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欲望の資本主義~ルールが変わる時~

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経済が活発な国で活躍している人が
三者三様の意見、角度で「資本主義」を語る

「ルールを変えなきゃダメだよ」
「それで儲けてるよ」
「これからも続くだろう」

インタビュアーの安田さんは3人に同じ質問をしたのだろうか?
見る人によっても、自分が最初からもっている先入観もあるだろうし
タイトルから思ったよりは偏らない作り方がしてある

私は、今の世の中の仕組みは、裏表すべてひっくり返すくらいの勢いで
根本的に変えたほうがいいと思っている
経済に限らず すべて

この番組でいえば、「環境破壊」や「不平等」という面で考えているジョセフさんに近いかなとは思う
これまでの雇用を失ったとしても、これから生きる子どもたちのことを長い目で見たら
今の大量生産・大量消費、児童労働、過労死などで成り立つ経済には限界が見えている
結果、ここに出てくる人々の意見はまちまちに見えても根っこは同じなのかも

真実はシンプルだ
価値観、意識を根底から見方を変えることで、
誰も何も失わない新しい世界が見えてくると信じている



【内容抜粋メモ】

<プロローーグ>

「“富・成功”への欲望だ」

「“資本”は、自由自在に移動する」

「“消費”が資本主義のエンジンだ」



ヒトとモノの間をお金が行き交い、際限なく膨張してきた資本主義経済システム



より早く、より遠くへ、より良いモノを 飽くなき欲望が加速する世界



市場の論理にすべてが覆われ、一瞬先も予測不能な世界



消費、成長、富への欲望 私たちはどこへ向かうのか?

東京、NY、ジャカルタ、サンフランシスコ
世界4都市 経済のフロントランナーが紡ぐ欲望を巡る物語






■第1章 資本主義の、現在

資本主義、それは、お金を際限なく投じ、増殖を求めるシステム

【NY】

ジョセフ・スティグリッツ
コロンビア大学教授
2001年 ノーベル経済学賞受賞



世界の需要が足りない

安田:
今、多くの国が低成長に苦しんでいる
それでも世界経済は成長し続けられるのでしょうか?
成長し続けていくべきでしょうか?

J:
いま問題なのは、世界の総需要が不足していることだ
そのせいで、世界経済が減速している
それにはいくつかの原因がある

まず中国の減速
“量の成長”から“質の成長”に変化して世界に大きな影響を与えている

もう1つはユーロ圏 数々の問題を抱えている
ユーロでは通貨の統合が成長を妨げてきた




「不平等」「需要不足」「低成長」

ただ全体としては、別の要因が潜んでいる 「不平等の増大」だ
貧困層から富裕層へと富が吸い上げられ
富裕層は貧困層に比べてお金を使わない(貯めるのが趣味なのね
これが全体の需要を押し下げ、成長にブレーキをかけている

 



【東京】



トーマス・セドラチェク(チェコ) 著書『善と悪の経済学』


「『KAROUSHI』という名のね」


成長は前提ではない

T:
ぼくらが生きている世界は資本主義か、それとも“成長”資本主義か?
僕は“成長”資本主義だと思う

みんな成長のことばかり気にしている
成長できないと「もう終わりだ」と

おかしいだろ? どこに書いてある?
聖書に? 数学モデルに? 過去に証明されたのか? ノーだ
資本主義が必ず成長するというのは、とてもナイーヴな思い込みだ

成長に反対なわけではない
問題は、社会、年金、銀行、すべて成長が前提になっていること



まるで、毎日快晴だと決めつけて、船を造るようなものだ そんな船ではダメだ
凪でも嵐でも航海できるのがいい船だろう


成長より安定を

ジョセフ:
低成長は避けられる
もし、アメリカ、ヨーロッパ、各国で考え方を変えることができれば成長は可能だ

安田:資本主義は、これからも持続可能だと考えますか?

