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『宮沢賢治「旭川。」より』(BL出版)

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『宮沢賢治「旭川。」より』(BL出版)
宮沢賢治/原作 あべ弘士/文・画

※「作家別」カテゴリーの「宮沢賢治」に追加します



賢治のステキな絵本をまた見つけて貴重な思い

最後に直筆の詩の複写もある
それをもとに文章をふくらませたという試みも面白い

賢治らしい擬音や、オシャレな造語もまぜて、
北海道の澄んだ朝の空気、風、樹々の揺れる葉音などが感じられる

版画と線画を組み合わせたような絵は迫力があり
駅舎、異国のような街並み、森など
賢治の描いた風景描写をいっしょに見ているよう



大正時代に、なぜ旭川が「軍都」だったのか
いろいろ出てくる木や植物、鳥の名前も調べたくなる

賢治の代表作の絵本はあらかた読んだが、他にもまだあるかなあ

詩もステキなのがたくさんあることを知った
そのまま読むのもいいだろうけれども
私は絵本で1篇1篇をじっくりと楽しみたい

これがトシを亡くして、ポッカリと暗黒の穴のあいた時期に書かれた詩とは思えない
豊かな遠出の旅をして、少しは心が晴れただろうか

ほとんど花巻から出ていないイメージを持っていたが
こんな素晴らしい旅をしていたんだな



▼あらすじ(ネタバレ注意



大正十二年夏
汽車はようやく旭川に着いた
朝もやの中、街はすでに起きはじめていた

バビロン柳の下に小馬車が停まっていて
六条十三丁目の農事試験場まで行ってほしいと御者に頼むと
移転したはずだと言われるが、連れて行ってもらう



馬の鈴はシャンシャンと鳴り、御者はツェッ、ツェッ、と口を鳴らす

騎馬の隊列が横を過ぎ、その馬のたてがみは火のように揺れている



馬車の心地よさに賢治は天にも昇る気持ちになる



ポプラ並木のそばにいるこの絵は動物だろうか? ツキノワグマ?



落葉松(ラリックス)の向うに官舎が見えてきた



おおばこつめくさは朝の露にみちている



御者は農事試験場が開いているかどうか聞きに行くと
やはり永山という町に移ったから、遠いけど行きますか?と聞く

賢治は昼の汽車で稚内へ行くので駅まで戻ってくれと頼む

ズビャーツク、ズビャーツク と鳴く鳥を見て



「あれはオオジシギですね」

「こっちではカミナリ鳥と呼んでます
 遠い南の国から来るんですよ」





オオジシギが大空高く昇っては、急降下を繰り返す様を見て
まるで天に思いを届け、天の声を聞いて帰ってくる使者のようだと思う

役に立てずと謝る御者に、「とてもさわやかな街で好きになりました」と礼を言う賢治





<宮沢賢治直筆原稿複写より>

 






【あべ弘士あとがき 内容抜粋メモ】

賢治は、大正12年8月2日に、当時軍都だった旭川を訪れている

前年に妹トシを亡くし、哀しみを抱いた旅で
賢治が教えた花巻農学校の生徒たちの就職先を探すため、樺太に向かう途中であった

夜行列車は朝の5時頃に旭川駅に着き、稚内に出発するまでの短い間
辻馬車を走らせ、1篇の詩を書いた

この絵本はそれをもとにして、新たに創作を加えてつくった


あべ弘士:
旭川市旭川動物園の飼育係を25年間勤め、今は絵本作家として活躍 『新世界』ほか多数

考える絵本3『人間』(大月書店)





<軍都だった旭川の歴史>

軍都の面影

第7師団とは
1.陸上自衛隊 北部方面隊第七師団のこと。師団本部は北海道千歳市にある。
2.大日本帝国陸軍 第七師団のこと。師団本部は北海道旭川市(現在の陸上自衛隊 旭川駐屯地)にあった。

北鎮記念館

「旭川の歴史展」







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