいのだ、とビルの暮らしは語りかけてくる。
言いかえれば、人生を生きてゆく身の軽さである。
そう、誰かがパーソナル・ディフィニッション・オブ・サクセスという言葉を使っていた。
きわめて個人的な、社会の尺度からは最も離れたところにある人生の成否、
その存在をビルはぼくたちにそっと教えてくれているのかもしれない。
「誰だってはじめはそうやって生きてゆくんだと思う。
ただみんな、驚くほど早い年齢でその流れを捨て、岸にたどり着こうとしてしまう」
世界が終わりになろうとも、私は今日リンゴの木を植える・・・
ビルの存在は、人生を肯定してゆこうという意味をいつもぼくに問いかけてくる。
「白夜」
本当の意味での野生、原始自然というものをぼくは見たかった。
「ある家族の旅」
人間の一生がいかに短いものなのか、そしてある日突然断ち切られるものなのかをぼくは感じとった。
私たちは、カレンダーや時計の針で刻まれた時間に生きているのではなく、もっと漠然として、脆い、
それぞれの生命の時間を生きていることを教えてくれた。
自分の持ち時間が限られていることを本当に理解した時、
それは生きる大きなパワーに転化する可能性を秘めていた。
「ジムと息子たち」
ひとつの生命を終わらせ、自分の手で触れ、子どもながらに何か知っただろうか。
我々を含めたすべての生命が、他の生命に依存しているということを。
その肉を口に含んだ時、そのカリブーの生命を自分自身が生きてゆくのだということを。
「思い出の結婚式」
「アラスカはいつも、発見され、そして忘れられる」
そんな諺がアラスカにある。
1890年代のゴールドラッシュから久しく忘れられていたこの土地は、
油田開発の中で、再び発見される時代に入っていた。
アルカトラズ
サンフランシスコ湾に浮かぶ小さな無人島。
1969年、アパッチ、ナバホ、ブラックフート・・・14人のインディアンの若者が集結し、19ヶ月にわたってこの島を占拠した。
彼らはこの島が先祖から受け継がれてきた神聖な大地の一部であるとし、
歴史の中に埋もれていきそうなアメリカ合衆国とインディアンの関わりに、
小さな戦いを始めたのだった。
「約束の川」
キャンプ・デナリ:約20年間、マッキンリー山の麓で運営された小さな山小屋。
ミューリー兄弟:アラスカのナチュラルヒストリーにおける伝説的な動物学者。
ブラッドフォード・ウォッシュバーン:マッキンレー山全域の地図を作成した探検家。
ビル(ウィリアム)・ベリイ:極北の自然を描き続けた画家。
ミューリー:
伝説的な生物学者。後にアメリカ自然保護運動のパイオニアとなった。夭逝。
未亡人のマーガレットは『Two in the Far North(二人の極北)』を書き、
この土地の自然に憧れる誰もが読むアラスカの古典となった。
シリア&ジニー:1976年、シリアはウィルダネス・ソサエティの会長に初の女性として就任。
Life is what happens to you while you are making other plans.
人生とは、何かを計画している時に起きてしまう別の出来事のこと。
誰もが、それぞれの老いに、いつか出会ってゆく。
それは、しんとした冬の夜、誰かがドアをたたくように訪れるものなのだろうか。