J:
市場経済はずっと続いていくだろう
市場経済のあり方には「政治」が大きく影響する


市場経済のルールの書き換え

J:
30年ほど前にアメリカをはじめ各国で市場経済のルールの書き換えが始まった
ますます不平等を生むようなルールに書き換えられた

それだけでなく、市場経済の効率性が下がり、「生産性」の下落を招いた
人々が目先のことだけに夢中になるようなルールの変更だ

長期の投資ニーズがあり、長期の貯金をしている人々がいる
だが、金融市場は目先のことだけで機能不全に陥っている

私たちの市場経済が招いた決定的な変化の1つだ
だから、今ふたたびルールを書き換えないといけない

これからのルールは、繁栄を分かち合い、より成長し、
より「公平な分配」を促すものでないといけない
実現できると思う


トーマス:
共産主義だった国から来た身としては
共産主義政権を捨てて、資本主義をインストールしていた頃
民主主義国家での資本主義は、なにより「自由」のためのものと信じていた

成長は良いかもしれないけど、例えるならクルマの「最高速度」だ
それは大事なことか?

たしかに資本主義は“成長”のための豊かな土壌だ
しかし、この20年間で、2つの関係がひっくり返って
私たちは、成長を資本主義の“絶対必要条件”だと信じ込んでいる


東京・銀座?のデパートを歩き回るトーマス

T:
消費の大聖堂だね



僕はいつもリュック1つで旅をするんだ 僧侶みたいに
手で持てる以上のモノは要らない(寅さんみたい

自由とはかつて「モノからの自由」を意味していた
今日では、自由とは「消費する自由」だ



消費できるほど、自由を感じる
消費できないと自由ではないと思ってしまう
だから毎日働かないといけない



映画『マトリックス』にもあっただろ?
要らないモノを買うために、したくもない仕事をする
エデンの園の呪いだね


ナレ:
禁じられた果実 消費への欲望を満たすための労働
果てしない欲望の無限回路がはじまる




T:
『CUBE』って映画を知ってるかい?

Cube (1997) - Trailer



カフカの不条理劇にも通じるが、気づくと四角い空間に閉じ込められていて
物語の終盤、実は自分たちが『CUBE』を作っていたことに気づく
すべて専門化した社会では、自分のしていることが見えなくなる

(そういう話だったのか 最初の場所から動かなきゃ助かったんだっけ?

フランスの哲学者ラカンはこう言ってた
「分かっているけど、止められない」(おっと、植木等さんとリンクした!w

私たちの問題は、分かってさえいないことだ
どんなに働いても欲望を満たすだけのモノは作れない





■第2章 成長は、至上命題?



ジョセフ:
経済成長について話す時は、“成長”の意味をハッキリさせないといけない

「GDP」は経済力を測るにはいい指標とは言えない
「環境汚染」「資源乱用」を考慮に入れていないし
「富の分配」も「社会の持続性」も考慮されていない 問題だらけだ

経済における成長の本質を、この先変えていくべきだと強く思う

すでに明らかなのは、「物質主義的経済」
「天然資源」をジャブジャブ使って、二酸化炭素を大量に排出するようなことは
持続不可能だということだ もうそんな成長は成し得ない

ほかの形の成長がある
まだ繁栄できるし、新たなアイデアやイノベーションを生み出せるはずだ

安田:その変化を起こすには、何が重要ですか?

J:
政府の政策が必要だ(政府が一番要らないモノじゃないか?
テクノロジー、インフラ、教育にもっと投資をしないといけない
(分かっちゃいるけど、なかなか変わらないシステム これまでと同じ道を望む人がいるからか



地球の気温を2度も上昇させてしまったことで、多くの投資が必要になっている
経済を整え、新エネルギーに移行し、都市構造を変える
私たちには巨大なニーズがあるはずだ


ナレ:新たな需要を生む変化 その予兆はやはりこの地から生まれるのか?


【サンフランシスコ】

スコット・スタンフォード
シェルパ・キャピタルCEO
元ゴールドマン・サックス社員
2013年ベンチャー投資企業を設立



S:
Uberへの投資がキッカケで、今の会社の共同創業者と出会った
立ち上げのかなり早い段階で投資した
ごく小さい会社だったが、アイデアに魅力を感じた



彼はアプリでクルマを呼べる新しいビジネスモデルに投資した
それは従来のタクシードライバーの雇用を奪うことにもなる
創造と破壊は裏表


S:
テクノロジーは、経済を活性化するか、雇用を奪うだけか そんなことは考えていない
そういう心配をするのは、僕たちの仕事じゃない

僕たちは5億ドルを運用している
そのお金は、僕たちのお金ではなくて、出資するパートナーたちのものだ

彼らは自らの資本を僕らの投資に委ねてくれている
僕らに収入があるのは、投資がリターンを生んだ時だけだ
資本金をコントロールするボスがいるんだ

安田:
以前はゴールドマン・サックス(投資銀行)に所属していましたね
投資の戦略や考え方でなにか違いはある?

