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『マダガスカルがこわれる』(ポプラ社)

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『マダガスカルがこわれる』(ポプラ社)
藤原幸一/写真・文

『ワンダフル・プラネット!』(集英社インターナショナル)にも大規模な土壌流出の写真が載っていて
ショッキングだったが、かつての自然の楽園がどうしてこうなってしまったのかが分かる1冊。

ヒトの破壊力の凄まじさ、動植物との共生とはどういうことをいうのか?
これは遠い島の話だけではない。貧富の差、輸出入される動植物、、、
鮮やかな写真1枚1枚を見て、もう一度いのちのつながりについて考えてみる。


【内容抜粋メモ】


マダガスカルには世界の動植物種の5%が生息していると言われる。
近年、マダガスカルでさまざまな新種の生き物が発見されている。
一説では、マダガスカル固有の動植物は15万種にのぼるという。

人口爆発や貧困によって森が切り開かれ、
かつて国土のほとんどを占めていたはずの森が島の10%を切ってしまった。


●スパイニーフォレスト
この地域独特の幹や枝に棘をもつ植物からなる原生林。


●バオバブ並木

1998年に襲ったサイクロンで4本のバオバブが倒れた。
バオバブの根は、太く広範囲にわたって巨木を支えているため、
ふつう、サイクロンで倒れることはめったにない。

村の人口が増え、畑や水田を作るために森を焼いても
バオバブは幹に水分を多く蓄えることができるので生き残った。

だが、乾燥した生態系に水が引かれたことで、根腐れを起こし、
支え合ってきた森の木々が消えたことで孤立し、強風で倒れるケースが増えてしまった。

かつては、バオバブの実を食べる大型のキツネザル類が生息していた。
かれらは硬い実を食べて種子散布をおこなっていたにちがいない。
現存するマダガスカルの動物は、バオバブの木の実は食べない。
たとえ種が芽生えても、放し飼いされた家畜によってすぐに食べられてしまう。



こうしてバオバブは、発芽のプロセスもまったくなくしてしまった。


●傷つけられるバオバブの木

実をジュースに、葉を胃薬として重宝されていたバオバブ。
今では樹皮が剥がされて、家の屋根やロープの材料にしたり、
落書きされたりして、無傷の木を探し出すのは奇跡に近い。



 
焼かれた森の跡に、トウモロコシ、キャッサバ、イネが植えられている。

村人はほとんど毎日森で木を切り倒して、燃料用の薪や炭を作っている。
現在の森林面積は、すでに国土の10%以下になり、
残った森も約20%は単一種からなる植林や再生林だという。



「硬くて太く、炭にして高く売れる木は、もうほとんど見つからない」と村人は言う。
炭に向かない木だと半分以上が灰になってしまう。


●村人の主食は米



国民の75%が農業従事者。だが、その収穫率は著しく低い。
ほとんどの水田は、山地から流れ出る谷川の水を棚田に引きいれる方法をとっていて、気象に左右されやすい。
乾水期には干ばつ、多雨期にはイネが水没する被害が絶えない。
作付け面積の拡大より、人口の伸びが大きいため、
ずっと米の輸出国だったマダガスカルは、1970年以降、輸入国になってしまった。



ヒトが住み始めて、伐採と焼畑農法により森林が消え、
今では乾燥したサバンナ化と山肌の侵食が進んでいる。
伐採は禁止されているが、倒れた木を拾うのは許されているため、
村人は事前に切り倒し、枯れた頃回収に来る。



赤土が川に流れ込み、海まで汚染を広げ、海の生態系まで破壊している。

10年間で人口が1.3倍に増える人口爆発が起こり、
国民の約60%が1日1ドル以下の生活費で暮らす、
世界でも最貧国の一つとされている。



森を切り裂いて270kmものパイプラインが建設されていた。
ニッケルやコバルトを運ぶため、
日本の商社などの外資が積極的に開発に乗り出している。

抗がん剤などに使われる植物の医薬品としての価値は157万7800ドルなど、
マダガスカルの森は多くの経済的な効果を生んでいる。


 
どこまでも続く赤茶けた大地は、「サイザル麻」のプランテーション
サイザル麻の農場は、5人のヨーロッパ人の農場主によって経営されている。
総面積は東京ドームの約5350倍の25000ha、
動物たちが生き延びることができる「ベレンティ保護区」はわずか250ha。

サイザル麻は「地球に優しい繊維」としてバッグや敷物に使われている。


●サトウキビ農園

農民が水田に水を引こうとサトウキビ農園の水路を壊し、
あたりが水びたしになってバオバブを枯らしている。



毛が抜け落ちる病気になったワオキツネザル

侵略的な外来種として知られる「ギンネム」を食べるため、
ギンネムに含まれるミモシンが新陳代謝を阻害しているのが原因と言われる。


●カメレオン
全世界で約150種知られていて、そのうち72種がマダガスカルに生息している。


●シファカ

マダガスカルにしかいない原猿類。
地上をぴょんぴょん横歩きする姿は、日本でもCMで流れ話題を呼んだ。
森が消え、隣の森に行くにも慣れない地上を何kmも跳ねて行かなければならないのは、
「泳げないヒトが溺れているよう」と言われるくらい、実は痛々しい光景なのだ。

村で放し飼いにされている犬が、シファカを追いかけ、
逃げ遅れた赤ちゃんが被害に遭うケースも起きている。


●動物輸出業者
カメレオン、ヤモリ、カエルが届けられ、
1匹ずつ白い布袋に入れて、航空貨物用に荷造りする。

「決められた数以上に輸出する方法もあるよ。係官にお金を払えば数も数えないからね」

主なバイヤーであるアメリカ人に、年間約500匹を輸出している。
「アメリカから日本にも送っているはずだ」


●解決手段は教育
数百年前には100年に1種の生物が滅んでいたスピードが、
今では年間4万種も絶滅していると見られている。

すべての生き物は地球に生まれた多様な生態系の中で、つながりを持ちながら依存しあって生きている。
森に頼らなくても済む自立した農業を、技術をもっている国が率先して指導することも急がなくてはならない。


藤原幸一さんのHP「NATURE'S PLANET MUSEUM」


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