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『アラスカの詩 めぐる季節の物語』星野道夫

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『アラスカの詩 めぐる季節の物語』(新日本出版社)
星野道夫/著

2014年も星野さんの撮ったアラスカの写真の壁掛けカレンダーにした。
1月はアザラシの親子。
地球のどこかに、こうして今も息づいている命があることを思い出させてくれる。
久しぶりに星野さんの本を借りてみた。
これまでの著書からの抜粋だから、何度も読んだ文章、光景だけれども、何度読んでも味わい深い。
本書は、アラスカの短い春、夜のない夏、紅葉に染まる秋、そして長い冬、
それぞれの四季にまつわる話が順番に置かれている。


【内容抜粋メモ】



「冬」
私たちは、二つの時間を持って生きている。
カレンダーや時計の針に刻まれる慌しい日常と、
もう一つは漠然とした生命の時間である。
すべてのものに、平等に同じ時が流れていること・・・
その不思議さが、私たちにもう一つの時間を気付かせ、
日々の暮らしにはるかな視点を与えてくれるような気がする。



「雪、たくさんの言葉」
一年に一度、名残惜しく過ぎゆくものに、この世で何度めぐり合えるのか。
その回数をかぞえるほど、人の一生の短さを知ることはないのかもしれない。

昔、山に逝った親友を荼毘に付しながら、
夕暮れの空に舞う火の粉を不思議な気持ちで見つめていたのを思い出す。
あの時もほんのわずかな灰しか残らなかった。
生命(いのち)とは一体どこからやって来て、どこへ行ってしまうものなのか。
あらゆる生命は目に見えぬ糸でつながりながら、それはひとつの同じ生命体なのだろうか。



「遥かなる足音」
すべてのものは、いつか土に帰り、また旅が始まる。
有機物と無機物、生きるものと死すものとの境は、一体どこにあるのだろう。
いつの日か自分の肉体が滅びた時、私もまた、好きだった場所で土に帰りたいと思う。
ツンドラの植物にわずかな養分を与え、極北の小さな花を咲かせ、
毎年春になれば、カリブーの足音が遠い彼方から聞こえてくる・・・
そんなことを、私は時々考えることがある。



「春」
雪の重みで倒れた木。そこにアカリスが住んでいたことを思い出した星野さんは、
ずっと見てみたいと思っていた巣の様子を見てびっくり!
枝や枯れ葉が敷きつめられているのかと思ったら、
巣穴の底に敷かれていたのは、星野さん宅の丸太の間に詰められていた断熱材だったw



「満天の星、サケが森をつくる」

Salmon make a forest.
サケが森をつくる(古いインディアンの諺)
川を真っ黒に染めるほどのサケの群衆が産卵のためにやって来て、
産卵を終えて一生を終えた死骸は土壌に染み込み、森を育む。


ナーストゥリー
倒木の上に落ちた種。さまざまな虫や菌類によって腐食した倒木は、豊かな栄養を含む養木となって土壌の働きをする。



「ふたたび、冬」
海面から宙に舞うクジラが自然ならば、そのクジラに銛をうつエスキモーの人々の暮らしもまた自然なのだ。
自然とは人間の暮らしの外にあるのではなく、人間の営みさえ含めてのものだと思う。
美しいのも、残酷なのも、そして小さなことから大きく傷ついていくのも自然なのだ。
自然は強くて脆い。

自然に対する興味の行きつく果ては、自分自身の生命、生きていることの不思議さに他ならないからだ。



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