S:
いい質問だね 考えたこともなかった
でも、ハッキリ言えるのは、すべての仕事は資本主義システムの中にあるんだ

そもそもゴールドマン・サックスでも、今のシェルパ・キャピタルでも
目的は同じ 短期間でお金を稼ぐこと

ただ、今はつねに新たなビジネスのアイデアを考えている
誰かの起業を手助けするだけでなく、時には自分たちで新しい会社を立ち上げる


ナレ:
お金は投じれば増えて返ってくる
そんな資本主義のセオリーは、いつでも通用するわけではない





利子率



安田:
利子率は、ますます低くなっている
もう投資も成長も見込めないと言う人たちもいますが?

ジョセフ:
ケインズはじめ、多くの近代経済学者たちは、利子率の役割、調整機能を強調しすぎた
利子率より重要なのは、借り入れのための“信用”だ
低い利子率は、不況を招いている政策の結果に過ぎない


トーマス:
クルーグマン(経済学者)の主張で同意できないことがある
彼の主張は「低い利子率で借金すれば、経済が好転して、借金を返せるようになる」

この真ん中の文を抜いたらどうなると思う? 違う意味が見えてくる
「低い利子率で借金すれば、借金を返せるようになる」

これは銀行員なら警報ものだよね とても危険すぎる
火で火を消そうとするようなものだ


ジョセフ:
もし、テクノロジー、インフラ、温暖化対策に投資すれば利子率なんてすぐに上がるさ!


トーマス:
ナイフや火みたいなものだ コントロールできる代物じゃない
利子率っていうのは、どう扱っていいか本当に分からない

どんなにいい投資でも、高速道路、大学、研究機関とかを作ったとしても
お金は必ず返さないといけない

教育レヴェルが高くて、優秀な経済学者がたくさんいて
大きな潜在力を持っている日本のような国でも
借金を返せずに苦労している

文明社会は“安定”を売り払ってしまった
そしてムリに“成長”を買っている

僕らはいつもでなくても、時々、成長をもたらす経済を作り出したが
今は崩れかかっている


安田:
人々の成長への期待がふくらみ、利子という概念が広まったことは
成長資本主義のそもそもの起源なのかもしれないですね
人々の考えを変えたのかもしれません

T:
その通りだと思う
利子率は、少しアルコールに似ている
どちらもエネルギーをタイムトラベルさせることができるから

金曜の夜にお酒を飲んでいると、突然歌いだしたりして
「このエネルギーはお酒が与えてくれたんだ」て思うかもしれないが、それは間違いだ

お酒は、土曜の朝のエネルギーを金曜の夜に移動させただけだ(笑
二日酔いは、間違いなく翌日に来るが
お金は40年も、50年も時を超えることができる

こんな風に危機につながったりする
本当に必要な時にエネルギーが消えてしまう


ナレ:金は時を超え、時が金を生む この錬金術をなぜヒトは欲望したのか?



■第3章 魔術の誕生

T:
西洋の古い書物を読むと、実に皮肉で興味深いんだが
必ず利子について論じられている

聖書、ヴェーダ(ヒンドゥー教の経典)、コーラン、アリストテレス
いつも否定的な感情とともに なぜかは分からないが

歴史を振り返ると「利子」は「禁断の果実」だった
富をもたらす一方で、問題を引き起こしてきた


ナレ:
利子は、未来の利潤のため、休むことなくヒトを働かせる
そこには、ある男の欲望があった


【14C イタリア フィレンツェ】

商人:
ロンドンで商売をするための資金として100フィオリーニ貸してくれませんか?

