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『牙なしゾウのレマ』(NHK出版)

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『牙なしゾウのレマ』(NHK出版)
滝田明日香/文 小林絵里子/絵 NPO法人アフリカゾウの涙/協力

最初の1ページ目の深い森で暮す野生動物の絵から迫力満点!
カラフルで重厚感のある絵で、それぞれの動物の生態、造形とともに
優しさ、慈しみ、愛情まで伝わるまなざしが描かれていて素晴らしい

アフリカの2人の女性が始めたプロジェクトと読んで
現地女性を想像していたら、日本人の若い女性で驚いた

パワフルで明るい笑顔の写真の顔が頼もしい

たくさんの協力を得て、原住民の生活の安定、需要と供給ルートの根絶など
地道で確実な行動によって、動物保護を展開しているのが素晴らしい

象牙の印鑑写真を見た時、私が初めてに親に買ってもらって
今でも使っている実印に似ていると気づいた
あれも、もしかして象牙なのかもしれない

何気なく売られているモノ、象牙というブランド志向、
日本文化の伝承の中にまで入り込んでいて

その1つずつを変えていかないと
ゾウたちを守ることが出来ないと改めて学んだ

無知であることに気づいて、知ることの大切さも痛感
それをこうした豊かな色彩の絵本で、子どもたちに伝えることもとても大切な活動の1つ

ゾウに限らず、無数の動植物が、ヒトの経済活動によって絶滅の危機を迎えている

ここに描かれている多様な命が
この先もずっとつながっていけますように/祈


▼あらすじ(ネタバレ注意

 

東アフリカ、ケニア共和国の「マサイマラ国立保護区」
サバンナから見上げる丘の上には「ニャクエリ」の森が広がり
ゾウ、バッファロー、シマウマ、ヒヒ、ヒョウ、ライオン、トゥラコなどの鳥たちが棲んでいる








高いイチチジクの樹は、森をひんやり冷やしてくれる
オリーブのツルはロープのように強く、サルがのぼっても大丈夫


アフリカゾウのレマは、この森で生まれた
森には、いたずらをする場所、美味しい食べ物がいっぱい

でも、森の外には人間が住む村があり、お母さんはレマに言い聞かせる
「ぜったいに人間に近寄ってはいけません」

レマのお父さんは、トウモロコシの甘いにおいに誘われて、
畑に近寄り、人間を怒らせて、「害獣」として殺されてしまったから




レマのお母さんは群れのリーダー
レマはお母さんのキラキラ輝く牙が大好き
でも、2歳、3歳になっても、レマの牙は生えてこない



ひとり悩むレマにサイのおじさんが話す

「きみはゾウだけができる仕事を知らないんだね
 エレファント・ペッパーの種は、君たちのお腹を通って
 ウンチといっしょに出て、芽が生えるんだ
 君たちは森やサバンナの植木屋さんなんだよ」

レマはすっかり元気になり、いっぱいウンチをして、種を蒔きました
それはいつか大きな樹になるでしょう



自然では、生き物たちが関わり合って命をつないでいます
レマも出会いと別れを繰り返しながら、たくましく成長しました


満月はサバンナをを照らして、動物たちが隠れる暗闇を奪います



(そうか、ヒトがキレイだと見上げる月は、草食動物にとってはあまり嬉しくないのかも

何かが茂みから近づき、バンッ! バンッ!! バンッ!!!
大きな音が夜に響いた



夜が明けて、家族を探すと、大好きなお母さんは動きません
おばさんも、妹も、弟も動きません



お母さんの顔から立派な牙がなくなっています
レマは後ろを振り返らず走り出しました


ワシに泣いているわけを話すと

「人間はゾウの牙を使って印鑑やネックレスを作っているんだ
 君は牙がないから助かったんだね」

レマは家族が欲しいと思いました
でも、また人間に牙を奪われてしまうかもしれません
レマは自分と同じ牙なしゾウを探すことにしました

フクロウに尋ねると
「その昔、はるか遠くの国にすんでいると聞いたことがあるわ」




レマは人間やトウモロコシ畑を避けて、夜に移動し、
何ヶ月も歩いて中部アフリカの森に来ましたが牙なしゾウはいません

また何ヶ月も歩いてナミブ砂漠に来ましたが牙なしゾウはいません

オカバンゴの湿地帯は楽園のような場所でした
たくさんいるゾウの中に、かわいらしいメスのゾウ、ナエクを見つけました





でもナエクは牙なしゾウではありません
牙のある子どもが産まれたら、彼らを守ることができるだろうか
レマは悩んだすえに、ナエクと結婚し、やがて家族ができました

レマは大切な家族や仲間のために祈ります
いつか、人間と平和に暮していける日がやってくるように




【ゾウについて】

アフリカゾウには、主にサバンナゾウとマルミミゾウの2種がいます




アフリカゾウは、サハラ砂漠より南の地域に生息しています


エレファント・ペッパー



ゾウは体力維持のために1日に大量の草木や実を食べます

寿命は60~70歳(ニンゲンと同じだ/驚
妊娠期間は22ヶ月! 赤ちゃんでも120kg!
オスは14歳前後で母の群れを離れて、若いオスのグループと合流し、パートナーを探し始めます