メディチ家の始祖 ジョバンニ・メディチ:
大金だな 協会が目を光らせているから利子をとるわけにはいかない
いや、フィレンツェとロンドンの為替レートの違いを利用すればいい

商人に100フィオリーニ(フィレンツェの通貨)を貸して
4000ペンス(ロンドン通貨)に両替させる
ロンドン支店で4000ペンスを返済させ
両替すれば111フィオリーニを得ることになる



この種の取引を重ねて莫大な利益を得た
金は時だけでなく、空間の差を利用して無限に増殖することになる


「貨幣はもともと交換のための手段
 しかし次第にそれを貯めること自体が目的化した」 アリストテレス


ナレ:
昨日より今日、今日より明日 増え続ける欲望
その欲望を正当化し、免罪符を与えた男がいる

経済学の父アダム・スミス(1723~1790)



『国富論』(1776)



“それぞれが自らの利益を求めれば「見えざる手(invisible hand)」により社会全体も富み栄える”

その理論は、人々の欲望を肯定した





アルヴィン・ロス
スタンフォード大学教授
2012 ノーベル経済学賞受賞
市場の制度を設計する「マーケットデザイン」研究の先駆者



JCER(日本経済研究センター)のセミナー



市場にはルールがある

安田:そもそも資本主義の推進力は何でしょうか?

A:
市場の最大の機能は、誰が何を欲しがっていて、誰が何を持っているか すべの情報を集めることだ
供給と需要が一致することで魔法のように価格が決まる

その難しさは、情報を得て、計画することなど誰にもできないことにある
なぜなら、情報は多くの人々に拡散するものだから
そして、情報が市場に集まることで、最適な結果が生まれる

安田:
世界の利子率は下がり続けて、マイナス金利の国もあります
資本主義の終わりの兆しを語る人もいますが?

A:
資本主義の死を宣言するのは早計だ
資本はリターンを得続けているよ

私はシリコンバレーに住んでいるが、多くのビジネスが集まって
今も新しい会社が利益を上げている

もしマイナス金利が続いたとしても、新しい形の金融取引が発展して
金融機関の資本はリターンを得られ続けるだろう



ジョセフ:
市場とは、ある日誕生したものではなく、進化しつづけてきたものだ
何千年も前の市場経済はとてもシンプルだっただろう

私が思う大変化は「産業革命」
資本主義は「科学」と「技術」を両輪としている

 

 


ナレ:
発明、イノベーション、大規模化、成功すれば、競争相手に一歩先んじ生産効率を上げられる
その加速は止まらない


J:
このダイナミズムによって、人々が農作物を市場で買ったり
女性が家で編み物をしていたような原始的な市場経済から
より大規模な会社ほど有利で、経済規模を拡大できることになった
そして、イノベーションが駆動する経済だ


スコット:
私たちは、より「効率化」する方法を常に探している
経済学でいうところの「生産性」だね
労働力が変わらないのに、成果物は増える

そして、利潤、成長、波及、創造的破壊を追求する
いかにして効率的な進化がなされない古い産業を駆逐するか

市場をとれ!

需要と供給が働きあって、加速して
規模の効果が働いて、新旧交代が起きる
それがイノベーションだ
そして消費者をハッピーにするんだ


ナレ:思想、技術が、欲望を解放し、資本主義は成長が欠かせないシステムへと変貌した

 

 



■第4章 幻想が、幻想を生む

欲望は幻想か


【東京証券取引所】
(経済を語るわりに、実際こういう場所の中がどうなっているのかあまり知らないよね?

 

トーマス:
ここは「Nowhere Land(何処でもない国)」のようだ
ある意味、ここで日本経済の価値が決まっている
市場関係者の「アゴラ(広場)」は、もう移動したんだ



「見えざる」デジタル空間にね
ここには何もないが すべてが「ある(full)」

株式市場は存在するが
お金はもはやモノの形をしていない

(今は「仮想マネー」で動いているからね

今やお金は、精神的な同意事項で、この劇場の役者と役者をつなぐ
そもそも僕らの欲望はバーチャルなものなんだ

ピカソの絵が欲しいかって? 高額な理由はピカソの絵そのものにはない
信頼できる専門家が「これは本物のピカソの絵だ」と認証するから高額なんだ
つまり、人々の「同意」の問題なんだ

あるモノの価値が宿るところは、投じられた労働や物質ではない
それを買いたいという「欲望」にこそ価値が宿る(「執着」とも言える


ナレ:
需要と供給の交わりで市場は動く そんな世界は幻想だったのか?
人々の欲望が渦巻く中、増幅する社会のねじれ

20C 大衆の時代 大胆な経済理論を打ち出した男がいた(また男か それも大昔の

稀代の経済学者 ジョン・メイナード・ケインズ(1883~1946)



彼は一風変わった美人コンテストを例にあげ、大衆心理の本質を言い当てた

K:
もっとも美人だと思う人に投票してください
ただし、賞金はもっとも票を集めた女性に投票した方々に差し上げます



T:
自分は他の人の投票先を予想しているが、他の誰かが自分のを予想していて、また別の誰かが・・・
これは一種の「無限ゲーム」で、自分の好みを選んではいない
自分は他人の好みを予想しているんだ

 

ここには本当に多くの意味が含まれている

1つ目は、ズバリ「株式市場」の本質を言い当てていること
私が「投票」する会社は、自分が好きな会社ではなく
たくさんの人が「好きであろう」会社だ

2つ目は、よくあること 「誰の好みでもない女の子が優勝する」

3つ目は、投票する人は「固定観念」を用いる
もっとも有利な戦略は、女性ではなく、審判たちを見ることだからだ

「固定観念」は、未来にわたってずっとこだま(エコー)していく
誰の好みでもない女性が選ばれても、もう誰も止められない


安田:
これは「サブプライムローン」のことも言い当てているかもしれませんね

T:
悪質なローンを組み合わせて作った乗り物だったね
みんながシステムを信頼していたけど、機能しなかった

一見、数学的で、分析的だと見える経済の分野が
ある意味、どんなに神話的で、観念的かが分かるだろう
ナンセンスで、無根拠な虚空のようだね

(金自体は善でも悪でもないけれども、それを使う人々の修行の1つなんだ


ナレ:
自分の欲しいモノではなく、ヒトが欲しいモノを予想し、模倣し合う
欲望が行き着いた錯綜する世界



市場は万能か

安田:経済学者は、バブルなど市場危機を避けることに貢献できると思う?

ジョセフ:
まず言いたいのは「悪事は働くな」「害をばらまくな」ということだw

2008年 リーマンショック以前、経済学者たちは莫大な損害をもたらした
多くの経済学者が・・・失礼、「他の」多くの経済学者がと言っておこうか
自由放任市場が万能だと売りまくっていた
「市場には自己調節機能があるから、バブルなんて心配するな 市場(マーケット)を信じよ」ってね

「自己利益の追求」・・・経済学者が「インセンティブ」と呼ぶものは
現代の市場経済では、たしかに中心にある考え方かもしれない

しかし、アダム・スミスは間違っていたことが分かった
「自己利益の追求」・・・時に「強欲」が「見えざる手」によって社会全体の幸福を導くと言ったが
「見えざる手」はいつも見えない そんなものは存在しないから



ルールが自由をつくる

アルヴィン:
「見えざる手」は単なる概念だ
“市場の魔法”は魔法では起こらない

市場には必ずルールがある
そのルールは、だれか一人が決めたわけではなく、歴史の中で磨かれてきたものだ

「自由市場(フリーマーケット)」は、ルールからの「自由」を意味しない
競争、協力、取引・・・「自由」に市場を使いたいなら、ルールがあるはずだ

経済学者たちも、いかに市場を有効に使うか分かり始めたばかりなんだ
時に誤りを正しながら、さらに良きルールを見つける手助けもできるだろう


ジョセフ:
21Cの現在と、18Cでは経済の様子は全く違う
あまりにも多くの経済学者が「経済学の父」アダム・スミスに頼り過ぎている
自己利益の追求が「見えざる手」によって導かれ、社会全体の幸福をもたらすという理論