ゾウは、サルやイルカと同等の知能を持つと言われます
水場や食料のある場所を記憶し、さまざまな情報を鳴き声の会話で仲間に伝達します
喜怒哀楽が豊かで、精神的なトラウマも持ち合わせています

「牙」は、実は「歯」の一部 生え変わることのない永久歯です





【アフリカゾウは絶滅危惧種】



アフリカ大陸では、象牙を目的とする密猟のため、年間何万頭も殺されている
国際自然保護連合(IUCN)の調査では、
1979年に130万頭いたのが、2007年は47万頭まで減り、どんどん減少していると推測されている
この数字は、15分に1頭のゾウが殺されているということ(!
このままだとサバンナゾウはあと10~15年、マルミミゾウはあと5年で消えるという研究者もいる


<減少の理由は、密猟象牙と貧困>

象牙の国際取引は、1989年「ワシントン条約」により原則禁止されたが
2013年に押収された密猟象牙は40トン以上

海外旅行 お土産が持ち帰れない!?@あさイチ

アフリカの多くの国は、貧困と紛争に苦しみ、大きな収入になる象牙の密輸に容易に手を出してしまう
麻薬売買などと同じ仕組みの犯罪
闇取引で生まれたお金は、テロ資金に流れて、内戦を助長し、人々の生活を脅かす悪循環


<「ホワイトゴールド」と呼ばれる象牙>

象牙をとるには、ゾウを殺して、頭蓋骨を割らなければならない
ゾウは銃殺、青酸カリの水を飲み、毒針を踏み、苦しんで死ぬ

象牙は1kg40万円前後で取引され「ホワイトゴールド」と呼ばれ
犯罪組織により日本、中国などの需要国に運ばれる
工芸品、アクセサリー、印鑑、かんざし、三味線や琴などのバチにも使用される





<世界の取り組み>

2014年、イギリスで「野生生物の違法取引に関するロンドン会議」が開かれ
「10年間は象牙の取引をしない、備蓄の凍結」に41カ国、EU加盟国が合意
(10年間だけ?

2015年 「密猟、違法取引の対策に関する国際会議」が開かれ、日本を含む31カ国が話し合った
アフリカ諸国、需要国、密輸ルートの経由地である国々が協力する必要がある


「アフリカゾウの涙」
アフリカに縁のある2人の母親がスタートさせた活動



「マサイマラ国立保護区」で獣医師として勤務する滝田さんは
ゾウの生息地とヒトの住む村の間に蜂の箱を置いて境界線を作った



ゾウが蜂を嫌う習性を利用 ゾウの専門家ルーシー・キング博士のアイデア
成功すれば、ゾウが「害獣視」されることなく、養蜂による現金収入も得られる




広報担当の山脇さんは、資金調達に奔走し、活動内容を広めるための企画、国際ニュースの配信などをしている



(なんかNHKの隣り辺りでこんなイベントをしてるのを見たことある気がする

「アースデイ」(地球の日)

アースデイ東京2018開催決定‼︎



会場:代々木公園(イベント広場・ケヤキ並木)
日程:2018年4月21日(土)10:00~20:00、4月22日 (日)10:00~18:00
入場:無料

※出展テントは17時まで営業
※雨天決行

来場:12万人(予定)
主催:アースデイ東京 2018実行委員会 (実行委員長 C.W.ニコル)


絵を描いた小林絵里子さんは、幼少より生き物に興味を持ち、
自然や生き物をテーマに創作活動を続けている
野生生物保全活動に貢献するアーティスト団体「Artists for Conservation」の会員


<絵本にこめた想い>
レマ(LEMA)とは、マサイマラの言葉で「みんなに好かれる人」の意味

現状を伝えて、象牙製品を欲しがらない世代を育てることは、
現地の密猟パトロールと同じくらい大切だと考える

この絵本を、日本の約2万ある公立学校に届けることを目標にしている

ゾウの牙はゾウだけのもの
絵本を通して、どうしたらヒトと動物が共存していけるかをいっしょに考えてください


追。
物語に出てくるクロサイも絶滅危惧種に登録されている



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