それを彼が書いていたのは、資本主義が本格的に走り出す前の話だ
たしかに彼は素晴らしいアイデアをくれたが、巨大企業などが生まれる以前の話だ

東インド会社など、いくつかの大企業はあったが
それは貿易会社で、今のような製造業は1つもなかった

だから、アダム・スミスが経済の行く末まで理解していたと思ってはいけない
彼に現代の資本主義の姿など分かったはずもないのだから

スミスが利益の追求という人間の欲望を見抜いた洞察はすごいが
私たちが現代の資本主義を理解しようとするならば
イノベーションが経済に果たす役割を考えねばならない


ナレ:
アダム・スミスが知る由もなかった現代
技術がさらなる欲望を駆り立てる



■最終章 欲望の果てに

安田:
今、技術のイノベーションが、「シェアエコノミー」の基盤を変えようとしています
テクノロジーがなければUberなど新しい市場は生まれなかったはずですが

J:
新しい技術が、多くの分野で社会に影響を与えてきたのは明らかだ
実際、とても大きな利益も生まれているだろう

しかし、そこで気をつけねばならないのは、
利益が大きく、取引が拡大したからといって
社会にも価値があると考えるのは危険だ

心配なのは、働く人々の扱いだ
そうした新しいプラットフォームが労働者の組織力を害してしまったとしても
仕事が減るだけでなく、長い目で見ると、賃金も下がり続けていくだろう

まさに市場を独占するからだ
今はそれほどでもないが、労働市場にもルールを適用したい欲望は強大だ



「第4次 産業革命?」

スコット:
型通りな言い方だが、今回は今までと違う
単に経済に衝撃を与えるに留まらない

僕らクレイジーな奴らは本当に思っているよ
今、僕らが目にしている変化は、人類という種の変化の瞬間だと

自動運転技術は、ここでもすごく話題だ
イーロン・マスク(シリコンバレーの起業家)が言ったこんなことも想像できるんじゃないかな
「自分で運転することが違法になる日が生きている間にやって来るだろう」

違法だ 安全じゃないから
ヒトの脳は多くのことを考えすぎるからエラーが起きてしまう

イーロンが正しかったと仮定して話をすすめると、そんな未来の高速道路では、
「おい、人間が運転するなら、この車線には入るな!」とかね

道に駐車するクルマなんてなくなるよ
自動運転者は常に走り回るからね

Uber的な効率化よりも、さらに進んだ自動化が導入されたら
労働コストがなくなって、サービスは正当な価格になるだろう


J:
シリコンバレーでのイノベーションの価値を測るのは本当に難しい

(世代の違いを強調したい狙いでもあるのか???
 でも、なぜかJの言うほうがエコっぽく聞こえる
 自動運転はイイけど、それが何で動くのか? 電気なら、原発以外か?が気になる 

彼らは社会の転換を促すものだと言うが
マクロ経済学の統計を見ても、生産性の上昇は認められないんだ
つまり「我々の測定法が間違っている」か「誇大広告」のどちらかだろう



労働の自動化

安田:
資本主義の未来をどんな風に見ている?
新たなテクノロジーによって資本主義は変わるのでしょうか?

スコット:
いい質問だね
今、資本主義経済が大変化に直面しているのは疑いようがない
労働を基本としたシステムから、高度に自動化されたシステムへの移行だ

(1人1人の中に、同意できる部分と、そうでない部分がある
 1つの考えにまとめるのは、何事も難しいものだなあ
 それぞれの良心の根っこは同じかもしれない

僕らは昔ながらの経済指標に足止めされるわけにはいかない
たとえば「雇用率」「生産性」などが“成功の証し”とされているものだ

いつの日か失業率は30~40%にもなるだろうが
そんなに悲観することでもないかもしれない

もし人口の半分が働かなくてもよくなったら、今とは別の社会システムが必要だ
なぜなら資本主義は、ヒトの労働に基づくシステムだから 学生と退職者以外は

(ロボット化されてヒトが働かないことに悲観はしないが、いまだ児童労働はあるよ

でも2人に1人が働かなくなったら?
答えは分からない 社会主義ではないだろうけど

過去に様々な社会システムの実験があったけど
それらがハイブリッドされた新しいシステムが誕生するかもしれない

(それを真剣に考えないと なんとか主義とかよりも
 働かない分、自由な創造に使う時間を増やせる
 そして、やはりヒトは誰かの役に立ちたいと思うはず


安田:資本主義が「自動化」された新しいシステムに変わる?

S:
歴史を振り返って、モデルAとBどちらがいいか?なんていう議論は止めにしたい モデルCだ
ものの見方を変えたら、新しい景色が見えるんじゃないかな

(そう言いつつ、Sさんもフツーの高級車に乗ってるのね
 まだステイタスだと思っているところに矛盾した無意識の慣習が残ってる

S:
何に満足を感じるかは人それぞれだよね
お金はその1つだろうけど、「名声」を得ることが生きがいの人も多い

人からの「イイね!」をたくさん欲しがるのは自然なことだ
だからFacebookやInstagramが「好かれたい」欲望をお金に換えて大成功している



社会へのインパクトを測るような新しい「通貨」が生まれたら面白いだろうね

夢見がちでクレイジーに聞こえるかもしれないけど
そんな風に人々の「声援」を集めた人が報われるような社会になれば
自己満足に終わるのではなく面白いよ(クラウドファンディングみたいな?

人間ってそういうものなんじゃないかな
人々を動機付けるクリエイティヴな方法が生まれればいいと思うよ

(成功した若者らしい意見だ
 誰かのためになるなら、成功するし、お金も名声も自然についてくるだろう
 その“お金”の仕組みが、これまでの「なんとか主義」「なんとか党」じゃなく
 それぞれの良心にしたがった方法で変わっていけばいい
 どのみち、すべてが「変化」していくのだから


『道徳感情論』(1759) アダム・スミス

「人間がどんなに利己的だとしても その本性の中には、なにか別の原理がある」



ナレ:
アダム・スミスは『国富論』の前にもう1冊、重要な書を著している
『道徳感情論』(1759)

彼は気づいていたのだ 利己的な競争のほかに、社会にはもう1つのルールがあることを


T:
アダム・スミスの書には困惑させられる
『国富論』では“社会を接着するのに必要な糊は、自己利益(self interest)だけで十分だ”と言っている

しかし、もう1冊では、全く反対のことを言っている(それが人間だよね 多面性
『道徳感情論』の1行目ではこう言う

「ヒトは何も得なくても、他人に対して善行を施す性質をもっている」

完全に分裂している 社会の「糊」は「共感(シンパシー)」というわけだ

たしかに私たちは、赤の他人に対しても苦しんで欲しいとは思わない
挨拶は「どうぞ良い1日を(Have a good day.)」だよね

ヒトはお互いの幸せを望み合うってことの証だ
ここにこそアダム・スミスに対する誤解がある

アダム・スミスは「社会には2本の足がある」と言っている
1つは「利己主義」、1つは「共感」
もし片足だけで立とうとすれば、なにか大事なものを失うことになるだろう

アダムとイヴが禁断の果実を口にした時、彼らは葉っぱで体を覆ったという
それは人類で最初の所有だった

なぜそれが必要だったか? 寒かったから?
そうじゃない「恥ずかしかったから」だ

(アダムとイヴの禁断の果実の神話は性に関するものだと思ってた
 裸が自然で最高に美しいとされる神の世界と、それを恥・欲望とするヒトの世界を分けた宗教の話

消費・所有は、心理学とつながっている

アダム・スミスは「経済学は数字を用いる物語」だと気づいていた
数字によって説得力が増したりするが、あくまで「物語」なんだ

欲望は満たされ得ないものだ
私たちはそれに気づかなくてはならない

(ここは新宿? 日本の街はどこも似たり寄ったりだ





【インドネシア】 人口約2.5億人 世界4位

(ここもどうやら電気、ガソリン、排ガス、人口過密、、、
 

ウシリアム・トラヌジャヤ
トコペディアCEO
日本やシリコンバレーから巨額の出資を受けるインドネシア最大のマーケットプレイスを運営


(日本人から見ても、日本人に見えるな 似てる民族って意外と世界中にいるんだ/驚

ウシリアム:
私はスマトラ島北部の小さな町で生まれ育った
誰にでも、貧しい人にもチャンスがある

インターネットは事業を大きく成長させる、とてもパワフルなテクノロジーだ
(ネット環境があるなしで、人の富・貧しさも決まるくらいにね 「情報格差」



いいクルマ、いい家、ステキな服、おいしい食事・・・
経済が成長すれば、消費への欲望が増すのは自然なことです


ナレ:
欲望の資本主義 楽園を追放された人々は、欲望なくして生きられない
次なる禁断の果実は何か?
ルールは密かに書き換えられていく




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